刑事訴訟法 ゼロから刑事訴訟法#11

捜索・差押え総論(令状主義・特定・関連性・領置)

物に対する強制処分(捜索・差押え・検証・領置)を区別し、令状主義(憲35条)の中身を押さえる回。押収の多義性、令状の特定の要請(一般令状の禁止)、関連性、令状不要の領置までを扱う。

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第2章 捜査 ⑥/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1. 物に対する強制処分——4つを区別

処分ひとこと内容令状
捜索探す場所・物・身体について物/人を発見する
差押え取る(強制)占有を排除して物を強制的に取得
領置取る(任意)遺留物・任意提出物を取得(221条)不要
検証五感で調べる場所・物・人の形状性質を五官で感知
  • 「捜索・差押え」はセット運用=捜索差押許可状1通で出ることが多い。鑑定処分(解剖・採血等)は別途許可状。

2. 「押収」の多義性(短答頻出)

  • 押収=差押え・領置・提出命令の総称。
  • 刑訴法の「押収」=3つ全部。/憲法35条の「押収」差押えのみ(領置は占有を強制的に奪わず令状不要だから対象外)。

3. 令状主義

  • 【条文】日本国憲法35条

    ① 何人も、その住居、書類及び所持品について、侵入、捜索及び押収を受けることのない権利は、第三十三条の場合を除いては、正当な理由に基いて発せられ、且つ捜索する場所及び押収する物を明示する令状がなければ、侵されない。② 捜索又は押収は、権限を有する司法官憲が発する各別の令状により、これを行ふ。

  • 【条文】刑訴218条1項

    検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、記録命令付差押え、捜索又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。

    • ※ 記録命令付差押え(99条の2・2011年導入)=記録媒体の保管者に必要な記録を記録・印刷させた上で差し押さえる処分。
    • ※ 令和7年法律39号で「電磁的記録提供命令」が新設されたが段階施行(全面施行 令和9年3月31日期限)=現行・短答対象は上記「記録命令付差押え」。
  • 例外=逮捕に伴う捜索差押え(220条・令状不要)→ #13。

4. 令状の特定の要請(一般令状の禁止・★論文)

  • 【条文】刑訴219条1項:前条の令状には、被疑者等の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物…を記載し、裁判官が記名押印。
  • 罪名の書き方:刑法犯=「窃盗罪」等の一般名/特別法犯=「覚せい剤取締法違反」等の法令名で足りる(条文番号不要)。
  • 被疑事実の要旨は不要(逮捕状=200①は要旨まで必要。捜索は事実が未特定+機動性のため罪名で足りる)。
  • 捜索すべき場所の特定住居権・管理権の個数を基準。
    • × 「Aマンション」だけ(全世帯対象=無関係な住人のプライバシー侵害)→ ○ 「Aマンション103号室」。
    • 一軒家で家族住まいなら世帯主「○○方」で家全体。

5. 関連性

  • 差し押さえられるのは、令状記載の被疑事実と関連する物に限る(無関係な物=違法・一般探索の禁止)。
  • 根拠=憲35「正当な理由」+219①「差し押さえるべき物」の特定の趣旨。

6. 領置(221条)

  • 【条文】刑訴221条

    検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者その他の者が遺留した物又は所有者、所持者若しくは保管者が任意に提出した物は、これを領置することができる。

  • 占有を強制的に奪わない→令状不要。差押え(強制取得・令状要)との最大の違い。

📝 論文の型|捜索差押許可状の記載・特定

  • 【コア規範】(逐語暗記は太字だけ)令状には差し押さえるべき物及び捜索すべき場所を特定して記載しなければならない(一般令状の禁止・219条1項、憲法35条)。捜索すべき場所の特定は住居権・管理権の個数を基準とする。なお令状は罪名の記載で足り、被疑事実の要旨までは要しない。
  • 【復元キー】①趣旨=捜査機関の権限の範囲を明確化+被処分者に受忍範囲を明示(一般令状の防止・憲35)→②だから場所・物を特定して記載(219①)→③場所の特定の基準=住居権・管理権の個数(マンションは各室ごと)→④罪名は要記載だが被疑事実の要旨は不要(逮捕状200条との違い)。
  • 【フル論証】捜索・差押えは住居権・プライバシー等に対する重大な権利侵害を伴うから、令状には差し押さえるべき物及び捜索すべき場所を特定して記載しなければならない(一般令状の禁止・219条1項、憲法35条)。捜索すべき場所の特定は、住居権・管理権の個数を基準に判断する。なお令状には罪名の記載で足り、被疑事実の要旨の記載までは要しない(被疑事実の要旨を要する逮捕状=200条との違い)。
  • 【事例】「Aマンション」とのみ記載した捜索差押許可状。
  • 【問題提起】「Aマンション」との記載は、捜索すべき場所の特定として十分か。
  • 【あてはめ】各室ごとに管理権が分かれるマンションでは号室まで特定すべきで、本令状は特定不十分=違法。

短答ひっかけ

  • 憲法35条の「押収」は領置も含む? → 。差押えのみ(領置は令状不要で対象外)。
  • 捜索差押許可状に被疑事実の要旨を書く必要は? → 不要(罪名で足りる。逮捕状とは違う)。
  • 任意提出物を受け取るのに令状はいる? → 不要(領置)。
  • 「Aマンション」とだけ書いた令状は有効? → 場所の特定不十分(管理権の個数=号室まで要る)。
  • 無関係な別事件の証拠を、その令状で差し押さえられる? → 原則不可(関連性が必要)。

→ 次回:捜索・差押えの執行と範囲(捜索の場所/居合わせた者の身体・令状の呈示時期)。

参照条文

  • 日本国憲法35条
  • 刑訴218条1項
  • 刑訴219条1項
  • 刑訴221条

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