刑事訴訟法 ゼロから刑事訴訟法#12

捜索・差押えの執行と範囲

捜索・差押えの執行プロセスと令状の効力範囲を押さえる回。令状の呈示とその時期、必要な処分、立会いのルール、場所の令状が居合わせた者の身体に及ぶかまでを扱う。

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第2章 捜査 ⑦/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

1. 執行の流れと令状の呈示

  • 流れ=令状請求 → 発付 → 呈示 → 執行(捜索・差押え)→ 押収目録の交付 → 保管。
  • 【条文】刑訴110条

    差押状、記録命令付差押状又は捜索状は、処分を受ける者にこれを示さなければならない。

    • 捜査機関の捜索差押えにも222条1項で準用。趣旨=①人権配慮 ②手続の公正担保(捜索範囲を確認させ暴走防止)。誰に=処分の直接の支配者(住居主・責任者、留守なら立会人)。

2. 呈示の時期(★論文)

  • 条文(110)は「示せ」とだけ定め、時期は明文なし
  • 原則=捜索・差押えに着手する前の呈示。
  • 例外=証拠隠滅等を防ぎ執行の実効性を確保するためやむを得ない場合は、踏み込んで制圧後の短時分で速やかに呈示も可(覚醒剤・賭博等)。

3. 必要な処分・欺罔的行為

  • 【条文】刑訴111条1項

    差押状、記録命令付差押状又は捜索状の執行については、錠をはずし、封を開き、その他必要な処分をすることができる。…

  • 欺罔的行為(宅配便を装いドアを開けさせる)=錠を破壊する実力行使すら認められる以上、それより穏当な手段ゆえ「必要な処分」として適法(大は小を兼ねる)。

4. 立会い

  • 【条文】刑訴114条1項:公務所内=その長又は代わるべき者に通知して立ち会わせる。
  • 【条文】刑訴114条2項:人の住居等=住居主・看守者・代わるべき者。立ち会わせられないときは隣人又は地方公共団体の職員
  • 刑訴115条:女子の身体の捜索=成年の女子を立ち会わせる。急速を要するときは不要
  • 被疑者・弁護人に立会権なし:当事者立会いを定める113条を222条1項が準用していない(捜査の密行性)。ただし運用上の立会いは可。

5. 場所に対する令状の効力範囲

対象可否理由・要件
場所内の物(タンス・箱)○ 可場所の管理権が及ぶ物に効力(判例)
捜索中に配達され本人が受領した物○ 可当初の令状に基づく捜索として適法(判例)
居合わせた者の身体(ポケット内)× 原則不可(→例外可)218①が場所と身体を区別。例外=隠匿したと疑う十分な状況+必要性・緊急性で身体検査令状同等まで
  • 手に持つ鞄(携帯物)は「場所内の物」として可↔身につけた物・ポケット内は「身体」として原則別扱い。

📝 論文の型|令状の呈示時期

  • 【コア規範】(逐語暗記=太字キーワード)令状の呈示(110条・222条1項)の趣旨は、手続の公正担保と処分を受ける者の人権保障にある。そこで令状は、捜索・差押えに着手する前に呈示するのが原則。もっとも、証拠の隠滅等を防ぎ令状執行の実効性を確保するためやむを得ない場合には、執行に着手して現場を制圧した後、短時分のうちに速やかに呈示することも許される(cf. 最決平14・10・4)。
  • 【復元キー】①呈示(110・222I)の趣旨=公正担保+人権保障 → ②原則=着手前に呈示 → ③例外=証拠隠滅防止・執行の実効性確保のためやむを得ない場合 → ④制圧後 短時分のうちに速やかに呈示すれば適法。
  • 【フル論証】令状の呈示(110条・222条1項)の趣旨は、手続の公正担保と処分を受ける者の人権保障にある。そこで令状は、捜索・差押えに着手する前に呈示するのが原則である。もっとも、証拠の隠滅等を防ぎ令状執行の実効性を確保するためにやむを得ない場合には、執行に着手して現場を制圧した後、短時分のうちに速やかに呈示することも許される。
  • 【事例】覚醒剤事件でドアを開けさせ踏み込み、制圧後に呈示。
  • 【問題提起】着手前ではなく執行後の呈示は適法か。
  • 【あてはめ】薬物は瞬時に処分されうるから、事後の短時分呈示も例外として適法。

📝 論文の型|場所に対する令状と居合わせた者の身体の捜索

  • 【コア規範】(逐語暗記=太字キーワード)場所に対する捜索差押許可状の効力は、その場所の管理権が及ぶ場所内に存在する物に及ぶが、その場に居合わせた者の身体には原則として及ばない(218条1項は『場所』と『身体』を区別する)。もっとも、対象物をその者が隠匿したと疑うに足りる十分な状況があり、かつ必要性・緊急性が認められる場合には、例外的に身体検査令状によるのと同程度の身体の捜索が許される。
  • 【復元キー】①場所の令状の効力は場所内に存在する物に及ぶ → ②居合わせた者の身体には原則及ばない(218Iは場所と身体を区別=別令状を予定) → ③例外=隠匿を疑う十分な状況+必要性・緊急性 → ④例外でも身体検査令状同等の限度にとどめる。
  • 【フル論証】場所に対する捜索差押許可状の効力は、その場所の管理権が及ぶ場所内に存在する物に及ぶが、その場に居合わせた者の身体には原則として及ばない(218条1項は『場所』と『身体』を区別し、別の令状を予定する)。もっとも、捜索の対象物をその者が隠匿したと疑うに足りる十分な状況があり、かつ必要性・緊急性が認められる場合には、例外的に、身体検査令状によるのと同程度の身体の捜索が許される。
  • 【事例】捜索中、居合わせた者がポケットに証拠を隠した。
  • 【問題提起】場所に対する令状で、その者のポケット内(身体)を捜索できるか。
  • 【あてはめ】隠匿の十分な疑い+必要性緊急性があれば例外的にポケット内捜索が許される。

短答ひっかけ

  • 捜索される家の被疑者に立会権はある? → (捜査段階・113を222①が準用せず)。
  • 宅配便を装ってドアを開けさせるのは違法? → 適法(錠の破壊より穏当=必要な処分)。
  • 令状は必ず着手前に呈示? → 原則そうだが、例外で制圧後の短時分呈示も可(証拠隠滅防止)。
  • 場所の令状で居合わせた人のポケットを必ず捜索できる? → (原則不可・例外=隠匿の疑い+必要性緊急性)。
  • 女子の身体の捜索に成年女子の立会いは絶対? → 急速を要するときは不要(115但書)。

→ 次回:逮捕に伴う捜索・差押え(220・令状不要/時間的・場所的・物的範囲)。

参照条文

  • 刑訴110条
  • 刑訴111条1項
  • 刑訴114条1項
  • 刑訴114条2項

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