控訴審のしくみ(事後審・控訴理由/上告理由)
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第5章 裁判・救済 ③/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
控訴審の審理方式——3類型 〔短答・論文共通〕
二回目の裁判をどう進めるか。3つの型があります。一つ、覆審。完全なやり直し、リセットです。一審の結果は白紙。ゼロから証人尋問もやり直す。二つ、続審。一審の資料を使い、続きを行う。新しい証拠も足して、引き継いで結論を出す。三つ、事後審。一審判決の当否をチェック。やり直さず、一審の判断にミスがないかを審査する。
現行法は事後審 〔論文の骨格〕
では日本は、どれを採るか。それが、はっきりとは書いていません。だから、仕組み全体から解釈します。結論は事後審。一つ、控訴には法定の理由が要る。「なんとなく不服」ではダメ。誤りの指摘が必要。二つ、裁判所はその理由があるかを調査する。

392条。趣意書に書かれた事項は、調査しなければならない。三つ、結論がまず棄却か破棄かの形をとる。いきなり有罪と言わず、一審判決を維持か取消かを決める。その3点から、現行法は事後審と解されます。
控訴理由の4分類 〔短答・論文共通〕
事後審だから、控訴には法定の理由が要る。一審判決のどこが誤りか。4種類あります。一つ、訴訟手続の法令違反。裁判の進め方のミス。二つ、事実誤認。事実認定のミス。

やってないのにやったと認定した、など。ただし、誤認が判決に影響を及ぼすことが明らか、が要る。事実は正しいが、当てはめる法律を間違えた。窃盗でなく横領のはず、正当防衛で無罪のはず、など。実務では、これが非常に多い控訴理由です。
絶対的控訴理由と相対的控訴理由 〔論文の骨格〕
手続の法令違反は、さらに2つに分かれます。一つ、絶対的控訴理由。377条と378条のリスト。裁判所の構成違反、除斥裁判官の関与、公開違反。管轄の誤り、不告不理違反、判決理由の不備。これがあれば、判決への影響を擬制する。つまり、結果が変わったかの証明はいりません。二つ、相対的控訴理由。379条。それ以外の手続違反。こちらは、申立人が証明しないといけない。この違反がなければ違う判決だった、という蓋然性を。証明の責任が、絶対的と正反対なんです。
控訴の手続——2段階 〔短答知識〕
手続は2段階です。ここは提出先が頻出。まず、控訴申立書。これは第一審裁判所に出す。元の裁判所に、確定を止めて記録を送れと知らせる。この申立書には、控訴の理由は要りません。記録が高裁に届くと、第2段階へ。控訴趣意書。今度は控訴裁判所、高裁に直接出す。ここで初めて、具体的な控訴理由を書きます。申立書は一審へ、趣意書は高裁へ。整理を。
控訴審の審理の特則 〔論文の骨格〕
控訴審の審理は、一審と大きく違います。事後審ゆえ。一つ、被告人は出頭しなくてよい。

主に書面と法律論の場だからです。人定質問もない。二つ、新しい証拠は原則出せません。後出しを防ぐ。一審で出し尽くせ、という発想。三つ、弁論できるのは弁護士だけ。高度な法律論が要るので、特別弁護人は不可。趣意書に書かれた理由は、必ず調査する。さらに、書かれていない事項でも。弁護側が量刑不当しか言ってなくても。記録から絶対的控訴理由に気づけば、破棄できます。
控訴審の裁判——棄却か破棄か 〔論文の骨格〕
審理が終わると、結論は大きく2つ。

控訴理由がないとき、判決で控訴を棄却。396条。控訴理由があるとき、原判決を破棄。397条1項。なお、方式違反や控訴権消滅後の申立ては、395条で棄却。

原則は、差戻し。事件を一審に送り返す。事後審だから、自分で裁かず「やり直してこい」と返す。同等の他の裁判所に移送することもある。例外が、自判。高裁が自ら新しい判決を下す。400条の但書。記録から直ちに判決できる場合です。原則できません。事後審と矛盾するからです。例外は、原判決の破棄が予想される場合。判例です。
📝 論文の型
論文のコア規範。自判には、重い限界があります。一審が無罪。これを破棄して、有罪と自判する場面。できません。事実の取調べを経る必要があります。書面だけで無罪を有罪に覆すのは、防御権を害する。判例も、逆転有罪には事実の取調べを要するとする。射程は、事実認定を覆して有罪にする場面です。無罪が純粋な法律判断によるなら、別。同じ事実のまま法解釈だけで有罪にでき、取調べは不要です。
答案は、事実認定を覆す自判かどうかで切り分けます。
上告——最高裁への最後の上訴 〔短答・論文共通〕
控訴審の判決にも不服なら、最後は上告。最高裁です。ここが控訴審との最大の違い。理由が極端に狭い。

上告理由は、原則2つだけ。憲法違反と判例違反。最高裁は、純然たる法律審だからです。もっとも、救済の窓も用意されています。一つ、上告受理。406条。理由がなくても、法令解釈の重要事項を含めば受理できる。二つ、裁量破棄。411条。著しく正義に反するときは、職権で破棄できる。原則は狭く、例外で正義を担保する構造です。
今日の地図(保存版)
まとめます。控訴審は、事後審。一審の採点者。だから控訴理由が要り、新証拠は原則禁止。破棄したら、原則は差戻し。例外で自判。そして無罪を破棄して有罪自判するには、事実取調べ。上告は、憲法違反と判例違反だけの法律審。第5章③、控訴審のしくみでした。
次回予告——再審と非常上告 〔次回予告〕
再審と、非常上告。無辜の救済と、法令解釈の統一。お楽しみに。