刑法 ゼロから刑法#34

教唆犯・幇助犯(狭義の共犯)

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第6章 共犯 ③/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

共犯の最後=狭義の共犯(教唆犯・幇助犯)。効果の違い(正犯の刑 vs 必要的減軽)が核心。

:狭義の共犯が罰せられるのは、正犯を通じて法益侵害を惹起したから(因果的共犯論・#32)。教唆は犯意そのものを生み出す=関与が重い→正犯の刑。幇助はすでに固まった決意の実行を後押しするだけ=関与が軽い→必要的減軽。効果の差は、関与の質の差の裏返し。

61〜64条

61条 ①人を教唆して犯罪を実行させた者には、正犯の刑を科する。②教唆者を教唆した者についても、前項と同様とする。 62条 ①正犯を幇助した者は、従犯とする。②従犯を教唆した者には、従犯の刑を科する。 63条 従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。 64条 拘留又は科料のみに処すべき罪の教唆者及び従犯は、特別の規定がなければ、罰しない。

教唆犯(61条)

  • 教唆=まだ犯意のない者に、特定の犯罪の決意を生じさせること(既に決意した者への働きかけは心理的幇助)。
  • 成立要件4ステップ=①教唆行為 → ②正犯の実行行為(+因果関係) → ③正犯結果の発生 → ④教唆の故意。
  • 効果=正犯の刑を科する(法定刑が正犯と同じ)。
  • 正犯が現実に処罰されなくても共犯は成立正犯者の宣告刑より重い宣告刑を共犯に科してもよい(教唆・幇助とも短答頻出。61条1項=最判昭25・12・19/63条=幇助も同様)。
  • 教唆の故意=二重の故意(決意を生じさせる認識+その者が実行し既遂に至る認識)。
  • 間接教唆(61条2項)=教唆者を教唆した者も処罰。

幇助犯(従犯・62〜63条)

  • 幇助=正犯の実行行為を容易にすること。物理的幇助(道具供与)/心理的幇助(助言・激励)。
  • 効果=正犯の刑を必要的に減軽(63条)← 教唆との決定的な違い。
  • 幇助の因果性=正犯の実行を物理的・心理的に促進・容易にしたこと(「幇助がなければ結果が出なかった」という厳密な条件関係までは不要)。
  • 不作為による幇助=作為義務がある者が正犯の犯行を防がなければ幇助になりうる(構成要件的同価値性があれば肯定。論証55、#11不真正不作為犯の応用。判例=選挙長が違法投票を制止しなかった事案)。

教唆犯 vs 幇助犯

観点教唆犯(61条)幇助犯=従犯(62・63条)
行為犯意のない者に決意を生じさせる既に決意した正犯の実行を容易にする
刑の処理正犯の刑を科する(同じ法定刑)正犯の刑を必要的に減軽(63条)

重要論点

  • 未遂の教唆(アジャン・プロヴォカトゥール):最初から未遂に終わらせる意思で教唆。教唆の故意は既遂の認識を要するから、既遂の故意を欠き不可罰(通説。惹起説からの帰結)。※ 処罰根拠を正犯の堕落に求める責任共犯説からは可罰とする説もあり、争いがある。
  • 片面的共犯:相手に知られず加担。片面的幇助は幇助の類型で分かれる物理的(物質的)幇助は肯定(道具供与等は相手の認識がなくても実行を容易にできる)/精神的(心理的)幇助は否定(助言・激励は被幇助者が幇助の存在を認識してはじめて実行が容易になるため)。片面的共同正犯=否定(意思連絡がない)/片面的教唆=肯定(通説。文理上否定する必要なし)。※呉 page136 まとめ表・論証54が「片面的幇助の処理の要点はしっかり記憶」と強調。
  • 間接幇助(幇助者を幇助)=可罰の傾向。

📝 論文の型|幇助犯(従犯)

★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)

幇助犯(62条1項)は、①正犯の実行を物理的・心理的に容易にする行為があり、②それが正犯の実行を促進・容易にしたという因果性をもち(結果との厳密な条件関係は不要)、③幇助の故意があり、④正犯が実行に着手したときに成立し、刑は正犯の刑を必要的に減軽する(63条)。

復元キー(趣旨から再構成する鎖)

  1. 処罰根拠=正犯を通じた法益侵害の促進(因果的共犯論・#32の土台)
  2. ①幇助行為=物理的(道具供与)/心理的(助言・激励)の二態様
  3. ②因果性=「あれなければ結果なし」まで不要・促進したで足りる(促進的因果関係説)
  4. ③幇助の故意=自分の援助+正犯の実行・結果発生の認識(二重の故意)
  5. 正犯が着手して初めて幇助犯も成立(実行従属性)→効果は必ず減軽(63条)

フル論証(正本)

幇助犯(従犯。62条1項)は、①正犯の実行行為を物理的または心理的に容易にする行為があり、②それが正犯の実行を促進・容易にしたという因果性を有し(結果との厳密な条件関係までは不要)、③幇助の故意(自己の行為が正犯を援助すること+正犯が犯罪を実行し結果が発生することの認識)が認められ、④正犯が実際に実行行為に着手したこと(実行従属性)が認められる場合に成立する。その刑は正犯の刑を必要的に減軽する(63条)。

【事例】 乙が住居に侵入して窃盗をしようとしていることを知った甲は、乙の犯行を容易にするため侵入用の合鍵を作って乙に提供し、乙はこれを用いて住居に侵入し財物を窃取した。

【問題提起】 自ら窃盗を実行していない甲に、窃盗罪の幇助犯(従犯)が成立するか。

【あてはめ】 甲の合鍵提供は、乙の住居侵入・窃盗を物理的に容易にする幇助行為であり(①)、現に乙はこれを用いて侵入・窃取しているから正犯の実行を促進したといえる(②)。甲は乙の窃盗の実行と結果発生を認識・認容していた(③)。現に乙が実行に着手し窃盗を遂げている(④)。よって甲に窃盗罪の幇助犯が成立し、その刑は正犯の刑を必要的に減軽する(63条)。

短答ひっかけ

  • 教唆=正犯の刑(61)/幇助=必要的減軽(63)。
  • 教唆は犯意のない者に決意を生じさせる(既に決意していれば心理的幇助)。
  • 未遂の教唆は不可罰(既遂の故意を欠く・通説)。
  • 片面的幇助は物理的(物質的)なら肯定・精神的(心理的)なら否定/片面的共同正犯は否定。
  • 共犯は正犯が現実に処罰されなくても成立宣告刑は正犯より重くてもよい(教唆・幇助とも)。

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