刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#29

勾留③期間・延長と接見等禁止

刑事訴訟法の復習ノートを1ページで通して読む(この回から)→

問い:被疑者の勾留は、いつから何日続き、どう延び、どこで止まるか。勾留中に止められるのは、誰との面会か。

骨組み

  1. 1期間の全体像:勾留10日()→ 延長は通じて10日(合計)まで()→ 内乱等の事件だけ、さらに通じて5日()=最大25日。ふつうの事件の上限は20日
  2. 2起算点:勾留を請求した日から(逮捕の日・身体を拘束された日・勾留の裁判の日ではない)。勾留の裁判が請求の翌日でも、請求の日から数える。条文は検察官の釈放義務の形
  3. 3数え方(実務の取扱い):初日を算入・末日が休日でも延ばさない(時効期間と同じ扱い)。期間の一般原則(=初日不算入・=末日が休日なら算入しない)は当てない=満期が日曜でもその日のまま
  4. 4延長の要件:検察官の請求で、裁判官が「やむを得ない事由」を認めるとき。最判昭37・7・3=事件の複雑困難や証拠蒐集の遅延・困難などで、延長して更に取調べなければ起訴・不起訴を決めるのが困難な場合(判例)
  5. 5延長の範囲と手続:通じて10日の範囲なら何回でも。10日の請求に5日だけ認めてもよい。請求は書面(刑事訴訟規則151条)、勾留状と資料を出す(152条)。延長には勾留質問の定めが無い(書面で審理)。延長の裁判には準抗告できる
  6. 6内乱等の特例:刑法第二編第二章〜第四章・第八章の罪(内乱・外患・国交に関する罪・騒乱)だけ。延長された期間を更に延長=最初から25日はつけられない。通常は使われない
  7. 7鑑定留置で止まる:留置されている間、勾留は執行を停止されたものとする(・)=凍結。戻ったら続きから数える。ただし未決勾留日数の算入では勾留とみなす()
  8. 8接見等禁止とは(・):原則は弁護人以外とも法令の範囲内で面会・授受できる()。例外として接見の禁止・書類等の検閲・授受の禁止・差押え。糧食は禁止も差押えもできない。検察官の請求又は職権。被疑者・被告人のどちらの勾留にもある
  9. 9弁護人は対象外:が禁じるのはの者(弁護人・弁護人となろうとする者)以外との接見等=接見禁止中も弁護人とは立会人なく接見でき、書類・物の授受もできる。起訴前の接見指定()は別の制度
  10. 10条文の要件:逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由=勾留の理由とほぼ同じ言葉。勾留の理由があるから当然に禁止できる、ではない
  11. 11最決平31・3・13(起訴後の被告人・責任能力が争点):原々裁判(=最初の接見等禁止の裁判)が終期を第1回公判期日の終了までとし、一部解除の職権も発動されず、原決定も公判前整理手続の経過等を考慮して準抗告を棄却したという本件の経緯を踏まえ、原々裁判後の事情も考慮して判断。少なくとも鑑定を頼んだA医師については、特段の事情がない限り、接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあるとはいえず、公判準備の必要性が高い。妹らは勾留に加えて接見等を禁止すべき程度のおそれを原決定が具体的に検討した形跡が無い → 原決定取消し・差戻し(規範の文は立てていない)
  12. 12解説書の理由づけと見立て:すでに勾留されている以上、勾留では防げない程度のおそれが要る、と解説書は説明する。組織的・大規模な事件、勾留前に現実の隠滅工作がある事件は認められやすい(見立て)。面会の立会い・手紙の検査は禁止が無いときの扱い=禁止の効果ではない

色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。短答は「判例の立場」を問うので、判例と学説を混ぜない。

勾留を請求した日が1日目(初日・休日も数える) 勾留 10日 延長 通じて10日 特例 5日 請求日 10日目 20日目 25日目 208条1項 208条2項 208条の2 内乱等だけ 鑑定留置をはさむと=凍結 1〜7日目 鑑定留置の間 8日目〜 勾留は執行停止=進まない 戻った日が8日目。ゼロから数え直さない (167条の2第1項・被疑者は224条2項で準用)
期間は「起算(請求の日)→ 延長 → 停止(鑑定留置)」の3つで動く。赤い点線の特例は内乱・外患・国交に関する罪・騒乱の事件だけ(項目6)。ふつうの事件は20日が上限。

1被疑者勾留の期間の全体像条文

段階日数合計条文
勾留10日10日
延長通じて10日まで最大20日
内乱等の特例通じて5日まで最大25日
  • 期間の動き方は3つ:どこから数えるか(起算・項目2〜3)、どう延びるか(延長・項目4〜6)、いつ止まるか(停止・項目7)。
  • 特例は通常は使われない規定。ふつうの事件の上限は20日。

2起算点は「勾留を請求した日」条文

  • 言葉:被疑者=起訴前、被告人=起訴後。この回の期間・延長は起訴前の被疑者の勾留の話。
  • 流れ:逮捕 → 検察官の勾留請求 → 裁判官の勾留質問(被疑事件を告げ、陳述を聴く=・)→ 勾留状。
  • :第の規定により被疑者を勾留した事件につき、勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない。
  • 条文は「期間は10日とする」と書かず、検察官の釈放義務の形をとる。
  • 勾留質問・勾留状の発付が請求の翌日になっても、起算は請求の日のまま。ずれた1日は10日の中に食い込み、拘束が長くなって被疑者が損をすることはない。
  • 対比(過去問の正答から):被告人の勾留の期間は、公訴の提起があった日から2箇月()。1か月ではない。
候補10日の1日目になるか
逮捕された日(身体を拘束された日)ならない
勾留質問の日・勾留状が出た日(勾留の裁判の日)ならない
勾留を請求した日の翌日ならない
検察官が勾留を請求した日これが1日目

6月3日夜に逮捕、6月5日に勾留請求、勾留質問と勾留状は6月6日 → 1日目は6月5日、満期は6月14日。勾留状の日から数えて6月15日とするのは誤り。

出題勾留の裁判が請求の翌日でも、請求の日から10日以内に起訴しなければ釈放(○)

出題勾留期間は、勾留の裁判の日/身体を拘束された日/請求の翌日から数える(×)

関連被疑者の勾留は請求の日から10日、被告人の勾留は公訴提起の日から1か月(×)

関連勾留中の被疑者が起訴された場合、被告人の勾留期間は公訴の提起があった日から1か月(×)

×にされやすい形
  • 「裁判官が勾留の請求の翌日に勾留の裁判をした場合、その勾留期間は、同裁判があった日から起算する」
  • 「検察官は、被疑者が身体を拘束された日から10日以内に公訴を提起しないときは、直ちに被疑者を釈放しなければならない」
  • 「被疑者の勾留の期間は、検察官が勾留の請求をした翌日から10日間である」

3数え方:初日を算入・末日が休日でも延ばさない(実務の取扱い)条文学説判例

  • 刑事訴訟法の期間の一般原則:日で数える期間は初日を算入しない(本文)。末日が日曜・土曜・祝日・年末年始なら、その日は期間に算入しない(本文)。時効期間はどちらも例外(初日は1日と数え、休日も算入=1項但書・3項但書)。
  • 勾留の期間は、実務の取扱いとして、被疑者の利益のため、時効期間と同じく初日も休日も算入する。に勾留の例外が書かれているのではない。
  • 短答で根拠を問われたら:勾留の初日算入は実務の取扱い(の規定ではない)。判例(最決昭26・4・27)は、被告人の勾留の期間を、公訴の提起の日を起算日として計算した。
  • 初日を入れる方が満期が1日早くなり、拘束が短くなる。休日を数えなければ満期が後ろへずれる=どちらも被疑者に不利になるので使わない。
  • 解説書は、被告人の勾留について初日が算入されることを示した判例として、最決昭26・4・27 を参照に挙げる。決定は、公訴の提起の日を起算日として計算している(「初日算入」という言葉は決定に無い。事案は被告人の勾留の月単位の期間)。
  • 本件勾留の起算日は昭和二四年四月二二日(公訴の提起があつた日)であるからそのまま勾留されていれば六月二一日が勾留期間満了の日にあたる
  • 初日(4月22日)を数えなければ4月23日から数えることになり、2箇月の満了は6月22日になる。決定の「6月21日」は、初日を数えた計算。
4月1日(土曜でも)に請求1日目満期満期が日曜なら
勾留(初日・休日も算入)4月1日4月10日その日曜のまま
一般の期間(の原則)4月2日4月11日翌日以降に延びる

過去問の数え方:10月8日に請求 → 満期は10月17日。7月18日に請求 → 7月27日。5月7日に請求 → 5月16日(どれも請求の日を1日目に数える。勾留状の日や執行の時刻は関係ない)。

出題請求の日を1日目として満期を数える(○)

×にされやすい形
  • 「勾留の期間も、刑事訴訟法の原則どおり初日を算入しない」
  • 「勾留の満期が日曜日に当たるときは、翌日が満期になる」(休日も算入する=延びない)
  • 「勾留の初日算入は、に定められた例外である」(実務の取扱い)

4延長の要件:「やむを得ない事由」()条文判例

  • :裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。
  • 10日の満期には、起訴するか釈放するかを決めるのが原則。それでも捜査が足りないときの道が延長。
  • 最判昭37・7・3(第三小法廷・国家賠償請求事件)が「やむを得ない事由」の意義を示した:
  • 右の「やむを得ない事由があると認めるとき」とは、事件の複雑困難(被疑者もしくは被疑事実多数のほか、計算複雑、被疑者関係人らの供述又はその他の証拠のくいちがいが少からず、あるいは取調を必要と見込まれる関係人、証拠物等多数の場合等)、あるいは証拠蒐集の遅延若しくは困難(重要と思料される参考人の病気、旅行、所在不明もしくは鑑定等に多くの日時を要すること)等により勾留期間を延長して更に取調をするのでなければ起訴もしくは不起訴の決定をすることが困難な場合をいうものと解するのが相当である
  • この「やむを得ない事由」の存否の判断には当該事件と牽連ある他の事件との関係も相当な限度で考慮にいれることを妨げるものではない
  • 判例は事件の複雑困難を最初に挙げる=事件が複雑で捜査に時間がかかることは延長の理由になる。要るのは、それで10日では起訴・不起訴を決められないこと。
  • 解説書は判例を引かずに次の3つで整理する:①捜査を続けなければ検察官が事件を処分できない ②10日の勾留期間内に捜査を尽くせなかった(できなかった)と認められる ③延長すれば捜査の障害が取り除かれる見込みがある。理由になる例として、事案が複雑で捜査に時間がかかる・目撃者等の都合で取調べが未了・鑑定が未了を挙げる。
  • 解説書は、逮捕・勾留の制限時間を守れなかった場合のようには厳格に解されていない、とする(判例の言葉ではない)。
  • 事案:選挙違反の被疑者の供述が変転し、重要参考人とみられる者が所在不明だった。最高裁は、国家賠償法上の過失は判断の過誤が明白な場合に限るとしたうえで、その者を取り調べる必要があると考える余地があり、そう考えたのなら延長後の取調べが少なくても延長請求そのものは失当とはいえず、認めた裁判官にも過失があったとはいい難いとして、過失を認めた原判決を審理不尽・理由不備とした(原判決中、国の敗訴部分を破棄・差戻し)。
  • 過去問の正答から:傷害で勾留した後に強盗目的の疑いが生じた場合、その点の捜査のために延長することも許されないとはいえない。

共犯者が5人いて供述が互いに食い違い、裏付けに要る関係先も多いため、10日では起訴するかどうか決めきれない → 判例が挙げる「事件の複雑困難」の典型。10日のあいだ取調べをほとんどしていなかったなら、「尽くせなかった」ではなく「尽くさなかった」と見られやすく、解説書の要素②の評価が延長に不利な方向へ動く(この評価は解説書の整理による。最判昭37・7・3は、延長後の取調べが少なかったことは延長請求そのものの当否を左右しないとした)。

出題傷害罪で勾留後に強盗目的の疑いが生じても、その捜査のために勾留期間を延長することは許されない(×)

×にされやすい形
  • 「事件が複雑で捜査に時間がかかることは、やむを得ない事由の理由にならない」(判例は事件の複雑困難を例に挙げる)
  • 「延長には、上の①〜③の3つがそろうことが判例上の要件である」(3つは解説書の整理)
  • 「傷害罪で勾留した後、強盗目的の疑いが生じても、その捜査のために勾留期間を延長することは許されない」
  • 「延長は、検察官の請求が無くても裁判官が職権でできる」(検察官の請求による)

5延長の範囲と手続条文学説

  • 回数に制限は無い。合計は通じて10日まで(例:3日+4日のあとは残り3日まで)。
  • 裁判官は、請求された日数より短く延長してよい(10日の請求に5日=過去問の正答)。
  • 手続:延長の請求は書面で、やむを得ない事由と延長を求める期間を書く(刑事訴訟規則151条)。勾留状を差し出し、事由を認めるべき資料を出す(同152条)。裁判官は延長する期間と理由を勾留状に記載して検察官に交付させ、延長の裁判は交付によって効力を生じる(同153条)。
  • 延長の裁判をするとき、被疑事件を告げ陳述を聴く手続(勾留質問)を行わなければならない、という定めは無い=書面で審理する。
  • 準抗告=裁判官がした「勾留…に関する裁判」などに不服がある者が、その裁判官の所属する裁判所(簡易裁判所の裁判官なら管轄地方裁判所)に、取消し・変更を請求すること(2号)。
  • 延長の裁判は「勾留…に関する裁判」として準抗告の対象(2号)。「やむを得ない事由」が無いことを理由に、弁護人が申し立てられる(過去問の正答)。
検察官の延長請求(書面)やむを得ない事由があるか複雑困難・証拠蒐集の困難などで起訴・不起訴を決めにくい(最判昭37・7・3)延長しないいいえはい延長の合計が通じて10日以内か何回目でも、それまでの延長と合わせて数える(208条2項)超える分は延長できないいいえはい延長の裁判請求より短い日数でもよい・準抗告できる
裁判官が延長を決める順(項目4・5)。勾留質問の定めは無く、書面で判断する。1段目の言葉は判例の定義、2段目は条文。

1回目に4日、2回目に5日延長した → 3回目に請求できるのは1日まで。2日を求めると通算11日になって許されない。

出題裁判官は、やむを得ない事由があれば、1回に限り勾留期間を延長できる(×)

出題勾留期間の延長は、通じて10日を超えることができない(○)

出題10日の延長請求に5日の延長をしてよい(○)

出題勾留期間の延長の裁判をする際も、被疑事件を告げ陳述を聴く手続を行わなければならない(×)

出題延長の裁判に、やむを得ない事由が無いことを理由として準抗告できる(○)

出題弁護人は、勾留期間の延長の裁判に準抗告できる(○)

×にされやすい形
  • 「裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、1回に限り、その期間を延長することができる」
  • 「裁判官は、被疑者の勾留期間の延長をする旨の裁判をする際、被疑者に対し被疑事件を告げこれに関する陳述を聴く手続を行わなければならない」
  • 「延長の期間は、検察官が請求した日数のとおりにしなければならない」

6内乱等の特例()条文

  • :裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。
  • 対象は内乱の罪・外患の罪・国交に関する罪・騒乱の罪。延長の上乗せはこれだけ。通常は使われない規定。
  • 順序:で延長した期間のあとの、さらなる延長。10日+延長10日+特例5日=最大25日。

騒乱罪(刑法第二編第八章)の事件 → 20日のあと、さらに最大5日延ばせる。殺人事件にはこの特例が無く、上限は20日。

×にされやすい形
  • 「内乱等の事件では、最初から25日の勾留をつけることができる」
  • 「重大事件(殺人など)なら、さらに5日延長できる」(対象は内乱・外患・国交に関する罪・騒乱だけ)

7鑑定留置で期間が止まる条文

  • 鑑定留置=心神又は身体に関する鑑定のため、期間を定めて病院その他の相当な場所に留置する処分(。被疑者はで裁判官が処分)。
  • :勾留中の被告人に対し鑑定留置状が執行されたときは、被告人が留置されている間、勾留は、その執行を停止されたものとする。被疑者には後段で準用。
  • 止まるのは凍結で、リセットではない。使った日数は使ったまま、残りは残りのまま。鑑定留置が終われば、戻った日から続きを数える。
  • 鑑定留置には勾留の規定が準用される(・保釈は除く)。
  • 未決勾留日数の算入=「未決勾留の日数は、その全部又は一部を本刑に算入することができる」()。
  • 対比:未決勾留日数の算入では、鑑定留置は勾留とみなす()。勾留期間の計算では「進まない」のに、本刑への算入では「勾留扱い」。
時期勾留期間の進み方
1日目〜7日目7日分進む
鑑定留置の間(例:3か月)進まない
施設から戻った日8日目として続きから
×にされやすい形
  • 「鑑定留置から戻ったら、勾留期間は改めて1日目から数える」
  • 「鑑定留置の期間も勾留期間に含まれるので、3か月の留置の間に勾留期間は満了する」
  • 「鑑定留置の日数は、未決勾留日数として本刑に算入されることはない」(勾留とみなす)

8接見等禁止とは(・)条文

  • 原則:勾留されている被告人は、に規定する者以外の者とも、法令の範囲内で、接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる()。家族・友人とも会える。
  • :裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。
  • の主語は「裁判所」、対象は「被告人」。が勾留の請求を受けた裁判官に裁判所・裁判長と同一の権限を与えるので、起訴前の被疑者にも使う。被疑者の勾留なら裁判官が、検察官の請求又は職権で決める。
  • だから接見等の制限は、被疑者の勾留にも被告人の勾留にもある。
勾留中の人の接見等を禁止するか(検察官の請求又は職権)相手は弁護人・弁護人となろうとする者か39条1項に規定する者禁止できない立会人なく接見・書類や物の授受はいいいえ疑うに足りる相当な理由があるか逃亡し又は罪証を隠滅すると(81条)禁止できない80条の原則どおりいいえはい糧食の授受か81条但書禁止・差押えはできないはいいいえ接見の禁止・書類等の検閲・授受の禁止・差押えができる81条(被疑者は207条1項で)
81条の読み方(項目8〜10)。どの枠も条文の言葉。罪証隠滅について最高裁の決定が何を見たかは項目11。

接見等禁止の下でも、差し入れられた食べ物の受け渡しは禁じられず、差押えもできない。本や手紙は、授受を禁止したり検閲したりできる。

出題弁護人等以外との接見の禁止、糧食を除く物の授受の禁止・差押え(○)

出題検察官の請求がなくても、裁判官が職権でできる(○)

出題弁護人等以外の者との接見等の制限は、被疑者・被告人のどちらの勾留にもある(○)

×にされやすい形
  • 「接見等禁止は、検察官の請求がなければすることができない」
  • 「接見等禁止は、被告人の勾留にだけ認められる」
  • 「接見等禁止の下では、食べ物の差し入れも禁止し、差し押さえることができる」

9弁護人との接見等は対象外条文

  • :身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。
  • は「に規定する者以外の者」との接見等を禁じる規定=弁護人・弁護人となろうとする者は最初から除かれている。どんな事件でも、で弁護人との接見等を禁止することはできない。
  • 接見禁止中の弁護人の接見も立会人なし。物の授受もできる(意思や情報の伝達に限らない)。
  • この権利(接見交通権)は、憲法の保障(の弁護人依頼権)に由来する、弁護人の重要な固有権とされる(過去問の肢・判例に照らして○)。はこれを害さないよう、弁護人を対象から外している。
  • 別の制度:起訴前は、捜査のため必要があるとき、検察官・検察事務官・司法警察職員が弁護人との接見の日時・場所・時間を指定できる()。これは接見を禁じるものではなく、とは別の仕組み=「接見禁止中も弁護人と会える」と「起訴前は接見指定がありうる」は両立する。
相手の接見等禁止会うときの立会い
弁護人・弁護人となろうとする者()対象外(禁止できない)なし(物の授受もできる)
親族・友人など、それ以外の者対象(面会・授受を禁止できる)禁止が無いときは施設の職員が立ち会う(項目12)

接見等禁止中でも、家族の依頼で弁護人になろうとして来た弁護士とは立会いなしで会える。同じ日に来た父親とは会えない(一部解除が無いかぎり)。

出題罪証隠滅・逃亡のおそれがあれば、により勾留中の被告人・被疑者と弁護人との接見を禁じられる(×)

出題接見禁止の裁判があると、弁護人も被疑者と接見できない(×)

出題の接見等禁止と接見指定を受けていても、弁護人の接見には法令上の根拠がある(○)

出題接見禁止の裁判を受けた被告人と弁護人との接見には、立会人が付く(×)

出題接見交通権は憲法の保障に由来し、弁護人の重要な固有権(○)

出題弁護人は被疑者と立会人なく接見できるが、物の授受はできない(×)

×にされやすい形
  • 「裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、勾留されている被告人と弁護人との接見を禁じることができる」
  • 「接見禁止決定がされている場合は、弁護人も被疑者と接見できない」
  • 「接見禁止の裁判を受けた被告人と弁護人の接見は、立会人が付いた接見である」
  • 「弁護人は、被疑者と物の授受をすることはできない」

10条文の要件:勾留の理由と「ほぼ同じ」言葉条文

  • の要件=「逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」。
  • 勾留の理由()は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由(嫌疑)を前提に、2号「罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由」・3号「逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由」を置く。とは構造も字句も同一ではない=ほぼ同じ言葉。
  • 被疑者はすでに逃亡・罪証隠滅のおそれで勾留されている。だから「勾留の理由(罪証隠滅のおそれ)が認められたのだから、接見等禁止も当然に認められる」とはならない(何を見るかは項目11・12)。
×にされやすい形
  • 「勾留の理由として罪証隠滅のおそれが認められた以上、接見等禁止も当然に認められる」

11最決平31・3・13(接見等禁止の当否)判例

  • 言葉:原々裁判=最初の接見等禁止の裁判(起訴の日・終期は第1回公判期日の終了まで)。原決定=それへの準抗告を棄却した決定。最高裁が審査したのは原決定(特別抗告=不服申立てのできない決定に対し、憲法違反・判例違反を理由に最高裁へする抗告=)。
  1. 原々裁判:起訴の日、検察官の請求で接見等禁止(終期=第1回公判期日が終了する日まで)
  2. 弁護人がA医師・妹について一部解除を申請 → 職権は発動されず
  3. 準抗告 → 原決定=棄却(公判前整理手続の経過等も考慮)
  4. 特別抗告
  5. 最高裁:原決定を取り消し、地方裁判所に差し戻し
  • 事案:起訴後の被告人(傷害致死・父親を包丁で刺した)。起訴の日に、検察官の請求で、第1回公判期日が終了する日までの接見等禁止。公判前整理手続で、主な争点は責任能力の有無・程度に絞られた。
  • 弁護人は、責任能力の鑑定を依頼したA医師と、情状の証人となる被告人の妹について、接見等禁止の一部解除(特定の人だけ禁止を外すこと)を申請した(その後の流れは上の図)。
  • 原決定の言い分(最高裁の決定が引くもの):
  • 被告人を勾留することのみによってはこの罪証隠滅のおそれを防止することは困難であり
  • 最高裁(抗告の趣意はの抗告理由に当たらないとし、職権で判断):
  • 原々裁判が、公判前整理手続に付される本件について、接見等禁止の終期を第1回公判期日が終了する日までの間と定めたことは、公判前整理手続における争点及び証拠の整理等により、罪証隠滅の対象や具体的なおそれの有無、程度が変動し得るにもかかわらず、接見等禁止を長期間にわたり継続させかねないものである。
  • このような原々裁判について、平成31年2月に至り、接見等禁止の一部解除の申請について職権が発動されず、原決定が公判前整理手続の経過等を考慮した上で本件準抗告を棄却したという経緯を踏まえると、当審においても、前記公判前整理手続の経過等原々裁判後の事情をも考慮して原決定の当否を判断するのが相当である。
  • 少なくとも、A医師については、特段の事情がない限り、被告人が接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあるとはいえず、また、連日的な集中審理の公判に向けた準備を行う必要性が高いといえる。
  • さらに、被告人の妹ら他の関係者についても、勾留に加えて接見等を禁止すべき程度の罪証隠滅のおそれの有無に関し、原決定が具体的に検討した形跡は見当たらない。
  • 原決定には、刑訴法81条、426条の解釈適用を誤った違法があり
  • 結論:原決定を取り消し、地方裁判所に差し戻した。
  • 読み方:最高裁は「…の場合に限って禁止できる」という規範の文を立てていない。「実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれ」はA医師について否定した当てはめの言葉、「勾留に加えて接見等を禁止すべき程度」は妹らについて検討が欠けていると指摘した言葉。相手ごとに判断が分かれている。
  • 決定が扱ったのは罪証隠滅のおそれだけ(逃亡には触れていない)。公判準備(防御)の必要性も並べて判断している。
相手最高裁が述べたこと
A医師(鑑定を依頼した医師)少なくともA医師については、特段の事情がない限り、実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあるとはいえない+公判準備の必要性が高い
妹ら他の関係者おそれが無いとは言っていない。勾留に加えて禁止すべき程度かを、原決定が具体的に検討した形跡が無い
×にされやすい形
  • 「最高裁は、接見等禁止は勾留によっては防止できないほど高度な逃亡・罪証隠滅のおそれがある場合に限られる、と判示した」(規範の文は無い。逃亡も扱っていない。「勾留することのみでは防止困難」は原決定の言葉)
  • 「最高裁は、妹らとの接見について罪証隠滅のおそれが無いと判断した」(検討が欠けていると指摘しただけ)
  • 「この決定は、原々裁判の時点の事情だけで原決定の当否を判断した」(本件の経緯を踏まえ、原々裁判後の事情も考慮した)
  • 「この決定は、起訴前の被疑者の接見等禁止についての判断である」(事案は起訴後の被告人)

12解説書の理由づけ・見立てと、立会い・検査学説

  • 解説書の説明:被疑者はすでに逃亡・罪証隠滅のおそれを理由に勾留されているのだから、勾留によっては防止できないほどのおそれがある場合に限って禁止できる、と考えられている。これは解説書の理由づけで、最高裁の決定の言葉ではない。
  • 解説書の見立て(「可能な場合が多いであろう」):暴力団事件のような組織的・大規模な事案や、勾留前に現実に罪証隠滅工作をしていて、接見等を許せば同様の工作を続けると認められる事案は、禁止が認められやすい。最高裁の事案(責任能力が争点の家族内の事件)とは別の話。
  • 面会の立会い・手紙の検査は、接見等禁止の効果ではない。禁止が無いときの一般の扱い(留置施設では、弁護人等以外との面会に職員が立ち会い=刑事収容施設法218条1項、信書を検査する=同222条1項)。禁止がかかれば、弁護人以外との面会そのものができない。
  • 立ち会う職員は事件をよく知らず、隠語や遠回しな言い方は見抜きにくい。だから実務は、禁止が必要かを判断するとき、立会い・検査があることを重視せず、事案の内容を重視する。
  • 実務の救済:家族との面会禁止は苦痛が大きいので、準抗告のほか、一部解除(両親との面会だけ・配偶者からの手紙だけ解除するなど)の職権発動を促す申立てが行われる。
主語言っていること
条文()逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由
最高裁(平31)本件の経緯を踏まえ、原々裁判後の事情も考慮/A医師=特段の事情がない限り、実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあるとはいえない/妹ら=勾留に加えて禁止すべき程度かの具体的検討が無い
原決定(取り消された)勾留することのみでは罪証隠滅のおそれを防止することは困難
解説書勾留によっては防止できないほどのおそれに限る(理由づけ)/組織的・大規模・現実の工作なら認められやすい(見立て)
  • 解説書の言葉と原決定の言葉は似ているが、切り分ける:原決定は「勾留することのみによっては…防止することは困難」と述べて禁止を維持したが、最高裁は、少なくともA医師については、特段の事情がない限り現実的なおそれがあるとはいえず公判準備の必要性が高いとし、妹らについては「勾留に加えて接見等を禁止すべき程度」のおそれを原決定が具体的に検討した形跡が無いとして、81条・426条の解釈適用の誤りを理由に原決定を取り消した。
  • まとめ(勾留の理由がある人の接見等禁止に何が要るか):
    ① 条文()=勾留の理由とほぼ同じ言葉(逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由)。
    ② 判例(平31・本件)=相手ごとに分けた。A医師は特段の事情がない限り現実的なおそれなし(公判準備の必要性も並べた)。妹らは「勾留に加えて接見等を禁止すべき程度」のおそれを具体的に検討するよう求めた。本件の経緯を踏まえ、原々裁判後の事情も見た。
    ③ 「勾留によっては防止できないほど高度なおそれに限る」という規範の形は解説書の言葉。判例は規範の文を立てず、「勾留に加えて…禁止すべき程度」を当てはめの物差しに使った。

組織的な特殊詐欺で、逮捕前から被疑者が受け子に口裏合わせを指示していた形跡がある → 禁止は認められやすい方向(解説書の見立て)。

×にされやすい形
  • 「接見等禁止になると、面会に職員が立ち会い、手紙が検査されるようになる」(立会い・検査は禁止が無いときの扱い。禁止がかかれば会えない)
  • 「面会には職員が立ち会うので、接見等禁止が必要になることはない」(実務は事案の内容を重視する)

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