刑法 ゼロから刑法#33

共同正犯(60条)と共謀共同正犯

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第6章 共犯 ②/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

共犯の主役=共同正犯。実行を分担しない共謀共同正犯まで含めて押さえる。

共同正犯とは(60条)

60条 二人以上共同して犯罪を実行した者は、すべて正犯とする。

  • タイプ:実行共同正犯(実行を分担)/共謀共同正犯(謀議のみ参加し実行しない者も正犯)。
  • 効果=一部実行全部責任の原則(自ら分担していない部分も含め全部に正犯として責任)。
  • 処罰根拠=相互利用補充関係(の下で結果に物理的・心理的因果性)。

実行共同正犯の成立要件

共同実行の意思(相互に協力して犯罪を実現する意思の連絡)②共同実行の事実(各人が実行行為の一部を分担)。

  • 意思連絡なく同一犯罪を実現=同時犯→共同正犯不成立(各自の結果のみ帰責)。
  • 例外=同時傷害の特例(207条):意思連絡がなくても、どちらの暴行で傷害が生じたか不明なら各自が傷害の責任(因果関係の立証責任を被告人側に転換)。

共同正犯の本質(何を共同するか)

学説何を共同するか帰結
行為共同説構成要件を離れた事実的な行為異なる罪名の共同正犯も成立(罪名従属性を否定)
犯罪共同説1個の同一の犯罪同一罪名のみ(罪名従属性を肯定)
部分的犯罪共同説〔通説〕構成要件が実質的に重なり合う限度殺意ある者と傷害の故意の者→傷害致死の限度で共同正犯

→ A(殺意あり)とB(傷害の故意)が共同しVを死亡させた場合、重なり合う傷害致死の限度で共同正犯。Bは傷害致死罪の共同正犯、Aは重い殺人罪の罪責を負う。

共謀共同正犯

謀議に参加したが実行していない者も共同正犯とする(判例・通説とも肯定)。

  • 刑事政策的要請:黒幕・組長・見張りを、教唆・幇助でなく正犯として処罰する必要。
  • 理論的根拠:共同正犯の処罰根拠である相互利用補充関係は、実行行為以外の関与にも及ぶ。だから実行に出ない黒幕も正犯になりうる。

成立要件:①共謀共謀に基づく一部の者の実行行為正犯意思(自己の犯罪として実現する意思=幇助との分かれ目。動機・利益帰属・役割・指揮命令で判断)。

①共謀の意義(短答頻出)

  • 時期:事前共謀/現場共謀(犯行現場で瞬間的に成立するものも可)。
  • 方法:明示/黙示順次共謀(AB→BCの謀議でA・C含む全員の共謀とみなす)。
  • 内容犯罪計画の重要部分で足りる(手段等の微細な部分の特定は不要)。例:賄賂を共謀すれば交付先を知らなくても共謀共同正犯。

【判例】練馬事件 最大判昭33・5・28:共謀共同正犯のリーディング。共謀=2人以上が特定の犯罪を、共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し、各自の意思を実行に移す謀議。

【判例】スワット事件 最決平15・5・1:暴力団組長がボディガードのけん銃所持を確定的に認識し当然のこととして認容→黙示の意思連絡で共謀を認め、組長にけん銃所持の共謀共同正犯を認めた。

12歳の少年を利用した場合の住み分け(#32の回収)

#32で「12歳に窃盗を教唆→教唆犯」を制限従属性説の設例として扱ったが、判例(最決平13・10・25)は年齢だけで決めない:

  • 是非弁別能力があり自らの意思で実行→道具性が否定され、利用者は共同正犯(最決平13・10・25は12歳10か月の長男に強盗を指示した事案でこれを認めた)。
  • 意思を抑圧して一方的に利用間接正犯(最決昭58・9・21=12歳養女が畏怖し意思を抑圧された事案/#12)。

片面的共同正犯(本シリーズの回収先)

共同実行の事実はあるが、共同実行の意思が一方にしかない場合(例:AがBに気づかれず一方的にAの犯罪実現に協力)。相互利用補充関係に欠けるため共同正犯は不成立だが、片面的教唆犯・片面的幇助犯は成立しうる。→ 狭義の共犯とあわせて#34(教唆犯・幇助犯)で扱う。

📝 論文の型|共謀共同正犯

★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)

共同正犯(60条)の処罰根拠は、共同意思の下に一体となり相互に利用補充し合う関係(相互利用補充関係)で結果に因果性を及ぼす点にある。実行を分担しない者でも、①特定の犯罪についての共謀、②共謀に基づく実行行為、③自己の犯罪として実現する意思(正犯意思)が認められれば共謀共同正犯となる。共謀は黙示の意思連絡で足りる。

復元キー(趣旨から再構成する鎖)

  1. 60条の根拠=相互利用補充関係による因果性
  2. 実行分担なしでも正犯になりうる
  3. 要件=①共謀 ②共謀に基づく実行 ③正犯意思
  4. 共謀は黙示でも可(平15)
  5. 正犯意思=「自己の犯罪」か「他人への加担」かで幇助と区別

フル論証(正本)

共同正犯(60条)の処罰根拠は、共謀者が共同意思の下に一体となって互いに他人の行為を利用し補充し合う関係(相互利用補充関係)に立ち、その下で結果に物理的・心理的因果性を及ぼす点にある。そうだとすれば、実行行為を分担しない者であっても、①特定の犯罪についての共謀が認められ、②共謀に基づく(共謀者の一部による)実行行為がなされ、③当該共謀者に犯罪を自己の犯罪として実現する意思(正犯意思)が認められる場合には、共謀共同正犯として60条の適用を受ける(最大判昭33・5・28参照)。なお共謀は黙示の意思連絡で足りる(最決平15・5・1)。

【事例】 暴力団組長甲は、配下の護衛らが甲を警護するため自発的にけん銃を所持していることを確定的に認識し、これを当然のこととして受け入れて認容しており、護衛らもそれを承知していた。

【問題提起】 けん銃を直接所持していない甲に、けん銃所持罪の共謀共同正犯が成立するか。

【あてはめ】 甲は護衛らのけん銃所持を確定的に認識・認容し、護衛らもこれを承知していたから、けん銃所持につき黙示の意思連絡=共謀が認められる(①)。現に護衛らが共謀に基づきけん銃を所持しており実行行為がある(②)。甲は護衛らを指揮命令する地位にあり、自己の警護という自己の利益のためにけん銃を所持させていたから、自己の犯罪として実現する正犯意思が認められる(③)。よって甲にけん銃所持罪の共謀共同正犯が成立する。

短答ひっかけ

  • 一部実行全部責任(60条)。
  • 意思連絡のない同時犯は共同正犯不成立/例外=同時傷害の特例207条。
  • 本質は部分的犯罪共同説〔通説〕(重なり合う限度で共同正犯)。
  • 共謀共同正犯=共謀+実行+正犯意思黙示の共謀でも可=スワット事件)。

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