刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#84

訴訟条件と3つの出口

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第3章 公訴 ⑪/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

起訴された後、裁判所がまず確かめること

外交官だった被告人・起訴状が届かなかった事件・時効が完成していた事件という三つの謎を並べ、どれも無罪ではないという板

前回まで、検察官がどの訴因で起訴するか、その訴因を変更できるかどうかを見てきました。今日は、これまで前提にしてきた訴訟条件そのものを見ていきます。今日はその訴訟条件を、体系立てて全部見ていきます。起訴された被告人が、実は外交官だった。起訴状が二か月届かなかった。時効がすでに完成していた。どれも「無罪」ではありません。では裁判所は、何と言って手続を終わらせるのか。そして、どれならもう一度起訴できるのか。先に答えを言うと、時効が完成していた場合だけは、処罰する権利そのものが消えているので、もう二度と起訴できません。今日はそこを見ていきます。

訴訟条件とは何か——中身に入る前の門

有罪無罪を決める実体審理に入る前の入口として訴訟条件を位置づけ実体裁判と形式裁判を分ける板

刑事裁判で、裁判所が最終的に判断するのは、有罪か無罪かです。この中身の判断に入るための前提条件が、訴訟条件です。これが欠けていると、裁判所は有罪・無罪の判断そのものに進まず、そこで手続を打ち切ります。ここで大事な区別があります。有罪・無罪という、事件の中身を判断した裁判を実体裁判と呼びます。無罪も、中身に入って判断した結果ですから、実体裁判です。これに対して、中身を判断せず、入口の条件を欠くことを理由に打ち切る裁判を、形式裁判と呼びます。イメージしやすいように、郵便物にたとえてみます。郵便物を、宛先の郵便局に出す場面を考えてください。郵便局の窓口で、そもそも受け付けられない郵便物には、理由がいくつかあります。宛先の管轄区域が違う郵便局に出してしまった。宛名の書き方に不備がある。あるいは、受取人がもう存在しない。どの場合も、窓口では中身を開けて読みません。訴訟条件が欠けているときの裁判所も、これと同じです。起訴状の中身、つまり有罪か無罪かを検討する前に、そもそも受け付けられる事件かどうかを確かめます。

刑事裁判権が及ばない者

外交官や元首には日本の刑事裁判権が及ばず起訴されても公訴棄却の判決になることを示す板

訴訟条件が欠ける典型を、一つ先に見ておきます。外国の元首や外交官には、日本の刑事裁判権が及びません。国際法上の外交特権によるものです。もし外交官が起訴されてしまったら、裁判所は有罪か無罪かを判断せず、裁判権がないことを理由に手続を打ち切ります。この打ち切り方が何と呼ばれるかは、このあとすぐ出てきます。

三つの出口の全体地図

訴訟条件の欠缺から管轄違いの判決公訴棄却の判決公訴棄却の決定免訴の判決という三つの出口へ枝分かれする一覧板

訴訟条件が欠けたときの打ち切り方、つまり出口は、三つに分かれます。一つ、管轄違い。二つ、公訴棄却。これは判決になる場合と決定になる場合の二種類があります。三つ、免訴。三つとも中身を判断しない形式裁判である点は共通しますが、何が欠けているかによって、この三つのどれになるかが決まります。郵便のたとえで言えば、管轄違いは出す場所を間違えた場合、公訴棄却は出し方に不備がある場合、免訴は届け先そのものが消えている場合です。順番に見ていきましょう。

管轄違い——場所を間違えた場合

管轄のない裁判所に起訴されたときは判決で管轄違いを言い渡すという329条の出口を三つの出口の地図の一つ目として示す板

条文刑事訴訟法第329条

刑事訴訟法第329条 被告事件が裁判所の管轄に属しないときは、判決で管轄違の言渡をしなければならない。但し、第二百六十六条第二号の規定により地方裁判所の審判に付された事件については、管轄違の言渡をすることはできない。

一つ目の出口、管轄違いです。管轄のない裁判所に起訴された場合、判決で管轄違いを言い渡します。事物管轄・土地管轄・関連事件管轄といった管轄の中身そのものは、#4で見た内容です。今日は、それが訴訟条件の一つの出口だという位置づけだけ押さえてください。正しい管轄の裁判所に出し直せば、また起訴できます。場所を間違えただけで、事件そのものが処罰できなくなったわけではないからです。

公訴棄却の判決——重く確かめる不備

裁判権欠如公訴取消し後の再起訴同一裁判所への二重起訴手続違反の包括条項という338条の四つの号を並べる板

二つ目の出口、公訴棄却です。まず判決になる場合を見ます。

条文刑事訴訟法第338条

刑事訴訟法第338条 左の場合には、判決で公訴を棄却しなければならない。一 被告人に対して裁判権を有しないとき。二 第三百四十条の規定に違反して公訴が提起されたとき。三 公訴の提起があつた事件について、更に同一裁判所に公訴が提起されたとき。四 公訴提起の手続がその規定に違反したため無効であるとき。

一号は、さっき見た、裁判権が及ばない者を起訴してしまった場合です。二号は、いったん公訴を取り消した後、新しい重要な証拠が見つからないまま同じ事件をもう一度起訴してしまった場合。三号は、公訴が提起されている事件について、さらに同じ裁判所に重ねて起訴してしまった場合です。四号は、公訴提起の手続そのものが規定に違反して無効になっている場合で、訴因が特定されていない、起訴状に事件と関係のない書類を添付してしまっている、親告罪なのに告訴がない、といった様々な不備がここに入る、幅の広い受け皿の号です。四号は包括的な受け皿の役割を果たします。この四号が実際にどう使われるかは、#78で反則金の手続を経ていない場合として、すでに具体的に見ました。

公訴棄却の決定——窓口で分かる不備

起訴状謄本の不送達罪となるべき事実を欠くこと公訴取消し被告人の死亡や法人の消滅二重起訴という339条の五つの号を並べる板

公訴棄却には、もう一つ、決定になる場合があります。

条文刑事訴訟法第339条

刑事訴訟法第339条 左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。一 第二百七十一条第二項の規定により公訴の提起がその効力を失つたとき。二 起訴状に記載された事実が真実であつても、何らの罪となるべき事実を包含していないとき。三 公訴が取り消されたとき。四 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。五 第十条又は第十一条の規定により審判してはならないとき。 前項の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

一号は、起訴状の謄本が期間内に送達されなかった場合です。条文を見ておきます。

条文刑事訴訟法第271条

刑事訴訟法第271条 裁判所は、公訴の提起があつたときは、遅滞なく起訴状の謄本を被告人に送達しなければならない。 公訴の提起があつた日から二箇月以内に起訴状の謄本が送達されないときは、公訴の提起は、さかのぼつてその効力を失う。

この場合、339条1項1号にあたり、決定で公訴棄却です。二号は、起訴状に書かれた事実がそのとおりだとしても、そもそも犯罪に当たる事実を含んでいない場合。三号は、検察官が公訴を取り消した場合。四号は、被告人が死亡したり、被告人である法人が無くなってしまった場合。五号は、同じ事件を複数の裁判所に起訴してしまうなど、審判してはならないと定められている場合です。この決定には、即時抗告という不服申立てができます。三号の公訴の取消しと、338条三号の同一裁判所への二重起訴は、似ているようで違います。そこは対比しておくと整理しやすいところです。338条三号は、同じ一つの裁判所に、同じ事件を二重に起訴してしまった場合。339条五号は、複数の裁判所に、それぞれ起訴してしまった場合です。同じ裁判所か、複数の裁判所かで、条文が分かれています。

なぜ判決と決定が分かれるのか

一見して明らかでない重い不備は判決で慎重に一見して明らかな軽い不備は決定で足早にという分かれ目を示す板

さっきの郵便局のたとえに戻ります。窓口で、封筒を開けなくても一目で分かる不備は、その場で突き返せます。宛名が書かれていない、差出人自身が取り下げを申し出た、といった不備です。これが決定にあたります。口頭弁論を開かず、資料を見ればすぐ判断できます。他方、封筒を開けて中身を確かめないと分からない不備、つまりそもそも受け付けてよい相手なのか、同じ窓口に二重に出されていないか、手続として無効と言えるかどうかは、慎重に確かめる必要があります。これが判決にあたり、口頭弁論を経て判断します。339条の五つの号は、どれも記録や資料を見ればすぐ確かめられるものです。だから決定で足ります。一方で、338条の四つの号は、裁判権の有無や、手続違反による無効かどうかなど、一見して明らかとは言えず、慎重な確認が必要なものばかりです。だから判決になります。

免訴——処罰する権利そのものが消えている場合

確定判決刑の廃止大赦時効完成という337条の四つの号を並べ処罰権そのものの消滅として位置づける板

三つ目の出口、免訴です。

条文刑事訴訟法第337条

刑事訴訟法第337条 左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。一 確定判決を経たとき。二 犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。三 大赦があつたとき。四 時効が完成したとき。

一号は、同じ事件についてすでに確定判決が出ている場合。一度確定した事件を、もう一度裁くことは許されません。二号は、犯罪の後、法令が改正されてその行為に対する刑が廃止された場合。三号は、大赦があった場合です。大赦とは、政令で定める罪について一律に赦免する制度で、恩赦法に定めがあります。

条文恩赦法第3条2号

恩赦法第3条2号 まだ有罪の言渡を受けない者については、公訴権は、消滅する。

まだ有罪判決を受けていない段階で大赦があれば、公訴権そのものが消滅します。四号は、公訴時効が完成した場合です。今日は337条の中の一つの事由として名前だけ押さえてください。免訴の四つの号は、いずれも個別に限られた事由です。338条四号のように、手続の違反を広く受け止める包括条項は、免訴にはありません。受取人がもう存在しない、あるいは受け取る権利自体が消えている場合です。確定判決を経た、刑が廃止された、大赦があった、時効が完成した。どれも、処罰する権利そのものが、すでに消えてしまっている状態です。だから免訴は、管轄違いや公訴棄却とは、少し性質が違います。なお、条文には無いものの、裁判所が手続を打ち切るべきだとされた例もあります。審理が異常なまでに長期化し、迅速な裁判を受ける権利が害されたという事案で、最高裁は、憲法が保障する迅速な裁判を受ける権利が害された異常な事態があれば、対処する具体的な規定がなくても手続を打ち切ってよい、としました。337条4号に準じて免訴とした第一審の判断を、最高裁が是認した事件です。条文にない事由での打ち切りという意味で、非類型的訴訟条件と呼ばれます。深入りはしませんが、頭の片隅に置いておいてください。

三つの出口を比較する——再訴できるか

管轄違いは再訴可能公訴棄却は再訴可能免訴だけ再訴不可という比較を一事不再理効との連動として示す一覧板

ここで三つの出口を並べて比較します。管轄違いは、正しい管轄の裁判所に出し直せば、再び起訴できます。公訴棄却も、判決の場合・決定の場合とも、欠けていた条件を備えれば、再び起訴できます。手続の不備を直せばやり直せる、という点で二つは共通しています。免訴だけは、再び起訴することができません。理由は、さっきの郵便物のたとえのとおりです。管轄違いも公訴棄却も、起訴の仕方、つまり手続の側に不備があるだけで、処罰する権利自体は生きています。ところが免訴事由は、確定判決・刑の廃止・大赦・時効完成のどれも、処罰する権利そのものが消えている場合です。権利が消えている以上、出し方をどう直しても、もう届けようがありません。冒頭の事件で言えば、起訴状の謄本が二か月届かなかった事件は、公訴棄却の決定で終わっても、改めて起訴して謄本を届け直せば足ります。時効が完成していた事件は、免訴で終わり、もう起訴できません。

免訴は、一事不再理効が働く場面と同じように、一度限りで終わりという効き方をします。管轄違いや公訴棄却が「その起訴のやり方」の不備にとどまるのに対して、免訴だけは「この事件を処罰できるかどうか」そのものに関わるからです。

何を基準に訴訟条件を判断するか

検察官の訴因が脅迫裁判所の心証が名誉毀損告訴なしという場面で心証基準なら公訴棄却訴因基準なら実体審理へという分岐図

ここまで、訴訟条件が欠けたときの出口を見てきました。では、そもそも訴訟条件が欠けているかどうかは、何を基準に判断するのでしょうか?#78で見たことを、思い出せますか?#78で見た話ですよね。裁判所の心証ではなく、訴因を基準にする、という。#78で確認したとおり、審判の対象は訴因です。そこから、訴訟条件を具備しているかどうかも、裁判所の実体審理の対象である訴因を基準として判断すべきだ、というのが通説です。審判の対象になっているのは、検察官が構成した訴因であって、裁判所の胸の内の心証ではありません。だから、その入口の条件である訴訟条件も、訴因を基準に見るのが筋が通っています。郵便局の窓口が、局員の思い込みではなく、封筒に実際に書かれた宛名で受け付けるかどうかを決めるのと同じです。#78では、この物差しを訴因変更という一つの場面に当てて見ましたが、今日はこの物差しが、訴因変更が絡まない場面でも常に働く一般論だということを確認します。

⭐ 論文で書く規範:訴訟条件の判断基準 訴訟条件を具備しているか否かは、裁判所の実体審理の対象である訴因を基準として判断すべきである。 (通説の規範(出どころ=審判対象は訴因であることからの解釈上の帰結))

#78のカードは、この物差しを、訴因変更の時点の問題に当てた東京地裁の裁判例を整理したものでした。今日のカードは、その土台になっている物差しだけを取り出したものです。例えば、こういう場面です。検察官が、脅迫罪の訴因で被告人を起訴しました。脅迫罪は親告罪ではありません。ところが審理が進むと、裁判所は、この事実は脅迫ではなく名誉毀損にあたるという心証を抱きます。名誉毀損は親告罪です。そして、この事件には告訴がありません。心証を基準にすれば、告訴の無い名誉毀損の事実として、直ちに公訴棄却になります。ですが、訴因を基準にすると、答えは変わります。審判の対象になっている訴因は、あくまで脅迫罪です。脅迫罪には告訴は要りません。だから訴訟条件は具備しており、直ちに公訴棄却にはならず、実体審理を続けます。

そのまま脅迫の訴因で無罪にしてしまうのは、実務上は避けたい結果です。そこで裁判所は、検察官に対して、訴因を名誉毀損に変更しないか、#82で見た求釈明という形で気づかせる措置を取ります。訴因を変更するかどうかは、あくまで検察官の判断です。大事なのは、訴訟条件の充足は、心証ではなく訴因を基準に見る、という物差しが、訴因変更の場面に限らず、いつでも働いているということです。

欠けていた訴訟条件は後から治せるか——告訴の場合

起訴の時点で告訴が無ければ後から告訴を得ても原則として足りないという告訴の追完の結論を示す板

訴訟条件が起訴の時点で欠けていたとき、後から補って治せるかという問題があります。まず、親告罪なのに告訴がないまま起訴してしまい、後から告訴を得た場合です。起訴の時点で欠けていた告訴は、後から得ても、原則として足りません。そのうえで、被告人が同意するなら追完を認めてよい、というように、被告人の同意が結論を分ける軸になる、と#70で整理しました。被告人の同意で分かれるのは、告訴を欠いた起訴を公訴棄却で打ち切ってもらえること自体が、被告人の側の利益だからです。その被告人が、このまま審理してほしいと言うなら、いったん打ち切って起訴し直す意味は乏しい、というわけです。

欠けていた訴訟条件は後から治せるか——訴因を入れ替えた場合

窃盗の訴因で起訴された事実が審理の中で親族相盗の特例にあたると分かり訴因の一部が変更され特例の適用のない事実が認定された経過を示す関係図

ところが、似たような場面で、違う筋道をとった判断があります。こういう経過の事件です。被告人は、窃盗罪の訴因で起訴されました。窃盗罪は、それだけなら親告罪ではありません。ところが審理が進むうちに、起訴状に書かれた窃盗の事実が、刑法の親族相盗の特例、#70で告訴の不可分の例外として見た規定、つまり親族の間の窃盗について告訴がなければ公訴を提起できないとする定めにあたることが明らかになりました。告訴はありません。そこで検察官は、訴因の一部について訴因変更の手続をとり、裁判所は、その特例が適用されない新しい訴因事実を認定しました。

告訴を欠いたまま親告罪にあたる部分を扱うという点では、告訴の追完と同じ構図に見えます。ですが、ここで最高裁が述べたことは、二つに分かれます。一つは、もとの訴因が訴訟条件を欠いていても、訴因を変更すること自体は許される、ということ。もう一つは、変更して認定された新しい事実の部分については、起訴がもともと有効だった、ということです。

判例最高裁判所第二小法廷 昭和29年9月8日決定(刑集8巻9号1471頁)

訴因の一部変更と告訴の要否 本件公訴にかかる窃盗の事実が、刑法二四四条一項後段の親告罪であるか否かは、最終的には、裁判所により事実審理の結果をまつて、判定さるべきものであり、必ずしも起訴状記載の訴因に拘束されるものではない。……本来の訴因が右の如く訴訟条件を欠くからといつて、現行法上、それだけで訴因の変更、追加を絶対に許さないとする理由は何ら存しない……刑法二四四条の適用のない新しい訴因事実が裁判所により認定され、確定されたのであるから、その部分に関する限り本件被告事件は、本来、親告罪でなかつた訳であり、従つてこの点に関する本件起訴手続は、告訴がなくても、もともと、有効であつて無効でなかつたことに帰するのである。

ここは注意が要るところです。この決定が述べているのは、後から欠けていたものを埋めた、という話ではありません。訴因変更によって新たに認定・確定された事実の部分は、親族相盗の特例にあたらない、つまりもともと親告罪ではなかった、という判断です。親告罪でなかった以上、その部分の起訴の手続は、告訴がなくても、初めから有効だったことになる。「後から治った」のではなく、「もともと欠けていなかった」という理屈です。だからこそ、結論が逆になります。告訴の追完は、足りないものを後から補おうとして、原則として足りないとされました。今回は、訴因を入れ替えた結果、その部分は最初から告訴の要らない事実だったと確定したので、有効です。この区別が、今日の眼目です。

この決定は、さっきの訴因基準説とつながっています。結論の部分は、訴因基準説で説明できます。入れ替えた後の訴因は、特例の適用のない窃盗です。基準になる訴因がこれなら、告訴は要りません。訴因が変われば、訴訟条件も一緒に変わるわけです。ただ、もとの訴因が条件を欠いていたと分かったのは、起訴状の書き方からではなく、審理で明らかになった事実からでした。この決定も冒頭で、親告罪かどうかは最終的には審理の結果を見て判定され、必ずしも起訴状の訴因に縛られない、と述べています。さっきの脅迫と名誉毀損の場面で言えば、心証の側に寄った見方です。ここが訴因基準説と緊張するところで、この決定そのものが訴因基準説を採ったわけではありません。

検察官が起訴の前に確かめること

三つの出口を裏返した点検表として裁判権二重起訴手続の適法性確定判決刑の廃止大赦時効を並べる板

最後に、今日見てきた出口を、検察官の側から裏返してみます。検察官は、起訴する前に、これまで見てきた訴訟条件を一通り確かめておく必要があります。管轄のある裁判所に起訴しているか。被告人に裁判権が及ぶか。同じ事件を二重に起訴していないか。公訴提起の手続に不備がないか、親告罪なら告訴はあるか。起訴状の謄本はきちんと送達されるか。被告人は生存しているか、法人なら存続しているか。そして、確定判決を経ていないか、刑が廃止されていないか、大赦がないか、時効が完成していないか。この点検を怠ると、今日見てきたどれかの出口で、手続が打ち切られてしまいます。

今日の地図(保存版)

訴訟条件の意義三つの出口再訴可否訴因基準説瑕疵の治癒を郵便物の差し戻しという一本の軸でまとめる板

今日のまとめです。有罪か無罪かという中身を判断する前に、裁判所はまず訴訟条件が揃っているかを確かめます。欠けていれば、中身に入らず手続を打ち切る形式裁判になります。出口は三つ。管轄違い、公訴棄却、そして免訴です。公訴棄却には、判決と決定の二つがあります。判決と決定は、欠缺が一見して明らかかどうかで分かれます。管轄違いと公訴棄却は、手続の不備を直せば再び起訴できますが、免訴だけは、処罰する権利そのものが消えているため、再び起訴することができません。そして、訴訟条件が揃っているかどうかは、裁判所の心証ではなく、審判対象である訴因を基準に判断します。欠けていた条件は、後から埋めても原則として足りませんが、訴因そのものが入れ替わって、初めから欠けていなかったことになる場合とは区別されます。

起訴された後の話だと思っていましたが、検察官が起訴する前に確かめるべきことでもあるんですね。訴訟条件は、裁判所が事件を受け取る側の入口であると同時に、検察官が事件を送り出す側の点検事項でもあります。

参照条文

  • 刑事訴訟法第329条
  • 刑事訴訟法第338条
  • 刑事訴訟法第339条
  • 刑事訴訟法第271条
  • 刑事訴訟法第337条
  • 恩赦法第3条2号

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