刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#29

勾留③期間の数え方と延長、接見等禁止

⬇ 印刷用PDF

第2章 捜査 ⑯/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

その1日目は、いつですか

最大20日という数字の下にいつから数えるのかという問いを置いた導入板 図:最大20日という数字の下にいつから数えるのかという問いを置いた導入板

前回の終わりに、勾留にも期限がある、というところで終わりました。今日は、そのうち期間のほうです。解放の道具は、次の回で扱います。では1つ質問です。その1日目は、いつですか。多くの人は逮捕された日だと答えます。でも、違います。勾留状が出た日、というのも違います。起算日の正解は、検察官が勾留を請求した日です。今日は、起算・延長・停止、この3つの動きと、勾留中にもう1段階かかる接見等禁止を見ます。

おさらい——10日、延長10日

前に見た10日と延長10日で最大20日という数字を呼び戻す板 図:前に見た10日と延長10日で最大20日という数字を呼び戻す板

まず、前に見た数字だけ呼び戻します。条文は、208条1項と2項でした。今日は、中身、つまり「いつから」と「なぜ延びるか」を詰めます。

起算点——逮捕の日でも、勾留状の日でもない

逮捕の日勾留質問の日勾留状発付の日を並べその中で勾留請求の日だけが起算点になるという対比板

208条1項を見てください。「勾留の請求をした日から十日以内に公訴を提起しないときは、検察官は、直ちに被疑者を釈放しなければならない」と書かれています。勾留の請求をした日、だけです。多くはそうですが、翌日にずれることもあります。起算日はずれません。あくまで勾留を請求した日です。勾留質問や勾留状の発付が翌日になっても、その1日は10日間の中にそのまま食い込みます。

数え方——初日算入

4月1日に勾留請求し初日を含めて数えると4月10日が満期になるという具体的な日付のタイムライン板

起算点がわかったら、次は数え方です。一般に、期間を数えるときは、最初の1日を数えに入れない、というのが原則です。例えば、何かの締切が「今日から10日後」なら、今日は数えずに、明日から10日数えます。勾留は、この原則の例外です。請求したその日、つまり初日も、10日の中に数えます。初日算入を明らかにした判例があります。被告人の勾留について、初日を算入すると判断した最高裁の決定です。実際に数えてみましょう。4月1日に勾留を請求したとします。初日を算入するので、4月1日を1日目として数えます。4月1日、2日、3日、と数えていくと、10日目は4月10日です。4月10日が満期になります。

その場合は、4月2日を1日目として数え直すので、満期が4月11日、1日長くなります。1日でも拘束が長くなれば、それだけ被疑者の不利益になります。だから、初日も入れて、短いほうに数えるんです。

延長——「やむを得ない事由」だけが延ばす

208条2項の全文カードでやむを得ない事由の3要素を強調する板 図:208条2項の全文カードでやむを得ない事由の3要素を強調する板

満期の日に起訴か釈放を決めるのが原則です。ただ、延長する道もあります。

条文刑事訴訟法第208条第2項

刑事訴訟法第208条第2項 裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。

ただ「事件が複雑だから」だけでは足りません。中身は3つに分けられます。1つ目、捜査を続けなければ、事件の処分が決まらないこと。2つ目、10日では、捜査が終わらなかったと言えること。3つ目、延長すれば、その支障が消える見込みがあること。例えば、関係者が多くて、10日のうちに全員の取調べが終わらなかった。目撃者の都合が合わず、まだ話を聞けていない。鑑定の結果がまだ出ていない。どれも、もう少し調べれば処分を決められる、という事情です。回数に制限はありません。ただ、208条2項の最後をもう一度見てください。

何回に分けても、合計は10日までです。例えば最初に7日、次に3日、なら合計10日で使い切りです。勾留質問はしません。延長は、書面での審理で判断されます。4月10日の満期が、延長10日を使い切ると4月20日まで延びる、ということです。

さらに5日——内乱等の特例

208条の2の全文カードで20日にさらに5日を足して最大25日になるという例外の板

原則はそうですが、もう1つだけ例外があります。

条文刑事訴訟法第208条の2

刑事訴訟法第208条の2 裁判官は、刑法第二編第二章乃至第四章又は第八章の罪にあたる事件については、検察官の請求により、前条第二項の規定により延長された期間を更に延長することができる。この期間の延長は、通じて五日を超えることができない。

内乱の罪、外患の罪、国交に関する罪、それに騒乱の罪です。日常の事件では、まず出てきません。この場合だけ、さらに5日、延長できます。4月25日まで、延びます。10日、延長10日、特例5日、この積み重ねが、最大25日という数字の内訳です。

期間が止まる場面——鑑定留置

勾留7日目に鑑定留置を挟むと期間が凍結し戻った日から続きの日数として再開するという図解板

数えるのを止める場面はあります。鑑定留置です。被疑者の精神状態などを調べるために、病院などの施設に留め置く手続です。勾留中の被疑者を鑑定留置すると、その間は勾留の執行が停止したものとみなされます。リセットのようにゼロに戻るわけではなく、凍結です。例えば、勾留7日目に鑑定留置に入ったとします。鑑定に3か月かかっても、その間、勾留期間は進みません。戻ってきても数え直しません。戻ってきた日から、8日目として続きが再開します。進まなかっただけで、消えてはいません。

思い出してください——理由と必要性

前に見た勾留の理由と勾留の必要性を1問で思い出させる板 図:前に見た勾留の理由と勾留の必要性を1問で思い出させる板

ここまでで、期間の話は一区切りです。ここから、勾留中にもう1段階かかる制限に移ります。どちらにも、逃亡・罪証隠滅のおそれという言葉が絡みます。「理由」は、罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があって、そのおそれがあるかどうか。「必要性」は、勾留してまでそれを防ぐ必要があるか、という判断でした。今日の後半は、このおそれの中身をもう一段詰めないと使えない制限の話です。

接見等禁止——止まるのは、誰との面会か

81条の全文カードで弁護人以外の者との接見という対象を強調する板 図:81条の全文カードで弁護人以外の者との接見という対象を強調する板

接見等禁止と呼びます。

条文刑事訴訟法第81条(207条1項により被疑者勾留に準用)

刑事訴訟法第81条 裁判所は、逃亡し又は罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるときは、検察官の請求により又は職権で、勾留されている被告人と第三十九条第一項に規定する者以外の者との接見を禁じ、又はこれと授受すべき書類その他の物を検閲し、その授受を禁じ、若しくはこれを差し押えることができる。但し、糧食の授受を禁じ、又はこれを差し押えることはできない。

前々回に見た207条1項、覚えていますか。前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は、その処分に関し裁判所又は裁判長と同一の権限を有する、という条文ですね。起訴前の裁判官にも、同じ権限を与えています。この仕組みを、授権と呼びましたね。だから、被告人を主語にしたこの81条も、被疑者の勾留にも使えます。そこが、今日いちばん強く持って帰ってほしい部分です。

条文刑事訴訟法第39条第1項

刑事訴訟法第39条第1項 身体の拘束を受けている被告人又は被疑者は、弁護人又は弁護人を選任することができる者の依頼により弁護人となろうとする者(弁護士でない者にあつては、第三十一条第二項の許可があつた後に限る。)と立会人なくして接見し、又は書類若しくは物の授受をすることができる。

弁護人、または弁護人になろうとする者は、81条の対象から最初から外れています。39条1項は、逮捕後の手続の回で見た、立会人なしで会える条文でした。この条文が保障する、弁護人と会う権利を、接見交通権と呼びます。この権利は、弁護人を頼めることを書いた、あの憲法34条が保障する弁護人依頼権に由来するからです。81条が弁護人を対象から外しているのは、この権利を害さないためです。止まるのは、親族や友人といった、弁護人以外の人との面会や、物の受け渡しです。その誤解が、今日いちばん多い引っかかりです。弁護人だけは、どんな事件でも、接見等禁止の対象外です。

なぜ、そこまで高いおそれが必要か

接見等禁止の規範カードで勾留に加えて接見等を禁止すべき程度の罪証隠滅のおそれという文言を強調する板

条文の文言だけを読むと、勾留の理由と同じに見えます。ただ、判例はもう少し絞りをかけています。

論文で書く規範:接見等禁止の限界——「勾留に加えて」必要な罪証隠滅のおそれ 接見等禁止が許されるのは、勾留に加えて接見等を禁止すべき程度の罪証隠滅のおそれがあり、接見等により実効的な罪証隠滅に及ぶ現実的なおそれがあると具体的な事情から認められる場合に限られる (最高裁平成31年3月13日決定(第三小法廷))

81条の要件は、勾留の理由と同じ文言です。でも、判例は、それだけでは足りないと言っています。面会や手紙のやり取りを通じて、実際に罪証隠滅につながる現実的なおそれがあるかどうかです。それを、事案の具体的な事情から見ないといけません。実際に、面会や手紙でどんな工作ができてしまうかを具体的に見る必要があります。例えば、対立する組織どうしの事件で、首謀者と見られる被告人が勾留された場合を考えてください。面会で指示を伝えて、供述した仲間に圧力をかける、といったことが起こり得ます。そういう組織性や、事案の大規模さ、実際に工作が行われていないか、といった事情を具体的に見て、現実的なおそれがあるかを判断します。

検察官の請求、または裁判官の職権で、裁判官が決定します。

決定が出たあとの実際

面会に施設職員が立会い手紙に検査が入るが実務では事案の内容が重視されるという運用板

弁護人以外との面会には、施設の職員が立ち会います。手紙のやり取りにも、検査が入ります。隠語も見抜かれると思われがちですが、立会いや検査をする職員は、事件の中身に詳しいわけではありません。だからこそ、実務では、立会いや検査があるかどうか自体よりも、事案の内容、組織性や大規模さ、実際の工作の有無が重視されます。

今日持ち帰ること・次回への橋

起算延長停止という3つの動きと接見等禁止は弁護人以外が対象という今日のまとめ板 図:起算延長停止という3つの動きと接見等禁止は弁護人以外が対象という今日のまとめ板

今日の内容を振り返ります。1つ目。勾留10日、延長10日の起算点は、検察官が勾留を請求した日です。数え方は、初日算入。4月1日請求なら、4月10日が満期です。2つ目。延長は、「やむを得ない事由」、つまり、捜査を続けないと処分できず、10日では尽くせず、延長すれば障害が除かれる見込みがある、この3つがそろうときだけ認められます。合計10日まで、内乱等の特例では、さらに5日、最大25日です。3つ目。鑑定留置を挟むと、勾留期間は進まず凍結され、戻った日から続きが再開します。4つ目。接見等禁止は、勾留に加えて罪証隠滅の現実的なおそれがあるときに、弁護人以外との面会や物の受け渡しを止める処分です。弁護人との接見は、どんな事件でも対象外です。

請求の日から数えて、最大20日、特例で25日。その間、接見等禁止がかかることもある。ここまでが、拘束が「続く」側の話です。次の回で扱います。起訴前に釈放される道具、そして保釈のような、拘束から出るためのしくみを見ていきます。

参照条文

  • 刑事訴訟法第208条第2項
  • 刑事訴訟法第208条の2
  • 刑事訴訟法第81条(207条1項により被疑者勾留に準用)
  • 刑事訴訟法第39条第1項

刑事訴訟法 全体ロードマップへ →