刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#51

鑑定嘱託と期日前証人尋問

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第2章 捜査 ㉗/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

捜査機関だけでは、足りない場面がある

捜索差押え検証通信傍受を終えた捜査機関の前に専門知識と非協力的な証人という2つの壁が立ちはだかる導入板

どれも、捜査機関自身の手足と権限で完結する処分でした。今日は、捜査機関の手だけでは足りない場面に入ります。例えば、被疑者が本当に責任能力を欠いていたかどうか。警察官には、判断できないことですね。精神医学の専門知識が要ります。もう1つ、重要な目撃者が、取調べに応じてくれない場面。専門知識が足りない場面、相手の協力が得られない場面。どちらも、捜査機関だけでは乗り越えられません。今日は、3つの頼る先を見ていきます。専門家への鑑定、公私の団体への照会、裁判官による証人尋問です。相手にかけられる力の強さです。一言でいえば、間に裁判所や裁判官が入るルートを持っているかどうかで、相手に義務を負わせられるかどうかが決まります。この軸を、鑑定から順番に確かめていきましょう。

鑑定嘱託の意義——鑑定人と鑑定受託者

検察官や司法警察職員が被疑者以外の者に鑑定通訳翻訳を嘱託できる根拠条文を示す板 図:検察官や司法警察職員が被疑者以外の者に鑑定通訳翻訳を嘱託できる根拠条文を示す板

まず、「鑑定」とは何かから確認します。特別の知識経験に基づく意見や判断を報告してもらうこと。これが鑑定です。入るというより、鑑定と同じ扱いの規定が、通訳・翻訳にも準用されます。ある場面のルールを、対象を読み替えて、別の場面にもそのまま当てはめることです。

条文刑事訴訟法第223条第1項

刑事訴訟法第223条第1項 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、被疑者以外の者の出頭を求め、これを取り調べ、又はこれに鑑定、通訳若しくは翻訳を嘱託することができる。

犯罪の捜査に必要があるとき、検察官・検察事務官・司法警察職員は、被疑者以外の者に鑑定を嘱託できます。この条文で捜査機関から直接嘱託を受けた人を、「鑑定受託者」と呼びます。さっき、「専門知識が足りない場面」と言っていましたが、捜査機関が直接頼めるなら、それで十分ではないですか。そこが、今日の最初の分かれ道です。「鑑定」には、もう1つ別のルートがあります。

条文刑事訴訟法第165条・第166条

刑事訴訟法第165条・第166条 第165条 裁判所は、学識経験のある者に鑑定を命ずることができる。 第166条 鑑定人には、宣誓をさせなければならない。

裁判所が学識経験のある者に鑑定を命じる場合があります。この人を、「鑑定人」と呼びます。誰が、どういう立場で頼んでいるかです。鑑定人は、裁判所が命じる、いわば裁判所の補助者。鑑定受託者は、捜査機関が嘱託する、捜査機関の補助者です。中身の作業は同じです。でも、誰が命じたかで、その人に負わせられる義務の重さが変わります。166条を見てください。鑑定人には、宣誓をさせなければなりません。法廷やそれに準じる場で、正直に職務を果たすと誓わせます。この宣誓をした鑑定人だけが、もしうそをつけば、重い責任を問われます。

条文刑法第171条

刑法第171条 法律により宣誓した鑑定人、通訳人又は翻訳人が虚偽の鑑定、通訳又は翻訳をしたときは、前二条の例による。

「法律により宣誓した鑑定人」がうその鑑定をすれば、虚偽鑑定罪。拘禁刑を科される犯罪です。鑑定受託者には、この罪は及ばないんですか。及びません。鑑定受託者には、そもそも宣誓義務がないからです。条文が対象にしているのは、「法律により宣誓した」鑑定人だけです。なぜそこまで差がつくのか。たとえ話で考えてみましょう。先生が正式に「学級委員」に任命した生徒がいます。委員になるとき、「委員としてきちんと務めます」という約束をさせられます。一方、日直が「今日だけ荷物運びを手伝って」とクラスメイトに個人的に頼んだとします。

頼み方の正式さが、そのまま義務の重さに表れます。鑑定人は裁判所という公式なルートで選ばれるから、宣誓も虚偽鑑定罪も及ぶ。鑑定受託者は捜査機関からの個別の依頼だから、そこまでの重さは及びません。

鑑定留置——期間を定めた留置

心神や身体の鑑定のため期間を定めて病院その他の場所に留置する鑑定留置と鑑定留置状の関係を示す板

ここからは、鑑定人・鑑定受託者どちらの場合にも起こりうる、具体的な処分を見ていきます。まず、責任能力の判断のように、数か月かけてじっくり調べる必要がある鑑定です。

条文刑事訴訟法第167条第1項・第2項

刑事訴訟法第167条第1項・第2項 第1項 被告人の心神又は身体に関する鑑定をさせるについて必要があるときは、裁判所は、期間を定め、病院その他の相当な場所に被告人を留置することができる。 第2項 前項の留置は、鑑定留置状を発してこれをしなければならない。

心神または身体の鑑定に必要があれば、期間を定めて、病院その他の相当な場所に留置できます。これが鑑定留置です。この留置には、鑑定留置状という専用の令状が要ります。被疑者の段階でも、できます。224条が、被疑者の段階に読み替えて準用しています。手続の中身は、実質同じです。これは、鑑定人と鑑定受託者のどちらの場合でも使えるんですか。使えます。167条は裁判所が主体の手続で、224条は検察官等の請求を受けて裁判官が判断する手続。どちらも、最終的に令状を出すのは裁判所・裁判官です。なお、鑑定留置の期間中は、勾留の執行が止まり、その分は勾留期間に数えない扱いになっています。深入りはしませんが、「鑑定留置は勾留とは別枠」とだけ覚えておいてください。

鑑定処分と、許可状の名前の違い

住居への立入り身体検査死体解剖墳墓発掘物の破壊という鑑定処分の5類型と鑑定人鑑定受託者で異なる許可状の名前を示す板

留置とは別に、鑑定のためにもっと踏み込んだ処分が必要になる場合があります。

条文刑事訴訟法第168条第1項

刑事訴訟法第168条第1項 鑑定人は、鑑定について必要がある場合には、裁判所の許可を受けて、人の住居若しくは人の看守する邸宅、建造物若しくは船舶内に入り、身体を検査し、死体を解剖し、墳墓を発掘し、又は物を破壊することができる。

住居等への立入り、身体検査、死体の解剖、墳墓の発掘、物の破壊。この5つを、鑑定処分と呼びます。例えば、死因を調べるための解剖や、押収した粉が薬物かどうかを調べるために、溶かして使い切ることです。

論文で書く規範:鑑定処分の5類型——覚え方 鑑定処分としてできるのは、住居に入ること、体を調べること、死体を解剖すること、墓を掘ること、物を壊すことの5つ。鑑定人・鑑定受託者のどちらの場合でも共通。 (刑事訴訟法第168条第1項・第225条第1項(覚える一覧))

だからこそ、168条は「裁判所の許可を受けて」と条件を付けています。

条文刑事訴訟法第225条第1項

刑事訴訟法第225条第1項 第223条第1項の規定による鑑定の嘱託を受けた者は、裁判官の許可を受けて、第168条第1項に規定する処分をすることができる。

鑑定受託者にも、同じ処分ができます。225条1項が、168条1項と同じ5類型を、鑑定受託者にも認めています。理由は、誰が鑑定を命じたかにあります。鑑定人は、事件を審理している裁判所が命じるので、その裁判所自身が許可します。鑑定受託者は捜査段階で、まだ事件が裁判所に持ち込まれていません。だから、令状と同じように、個々の裁判官が審査します。鑑定人の場合は「裁判所」、鑑定受託者の場合は「裁判官」に請求します。この違いに合わせて、出てくる許可状の呼び方も使い分けます。鑑定人が受ける168条の許可状は「鑑定許可状」、鑑定受託者が受ける225条の許可状は「鑑定処分許可状」と呼びます。

あのとき出てきた鑑定処分許可状は、捜査機関が嘱託した鑑定受託者が使う許可状。225条のルートでした。処分の中身は168条1項の5類型で共通、手続の入口だけが裁判所と裁判官で分かれます。

身体検査は、どこまで力ずくでできるか

鑑定人が身体検査を拒否されたとき裁判官への請求で直接強制まで届くという172条と139条の関係を示す板

ここで、5類型のうち「身体検査」に絞って、もう一段掘り下げます。相手が、身体検査を拒否したらどうなるか。拒否されたら、それで終わりですか。終わりません。ただし、ここで鑑定人と鑑定受託者の結論が分かれます。少し考えてみてください。鑑定人には裁判官が直接強制までできるのに、鑑定受託者にはできません。同じ「身体検査を拒否された」という場面で、なぜ結論が分かれると思いますか。もう少し具体的に、条文で確かめてみましょう。

条文刑事訴訟法第172条第1項・第2項

刑事訴訟法第172条第1項・第2項 第1項 身体の検査を受ける者が、鑑定人の第168条第1項の規定によつてする身体の検査を拒んだ場合には、鑑定人は、裁判官にその者の身体の検査を請求することができる。 第2項 前項の請求を受けた裁判官は、第十章の規定に準じ身体の検査をすることができる。

鑑定人は、相手に身体検査を拒まれたら、裁判官に「代わりにやってください」と請求できます。請求を受けた裁判官は、第10章、つまり検証の章のルールに準じて身体検査を行えます。

条文刑事訴訟法第139条

刑事訴訟法第139条 裁判所は、身体の検査を拒む者を過料に処し、又はこれに刑を科しても、その効果がないと認めるときは、そのまま、身体の検査を行うことができる。

過料というのは、刑罰ではない、行政上のお金の制裁です。過料や刑罰で脅しても効果がないと認めるときは、そのまま身体検査を行える。これが直接強制です。抵抗する相手を、力ずくで検査してよい、というところまで認めています。では、鑑定受託者の225条4項を見てみましょう。

225条4項が168条2項から4項と6項だけを準用し172条を準用しないため鑑定受託者は身体検査を拒否されても裁判官へ請求する手段が無く間接強制止まりであることを示す板

条文刑事訴訟法第225条第4項

刑事訴訟法第225条第4項 第168条第2項乃至第4項及び第6項の規定は、前項の許可状についてこれを準用する。

225条4項は、168条2項から4項と、6項を準用しています。172条が入っていない点に、気づきましたね。そこは、強制採尿の前編で見た結論と同じです。172条、つまり「裁判官への請求」をできる権限は、225条4項の準用リストに入っていません。たとえで整理します。鑑定人は、身体検査を拒まれたとき、「裁判官に請求する」という裏口の合鍵を渡されています。その裏口を通れば、検証の章のルールにしたがって、裁判官がそのまま強制的に検査を行わせられます。225条4項が準用する168条6項は、137条と138条、つまり過料や刑罰で自分から応じさせる、間接強制の規定につながります。鑑定受託者も、この玄関までは辿り着けますが、裏口の先の直接強制までは進めません。

裁判所という公式なルートで選ばれたかどうかで身体検査を拒否されたときに直接強制まで届くか間接強制止まりかが分かれるという鑑定人と鑑定受託者の対比と具体例を示す板

誰が命じたかで義務の重さが変わるという今日の軸が、ここでもそのまま効いています。今日の新しい角度は、この結論を鑑定人と比べることです。鑑定人は裁判所という公式なルートで選ばれているからこそ、172条の請求権まで持たされる。鑑定受託者は捜査機関からの個別の依頼にとどまるからこそ、そこまでの強制力は持たされません。場面で比べてみます。捜査機関に頼まれた医師、つまり鑑定受託者が、被疑者の血液を採ろうとして、腕を振り払われた。できるのは、過料や刑罰を告げて促すところまでです。押さえつけて採ることはできません。

裁判所が命じた鑑定人であれば、172条で裁判官に身体の検査を請求できます。そこから先は、力ずくの検査まで届きます。つながります。強制採血で身体検査令状と鑑定処分許可状を併用していたのは、まさにこの直接強制の届きにくさを補うためでした。深掘りはあの回に譲ります。

覚えるポイント — 鑑定人と鑑定受託者——まとめの対比

ここまでの違いを、1枚の表にまとめました。ここからは、別の「頼る先」に移ります。

公務所等への照会——義務はあるが強制できない

市役所や銀行に照会して必要な事項の報告を求める公務所等への照会が報告義務はあっても強制手段のない任意捜査であることを示す板

専門家に頼る場面の次は、公私の団体がすでに持っている情報に頼る場面です。

条文刑事訴訟法第197条第2項

刑事訴訟法第197条第2項 捜査については、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる。

捜査に必要な事項を、公務所や公私の団体に照会して報告を求められます。市役所に戸籍謄本の送付を求めたり、銀行に口座の取引記録の提出を求めたりする場面です。誰が照会できるか、法律上の制限はありません。実務では、捜査関係事項照会書という書面で、警察署長名などから行うのが通常です。報告を求められた側は、応じる義務があるんですか。あります。「報告を求めることができる」というのは、相手方に報告する義務を生じさせる規定だと理解されています。義務があるなら、拒否したらどうなるんですか。ここが、今日の面白いところです。義務を履行させる強制の方法が、この条文にはありません。過料も罰則も規定されていません。

172条のような裁判官への請求権すらありません。ここで、前に見た道具を確認しましょう。強制処分と任意処分を分ける基準、思い出せますか?相手の意思に反する重要な権利利益の侵害があるかどうか、でしたね。今日の「照会」は、どちらに当たると思いますか。義務はあっても強制する方法が無いなら、相手の意思を力ずくで押し切ってはいない、ということです。だから任意処分、任意捜査に分類されます。もう1つ、大事な点を補います。銀行員や公務員には、もともと守秘義務があります。口座の情報を勝手に話せば守秘義務違反になる、通常なら、そうです。でも、197条2項の照会に応じて報告した場合は、法令に基づく行為として、守秘義務違反の責任は問われません。

そういう実情はあります。ただ、法律上の建前はあくまで任意です。義務があるのに任意、という違和感は、ここで解けます。この報告義務が効いてくるのは、相手を従わせる場面ではなく、応じた相手が守秘義務違反を問われない、という場面です。力ずくで押し切る道具は、裁判官を通すルートにしか用意されていません。本人を呼んで話を聞くか、令状を取って捜索・差押えで調べる方法に切り替えます。照会だけでは足りない場面には、すでに見た強制処分の道具が控えています。

第一回公判期日前の証人尋問——裁判官に頼る

被疑者以外の者は取調べへの出頭供述を拒否でき署名押印の無い調書は原則証拠にできないため出頭供述を拒んだ場合に検察官が裁判官へ証人尋問を請求できる226条1項を示す板

最後に、相手が協力してくれない場面に入ります。重要な目撃者がいるのに、取調べに応じてくれない。223条1項の取調べは、相手が断ったらどうなるんですか。断れます。被疑者について見た「帰れる」という建前と同じ道具が、被疑者以外の者にも使われています。被疑者以外の者は、出頭を拒否できるし、出頭しても途中で帰ることも、供述調書への署名押印を拒むこともできます。その調書は、原則として、証拠にできません。詳しい要件は別の回に譲りますが、重要な目撃者が非協力的だと、立証の材料が何も残らないおそれがあります。ここでも、「裁判官が間に入る」ことで、相手に証人としての義務を負わせます。場面は2つに分かれます。

条文刑事訴訟法第226条第1項

刑事訴訟法第226条第1項 犯罪の捜査に欠くことのできない知識を有すると明らかに認められる者が、第223条第1項の規定による取調に対して、出頭又は供述を拒んだ場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。

1つ目、226条1項。捜査に欠かせない知識を持つと明らかに認められる者が、223条1項の取調べに対して、呼び出しに応じない、あるいは話すこと自体を拒んだときです。

任意に供述した者が公判で翻すおそれがありその供述が犯罪の証明に欠かせない場合に検察官が裁判官へ証人尋問を請求できる227条1項と226条との見分け方を示す板

条文刑事訴訟法第227条第1項・第2項

刑事訴訟法第227条第1項・第2項 第1項 第223条第1項の規定による検察官、検察事務官又は司法警察職員の取調べに際して任意の供述をした者が、公判期日においては前にした供述と異なる供述をするおそれがあり、かつ、その者の供述が犯罪の証明に欠くことができないと認められる場合には、第一回の公判期日前に限り、検察官は、裁判官にその者の証人尋問を請求することができる。 第2項 前項の請求をするには、検察官は、証人尋問を必要とする理由及びそれが犯罪の証明に欠くことができないものであることを疎明しなければならない。

2つ目、227条1項。いまは任意に供述しているが、公判期日では前と異なる供述をするおそれがあり、かつその供述が犯罪の証明に欠かせないと認められる場合です。

論文で書く規範:226条と227条の見分け方 226条=いま既に拒んでいる(出頭・供述拒否)。227条=いまは話しているが、あとで公判で翻すおそれがある。「すでに拒否」か「あとで翻すおそれ」かで条文を使い分ける。 (刑事訴訟法第226条第1項・第227条第1項(要件の覚え方))

冒頭の、重要な目撃者で考えます。呼び出しに一度も応じないなら、226条です。一方、調べには素直に話したけれど、相手が顔見知りで、法廷では「よく見ていなかった」と言い出しそうなら、しかもその証言が決め手なら、227条です。だから、227条2項は、検察官に追加のハードルを課しています。証人尋問が必要な理由と、その供述が犯罪の証明に欠かせないことを、疎明しなければなりません。証明ほど確実でなくても、一応もっともだとうかがえる程度の立証で足りる、ということです。まだ翻していない段階で先回りする分、要件を厚くしています。なお、平成16年の改正前は、227条に「圧迫を受け」という文言がありました。

この文言が削られたことで、圧力の有無を個別に立証しなくても、翻すおそれがあれば足りる、という形に要件が緩みました。公判が始まってしまえば、その場で証人尋問をすればいい話です。起訴前後の、まだ公判が開かれていない期間だけの制度です。

請求を受けた裁判官が証人尋問について裁判所裁判長と同一の権限を持ち原則被告人被疑者弁護人に立会権が無いことと証人尋問の対象になる人を示す板

条文刑事訴訟法第228条第1項・第2項

刑事訴訟法第228条第1項・第2項 第1項 前二条の請求を受けた裁判官は、証人の尋問に関し、裁判所又は裁判長と同一の権限を有する。 第2項 裁判官は、捜査に支障を生ずる虞がないと認めるときは、被告人、被疑者又は弁護人を前項の尋問に立ち会わせることができる。

請求を受けた裁判官は、公判の証人尋問と同じ権限を持ちます。つまり、相手を証人として出頭させ、宣誓させ、証言させる義務を負わせられます。裁判官が間に入ることで、相手の意思に反してでも、証人という重要な権利利益への侵害ができるようになります。さっきの強制処分の判定基準に照らせば、この侵害があるから、この証人尋問は強制捜査だと理解されています。原則、立会権はありません。228条2項で、裁判官が捜査に支障がないと認めたときだけ、裁量で立ち会わせることができます。まだ捜査の途中段階です。被疑者側に証人の存在や供述内容が早い段階で伝わると、証拠隠滅や証人への働きかけのおそれがあります。

なお、この手続で作られる証人尋問調書は、裁判官の面前での供述を録取した書面として、証拠にする際の特別な扱いを受けます。詳しい中身は、証拠法の回に譲ります。自分の事件で自分が証人になることはありません。一方、被害者は、226条・227条の要件を満たせば対象になります。

今日の地図(保存版)

鑑定嘱託公務所等への照会期日前証人尋問の3つを裁判所裁判官が間に入るかどうかという1つの軸で並べた保存版の板

今日の内容を振り返ります。鑑定人は裁判所が命じ、宣誓義務があり、虚偽鑑定罪の対象になり、身体検査を拒まれても裁判官への請求で直接強制まで届きます。鑑定受託者は捜査機関が嘱託し、宣誓義務が無く、虚偽鑑定罪の対象外で、身体検査は間接強制までしか届きません。鑑定留置と鑑定処分はどちらの立場でも利用できますが、許可状の名前は鑑定許可状と鑑定処分許可状に分かれます。公務所等への照会は、報告義務はあっても強制の方法が無く、任意捜査です。第一回公判期日前の証人尋問は、出頭・供述を拒んだ場合と、翻すおそれがある場合の2類型で、裁判官が証人としての義務を負わせる、強制捜査です。

3つとも、捜査機関だけでは足りない場面を埋める制度なのに、裁判所や裁判官が間に入るかどうかで、埋め方の強さがまったく違うんですね。裁判所・裁判官が間に入るかどうかは、相手の意思に反する重要な権利利益の侵害ができるかどうかを決めるので、強制処分か任意処分かの一般の判定基準とつながっています。この物差しは、この先も繰り返し出てきます。誰が命じたか、誰が頼んだか。そこを見れば、相手にどこまでの義務を負わせられるかが見えてきます。

参照条文

  • 刑事訴訟法第223条第1項
  • 刑事訴訟法第165条・第166条
  • 刑法第171条
  • 刑事訴訟法第167条第1項・第2項
  • 刑事訴訟法第168条第1項
  • 刑事訴訟法第225条第1項
  • 刑事訴訟法第172条第1項・第2項
  • 刑事訴訟法第139条
  • 刑事訴訟法第225条第4項
  • 刑事訴訟法第197条第2項
  • 刑事訴訟法第226条第1項
  • 刑事訴訟法第227条第1項・第2項
  • 刑事訴訟法第228条第1項・第2項

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