合意制度と刑事免責
問い:話すと自分が損をする人から、どうやって供述を得るのか。合意制度と刑事免責は、何が違うのか。
骨組み
- 1導入の理由(解説書):組織犯罪の上位者の関与には内部者の供述が要るのに、手段は取調べだけ。録音・録画と被疑者国選の拡大で供述が得にくくなることを見越して、平成28年改正で2つの制度。取調べで被疑者は供述を拒める()
- 2合意の中身():被疑者・被告人が他人の刑事事件について真実の供述・証拠の提出などで協力 ⇔ 検察官が不起訴・特定の訴因罰条・求刑の意見など。捜査・公判協力型(自己負罪型ではない)。根拠=協力を「犯罪後の情況」()として訴追裁量で考える(解説書)
- 3対象犯罪():特定犯罪=一定の財政経済犯罪・薬物銃器犯罪(+それに係る犯人蔵匿・証拠隠滅・証人等威迫)。死刑・無期拘禁刑に当たる罪は除く。自分の事件も他人の事件も特定犯罪
- 4合意・協議の手続(〜):合意には弁護人の同意・3者連署の合意内容書面。協議は3者が原則(異議が無ければ一部を弁護人のみと)=検察官と本人だけの協議は不可。不成立なら協議での「供述」は証拠にできない
- 5履行の確保:検察官が不起訴の合意等に反して起訴 → 公訴棄却の判決()/検察官の違反 → 協議の供述・合意に基づく証拠は使えない。ただし、その被告人の事件はその被告人、それ以外の者の事件はその者に異議が無ければ使える()/本人の虚偽供述等 → 5年以下の拘禁刑()
- 6巻き込みの危険と3つの歯止め:虚偽の供述で無関係の第三者を巻き込むおそれ → ①弁護人の関与 ②虚偽供述等の罪(両方の裁判確定前の自白で減免)③合意内容書面の取調べ請求義務(他人の公判でも)
- 7刑事免責の手続(・):請求は検察官だけ(尋問前にあらかじめ/証言を拒んだ後)。裁判所は除外事由(尋問事項に自己負罪の事項が含まれないことが明らか等)に当たる場合を除き決定を「するものとする」。対象犯罪の限定なし・交渉の要素なし
- 8刑事免責の効果:証人はにかかわらず証言を拒めない/供述とそれに基づいて得られた証拠は、証人の刑事事件で不利益な証拠にできない(証言拒絶罪・偽証罪の事件を除く)=罪そのものは消えない。典型は共犯者を証人にする場面(解説書。判旨も「共犯等の関係にある者のうちの一部の者」に付与する制度と定義)
- 9明文の無い刑事免責(最大判平7・2・22):憲法が導入を否定しているとまでは解されない。採用するなら対象範囲・手続要件・効果等を明文で。刑訴法に規定が無い → 免責を付与して得た供述は事実認定の証拠にできない(嘱託証人尋問調書の証拠能力を否定・上告は棄却)
| 合意制度 | 刑事免責 | |
|---|---|---|
| 仕組み | 検察官と被疑者・被告人の合意(交渉・取引) | 検察官の請求で裁判所が決定(一方的に付与・交渉の要素なし) |
| 供述は | 合意に基づく協力 | の証言拒絶権を失わせて強制 |
| 得るもの | 処分の軽減(不起訴・求刑の意見など) | 供述と派生証拠を自分の事件で不利益に使われない |
| 対象犯罪 | 特定犯罪だけ(死刑・無期拘禁刑に当たる罪を除く) | 限定なし |
| 弁護人 | 合意に同意が要る・協議に加わる | — |
| 嘘をついたら | 捜査機関への虚偽供述等=(法廷での偽証は) | その尋問での偽証=(免責の外) |
色の札は出どころ:条文 判例 学説(同じ色の 解説書 は、学説の紹介ではなく解説書の著者自身の説明)。条文番号は押すと条文、丸い札(出題)は押すと過去問の肢と正答が出ます。
2つの制度は、条文の主体の書き方は違う(合意=被疑者・被告人/免責=証人)が、両方に当たる人(自分も被告人で、分離された共犯者の公判に証人として呼ばれる人)がいるので、見分ける軸にはならない。証言を拒める人は、自分が訴追・有罪になるおそれのある人=自分の処分を恐れる人。同じ共犯者に、合意制度も刑事免責も問題になりうる(項目8)。違いは、交渉・取引か裁判所が一方的に与えて強制するか、対象犯罪の限定があるか。
1導入の理由:取調べ頼みの限界解説書条文
- 組織的な犯罪で上位者(首謀者)の関与を明らかにするには、組織の内部者の供述が欠かせない。ところが、供述を得る手段は取調べしか無かった。
- 取調べで強いられる範囲は限られる:逮捕・勾留されていない被疑者は、出頭を拒み、出頭後いつでも退去できる(ただし書)。逮捕・勾留されている被疑者に出頭・滞留の義務があるかは争いがある(実務はただし書の反対解釈で肯定)。いずれにせよ供述は拒める(取調べの前に、自己の意思に反して供述をする必要がない旨を告げる=)。
- 平成28年改正は、取調べの録音・録画と、被疑者国選弁護の勾留事件全部への拡大を入れた。解説書は、これで捜査機関が被疑者から供述を得にくくなることを見越して、合意制度と刑事免責が導入されたと説明する(取調べに過度に頼る捜査から、適正で多様な証拠収集の方法へ)。
- 「出頭する義務があるので、逮捕・勾留中の被疑者は供述も拒めない」(出頭と供述は別。出頭の義務を認める実務の立場でも供述は拒める)
2合意の中身:他人の事件への協力と、検察官の処分条文解説書
- 柱書:検察官は、特定犯罪に係る事件の被疑者・被告人が、特定犯罪に係る他人の刑事事件について1号の行為をすることで得られる証拠の重要性、関係する犯罪の軽重・情状、関係する犯罪の関連性の程度その他の事情を考えて必要と認めるときは、被疑者・被告人との間で合意ができる。
- 被疑者・被告人がすること(1号):他人の刑事事件について イ 取調べで真実の供述 ロ 証人として尋問を受けるときに真実の供述 ハ 証拠の提出その他の必要な協力。
- 検察官がすること(2号):イ 公訴を提起しない ロ 公訴を取り消す ハ 特定の訴因・罰条で起訴・維持 ニ 訴因・罰条の追加・撤回・変更の請求 ホ 論告で特定の刑を科すべき旨の意見 ヘ 即決裁判手続の申立て ト 略式命令の請求。
- 合意の主体=検察官と被疑者・被告人。法人も、両罰規定で被疑者・被告人になれば主体になれる(解説書)。
- 捜査・公判協力型:条文のどこにも「自分の罪を認めれば」とは無い。自分の罪を認めることを合意する自己負罪型は採らなかった。理由(解説書の紹介)=上位者の検挙に役立たず、いわゆる「ごね得」を招いて真相解明をかえって難しくするおそれ。
- 関係する犯罪の関連性は考慮要素。関連が無ければ合意できないわけではないが、全く関連の無い事件は趣旨から考えにくく、通常は共犯事件などを想定(解説書)。
- 理論的根拠(解説書):検察官は「犯罪後の情況」も考えて起訴しないことができる()。他人の事件の解明への協力をこれとして有利に考えるのも訴追裁量の範囲内。
被疑者が「自分の横領を全部認めるから起訴を見送ってほしい」と申し出ても、他人の事件への協力が無ければ合意制度は使えない(起訴猶予にするかは通常の訴追裁量の問題)。
- 「被疑者が自分の罪を認めれば、検察官はその見返りに不起訴の合意ができる」(他人の刑事事件への協力が中身)
- 「合意の内容は、不起訴にすることに限られる」(求刑の意見・即決裁判・略式命令なども)
3対象犯罪:特定犯罪条文解説書
- :「特定犯罪」=次の罪(死刑又は無期拘禁刑に当たるものを除く)。
財政経済犯罪=刑法の詐欺・恐喝・横領・背任、文書偽造、贈収賄など(1号)、組織的犯罪処罰法の一部の罪(2号)、租税・独占禁止法・金融商品取引法の罪その他政令で定める財政経済関係犯罪(3号)。
薬物銃器犯罪=爆発物取締罰則・覚醒剤取締法・麻薬及び向精神薬取締法・銃砲刀剣類所持等取締法などの罪(4号)。
これらを本犯とする犯人蔵匿・証拠隠滅・証人等威迫など(5号)。 - 死刑・無期拘禁刑に当たる罪を除く理由(解説書):生命・身体に対する罪や極めて重大な罪を対象にすることは、まだ国民の納得が得られないと考えられたため。
- 柱書は「特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人」が「特定犯罪に係る他人の刑事事件」について協力する形=他人の事件も特定犯罪でなければならない。
覚醒剤を営利目的で輸入した者は、法定刑に無期拘禁刑を含むので、同じ薬物犯罪でも合意の対象から外れる。営利目的の無い単純輸入(1年以上の有期拘禁刑)なら対象になる。
- 「合意制度は、すべての犯罪について利用できる」(特定犯罪だけ)
- 「重大な犯罪ほど解明の必要が大きいので、死刑・無期に当たる罪も対象になる」(除かれる)
- 除外の理由を「処分の軽減では釣り合わないから」とする形(解説書の理由は国民の納得)
4合意・協議の手続:弁護人が必ず入る条文解説書
- 合意には弁護人の同意が要る()。合意は検察官・被疑者または被告人・弁護人が連署した書面で内容を明らかにしてする(同条2項)=合意内容書面(要式行為)。
- 協議は検察官と被疑者・被告人及び弁護人との間で行う(本文)。被疑者・被告人と弁護人に異議がないときは、協議の一部を弁護人のみとの間で行える(ただし書)。検察官と被疑者・被告人の2者だけの協議は一切できない(解説書)。
- 検察官は協議で、被疑者・被告人に他人の刑事事件について供述を求めることができる。その際、供述をする必要がない旨を告げる(がを準用)。取調べと違い、弁護人が同席する。
- 合意が成立しなかったときは、協議でした供述を証拠にできない()。ただし協議での行為が犯人蔵匿・証拠隠滅・虚偽告訴等の罪に当たるとき、その罪の事件では使える(同条3項)。
- 条文は「供述」とだけ書く。派生証拠を明記した(「並びにこれらに基づいて得られた証拠」)や1号(「これに基づいて得られた証拠」)とは書き分けられている。この書き分けから、協議の供述をきっかけに得た証拠まで使えなくなるとは当然には言えない。
検察官が弁護人を外して被疑者と2人だけで条件を話し合うことはできない。逆に、被疑者と弁護人が異議を述べなければ、細かい条件の詰めを検察官と弁護人だけで行える。
- 「被疑者に異議がなければ、検察官は弁護人を交えずに被疑者と協議できる」(弁護人のみとの一部協議ができるだけ)
- 「合意は口頭でも成立する」(3者連署の書面)
- 「協議が不成立に終わったら、協議での供述は一切証拠にできない」(の例外がある:協議での行為が犯人蔵匿・証拠隠滅・虚偽告訴等の罪に当たるとき、その罪の事件では使える)
5履行の確保:違反した側ごとの効果条文
| 違反 | 効果 | 条文 |
|---|---|---|
| 検察官が不起訴などの合意に反して起訴した | 判決で公訴棄却(中身を審理しない)。訴因・罰条を維持する合意に反した訴因・罰条の追加・変更の請求は、裁判所が許してはならない | ・ |
| 検察官が合意に違反した | 協議での供述と、合意に基づく行為で得られた証拠は証拠にできない。ただし、当該被告人の刑事事件では当該被告人に、当該被告人以外の者の刑事事件ではその者に異議が無ければ使える。1項の文言は「検察官が…合意に違反したとき」全般なので、1行目(合意に反する起訴)の場面とも重なりうる | ・ |
| 被疑者・被告人が合意に反して捜査機関に虚偽の供述・偽造変造の証拠 | 5年以下の拘禁刑。他人の事件と自分の事件の両方の裁判が確定する前に自白すれば、減軽・免除できる | ・ |
| 相手方の違反(どちらでも) | 合意から離脱できる。理由を書いた書面で告知(違反のほかにも離脱の事由がある) | ・ |
検察官が合意に違反した後でも、協力した被告人自身が自分の裁判でその証拠を使うことに異議を述べなければ、その裁判では使える。
- 「検察官が合意に違反したら、協力で得られた証拠は、被告人に異議が無くても証拠にできない」
- 「不起訴の合意に反して起訴されても、裁判所は実体の審理を進め、量刑で考慮すれば足りる」(公訴棄却の判決)
- 「虚偽供述等の罪は、自分の事件の裁判が確定する前に自白すれば減免される」(他人の事件の裁判の確定前でもあることが要る)
6巻き込みの危険と3つの歯止め条文解説書
- 懸念:処分を軽くしてほしい被疑者・被告人が、虚偽の供述で無関係の第三者を巻き込むおそれ(巻き込みの危険)。
- ①弁護人の関与:合意への同意()・協議への参加()。
- ②虚偽供述等の罪():自白による減免は、一度嘘をついた後でも真実を話す方向に動機づける政策的な規定(解説書)。対象は検察官・検察事務官・司法警察職員に対する虚偽供述等=宣誓した証人として法廷で嘘を言えばの偽証罪。
- ③公判手続の特例:検察官は、合意した本人の公判で()、合意に基づく供述録取書等が使われる他人の公判で()、合意した者が証人になる尋問で()、合意内容書面の取調べを請求しなければならない(公判で証拠として取り調べるよう請求する=「証拠として…取調べを請求」)。離脱があれば離脱の書面も。
- ③の意味(解説書):他人の公判では、その他人と弁護人が合意を踏まえて反対尋問するなど防御でき、裁判所も供述の信用性を慎重に吟味できる。
- 「合意内容書面は、合意した本人の公判でだけ取調べを請求すればよい」(他人の公判でも)
- 「合意内容書面を証拠に出すかどうかは、検察官の裁量に任されている」(取調べの請求は義務)
- ③を「合意内容書面の開示義務」と呼ぶ形(条文は「取調べを請求しなければならない」=証拠開示とは別の制度)
7刑事免責の手続:請求は検察官、裁判所は原則として決定条文解説書
- 原則:証人は、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができる()。この146条の証言拒否権が、判旨の刑事免責の定義にいう「自己負罪拒否特権に基づく証言拒否権」にあたる(判旨は条文を挙げていない)。
- 定義(解説書):の証言拒絶で必要な証言が得られない事態に対処するため、裁判所が検察官の請求に基づき、証人に一方的な免責を与え、自己負罪拒否特権を失わせて証言を義務づける制度。合意制度と違い、証人との交渉・取引の要素は無い。
- 尋問の前():検察官は、証人が訴追・有罪のおそれのある事項の尋問を予定している場合に、証言の重要性、関係する犯罪の軽重・情状その他を考えて必要と認めるとき、あらかじめ、条件(項目8で見る1号・2号)付きの尋問を請求できる。
- 拒んだ後():証人がその事項について証言を拒んだと認める場合に、それ以後の尋問について請求できる。
- 裁判所(・):尋問すべき事項に訴追・有罪のおそれのある事項が含まれないと明らかに認められる場合(では、証言を拒んでいないと認められる場合も)を除き、条件付きで尋問する旨の決定を「するものとする」=必要性の判断は検察官、裁判所が見るのは除外事由の有無。
- 合意制度と違い、対象犯罪の限定は無い。
- 第1回公判期日前の証人尋問(・)にも及ぶ:請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し裁判所・裁判長と同一の権限を持つ()。
被告人側が、自分に有利な証人に免責を与えて話させたいと思っても、請求できるのは「検察官」だけ(・)。
- 「裁判所は、証言の必要性が乏しいと認めるときは、検察官の請求を却下できる」=実際は、尋問事項に自己負罪の事項が含まれないことが明らか等の除外事由に当たる場合を除き、決定をするものとする
- 「刑事免責の請求は、証人が証言を拒んだ後でなければできない」(尋問前にあらかじめもできる)
- 「刑事免責も、合意制度と同じく特定犯罪に限られる」(限定なし)
- 「被告人・弁護人も刑事免責を請求できる」
8刑事免責の効果:拒めない、ただし自分には使われない条文解説書
- 決定があると(各号の条件):
1号=尋問に応じてした供述とこれに基づいて得られた証拠は、証人の刑事事件で、証人に不利益な証拠とすることができない。ただし、その尋問での行為が証言拒絶罪()・偽証罪()に当たるとき、その罪の事件では使える。
2号=の規定にかかわらず、自己が刑事訴追を受け、又は有罪判決を受けるおそれのある証言を拒むことができない。 - 決定後に拒めば、過料・費用の賠償()、刑罰()の対象(解説書)。
- 免除されるのは刑罰ではなく、その証言と派生証拠を証人に不利益に使うこと。罪そのものは消えない=別の証拠があれば処罰できる。
- 決定が無ければ、宣誓した証人でも、自己が訴追・有罪になるおそれのある証言は拒める()。
- 典型の場面(解説書):合意制度では、報復を恐れて協力しない者(自分も被告人=下の例の乙)がいる → 検察官が標的にする共犯者(甲)の事件で、その協力しない被告人(乙)を証人として出廷させて証言を強制し、その証言は乙の罪責を問う証拠にしない。自分も被疑者・被告人である証人に使える。
共謀して放火したとして起訴された乙が、分離された共犯者甲の公判に証人として呼ばれ、「自分が有罪になるおそれがある」と答えを拒む → で拒めるのが原則。検察官がで請求し、決定があれば拒めない(その証言は乙自身の事件で乙に不利益に使えない)。
出題共犯者として起訴された証人が、自己が訴追・有罪になるおそれを理由に答えたくないとしても、証言を拒めない場合がある(○)
出題宣誓した証人は、自己が刑事訴追を受けるおそれのある証言を拒めないが、その証言が自己の刑事裁判で証拠とされることはない(×)
- 「宣誓した証人は、自己が刑事訴追を受けるおそれのある証言を拒めないが、その証言は自己の刑事裁判で証拠とされない」(司法H20-35-5):出題は平成28年改正の前=刑事免責の制度が無く、で拒めるので×。現行法でも×:拒めないのは免責の決定があるときだけ。決定があっても、証言を証人に不利益な証拠にできないだけで、その尋問での証言拒絶罪・偽証罪の事件では使える(1号)。
- 「自己が訴追されるおそれがあれば、証人は常に証言を拒める」(免責の決定があれば拒めない)
- 「刑事免責を受けた証人は、その事件で処罰されなくなる」(使えないのは証言と派生証拠だけ)
- 「免責を受けた証言なら、偽証しても処罰されない」(偽証罪の事件では使える)
- 「刑事免責は、自分は起訴の対象でない証人のための制度で、共犯者には使えない」(典型は共犯者)
9明文の無い刑事免責(最大判平7・2・22)判例解説書
- 検察官が、贈賄・収賄等の被疑事実で、に基づき、米国在住のC・Dらの証人尋問を米国の司法機関に嘱託するよう裁判官に請求
- 検事総長が、証言した事項について証人らをにより起訴を猶予するよう東京地検検事正に指示した旨の宣明書/検事正も同旨の宣明書
- Cが、日本で刑事訴追を受けるおそれを理由に証言を拒否。米国の連邦地裁の判事は、公訴を提起されないことを明確にした最高裁のオーダー等が出るまで調書を伝達しないと裁定
- 検事総長が、将来にわたり公訴を提起しないと確約する宣明。最高裁が、その確約が将来にわたり遵守される旨を宣明 → 尋問が行われ、調書が送付される
- 刑事免責の制度は、自己負罪拒否特権に基づく証言拒否権の行使により犯罪事実の立証に必要な供述を獲得することができないという事態に対処するため、共犯等の関係にある者のうちの一部の者に対して刑事免責を付与することによって自己負罪拒否特権を失わせて供述を強制し、その供述を他の者の有罪を立証する証拠としようとする制度
- 我が国の憲法が、その刑事手続等に関する諸規定に照らし、このような制度の導入を否定しているものとまでは解されないが、刑訴法は、この制度に関する規定を置いていない。
- 判旨が明文を求めた前提は、この制度が「犯罪に関係のある者の利害に直接関係し、刑事手続上重要な事項に影響を及ぼす制度である」こと。
- この制度は、前記のような合目的的な制度として機能する反面、犯罪に関係のある者の利害に直接関係し、刑事手続上重要な事項に影響を及ぼす制度であるところからすれば、これを採用するかどうかは、これを必要とする事情の有無、公正な刑事手続の観点からの当否、国民の法感情からみて公正感に合致するかどうかなどの事情を慎重に考慮して決定されるべきものであり、これを採用するのであれば、その対象範囲、手続要件、効果等を明文をもって規定すべきものと解される。
- しかし、我が国の刑訴法は、この制度に関する規定を置いていないのであるから、結局、この制度を採用していないものというべきであり、刑事免責を付与して得られた供述を事実認定の証拠とすることは、許容されないものといわざるを得ない。
- この事案で与えられた免責=検事総長・東京地検検事正の各宣明=証人らに将来にわたり公訴を提起しない旨の確約(判旨)。現行法の刑事免責の効果=証言と派生証拠を証人に不利益な証拠にできない(1号)=罪そのものは消えない(項目8)。
- 国際司法共助で得た証拠でも同じ → 本件嘱託証人尋問調書の証拠能力を否定。
- 結論は上告棄却:調書を除いても、その余の証拠で犯罪事実を優に認定できる(原判決の結論に影響しない)としたうえで、「所論の重要性にかんがみ」証拠能力の判断を示した。
- 最高裁が否定したのは、法律の根拠が無いまま免責を与えて得た供述を使うこと。刑事免責そのものを許されないとしたのではない。その後、平成28年改正で・が置かれた。
- 解説書の位置づけ:明文の要件が無い場合に、証拠禁止の観点から証拠能力が否定されうることを示した判例。強制処分法定主義とは別の観点から法定が求められる処分がありうることも示した。
出題証言を拒否する証人に刑事免責を付与して供述を強制することは憲法38条1項に違反するから、その供述を有罪認定の証拠にできない(×)
- 「刑事免責を付与して供述を強制することは、に違反する」(予備R2-24-ウ。判例は憲法が導入を否定しているとまでは解されないとした)
- 「最高裁は、嘱託証人尋問調書の証拠能力を否定し、被告人を無罪とした」(上告棄却)
- 「最高裁は、検事総長と最高裁の宣明により適法に刑事免責が付与されたとして、調書の証拠能力を認めた」