刑法 ゼロから刑法#38

罪数論——犯罪をどう数え、どう罰するか

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第7章 罪数 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

犯罪論の総まとめ。成立する犯罪が一罪か数罪か、数罪ならどう刑を科すか。

罪数決定の基準(罪数論の出発点)

  • 犯罪の個数は、構成要件を何回充足したかで数える=構成要件標準説(判例・通説。最大判昭24・5・18)。
  • 1回だけ充足が明確=単純一罪/複数回に見えるが1回と評価=評価上一罪(法条競合・包括一罪)。
  • まず「いくつの罪が成立するか(一罪/数罪)」を決め、その後で「どう処断するか」を考える順番。

罪数の全体像

  • 一罪:単純一罪/法条競合(外形上は複数の条文に該当するが1つだけ適用=特別関係・補充関係・択一関係・吸収関係)/包括一罪(複数の行為をまとめて一罪=接続犯・連続的暴行・不可罰的事後行為など)。
  • 数罪科刑上一罪(54条1項)=観念的競合・牽連犯/併合罪(45条〜)
  • ※「成立する犯罪の数」と「刑を科すときの数」は別。

法条競合(外形上複数の条文 → 1つだけ適用)

  • 特別関係=一般法と特別法 → 特別法が一般法を排斥。例:単純横領罪(252条)と業務上横領罪(253条)→ 業務上横領罪のみ成立。
  • 補充関係=基本法と補充法 → 基本法が補充法を排斥。例:殺人罪(199条)と殺人予備罪(201条)・殺人未遂罪(203条)→ 殺人罪のみ成立。
  • 択一関係(横領罪と背任罪など)・吸収関係=認める見解もあるが、特別・補充関係や包括一罪で説明でき不要とする説が有力。

包括一罪(試験で重要)

  • 接続犯=同一犯意で時間的・場所的に近接した同種数行為で密接な関連がある場合。例:夜間2時間内に同一倉庫から米9俵を窃取=窃盗罪の一罪(最判昭24・7・23)。
  • 混合包括一罪(異種の罪の包括一罪)=異種の罪が①被害法益の実質的同一性+②時間的・場所的近接性で一罪。例:無銭飲食の詐欺→暴行で支払いを免れる=強盗利得罪の一罪。
  • 不可罰的事後行為=窃取財物の毀棄(器物損壊)・売却(横領)は窃盗罪で評価し尽くされ、別罪は成立しない
    • ただし窃取した預金通帳での払戻しは銀行への新たな法益侵害で評価し尽くされておらず、不可罰的事後行為にあたらず別途詐欺罪が成立(最判昭25・2・24)。

科刑上一罪(54条1項)

54条1項 一個の行為が二個以上の罪名に触れ、又は犯罪の手段若しくは結果である行為が他の罪名に触れるときは、その最も重い刑により処断する。

  • 観念的競合(前段):1個の行為が2個以上の罪名に触れる(例:1個の爆弾で複数殺害)。
    • 「1個の行為」=法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもと、行為者の動態が社会的見解上1個と評価されるか(最大判昭49・5・29=酒酔い運転と業過致死は併合罪とした事案)。
  • 牽連犯(後段):罪質上 通常、手段・目的または原因・結果の関係(例:住居侵入と窃盗/文書偽造→その行使→詐欺)。
    • 否定例(短答頻出)殺人と死体遺棄は類型的な手段・結果の関係になく併合罪(牽連犯にあたらない)。
  • 効果:いずれもその最も重い刑により処断(犯罪は複数成立・刑は1つ)。

併合罪(45条)

  • 科刑上一罪にならない数罪(確定判決を経ていない数罪等)。同時的併合罪/事後的併合罪(禁錮以上の確定判決の前後で分断)。
  • 加重(47条)=有期の自由刑は、最も重い罪の刑の長期にその2分の1を加える(=1.5倍)まで。ただし各罪の長期の合計は超えない。
    • 例:殺人(長期20年)の併合罪 → 30年まで可能。

かすがい現象

本来は併合罪関係の数罪が、ある罪(住居侵入等)と各々牽連犯の関係に立つことで、全体が科刑上一罪となる現象。最判昭29・5・27(住居侵入+3殺人・百選105)は肯定。 → 路上で2人殺せば併合罪(重い)なのに、住居侵入を介して殺すと科刑上一罪で軽くなる不均衡との批判が多い。

📝 論文の型|科刑上一罪の区別(観念的競合・牽連犯)

★コア規範(逐語で覚えるのはここだけ)

科刑上一罪は54条1項による。1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合が観念的競合(前段)で、「1個の行為」か否かは法的評価を離れた自然的観察のもと行為者の動態が社会的見解上1個と評価されるかで判断する。罪質上通常手段・目的または原因・結果の関係にある場合が牽連犯(後段)で、いずれも最も重い刑により処断する。これに当たらない数罪は併合罪(45条)。

復元キー(趣旨から再構成する鎖)

  1. 条文=54条1項(前段=観念的競合/後段=牽連犯)
  2. 観念的競合=1個の行為で複数罪名
  3. 「1個の行為」=自然的観察で社会的に1個か(昭49)
  4. 牽連犯=罪質上通常の手段・目的/原因・結果関係
  5. 効果=科刑上一罪は最も重い刑/非該当は併合罪(45条)

フル論証(正本)

成立する数個の罪が科刑上一罪となるか否かは、54条1項により判断する。1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合は観念的競合(54条1項前段)であり、『1個の行為』か否かは、法的評価を離れ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上1個と評価されるかで判断する(最大判昭49・5・29)。罪質上 通常 手段・目的または原因・結果の関係にある場合は牽連犯(54条1項後段)である。いずれもその最も重い刑により処断する。これらに当たらない数罪は併合罪(45条)として加重される。

【事例】 甲は、金品を盗む目的でV方に侵入し(住居侵入)、室内で財物を窃取した(窃盗)。

【問題提起】 住居侵入罪と窃盗罪の罪数関係は、観念的競合・牽連犯・併合罪のいずれか。

【あてはめ】 住居への侵入と財物の窃取は、自然的観察のもとで別個の行為であり1個の行為とはいえないから観念的競合ではない。もっとも、住居侵入は窃盗を行うための手段であり、両罪は手段・目的の関係に立つから牽連犯(54条1項後段)にあたる。よって科刑上一罪として、その最も重い窃盗罪の刑により処断する。

短答ひっかけ

  • 一罪(法条競合・包括一罪)と数罪は別。
  • 科刑上一罪(観念的競合54Ⅰ前段・牽連犯54Ⅰ後段)=最も重い刑で処断
  • 併合罪(45条)=有期は1.5倍まで加重(47条)。
  • かすがい現象=判例は全体を科刑上一罪(最判昭29・5・27・批判多い)。

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