刑事訴訟法 ゼロから刑事訴訟法#10

逮捕・勾留の諸原則

逮捕・勾留を貫く4つの原則を整理する回。事件単位の原則、逮捕前置主義との関係、一罪一逮捕一勾留、再逮捕・再勾留禁止とその例外(新証拠等の特段の事情)までを押さえる。

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第2章 捜査 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1. 事件単位の原則

  • 逮捕・勾留の効力は、令状に記載された特定の被疑事実(事件)についてのみ及ぶ(人単位説は通説・実務で否定)。
  • 根拠=令状の記載事項。
    • 【条文】刑訴200条1項:逮捕状には…罪名、被疑事実の要旨…を記載し、裁判官が記名押印。
    • 【条文】刑訴64条1項:勾引状・勾留状には…罪名、公訴事実の要旨…を記載し、裁判長等が記名押印。
    • +裁判官の審査も事件ごとに(A事件で罪証隠滅のおそれがあっても、B事件では別判断)。
  • 帰結=二重逮捕・二重勾留が可能:A事件で勾留中でも、別のB事件で重ねて逮捕・勾留できる(別々の箱)。例=窃盗で勾留中に別の強盗で逮捕。

2. 逮捕前置主義と事件単位

  • 被疑者勾留には、勾留したいその事件(同一事件)についての逮捕の先行が必要(207①)。別件で身柄拘束中でも、今回の事件で逮捕していなければ勾留できない(人単位×)。
  • 事件の同一性は、公訴事実の同一性の基準に準じる=基本的事実関係が同一なら同一事件(細部のズレは可)。詳細は訴因変更の回。

3. 一罪一逮捕一勾留の原則

  • 実体法上1個の犯罪を分割して、複数回 逮捕・勾留することはできない。
  • 趣旨=身柄拘束の期間制限(最大20日等)の潜脱防止
  • 例=住居侵入+窃盗(科刑上一罪=牽連犯で全体が1個の犯罪)。
    • × 住居侵入で逮捕勾留→直後に窃盗で再逮捕勾留(分割=違法)。
    • ○ 最初から「住居侵入及び窃盗」として1回で処理(または理由の付加)。

4. 再逮捕・再勾留禁止の原則

  • 一度釈放した被疑者を、同一の犯罪事実で再び逮捕・勾留するのは原則禁止(潜脱防止)。別事件なら可
  • ただし「原則」禁止=完全禁止ではない。法は再逮捕を予定。
    • 【条文】刑訴199条3項:…同一の犯罪事実についてその被疑者に対し前に逮捕状の請求又はその発付があつたときは、その旨を裁判所に通知しなければならない。

5. 再逮捕・再勾留の可否(★論文)

釈放の理由再逮捕の可否ポイント
①証拠不足で釈放(適法)条件付きで可(より厳格に審査)単なる捜査不足では不可。決定的な新証拠・逃亡の具体的危険等の特段の事情が必要(079)
②違法釈放=形式的瑕疵一般原則による(条件満たせば可)令状の記載ミス・わずかな時間超過等。軽微ならやり直しても不当な蒸し返しでない(080)
③違法釈放=重大な違法許されない(不可)令状なしの強制逮捕等=基本的権利侵害。適正手続(憲31)保障・将来の違法捜査抑止のため(080)
  • 再勾留は、適法な再逮捕が許されれば逮捕前置主義の論理で可能(ただし侵害が大きく一層厳格)。

📝 論文の型|事件単位の原則

  • 【コア規範】(逐語暗記=太字キーワード)逮捕・勾留の効力は、令状に記載された特定の被疑事実(事件)についてのみ及ぶ(事件単位の原則)。令状が被疑事実の要旨を記載すべきものとされ(200条・64条)、裁判官の審査も事件ごとに行われることが根拠。ゆえに身柄拘束中の被疑者を別事件で重ねて逮捕・勾留すること(二重逮捕・二重勾留)も許される
  • 【復元キー】①効力は令状記載の被疑事実にのみ及ぶ → ②根拠=令状は被疑事実の要旨を記載(200・64)/審査も事件ごと → ③人単位でなく事件単位で効力をとらえる → ④別事件なら二重逮捕・二重勾留も可。
  • 【フル論証】逮捕・勾留の効力は、令状に記載された特定の被疑事実(事件)についてのみ及ぶ(事件単位の原則)。逮捕状・勾留状が被疑事実ないし公訴事実の要旨を記載すべきものとされ(200条・64条)、裁判官の審査も事件ごとに逮捕・勾留の理由と必要性について行われることが、その根拠である。したがって、ある事件で身柄拘束中の被疑者を別事件で重ねて逮捕・勾留すること(二重逮捕・二重勾留)も許される。
  • 【事例】窃盗で勾留中の被疑者を別の強盗事件で逮捕。
  • 【問題提起】勾留中の者を別事件で重ねて逮捕・勾留することは許されるか。
  • 【あてはめ】窃盗の勾留と強盗の逮捕は別事件で効力が独立→矛盾せず許される。

📝 論文の型|再逮捕・再勾留の可否

  • 【コア規範】(逐語暗記=太字キーワード)同一の犯罪事実については、身柄拘束の期間制限の潜脱を防ぐため、再度の逮捕・勾留は原則として許されない(再逮捕・再勾留禁止の原則)。もっとも、新証拠の発見等やむを得ない事由があり、不利益を考慮してもなお真にやむを得ないと認められる場合は例外的に許される。先行の逮捕・勾留が違法を理由に釈放され、その違法が令状主義・適正手続の精神を没却する重大なものであるときは、違法捜査抑止の見地から再逮捕も許されない。
  • 【復元キー】①原則=同一事実の再逮捕・再勾留は禁止(期間制限〔203〜208〕の潜脱防止) → ②例外=新証拠等やむを得ない事由+真にやむを得ない → ③単なる捜査不足では足りない → ④違法釈放後は別枠=違法が重大なら再逮捕も不可。
  • 【フル論証】同一の犯罪事実については、身柄拘束の期間制限の潜脱を防ぐため、再度の逮捕・勾留は原則として許されない(一罪一逮捕一勾留・再逮捕再勾留禁止の原則)。もっとも、新証拠の発見等やむを得ない事由があり、被疑者の受ける不利益を考慮してもなお再度の身柄拘束が真にやむを得ないと認められる場合には、例外的に許される。ただし、先行する逮捕・勾留が違法を理由に釈放された場合、その違法が令状主義・適正手続の精神を没却するような重大なものであるときは、将来の違法捜査抑止の見地から、再逮捕も許されない。
  • 【事例】証拠不足で釈放後/違法逮捕で釈放後の再逮捕。
  • 【問題提起】同一事件についての再逮捕・再勾留は許されるか。
  • 【あてはめ】新証拠・特段の事情の有無、先行違法の重大性で判断。

短答ひっかけ

  • A事件で勾留中に、別のB事件で逮捕できる? → できる(事件単位=二重逮捕・二重勾留可)。
  • 住居侵入と窃盗を別々に逮捕・勾留できる? → 不可(科刑上一罪=1個の犯罪・一罪一逮捕一勾留違反)。
  • 釈放後、同一事件で再逮捕は必ず可能? → 。原則禁止。新証拠等の特段の事情が要る。
  • 違法な逮捕で釈放した後、必ず再逮捕できる? → 。違法が重大なら再逮捕も不可。
  • 別件で身柄拘束中なら、本件は逮捕せず勾留できる? → 不可(逮捕前置主義も事件単位)。

→ 次回:捜索・差押え(物に対する強制処分・令状主義・憲法35条)。

参照条文

  • 刑訴200条1項
  • 刑訴64条1項
  • 刑訴199条3項

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