承継的共同正犯・共犯関係の解消・共謀の射程
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第6章 共犯 ④/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
共犯の応用論点3つ。いずれも因果性が軸になる。
承継的共同正犯
先行者が犯罪の一部を実行した後、後行者が途中から加功。後行者は加功前の行為・結果まで責任を負うか。
- 共同正犯の処罰根拠=相互利用補充関係(#33)。加功前には共同実行の意思がなく、後行者は因果性も及ぼせない。
- 原則=責任を負わない(加功前は相互利用補充関係なし)。
- 通説=限定的肯定説:もっとも、後行者が先行者の行為・結果を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用したとみられる場合には、相互利用補充の関係を認めうるから、承継的共同正犯が成立する(×単なる認識・認容では足りない/大阪高判昭62・7・10)。
限定的肯定説からの罪名別の結論
- 詐欺(複数の行為から成る)=欺く行為を利用して交付させた → 承継肯定。
- 強盗(結合犯)=反抗抑圧状態を利用して盗取 → 承継肯定(後行者は強盗の範囲)。
- 強盗殺人・強盗傷害/強盗・強姦致死傷=利用したのは反抗抑圧状態のみで殺傷・致死傷は未利用 → 殺傷部分は否定(後行者は強盗・強姦の範囲)。
- 傷害(結果的加重犯)=暴行それ自体が目的で先行事情を利用したといえない → 否定(判)。
- 監禁(継続犯)=途中から共同実行 → 当然に(単純な)共同正犯。
【判例】最決平24・11・6(傷害):後行者は、共謀加担前に先行者が既に生じさせた傷害結果については因果関係がなく責任を負わず、加功後の暴行による傷害についてのみ共同正犯の責任を負う(限定的肯定説の「傷害=先行事情を利用したといえず否定」と整合)。
【判例】最決平29・12・11(詐欺・だまされたふり作戦):受領行為は欺罔行為と一体のものとして予定されていたから、加功前の欺罔も含め詐欺未遂罪の共同正犯の責任を負う(利用関係を認めた=承継肯定)。
→ 傷害は利用関係なしで承継否定/詐欺は一体性=利用関係ありで承継肯定。罪により結論が分かれるのも、限定的肯定説の「先行事情を積極的に利用したか」という一本の軸から説明できる。
共犯関係の解消(離脱)
いったん共犯関係に入った者が途中で離脱した場合、その後の犯行に責任を負うか。
- 基準=因果性遮断説:自己が与えた物理的・心理的因果性をすべて遮断したか。
- 物理的=提供した道具の回収等/心理的=高めた犯意の解消。
- 着手前=離脱の表明+他の共犯者の了承で心理的因果性が遮断されうる/着手後(または因果性が残存する場合)=結果防止の積極的措置(因果性除去)が必要。
【判例】最決平元・6・26(「おれ帰る」事件):制裁を加えるおそれが消滅していないのに、防止措置を講じず立ち去ったにすぎない→共犯関係は解消せず、その後の結果にも責任。
【判例】最決平21・6・30:住居侵入後・強盗の着手前の離脱でも、一方的に離脱を告げただけで防止措置を講じなければ共謀関係は解消しない。
→ 着手の前後より「因果性を遮断する防止措置を講じたか」が実質的な基準。
共謀の射程
実際に生じた結果が当初の共謀に基づくものといえるか(客観的帰責の問題)。
- 故意のズレを扱う共犯の錯誤(主観面)とは区別。
- 処理の順序:①共謀の成立 → ②共謀の射程(射程外なら共同正犯否定)→ ③共犯の錯誤。
- 射程の判断要素:動機・目的・行為態様・客体・時間的場所的近接性等の共通性(※学説上の整理であり確立した統一基準ではない)。
📝 論文の型|共犯関係の解消
★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)
共犯の処罰根拠は結果への因果性の共同惹起にあるから、いったん共犯関係に入っても、自己が与えた物理的・心理的因果性をすべて遮断し、その後の犯行が当初の共謀に基づくとはいえなくなれば、共犯関係が解消され以後の結果につき責任を負わない。着手前は離脱の意思表示と他の共犯者の了承で心理的因果性が遮断されうるが、着手後(因果性が残る場合)は積極的な結果防止措置による因果性除去を要する。
復元キー(趣旨から再構成する鎖)
- 基準=自己が与えた因果性の遮断(因果性遮断説)
- 物理的因果性+心理的因果性の両方を切る
- 着手前=離脱の意思表示+他の共犯者の了承で足りうる
- 着手後=積極的な結果防止措置が必要(口頭離脱では不足)
- 解消できなければ以後の結果も共同正犯の責任
フル論証(正本)
共犯の処罰根拠は結果に対する因果性の共同惹起にあるから、いったん共犯関係に入った者であっても、自己が与えた物理的・心理的因果性をすべて遮断し、その後の犯行が当初の共謀に基づくものといえなくなった場合には、共犯関係が解消され、その後の結果について責任を負わない。具体的には、実行の着手前は離脱の意思表示と他の共犯者の了承により心理的因果性が遮断されうるが、着手後(または因果性が残存する場合)は、積極的に結果発生を防止する措置を講じて因果性を除去しなければ解消は認められない(最決平元・6・26、最決平21・6・30)。
【事例】 甲は乙と強盗を共謀し見張り役を引き受けたが、実行の着手前に「やはりやめる、先に帰る」と乙に一方的に伝えて立ち去った。しかし格別犯行を防止する措置は講じず、その後 乙が単独で強盗を実行した。
【問題提起】 離脱した甲は、その後の乙の強盗について共同正犯の責任を負うか(共犯関係が解消されたか)。
【あてはめ】 甲は乙に離脱を一方的に告げたにすぎず、見張りの引受けによって高めた乙の犯意(心理的因果性)を解消する措置も、犯行を防止する措置も講じていない。よって甲が与えた因果性は遮断されておらず、その後の強盗も当初の共謀に基づくものといえるから、共犯関係は解消しない。したがって甲は乙の強盗について共同正犯の責任を負う(最決平21・6・30の射程)。
短答ひっかけ
- 承継的共同正犯は限定的肯定説=先行事情を自己の犯罪遂行の手段として積極的に利用したか(傷害=平24・11・6は否定/詐欺=平29・12・11は肯定)。「全部否定説=通説」ではない点に注意。
- 共犯関係の解消=因果性遮断説(着手前でも防止措置が必要=平21・6・30)。
- 共謀の射程は客観的帰責(共犯の錯誤と区別・射程→錯誤の順)。