幇助の因果関係と片面的幇助の書き方
自分では持ち去っていない甲と丙について、窃盗罪の幇助犯が成立するかを答案に書き切る回。事例は、乙がVのケーブル置き場から銅線のドラムを盗み出し、甲は頼まれて台車を貸したが乙は使わず、別に乙に黙って私道を片づけたが乙は通らず、丙は乙に告げずに照明の電源を切った、というもの。規範は、共犯の処罰根拠(正犯の実行行為を通じた間接的な法益侵害)から幇助行為と正犯の実行行為・結果との因果関係を要求しつつ、条件関係までは要らず、正犯の実行行為を物理的・心理的に促進すれば足りるとする。片面的幇助は、物質的幇助なら正犯の認識がなくても成立し、精神的幇助は正犯の認識がなければ成立しない。甲は、私道の件は物理的にも心理的にも促進がなく否定、台車の貸与は使われなくても乙が心強く思って実行に踏み切ったので心理的に促進して窃盗罪の幇助犯。丙は、電源切りが物質的幇助として乙の作業を現に楽にしたので、乙が知らなくても窃盗罪の幇助犯。甲・丙の刑は63条で必要的に減軽され、乙は窃盗罪。
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事例
図:甲・乙・丙と、Vのケーブル置き場
この事例には、犯人を手助けした人が2人出てきます。答案の最後まで書き切ります。そのうち1人は、貸した物が、一度も使われませんでした。もう1人は、手助けをしたことを、犯人本人が知りません。それでも、幇助犯が成立する手助けと、成立しない手助けがあります。その分かれ目を、事実で書き分けるのが、この事例の中心です。乙は、金属加工会社を営むVの敷地の隅にある、屋外のケーブル置き場に目をつけました。道路沿いにあって、フェンスの一部が壊れていて、誰でも出入りできます。夜は誰もいません。乙は、ここから銅線ケーブルのドラムを持ち去って、買取業者に売ろうと考えました。乙は、友人の甲に、こう頼みます。「木曜の夜、Vの会社のケーブル置き場から、銅線のドラムを軽トラックで運び出して売る。重いから、運ぶのに台車を貸してくれ。」甲は、「分かった」と答えて、水曜の夜、自分の台車を乙に貸しました。乙は、「これでドラムも運べる」と心強く思い、その台車を軽トラックの荷台に積みました。甲は、これとは別に、乙には黙って、水曜の昼に、ケーブル置き場の裏手の細い私道を片づけています。放置されていた古い資材をどけて、軽トラックが通れるようにしたのです。もう1人は、丙です。丙は、Vの会社の元従業員で、解雇されたことをVに恨んでいました。木曜の昼に、乙が仲間に、「今夜、Vのケーブル置き場から銅線を盗む」と話しているのを偶然聞いて、乙が窃盗をすることを知ります。丙は、Vが困ればよいと考えました。乙には何も告げず、木曜の夕方、ケーブル置き場を照らす人感センサー付きの照明の電源を、敷地の外の塀沿いにある分電盤で切っています。分電盤の扉に、鍵はありませんでした。
図:水曜の昼から木曜の夜まで、時系列
木曜の夜です。乙は、軽トラックを、道路沿いの壊れたフェンスの隙間から、直接ケーブル置き場に入れました。私道は通っていません。台車も使っていません。ドラムは、地面で転がして、荷台に渡した板を使って積み込みました。乙は、私道が片づけられていたことには、気づいていません。乙は、照明が点かないことを特に不審に思わず、暗がりの中で作業して、誰にも見られないまま、銅線ケーブルのドラム3つ、時価約40万円分を積み込みました。そのまま持ち去って、買取業者に売っています。乙は、丙が電源を切ったことを知りません。丙は、当夜は自宅にいました。問いは、甲、乙及び丙の罪責を論じなさい、というものです。
検討の順番
図:検討の順番、正犯から関与者へ
検討は、乙、甲、丙の順に進めます。乙を先にするのは、甲と丙が自分では持ち去っていないからです。幇助犯が成立するかは、正犯が実行に出たことを前提にして決まります。だから、先に正犯の罪責を固めます。関与者の中では、甲を先にします。甲の検討で立てる規範の物差しを、丙の検討でも使うからです。甲で土台を作ってから、丙に進みます。
乙の罪責
図:刑法235条
乙から見ます。条文です。
条文刑法235条
刑法235条(窃盗)
他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
乙は、Vが管理するケーブル置き場から、V所有の銅線ケーブルのドラムを3つ、Vに無断で軽トラックに積んで持ち去っています。他人の財物を、占有者の意思に反して、自分の占有に移したのですから、窃取にあたります。乙には、窃盗罪の構成要件に該当する行為があります。乙は、他人の財物だと分かっていたので、故意があります。違法性を否定する事情も、責任を否定する事情もありません。乙には窃盗罪が成立します。ここは争点にしません。事例には、甲や丙が犯行の場で実行を分担した事情は出てきません。共同正犯までは問わず、2人について、乙の窃盗を幇助したといえるかを見ていきます。
甲の問題提起
図:幇助犯の4つの要素、甲の事実
甲です。まず、条文を確認します。
条文刑法62条1項
刑法62条1項(幇助)
正犯を幇助した者は、従犯とする。
条文の文言は、正犯を幇助した者、です。幇助犯は、この、幇助した、を割った4つの要素を、一つずつ確かめます。客観面が、1つ目の幇助行為、2つ目の正犯の実行行為、3つ目の正犯の結果。主観面が、4つ目の幇助の故意です。2つ目と3つ目は、すぐ決まります。乙は窃盗の実行に出て、ドラム3つを持ち去り、既遂に至っています。4つ目の幇助の故意も、認められます。甲は、乙から、ケーブル置き場の銅線のドラムを運び出して売ると聞いたうえで、台車を貸しました。乙の窃盗を認識して、これを容易にする意思があります。残るのが、1つ目の幇助行為です。甲は、台車を貸しました。私道も片づけました。どちらも、実行行為以外の方法で、乙の窃盗を手助けしようとした行為です。ところが、乙は、台車を使っていません。私道も通っていません。
手助けしようとした行為はあるのに、実際には役立っていない、ということです。1つ目の幇助行為が、2つ目と3つ目の、正犯の実行行為と結果に、本当に結びついているといえるのか。ここで、幇助の因果関係が問題になります。
図:問題提起、使われていない事実を入れる
問題提起の文は、板に出しました。ここで見てほしいのは、書き方です。「問題となる」と結論だけを書いても、なぜ問題になるのかが、答案から見えません。この事例では、甲が貸した台車も、片づけた私道も、乙は使っていません。この事実があるから、甲の行為が乙の窃盗を幇助したといえるのか、疑問が生じます。だから、使われていない事実を、問題提起の文に入れます。ここで一問です。甲の台車は、乙に一度も使われていません。それでも、甲が幇助したといえるかどうか、あなたならどこを見ますか?答えは、使われたかどうかとは別の角度から事情を探すことです。この発想が、これから立てる規範の中身です。
規範・幇助の因果関係
図:規範は、処罰根拠から出てくる
規範に入る前に、幇助の因果関係を学んだ回(幇助の因果関係——渡したメモが使われなくても幇助犯になるか)を思い出してください。条件関係まで要求すると、何が困るのでしたか?渡した物がたまたま使われなかっただけで、幇助が成立しなくなって、成立する範囲が狭くなりすぎる、でした。その答えが、規範のどこに入るのかを、道筋で見ます。出発点は、共犯の処罰根拠です。共犯が罰せられるのは、正犯の実行行為を通じて、間接的に法益を侵害するからです。この事例でいえば、Vの財産を侵害したのは乙の持ち去りで、甲は、その乙の実行を通じて、Vの財産を侵害したといえるかが問われます。そうだとすると、幇助行為と、正犯の実行行為や結果とのあいだに、つながりが要ります。これが因果関係です。甲の行為が乙の実行と何の関係もないなら、甲を罰する理由がありません。では、どこまで強いつながりが要るのか。あれがなければこれがない、という関係、つまり条件関係まで求めると、どうなるでしょう。台車が無くても、乙は同じようにドラムを持ち去れました。台車には、条件関係がありません。渡した物がたまたま使われなかっただけで、幇助は成立しなくなります。成立範囲が、狭すぎます。そこで、条件関係までは求めません。正犯の実行行為を、物理的に促進したか、心理的に促進したか。それで足りると考えます。物理的な促進は、実行を、物として楽にしたり可能にしたりすることです。心理的な促進は、正犯の気持ちを支えて、実行に踏み切りやすくすることです。
促進で足りるのは、処罰の根拠が、正犯の実行を通じた法益の侵害にあるからです。物の面か気持ちの面で実行を後押ししていれば、その実行を通じて、Vの財産の侵害に現に関わったといえます。どちらの後押しも無ければ、つながりは無いと扱います。カードを見ます。
図:規範カード|幇助の因果関係
カードの全文です。
⭐ 論文で書く規範:幇助の因果関係
この点、共犯の処罰根拠は、正犯の実行行為を通じて間接的に法益を侵害することにあるから、幇助行為と正犯の実行行為・結果との間には因果関係が必要である。
もっとも、条件関係まで要求すると幇助犯の成立範囲が狭すぎる。そこで、正犯の実行行為を物理的・心理的に促進すれば足りると解する。
(規範(通説))
あてはめでは、物理的な促進と心理的な促進を、別々に拾います。まず、否定になる側から見ます。
甲のあてはめ・私道の件
図:私道の件、物理的にも心理的にも促進なし
私道の件です。物理的な促進から見ます。甲は、水曜の昼に、私道の古い資材を片づけました。しかし、木曜の夜、乙は、壊れたフェンスの隙間から、軽トラックを直接ケーブル置き場に入れています。私道は通っていません。片づけたことで、乙の持ち出しが実際に楽になった事実はありません。物理的に促進したとはいえません。次に、心理的な促進です。乙は、私道が片づけられたことを知りません。知らないことは、乙の気持ちを支えようがありません。心理的に促進したともいえません。物理的にも心理的にも促進していませんから、因果関係は認められません。私道の件は、それだけでは、窃盗罪の幇助にあたりません。
条件関係が無いことと、否定の理由は、分けて考えます。たしかに、片づけが無くても、乙は同じように持ち去れました。条件関係はありません。ただ、規範で、条件関係までは求めないとしました。ですから、条件関係が無いことは、否定の理由になりません。否定の理由は、物理的にも心理的にも、促進が無いことです。
甲のあてはめ・台車の貸与
図:台車の貸与、物理的には無く心理的には促進
次が、この事例の中心です。台車の貸与です。甲は、乙が窃盗に使うと聞いたうえで、台車を貸しました。ところが、乙は台車を使っていません。ここも、物理的な促進と心理的な促進を、別々に見ます。物理的な促進です。台車は、軽トラックの荷台に積まれました。しかし乙は、ドラムを地面で転がして、渡し板で荷台に積み込んでいます。実際の持ち出しの場面で、台車が積み込みや運搬を楽にした事実は、ありません。物理的に促進したとはいえません。ここで終わると、私道の件と同じ結論になります。ですから、もう一つの経路を見ます。心理的な促進です。乙は、窃盗に使うと告げて頼み、甲の承諾を得て、台車を借りました。受け取ったとき、これでドラムも運べる、と心強く思っています。そして、台車を荷台に積んでから、実行に出ました。窃盗に力を貸してくれる人がいる。運ぶ備えもできた。この安心感を支えにして、乙は、計画を実行に移したのです。
使われたことと、気持ちを支えたことは、別の話です。雨が降らなくて、開かなかった傘でも、持たされたから安心して出かけられた、ということがありますよね。台車も同じです。物としては役に立たなくても、乙は、甲が力を貸してくれたという安心感を支えにして、実行に踏み切りました。心理的には、実行を促進しています。ですから、台車の貸与については、因果関係が認められます。
図:甲の2つの行為、乙は知っていたか
甲の2つの行為を、並べます。どちらも、物理的には役立っていません。台車も私道も、乙は使いませんでした。それでも結論が分かれるのは、乙が知っていたかどうかで、心理的に促進したかどうかが変わるからです。線の位置も、示しておきます。もし甲が、乙に頼まれてもいないのに、台車を荷台にこっそり積んでおいただけで、乙がそれを知らず、使いもしなかったなら、私道の件と同じです。促進が無く、否定になります。
甲の結論
図:甲の結論、台車の貸与で幇助犯
結論です。1つ目の幇助行為と、2つ目の正犯の実行行為、3つ目の正犯の結果、4つ目の幇助の故意が、そろいました。台車の貸与は、乙の実行を心理的に促進していますから、因果関係もあります。甲には、窃盗罪の幇助犯、62条1項、235条が成立します。私道の件は、因果関係を欠きます。ただ、甲の罪責は台車の貸与で足りますから、結論は動きません。
丙の問題提起
図:幇助犯の4つの要素、丙の事実
丙です。丙にも、4つの要素を当てます。2つ目と3つ目は、乙の窃盗が既遂に至っていますから、すぐ決まります。4つ目の幇助の故意です。丙は、木曜の昼に、乙が窃盗をすると偶然聞いて、知りました。そのうえで、Vが困ればよいと考えて、照明の電源を切っています。乙の窃盗を認識して、これを容易にする意思があります。Vを恨む動機があっても、故意は否定されません。1つ目の幇助行為です。丙は、ケーブル置き場の照明の電源を、敷地の外の分電盤で切りました。実行行為以外の方法で、乙の窃盗を手助けする行為です。ところが、丙は、乙に何も告げていません。乙は、丙が電源を切ったことを知りません。このように、正犯が知らないまま、一方的に手助けする形を、片面的幇助といいます。片面的幇助を学んだ回(教唆・幇助の諸問題①——気づかれずに手伝っても、幇助犯になるか)で、脚立をこっそり置く例で見た形です。
図:問題提起、乙が知らない事実を入れる
問題提起の文は、板に出しました。ここでも、乙が知らないという事実を、文に入れます。知らない相手への手助けは成立しない、という見方が当たる場面と、当たらない場面があります。分かれ目を、一問で確認します。乙は、丙の行為を知りません。それでも成立するかどうかは、丙の行為が、物として乙を助けたか、言葉で乙を助けたかで変わります。丙の行為は、どちらでしょうか?電源を切る行為が物としての手助けに当たるかを、規範の道筋で確かめます。
規範・片面的幇助
図:規範は、2つの経路から出てくる
出発点は、幇助とは何か、です。実行行為以外の方法で、正犯の実行行為を容易にすることです。そして、容易にする道筋は、先ほどの規範のとおり、物理的か心理的かの2つです。物を提供したり、環境を整えたりする手助けは、物質的幇助といいます。物が実行を現に楽にしたとき、それは物理的な促進です。階段に手すりを付けておく場面を思い浮かべてください。上る人は、誰が付けたかを知らなくても、手すりに支えられます。物は、正犯が知っていようがいまいが、そこにあって、現に実行を楽にします。ですから、物質的幇助は、正犯の認識が要りません。助言や励ましの手助けは、精神的幇助といいます。心理的な促進です。応援の声は、聞こえなければ支えになりません。心理的に支えるには、その言葉が正犯に届いて、気持ちが動かなければなりません。届いていなければ、促進になりません。ですから、精神的幇助は、正犯が知って初めて、実行を容易にします。甲の台車も、物を貸したのですから、形は物質的幇助です。ただ、使われなかったので、物理的には効いていません。乙が知って心強く思ったから、心理的な経路で効きました。物を渡した手助けでも、どちらの経路で効いたかは、事実で見ます。この道筋から、規範が出ます。カードを見ます。
図:規範カード|片面的幇助
カードの全文です。
⭐ 論文で書く規範:片面的幇助
幇助とは、実行行為以外の方法で正犯の実行行為を容易にすることである。
そして、物質的幇助は、正犯が幇助行為を認識していなくても、現に実行行為を容易にするから、幇助犯が成立する。これに対し、精神的幇助は、正犯が幇助行為の存在を認識して初めて実行行為を容易にするから、正犯の認識がない以上、幇助犯は成立しない。
(規範(通説))
線の両側が、1つの規範に入っています。物質的幇助なら、正犯の認識が無くても成立します。精神的幇助なら、正犯の認識が無ければ成立しません。
丙のあてはめ
図:丙の電源切り、物質的幇助で物理的に促進
丙に当てはめます。まず、丙の行為が、どちらの手助けかです。照明の電源を切るのは、物を使って、乙の持ち出しの環境を整えた行為です。物質的幇助にあたります。物理的に促進したかを見ます。見るのは、実際の作業の場面で、丙の行為が乙の持ち出しを楽にしたかです。ケーブル置き場の照明は、人感センサー付きでした。点灯していれば、作業中に人目につき、積み込みが妨げられうる状況でした。丙が電源を切ったので、乙は、照明が点かないことを特に不審に思わず、暗がりの中で作業して、誰にも見られないまま積み込みを終えています。丙の行為は、乙の持ち出しを、現に物理的に促進しています。乙の認識です。乙は、丙が電源を切ったことを知りません。しかし、物質的幇助は、乙が知らなくても、現に実行を容易にします。乙が知らないことは、幇助の成立を妨げません。
共犯が罰せられる根拠に戻ります。丙は、乙の実行を通じて、Vの財産を侵害しました。手助けが現に作業を楽にしたのなら、乙が知っていたかどうかは、つながりを左右しません。電源が切られていたことで、現に、乙の窃盗は楽になりました。つながりがある以上、乙が知らなくても、丙は罰せられます。ですから、1つ目の幇助行為が認められます。4つ目の幇助の故意もあります。丙には、窃盗罪の幇助犯が成立します。線の反対側も、示しておきます。もし丙が、電源を切るのではなく、乙に届かない場所で、うまくやれ、と励ましていただけなら、精神的幇助です。乙に届いていない以上、心理的に促進していません。この場合は、成立しません。同じ、乙が知らない、でも、物か言葉かで、結論が裏返ります。
63条の減軽
図:刑法63条
最後に、刑の扱いです。
条文刑法63条
刑法63条(従犯減軽)
従犯の刑は、正犯の刑を減軽する。
従犯の刑は、正犯の刑を減軽します。この減軽は、必要的です。減軽するかどうかを裁判所が選べるのではなく、必ず減軽する、という意味です。甲と丙は、どちらも従犯ですから、刑は63条で減軽されます。正犯の乙との差は、この減軽の有無に表れます。
結論
図:結論、甲・乙・丙の罪責
結論です。乙は、窃盗罪、235条の罪責を負います。甲は、台車の貸与について、窃盗罪の幇助犯、62条1項、235条の罪責を負い、その刑は63条で減軽されます。丙も、窃盗罪の幇助犯、62条1項、235条の罪責を負い、その刑は63条で減軽されます。罪数は、各人とも1罪です。
図:甲の2つの行為と丙の行為の比較
3つの手助けを、並べます。私道の片づけと、丙の電源切りは、どちらも、乙が知らない手助けです。それでも、私道は否定で、電源切りは肯定です。違いは、物理的に促進したかどうかです。乙は私道を通らず、照明の電源が切られていたことは、乙の作業を現に楽にしました。台車の貸与は、物理的には役立っていません。それでも肯定なのは、乙が知っていて、心強く思ったからです。物理的な促進は、乙が知らなくても生じます。心理的な促進は、乙が知って初めて生じます。この1本の筋が、甲と丙の、両方の結論を通しています。
完成答案
図:完成答案:第1 乙の罪責、第2 甲の罪責①問題の所在
完成答案です。1枚目は、乙の罪責と、甲の問題の所在までです。問題の所在には、台車も私道も、乙が使っていないという事実を入れています。
図:完成答案:第2 甲の罪責②規範、③あてはめ(1)私道
甲の規範と、私道のあてはめです。私道は、物理的にも心理的にも促進が無いので否定、と書いています。
図:完成答案:第2 甲の罪責③あてはめ(2)台車、結論
台車のあてはめと、甲の結論です。台車は、物理的には効かなくても、乙が心強く思ったので心理的に促進して肯定、と2つの行為を分けて書いています。
図:完成答案:第3 丙の罪責①問題の所在・規範
丙の問題の所在と、規範です。丙の規範では、甲で立てた促進の物差しを、前述のとおりとして使います。乙が知らないという事実を問題の所在に入れ、規範では、物質的幇助は正犯が知らなくても成立し、精神的幇助は知らなければ成立しない、と線の両側を書いています。
図:完成答案:第3 丙の罪責②あてはめ・結論、第4 結論
丙のあてはめと、全体の結論です。電源切りを物質的幇助と位置づけ、暗がりで誰にも見られずに積み込めた事実から物理的な促進を認め、乙が知らないことは成立を妨げない、として肯定しています。最後に、3人の罪責と、63条の減軽をまとめています。
参照条文
- 刑法62条1項
- 刑法63条
- 刑法235条