刑事訴訟法 ゼロから刑事訴訟法#9

勾留(時間制限・要件・期間・逮捕前置主義)

逮捕に続く身柄拘束=勾留を整理する回。逮捕後の時間制限(通算72時間)、実体的要件(相当な理由+60条1項各号)、期間(最大20日)、逮捕前置主義と違法逮捕に基づく勾留の可否を押さえる。

⬇ 印刷用PDF

第2章 捜査 ④/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1. 逮捕後の時間制限(48 → 24 → 通算72時間)

  • 【条文】刑訴203条1項:司法警察員は、被疑者を逮捕(受取)したとき、留置の必要があれば身体を拘束された時から48時間以内に書類・証拠物とともに検察官へ送致
  • 【条文】刑訴205条1項・2項:検察官は、送致された被疑者を受け取ったとき、留置の必要があれば受取から24時間以内に勾留を請求。ただし身体拘束から通算72時間を超えられない
    • 時間内に起訴すれば勾留請求は不要(205③)/時間徒過なら直ちに釈放(205④)。
  • 勾留請求できるのは検察官のみ(警察官に請求権なし)。

2. 勾留とは

  • 逮捕に引き続く長期の身柄拘束。決めるのは捜査機関でなく裁判官
  • 被疑者勾留(起訴前・捜査目的)/被告人勾留(起訴後・公判目的)。起訴を境に呼称・目的が変わる。
  • 収容先は本来 拘置所だが、実務は警察の留置施設を多用=代用刑事施設(取調べに便利な反面、批判がある運用)。

3. 勾留の実体的要件(★逮捕との比較が最重要)

  • 【条文】刑訴60条1項(被告人勾留・被疑者は207①で準用)

    裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合で、左の各号の一にあたるときは、これを勾留することができる。一 被告人が定まつた住居を有しないとき。二 被告人が罪証を隠滅すると疑うに足りる相当な理由があるとき。三 被告人が逃亡し又は逃亡すると疑うに足りる相当な理由があるとき。

  • ① 勾留の理由=相当な理由 + 60条1項各号(住居不定/罪証隠滅のおそれ/逃亡のおそれ)のいずれか
  • ② 勾留の必要性=比較衡量(87条=理由・必要がなくなれば勾留取消)。
  • ★逮捕との比較:逃亡・罪証隠滅のおそれは、逮捕では消極的要件(明らかに不要でなければ可)、勾留では積極的要件(あると認められないと不可)。勾留の方がハードルが一段高い

4. 勾留の手続的要件(4つ)

  • ① 勾留請求=検察官のみ(205①)。② 逮捕前置主義(207①)。③ 勾留質問(61条=被疑事件を告げ陳述を聴いた後でなければ勾留できない・被疑者準用)。④ 勾留状の発付(207・理由なければ直ちに釈放)。

5. 勾留の期間

  • 【条文】刑訴208条:被疑者勾留は勾留請求の日から10日以内に起訴しないと釈放(①)。やむを得ない事由で延長、通じて10日まで(②)=最大20日
  • 208条の2:内乱・外患・国交・騒乱の罪(刑法第2編2〜4章・8章)はさらに通じて5日延長可。
  • 被告人勾留=公訴提起の日から2箇月、1箇月ごとに更新(60②)。起訴後は保釈が可能に。

6. 逮捕前置主義(★論文)

  • 【条文】刑訴207条1項:前三条の規定による勾留の請求を受けた裁判官は…(「前三条」=逮捕後の手続を指す=逮捕の先行が前提)。
  • 意義=被疑者勾留には同一の被疑事実についての適法な逮捕の先行が必要。別件逮捕→本件勾留は不可。
  • 趣旨=逮捕段階と勾留段階で二度の司法審査を経て、身柄拘束を慎重ならしめる。

📝 論文の型|逮捕前置主義の意義

  • 【コア規範】(逐語暗記=太字キーワード)被疑者を勾留するには、同一の被疑事実について適法な逮捕の手続が先行していることを要する(逮捕前置主義。207条1項が「前三条の規定による勾留の請求」と定めることを根拠とする)。趣旨は逮捕と勾留の二段階で司法審査を及ぼし身柄拘束を慎重ならしめる点にある。
  • 【復元キー】①勾留には同一事実の適法な逮捕の先行が必要 → ②条文上の根拠=207I「前三条の規定による勾留の請求」 → ③趣旨=二段階の司法審査で身柄拘束を慎重に → ④逮捕を経ない勾留請求は不適法/別件逮捕→本件勾留も不可。
  • 【フル論証】被疑者を勾留するには、同一の被疑事実について適法な逮捕の手続が先行していることを要する(逮捕前置主義)。これは、207条1項が「前三条の規定による勾留の請求」と定めることを根拠とする。その趣旨は、逮捕の段階と勾留の段階とで二度にわたり裁判官の司法審査を及ぼし、身柄拘束を慎重ならしめる点にある。
  • 【事例】逮捕を経ずにいきなり勾留請求。
  • 【問題提起】逮捕を経ない勾留請求は適法か。
  • 【あてはめ】逮捕前置を欠けば不適法→却下。別件逮捕→本件勾留も不可。

📝 論文の型|違法な逮捕に基づく勾留請求の可否

  • 【コア規範】(逐語暗記=太字キーワード)先行する逮捕手続に違法があっても、後行の勾留請求が当然に違法となるわけではない。もっとも、その違法が令状主義の精神を没却するような重大なものであるときは、違法な逮捕に基づく勾留請求として却下すべきである(重大な違法説)。軽微な違法にとどまる場合は勾留請求は妨げられない。
  • 【復元キー】①違法逮捕→勾留請求が当然に違法となるわけではない(段階を分けて考える) → ②基準=違法が令状主義の精神を没却する重大なものか → ③重大なら却下/軽微は承継せず勾留は妨げられない → ④実質的逮捕など令状主義の潜脱は重大な違法=却下方向。
  • 【フル論証】先行する逮捕手続に違法がある場合、後行の勾留請求が当然に違法となるわけではない。もっとも、その違法が令状主義の精神を没却するような重大なものであるときは、違法な逮捕に基づく勾留請求として却下すべきである(重大な違法説)。軽微な違法にとどまる場合は、勾留請求は妨げられない。
  • 【事例】実質的逮捕(違法な身柄拘束)を経た後の勾留請求。
  • 【問題提起】違法な逮捕の後の勾留請求は認められるか(違法は勾留に承継するか)。
  • 【あてはめ】令状主義を潜脱した実質的逮捕は重大な違法→これに基づく勾留請求は却下。

短答ひっかけ

  • 勾留請求ができるのは? → 検察官のみ(警察官は不可)。逮捕状請求権者(199②=検察官・警部以上の司法警察員)と混同しない。
  • 逃亡・罪証隠滅のおそれは逮捕でも勾留でも同じ扱い? → 。逮捕は消極的要件・勾留は積極的要件。
  • 逮捕しないで勾留できる? → 不可(逮捕前置主義)。
  • 違法な逮捕の後は必ず勾留も違法? → 。重大な違法でなければ勾留請求は妨げられない。
  • 被疑者勾留は最長何日? → 最大20日(10+10)。内乱罪等は208の2でさらに5日。

→ 次回:逮捕・勾留の諸原則(事件単位の原則/一罪一逮捕一勾留/再逮捕・再勾留)。

参照条文

  • 刑訴203条1項
  • 刑訴205条1項・2項
  • 刑訴60条1項(被告人勾留・被疑者は207①で準用)
  • 刑訴208条
  • 刑訴207条1項

刑事訴訟法 全体ロードマップへ →