身分犯と共犯(65条)
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第6章 共犯 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
共犯の応用=身分犯と共犯。身分のある者とない者が共犯になった場合の処理を65条で整理する。
軸:65条は「身分の効果がどこまで他人に移るか」を定める。真正身分犯の身分は犯罪の成立を基礎づけるから連帯(1項=身分なき者も同じ罪名)/不真正身分犯の身分は刑の軽重を左右するだけだから個別化(2項=身分なき者は通常の刑)。1項は成立の層・2項は科刑の層——層が違うから矛盾しない(業務上横領のケースで両方が同時に効く)。真正=違法身分=連帯・不真正=責任身分=個別は #32 の延長。
身分犯の種類
| 観点 | 真正身分犯(構成的身分犯) | 不真正身分犯(加減的身分犯) |
|---|---|---|
| 身分の役割 | 身分があって初めて犯罪が成立 | 身分がなくても基本犯はあり、身分で刑が加減 |
| 例 | 収賄罪(公務員)・偽証罪(証人)・横領罪(占有者) | 業務上横領(業務者)・常習賭博(常習者)・保護責任者遺棄(保護責任者) |
| 65条 | 1項(成立の連帯) | 2項(科刑の個別化) |
「身分」の定義(判例)=一定の犯罪行為に関する犯人の人的関係である特殊の地位又は状態のすべて。目的犯の「目的」も特殊の状態として身分に含まれる(例:麻薬輸入罪の営利の目的=身分/判例)。
刑法65条
1項 犯人の身分によって構成すべき犯罪行為に加功したときは、身分のない者であっても、共犯とする。 2項 身分によって特に刑の軽重があるときは、身分のない者には通常の刑を科する。
1項と2項の振り分け(判例・通説)
- 1項=真正身分犯への加功 → 身分のない者も共犯になる(成立の連帯)。例:非公務員が公務員と共同で収賄→65条1項で収賄罪の共犯。
- 2項=不真正身分犯への加功 → 身分のない者には通常の刑(科刑の個別化)。
- スローガン:1項=成立の連帯/2項=科刑の個別化。
学説(振り分けの基準)
- 形式的区別説〔判例・通説〕:条文の文言どおり、1項=真正身分犯・2項=不真正身分犯と振り分ける。
- 違法身分・責任身分説:#32「違法は連帯・責任は個別」の発想。違法を基礎づける身分は連帯(1項相当)/責任に関わる身分は個別(2項相当)。
65条1項の「共犯」に共同正犯を含むか
真正身分犯(収賄・偽証等)で問題になる。非身分者は単独では真正身分犯の実行行為をなしえないのに、共同正犯(正犯)になれるか。
- 否定説:非身分者は真正身分犯の実行行為をなしえない → 狭義の共犯(教唆・幇助)のみ。
- 肯定説〔判例・通説〕:身分者の行為を利用して真正身分犯の保護法益を侵害することは可能だから、共同正犯も含む。∴ 非公務員も公務員と共同すれば収賄罪の共同正犯になりうる。
- ※ 主に真正身分犯の問題。不真正身分犯(業務上横領等)では非身分者も基本犯(単純横領)の正犯になれるため、この論点は顕在化しにくい(呉論証49 備考)。
業務上横領の処理(最重要)
【判例】最判昭32・11・19 非業務者が業務上横領に加功した場合、65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する(罪名)。もっとも、業務上の占有者たる身分のない者には、65条2項により単純横領罪(252条)の通常の刑を科す(科刑)。 → 罪名は業務上横領・科刑は単純横領(1項で成立・2項で科刑を分離)。
📝 論文の型|身分犯と共犯(65条)
★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)
65条1項は真正身分犯への加功=身分なき者も共犯として成立する(成立の連帯)。2項は不真正身分犯への加功=身分なき者には通常の刑を科す(科刑の個別化)。1項の「共犯」には共同正犯も含まれる(判例・通説)。
復元キー(趣旨から再構成する鎖)
- 1項=犯罪の成立(罪名)の層/2項=科刑(刑の軽重)の層=層が違うから両立する
- 真正身分犯の身分=犯罪の成立を基礎づける(違法身分)→連帯(1項)
- 不真正身分犯の身分=刑の軽重を左右するだけ(責任身分)→個別化(2項)=#32「違法は連帯・責任は個別」
- 1項の「共犯」=教唆・幇助だけでなく共同正犯も含む(非身分者も身分者と組めば正犯になりうる)
- 業務上横領への非業務者の加功=1項で罪名は業務上横領・2項で科刑は単純横領(最判昭32・11・19)
フル論証(正本)
65条1項は真正身分犯(構成的身分犯)への加功を定め、身分のない者も共犯として成立する(成立の連帯)。65条2項は不真正身分犯(加減的身分犯)への加功を定め、身分のない者には通常の刑を科す(科刑の個別化)。すなわち、1項で犯罪の成立(罪名)を連帯させ、2項で身分による刑の加減を個別化すると解する(判例・通説)。なお、真正身分犯について、65条1項の「共犯」には共同正犯も含まれる(身分者の行為を利用して保護法益を侵害しうるため/判例)。
【事例】 会社の経理を担当し金銭を業務上占有する甲(業務者)と、その身分のない友人乙が共謀し、甲が業務上占有する会社の金銭を共同して横領した。
【問題提起】 業務者の身分のない乙について、いかなる犯罪が成立し、いかなる刑が科されるか。
【あてはめ】 業務上横領罪(253条)は単純横領罪(252条)に「業務者」という身分が加わった不真正身分犯である。乙は業務者の身分を欠くが、甲と共同して横領した以上、65条1項により業務上横領罪の共同正犯が成立する(罪名は業務上横領)。もっとも「業務者」は刑の加重を基礎づける身分であるから、65条2項により乙には単純横領罪(252条)の通常の刑を科す(最判昭32・11・19)。
短答ひっかけ
- 真正身分犯(収賄・偽証・横領)=身分なきと成立せず/不真正身分犯(業務上横領・常習賭博・保護責任者遺棄)=刑の加減。
- 65条1項=真正・成立の連帯 / 2項=不真正・科刑の個別化。
- 非業務者が業務上横領に加功 → 罪名は業務上横領・科刑は単純横領(最判昭32・11・19)。
- 65条1項の「共犯」には共同正犯も含む〔判例〕(真正身分犯/否定説=狭義の共犯のみ↔肯定説=身分者の行為を利用して保護法益侵害は可能)。
- 「身分」=犯人の人的関係である特殊の地位・状態のすべて(判)。目的犯の目的も身分(麻薬輸入罪の営利目的)。