訴訟の主体①——裁判所
訴訟の主体のうち裁判所を整理する回。官署と裁判機関の2義、単独体/合議体、裁判官の階級、職員、そして公平な裁判所を守る除斥・忌避・回避までを押さえる。
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第1章 刑事訴訟法の基礎 ③/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
1. 訴訟の主体——三者と弁護人 〔短答〕
裁判を動かす主役を訴訟の主体といいます。主体は3者——裁判所・検察官・被告人です。弁護人は厳密には主体ではなく被告人の補佐・保護者ですが、欠かせない存在です。対立して戦う検察官と被告人を、とくに当事者と呼びます。
図:訴訟の主体(裁判所・検察官・被告人の三者と弁護人の位置づけ)
2. 裁判所——2つの意味と単独・合議 〔短答〕
「裁判所」という言葉には2つの意味があります。一つは官署としての裁判所——地裁や高裁という”役所”のこと。もう一つは、事件を担当する裁判機関——実際に裁く単独体や合議体です。
図:官署としての裁判所 vs 裁判機関(単独体・合議体)
裁くチームは2種類です。裁判官1人の単独体と、3人の合議体(裁判長1人+陪席2人)。重大・複雑な事件を担当するのが合議体です。
図:裁判所法26条(一人制・合議制)
条文は、死刑・無期・短期1年以上の拘禁刑などに該当する事件は合議で扱うと定めています。ただし強盗罪などは重くても単独で扱う例外があり、括弧書きの部分がそれにあたります。
3. 裁判官の階級(全体像) 〔短答〕
裁判官にも階級があります。全体像を押さえましょう。
図:裁判官の階級(最高裁・下級裁の構造)
最高裁判所は長官1人と判事14人のトップチーム。下級裁判所は現場の実働部隊で、判事・判事補・簡裁判事に分かれます。「裁判官」とひとくくりにしないのがコツです。
図:判事・判事補の要件比較表
4. 判事 と 判事補——10年の壁 〔短答〕
判事と判事補の違いは実務経験10年が境目です。
- 判事:経験10年以上のベテラン。1人で裁判ができます。
- 判事補:10年未満の若手。原則、1人では裁判できません。
図:裁判所法27条(判事補の職権の制限)
条文も「一人で裁判をすることができない」と明言しています。ただし経験5年以上なら単独可という特例判事補もあります。
5. 裁判官以外の職員 〔短答〕
裁判は裁判官だけでは回りません。3つの職員を押さえましょう。
図:裁判所の職員(書記官・事務官・調査官)
一人目は裁判所書記官。記録・調書を作る専門家で、固有の権限を持ちます。書記官が立ち会わなければ法廷を開くことができません。
図:裁判所法60条(裁判所書記官)
各裁判所に置かれ、記録や電磁的記録の作成保管を担います。そして書記官が作る公判調書には、特別な証明力があります。
図:刑事訴訟法52条(公判調書の証明力)
公判調書に記載された手続は、調書のみで証明できます。ただし、記載のない事項には及びません。
二人目は裁判所事務官。総務・会計・事務手続で裁判所を支えます。
三人目は裁判所調査官。法律や事実関係を調査して裁判官に意見を述べます。家裁が有名ですが、高裁や地裁にも配置されています。
6. 公平な裁判所——除斥・忌避・回避 〔短答〕
図:憲法37条1項(公平な裁判所)
裁判所の大前提は、憲法37条1項が定める公平な裁判所です。これを守るため、不公平な裁判官を外す3つの仕組みがあります。
誰が動くかによって除斥・忌避・回避の3つに分かれます。
図:除斥・忌避・回避の比較(誰が動くか・根拠法)
図:除斥・忌避・回避の比較表
除斥——法律が定める事由に当たれば、申立て不要で当然に外れます。裁判官が被害者や親族のとき、その事件で証人や弁護人だったとき、などが典型例です。
図:刑事訴訟法20条(除斥の原因)
忌避——当事者が「この裁判官は不公平だ」と申し立てて外す仕組みです。申立てがあると手続は一旦止まり、別の裁判官たちが不公平かどうかを審査します。
図:刑事訴訟法21条1項(忌避)
ただし、裁判を遅らせる目的が明らかな嫌がらせの忌避は簡易却下されます。このときは例外的に、文句を言われた本人も決定に関与できます。
図:刑事訴訟法24条1項(簡易却下)
回避——裁判官が自分で「まずい」と気づき、自ら退くことです。重要なひっかけポイントがあります——除斥(刑訴20条)・忌避(刑訴21条)は法律、回避は規則が根拠です。
図:刑事訴訟規則13条(回避)
短答ひっかけ
- 判事補は原則として1人で裁判できない(裁判所法27条)。ただし特例判事補(経験5年以上)は単独可。
- 回避の根拠は「法律」ではなく「刑事訴訟規則13条」。除斥・忌避は刑訴法(法律)、回避は規則——出典の格が違う。
- 公判調書の証明力(刑訴52条)は「記載された手続」に限られ、記載のない事項には及ばない。
- 合議体は「裁判官3人」だが、全員が判事とは限らない(判事補も含まれうる)。
- 忌避が申し立てられると原則として手続が停止するが、簡易却下の場合は例外的に申立てられた本人も決定に関与できる。
📝 論文の型
- 該当なし(導入回)
今日の地図(保存版)
図:まとめ地図
- 訴訟の主体は3者——裁判所・検察官・被告人。弁護人は主体ではないが不可欠。当事者=検察官と被告人。
- 「裁判所」の2義——①官署(役所としての地裁・高裁)、②裁判機関(単独体 or 合議体)。
- 合議体=裁判長1+陪席2の計3人。重大・複雑事件を担当(裁判所法26条)。
- 裁判官の階級——最高裁:長官1+判事14/下級裁:判事・判事補・簡裁判事。
- 判事 vs 判事補——境目は実務10年。判事補は原則単独不可(裁判所法27条)。特例判事補(5年以上)は例外的に単独可。
- 裁判所の職員——①書記官(調書作成・法廷立会必須)、②事務官(総務・会計)、③調査官(法律・事実の調査)。
- 公判調書の証明力(刑訴52条)——記載された手続は調書のみで証明できる。強力だが記載のない事項には及ばない。
- 公平な裁判所(憲法37条1項)を守る3制度:
- 除斥(刑訴20条)——法定事由→当然に排除・申立て不要。
- 忌避(刑訴21条)——当事者の申立て→手続停止→別の裁判官が審査。簡易却下あり(刑訴24条)。
- 回避(規則13条)——裁判官が自ら退く。根拠は規則(法律ではない)。
次回は #4「訴訟の主体②:検察官・被告人・弁護人」。検察官の客観義務と独任制、被告人の訴訟能力、弁護人の依頼権と国選弁護の根拠条文の違いを整理する。