刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#149

裁判の意義と種類

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第7章 裁判 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

導入

今日の地図と問い。第6章までは裁判所が審理する側→ここから結論を出す側。第7章の流れ=裁判の種類と成立→有罪判決の中身→認定の限界→量刑→簡易な手続→確定と一事不再理(今日は最初の1マス)。今日の4つの話=何が裁判か/判決・決定・命令の違い/いつ成立していつ変えられなくなるか/宣告で身柄がどうなるか。問い=判決を言い渡している最中に誤りに気づいたら、言い直してよいか 図:今日の地図と問い

  • 第6章までは裁判所が審理する側→ここから結論を出す側
  • 第7章の流れ=裁判の種類と成立→有罪判決の中身→認定の限界→量刑→簡易な手続→確定と一事不再理(今日は最初の1マス)
  • 今日の4つの話=何が裁判か/判決・決定・命令の違い/いつ成立していつ変えられなくなるか/宣告で身柄がどうなるか
  • 問い=判決を言い渡している最中に誤りに気づいたら、言い直してよいか

判決の宣告の日です。裁判官が、判決の結論である主文を読み上げます。拘禁刑4年。ただし、その刑の執行を3年間猶予する。続けて、理由を説明している途中で、裁判官は気づきました。拘禁刑4年の言渡しには、執行猶予を付けられません。執行猶予が付けられるのは、3年以下の拘禁刑などの場合だけです。さて、すでに声に出して言ってしまった主文を、その場で、実刑に言い直してよいのでしょうか。告げた言葉の重みにも、正しい判決を出すという要請にも、理由があります。先に方向だけ言うと、言い直せる場合があります。鍵は、裁判がいつ成立し、いつ変えられなくなるかです。今日の山場の1つです。前回の最後に、予告しました。判決と、決定と、命令が、どう違うのか。これが、今日の出発点です。地図で位置を確かめます。第6章までは、裁判所は、審理をする側でした。ここからは、審理の結果を出す側の話になります。第7章全体は、裁判の種類と成立から始まり、有罪判決の中身、認定の限界、量刑、簡易な手続を経て、裁判の確定と一事不再理で終わります。今日は、その最初の1マス、裁判そのものの総論です。今日の話は4つです。何が裁判なのか。裁判がどう分かれるのか。裁判がいつ成立するのか。そして、宣告があると被告人の身柄がどうなるのか。

裁判の意義

裁判の意義。裁判=裁判機関(裁判所又は裁判官)の意思表示を内容とする訴訟行為。日常語の「裁判」=審理そのもの→法律語=意思表示。含む=有罪・無罪の判決/捜査段階で裁判官が令状を発付すること/保釈の許否の決定。含まない=検察官・弁護人の意思表示(起訴・論告・弁論)/令状の執行などの事実行為 図:裁判の意義

  • 裁判=裁判機関(裁判所又は裁判官)の意思表示を内容とする訴訟行為
  • 日常語の「裁判」=審理そのもの→法律語=意思表示
  • 含む=有罪・無罪の判決/捜査段階で裁判官が令状を発付すること/保釈の許否の決定
  • 含まない=検察官・弁護人の意思表示(起訴・論告・弁論)/令状の執行などの事実行為

最初に、言葉を決めます。日常語の裁判は、法廷で審理が行われている状態そのものを指します。ところが、訴訟法の裁判は、もっと狭い言葉です。裁判機関、つまり、裁判所または裁判官の意思表示を内容とする訴訟行為です。訴訟行為のうち、判断や意思を外に示すものが、意思表示です。裁判は、その主体が、裁判所か裁判官に限られます。具体例で弁別します。有罪や無罪の判決は、裁判です。捜査の段階で、裁判官が逮捕状や捜索差押許可状などの令状を発付するのも、裁判です。保釈を許すか許さないかの決定も、裁判です。起訴は、裁判ではありません。意思表示の主体が、検察官だからです。起訴も、論告も、弁護人の弁論も、裁判機関の意思表示ではありません。さらに、令状の執行は、意思表示ではなく、実際に物を押さえたり人を拘束したりする事実行為ですから、これも裁判ではありません。1人の被告人で通してみます。Sが逮捕され、裁判官が勾留状を出しました。これは裁判です。その勾留状で、Sを実際に留置施設に入れる。これは事実行為です。検察官がSを起訴する。主体が検察官なので、裁判ではありません。覚えるのは、1文です。裁判とは、裁判機関の意思表示を内容とする訴訟行為。主体と、意思表示かどうか、この2点で見分けます。

終局裁判と非終局裁判

裁判の分類(その1)。軸=その審級で訴訟を終了させる効果があるか。非終局裁判=終局前(逮捕199条・勾留60条・保釈89条90条・移送4条7条19条・証拠の採否)/終局後(訴訟費用執行免除の決定500条)。終局裁判=訴訟をその審級で終わらせる裁判(次の板で実体裁判と形式裁判に分ける) 図:裁判の分類

  • その1
  • 軸=その審級で訴訟を終了させる効果があるか。非終局裁判=終局前(逮捕199条・勾留60条・保釈89条90条・移送4条7条19条・証拠の採否)
  • 終局後(訴訟費用執行免除の決定500条)。終局裁判=訴訟をその審級で終わらせる裁判(次の板で実体裁判と形式裁判に分ける)

裁判を分ける軸が、2つあります。1つ目は、中身の軸です。まず、その審級で訴訟を終わらせるかどうかで、終局裁判と非終局裁判に分けます。非終局裁判は、訴訟を終わらせない裁判です。まず、終局の前にされるものです。逮捕の裁判、勾留の裁判、保釈の裁判、事件の移送、証拠の採否の決定などです。勾留も保釈も、訴訟を前に進めるための手段であって、訴訟を終わらせません。終局のあとにも、非終局の裁判があるのですか。あります。たとえば、訴訟費用の執行免除の決定です。判決が出て訴訟が終わった後に、費用の負担をどうするかを決める裁判です。終わったあとの裁判なので、訴訟を終わらせる効果はありません。これも非終局です。一方、終局裁判は、その審級の訴訟を終わらせる裁判です。次に、終局裁判を、さらに2つに分けます。

実体裁判と形式裁判

裁判の分類(その2)終局裁判を中身で分ける。実体裁判=事件の実体を判断した裁判=有罪判決(刑の言渡し333条・刑の免除334条)・無罪判決(336条)/形式裁判=実体に入らず手続を打ち切る裁判=管轄違い(329条)・公訴棄却(判決338条・決定339条)・免訴(337条)。免訴は形式裁判=免訴事由があれば有罪・無罪の判断に入らず免訴を言い渡す(形式裁判先決主義)。免訴判決に対し無罪を主張して上訴はできない。免訴判決の確定後の効力(一事不再理効)は通説は肯定(憲法39条)=詳細は後の回 図:裁判の分類

  • その2
  • 終局裁判を中身で分ける。実体裁判=事件の実体を判断した裁判=有罪判決(刑の言渡し333条・刑の免除334条)・無罪判決(336条)
  • 形式裁判=実体に入らず手続を打ち切る裁判=管轄違い(329条)・公訴棄却(判決338条・決定339条)・免訴(337条)。免訴は形式裁判=免訴事由があれば有罪・無罪の判断に入らず免訴を言い渡す(形式裁判先決主義)。免訴判決に対し無罪を主張して上訴はできない。免訴判決の確定後の効力(一事不再理効)は通説は肯定(憲法39条)=詳細は後の回

ここで、前の回の復習を1問です。無罪判決は、実体裁判ですか、形式裁判ですか?その理由もあわせて答えてください。終局裁判のうち、事件の中身を判断したのが実体裁判です。有罪判決の、刑の言渡しと刑の免除。そして、無罪判決です。他方、中身に入らず、入口の条件を欠くとして打ち切るのが、形式裁判です。管轄違い、公訴棄却、免訴です。それぞれの出口の中身は、訴訟条件の回で見ました。今日は、この2つの枠に置くだけにします。免訴は、形式裁判なのですね。被告人にとって、無罪のほうが望ましいように思いますが、無罪を主張できないのですか。実は、そこが問題になります。免訴の事由があるなら、裁判所は有罪か無罪かの実体判断に入るべきではなく、免訴を言い渡さなければなりません。これを、形式裁判先決主義といいます。入口の条件が欠けているのに、中身を審理するのは筋が通らないからです。事案を見ます。不敬罪で起訴された被告人が、第一審で有罪になりました。その翌日に、大赦令が施行されました。大赦は恩赦の一種で、裁判の途中で大赦があると、その罪についての公訴権が消滅します。控訴審は、大赦令の施行後も実体審理を続けて有罪と判断しながら、主文では免訴を言い渡しました。被告人は、無罪を主張して上告しました。最高裁は、こう述べました。

判例最大判昭23・5・26 刑集2巻6号529頁

免訴判決に対して無罪を主張する上訴 しかして大赦の場合には、裁判所としては免訴の判決をする一途であり、被告人の側でも、無罪を主張して、実体の審理を要求することはできないのであるから、原審がした免訴の判決に対して無罪を主張して上訴することもまた違法であるといわなければならない。

結論は、上告棄却です。免訴事由があるときは、裁判所は免訴を言い渡すほかありません。被告人の側も、無罪を主張して実体の審理を求めることができません。ですから、免訴判決に対して、無罪を主張して上訴することも、許されません。決め手は、さきほどの形式裁判先決主義です。大赦で、公訴権そのものが消えています。公訴権が消えた以上、裁判所は実体の審理をすることができません。有罪か無罪かを決める土台が、もうないのです。しかも、免訴でも、被告人が処罰されることはありません。この事件は、旧法の下の判決ですが、現行法で言えば、大赦は337条3号の免訴事由です。免訴判決が確定したあと、同じ事件で、もう一度起訴されないという効力があるかどうかは、通説は肯定しています。憲法39条が根拠です。ただし、確定後の効力は、後の回でまとめて扱います。

判決・決定・命令の比較表

判決・決定・命令の比較表(主役)。①主体=判決は裁判所/決定は裁判所/命令は裁判官。②口頭弁論=判決は必要(43条1項・特別の定のある場合を除く)/決定・命令は不要(同2項)・必要があれば事実の取調べ(同3項)。③理由=判決は常に必要(44条1項)/上訴を許さない決定・命令は不要(同2項・ただし428条2項の異議ができる決定を除く)。④上訴=判決は控訴(372条)・上告(405条)/決定は抗告(420条)/命令は準抗告(429条)。具体例=判決=有罪・無罪・免訴・管轄違い・公訴棄却(338条)/決定=公訴棄却(339条)・移送・証拠採否・保釈の許否/命令=令状の発付・第1回公判期日前の勾留の裁判 図:判決・決定・命令の比較表

  • 主役
  • ①主体=判決は裁判所
  • 決定は裁判所
  • 命令は裁判官。②口頭弁論=判決は必要(43条1項・特別の定のある場合を除く)
  • 決定・命令は不要(同2項)・必要があれば事実の取調べ(同3項)。③理由=判決は常に必要(44条1項)
  • 上訴を許さない決定・命令は不要(同2項・ただし428条2項の異議ができる決定を除く)。④上訴=判決は控訴(372条)・上告(405条)
  • 決定は抗告(420条)
  • 命令は準抗告(429条)。具体例=判決=有罪・無罪・免訴・管轄違い・公訴棄却(338条)
  • 決定=公訴棄却(339条)・移送・証拠採否・保釈の許否
  • 命令=令状の発付・第1回公判期日前の勾留の裁判

ここから、形の軸です。裁判を、判決、決定、命令の3つに分けます。山場の比較表です。見る軸は4つ。主体、口頭弁論、理由、上訴です。なぜ形が3つに分かれるのか。判決は、主に、その審級の訴訟に決着をつける、いちばん重い裁判です。だから、口頭弁論と、理由と、控訴・上告という厚い手続を付けます。決定と命令は、手続の途中で素早く出す必要のある判断が中心なので、手続を軽くしてあります。1つ目、主体です。判決と決定は、裁判所がします。命令は、裁判官がします。ここでの裁判所は、事件を担当する裁判体のことで、裁判官が1人の単独体のこともあります。命令は、裁判体としてではなく、個々の裁判官としてする判断です。2つ目、口頭弁論です。43条を、全文で読みます。

条文刑事訴訟法第43条第1項〜第3項

刑事訴訟法第43条第1項・第2項・第3項 判決は、この法律に特別の定のある場合を除いては、口頭弁論に基いてこれをしなければならない。 2 決定又は命令は、口頭弁論に基いてこれをすることを要しない。 3 決定又は命令をするについて必要がある場合には、事実の取調をすることができる。

判決は、口頭弁論に基づいてしなければなりません。つまり、公判廷での審理を経る必要があります。決定と命令は、口頭弁論を要しません。ただし、必要があるときは、事実の取調べができます。事実の取調べは、公判の証拠調べと同じことですか。違います。証拠調べは、公判廷で、法定の方式に従って行い、証拠能力も要ります。事実の取調べは、決定や命令に必要な範囲で、もっと簡易な方法でできます。公判廷での方式も、証拠能力も、要りません。たとえば、保釈の許否を決めるために、書類を調べたり、関係者に事情を聞いたりする場面です。3つ目、理由です。44条を読みます。

条文刑事訴訟法第44条第1項・第2項

刑事訴訟法第44条第1項・第2項 裁判には、理由を附しなければならない。 2 上訴を許さない決定又は命令には、理由を附することを要しない。但し、第四百二十八条第二項の規定により異議の申立をすることができる決定については、この限りでない。

原則は、1項のとおり、裁判には理由を付けます。例外が2項です。上訴を許さない決定や命令には、理由は要りません。ただし、428条2項の異議ができる決定は、例外のさらに例外で、理由が要ります。判決は上訴ができますから、判決には、常に理由が必要です。4つ目、上訴です。判決に対する不服申立ては、控訴と上告です。決定に対しては、抗告です。命令に対しては、準抗告です。準抗告は、以前の回の勾留から出る道具で見ました。決定した時点の裁判官の判断そのものを争うものでした。決定や命令なら、何でも抗告や準抗告ができるのですか。違います。限りがあります。判決前の訴訟手続に関する決定は、原則として抗告ができません。ただし、勾留、保釈、押収などは、例外として、抗告ができます。命令に対する準抗告も、429条1項に列挙された場合に限ります。忌避の申立ての却下、勾留、保釈、押収、鑑定留置、過料などです。なお、公訴棄却の決定には、即時抗告ができます。339条2項です。なぜ限るのか。途中の判断は、最後の判決に対する控訴の中で、まとめて争えば足ります。逮捕状の発付は、命令の典型例ですが、429条1項の列挙には入っていません。つまり、準抗告の対象にならないという点も、覚えておいてください。逮捕の段階には、こうした不服申立ての道具がありません。争えるのは、勾留に進んでからの準抗告でした。勾留から出る道具の回で見たとおりです。

具体例の弁別

具体例の弁別。判決=有罪・無罪・管轄違い・公訴棄却(338条)・免訴。決定=公訴棄却(339条)・移送・証拠採否・保釈の許否・第1回公判期日後の勾留。命令=令状の発付・第1回公判期日前の勾留の裁判(起訴前=207条・起訴後第1回公判期日まで=280条1項)。同じ「公訴棄却」でも338条各号(裁判権なし・340条違反の再起訴・二重起訴・公訴提起の手続の無効)は判決/339条各号(271条2項の失効・罪となるべき事実を包含しない・公訴取消し・被告人の死亡・10条11条)は決定 図:具体例の弁別

  • 判決=有罪・無罪・管轄違い・公訴棄却(338条)・免訴
  • 決定=公訴棄却(339条)・移送・証拠採否・保釈の許否・第1回公判期日後の勾留
  • 命令=令状の発付・第1回公判期日前の勾留の裁判(起訴前=207条・起訴後第1回公判期日まで=280条1項)
  • 同じ「公訴棄却」でも338条各号(裁判権なし・340条違反の再起訴・二重起訴・公訴提起の手続の無効)は判決/339条各号(271条2項の失効・罪となるべき事実を包含しない・公訴取消し・被告人の死亡・10条11条)は決定

表を使って、具体例を3つに分けます。判決になるのは、有罪、無罪、管轄違い、免訴、そして、338条による公訴棄却です。決定になるのは、339条による公訴棄却、移送、証拠採否、保釈の許否です。命令になるのは、令状の発付と、第1回公判期日より前の勾留に関する裁判です。判決になるか決定になるかは、条文が決めています。ここで1問です。公訴棄却の裁判が決定になるのは、338条と339条のどちらでしょうか。339条です。338条は判決だったと思います。訴訟条件の回で見たとおり、338条の各号は、被告人に裁判権がないとき、340条に違反して再び起訴したとき、同じ事件を重ねて起訴したとき、公訴提起の手続が無効のとき、などです。これらは、判決で公訴を棄却します。他方、339条の各号は、起訴状の失効、罪となるべき事実を含まない場合、公訴の取消し、被告人の死亡などです。これらは、決定で棄却します。同じ公訴棄却でも、条文によって、判決と決定に分かれるのです。分け方は、条文が決めています。そのうえで、理由をあえて言うなら、こう整理されます。339条には、被告人が亡くなった、検察官が公訴を取り消した、のように、記録や起訴状を見れば明白な事由が多く並んでいます。決定と命令は口頭弁論を要しない、という43条2項のとおり、こうした事由は、決定で足りると整理されるわけです。たとえば、被告人が判決の前に病気で亡くなったら、裁判所は、決定で公訴を棄却します。

次は、勾留の裁判です。起訴の前の勾留は、裁判官がします。207条です。起訴の後、第1回の公判期日までの勾留は、280条1項で、やはり裁判官の仕事です。保釈の回でも読んだ、280条1項です。

条文刑事訴訟法第280条

刑事訴訟法第280条 公訴の提起があつた後第一回の公判期日までは、勾留に関する処分は、裁判官がこれを行う。

ですから、第1回公判期日までの勾留の裁判は、裁判官の判断で、命令です。これに対して、第1回の公判期日のあとの勾留は、審理を担当する裁判所自身が判断します。主体が裁判所ですから、決定です。同じ勾留でも、いつの裁判かで、命令と決定に分かれます。

裁判の内部的成立と公判手続の更新

裁判の成立(その1)内部的成立。意思表示は機関の内で決まり(内部的成立)→外に告げられる(外部的成立)。内部的成立=裁判の内容が機関内部で客観的に形成され、外部への告知の手続だけを残している状態。単独の裁判官=裁判書を作るときはその作成により/作らないときは主文がメモなどで客観的に認識できる状態になったとき。合議体=評議が終了したとき(評議=構成員が意見を交換し相談すること・過半数で決める=裁判所法77条)。内部的成立にとどまる間は内容を自由に変更できる。内部的成立の後=すでに成立した内容を告知するだけ→判決の宣告だけを残して裁判官が代わっても更新不要(315条ただし書) 図:裁判の成立

  • その1
  • 内部的成立。意思表示は機関の内で決まり(内部的成立)→外に告げられる(外部的成立)。内部的成立=裁判の内容が機関内部で客観的に形成され、外部への告知の手続だけを残している状態。単独の裁判官=裁判書を作るときはその作成により
  • 作らないときは主文がメモなどで客観的に認識できる状態になったとき。合議体=評議が終了したとき(評議=構成員が意見を交換し相談すること・過半数で決める=裁判所法77条)。内部的成立にとどまる間は内容を自由に変更できる。内部的成立の後=すでに成立した内容を告知するだけ→判決の宣告だけを残して裁判官が代わっても更新不要(315条ただし書)

ここから、裁判の成立です。裁判は、2段階で成立します。まず、裁判機関の中で意思が決まる。これが内部的成立です。次に、それが外に告げられる。これが外部的成立です。喩えるなら、合格発表です。採点会議で合否が決まる。これが内部的成立。発表の会場で番号が読み上げられる。これが外部的成立です。内部的成立とは、裁判の内容が機関の内部で客観的に形づくられ、あとは外に告知する手続だけが残っている状態です。単独の裁判官なら、裁判書を作るときは、その作成による、とされます。裁判書を作らないときは、結論の主文が、メモなどで客観的に認識できる状態になったとき、とされます。合議体なら、評議が終了したときです。評議とは、裁判官たちが意見を交換し、相談することです。結論は、過半数で決めます。内部的成立にとどまっている間は、まだ内容を自由に変えられます。合格発表の前なら、採点会議で決め直せるのと同じです。ここで、前の回の復習を1問です。開廷後に裁判官が代わったとき、なぜ手続の更新が必要なのでしたか?

判断する裁判官自身が、証拠を直接見て、口頭で聞いていないといけないからです。直接主義と口頭主義の要請でした。315条を、あらためて読みます。

条文刑事訴訟法第315条

刑事訴訟法第315条 開廷後裁判官がかわつたときは、公判手続を更新しなければならない。但し、判決の宣告をする場合は、この限りでない。

今日見るのは、但書です。判決の宣告をする場合は、更新が要りません。理由は、内部的成立にあります。内部的成立のあとは、すでに決まった内容を告げるだけです。新しく証拠を見て判断するのではありません。ですから、宣告だけを残して裁判官が代わっても、直接主義や口頭主義が問題になりません。

裁判の外部的成立と告知

裁判の成立(その2)外部的成立=内部で成立した内容が外部に表示された状態=告知。公判廷=宣告(裁判長が行う・規則35条1項)/公判廷外=裁判書の謄本の送達(規則34条)。判決は必ず公判廷で宣告により告知(342条)=郵送では告知できない。宣告の方式=主文と理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げる(規則35条2項)。結審は訴訟の終了ではない=判決が宣告され確定するまで訴訟は係属 図:裁判の成立

  • その2
  • 外部的成立=内部で成立した内容が外部に表示された状態=告知。公判廷=宣告(裁判長が行う・規則35条1項)
  • 公判廷外=裁判書の謄本の送達(規則34条)。判決は必ず公判廷で宣告により告知(342条)=郵送では告知できない。宣告の方式=主文と理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げる(規則35条2項)。結審は訴訟の終了ではない=判決が宣告され確定するまで訴訟は係属

内部で決まった裁判は、外に告げられて、外部的成立になります。この方法を、告知といいます。まず、判決の告知を、342条で確かめます。

条文刑事訴訟法第342条

刑事訴訟法第342条 判決は、公判廷において、宣告によりこれを告知する。

判決は、必ず公判廷で、宣告によって告知します。判決書を郵送して済ませることはできません。ほかの裁判の告知の方法は、刑事訴訟規則が定めています。34条です。

条文刑事訴訟規則第34条

刑事訴訟規則第34条 裁判の告知は、公判廷においては、宣告によつてこれをし、その他の場合には、裁判書の謄本を送達してこれをしなければならない。ただし、特別の定めのある場合は、この限りでない。

公判廷では宣告です。公判廷の外では、裁判書の謄本を送達します。次に、宣告のやり方です。35条です。

条文刑事訴訟規則第35条第1項・第2項

刑事訴訟規則第35条第1項・第2項 裁判の宣告は、裁判長がこれを行う。 2 判決の宣告をするには、主文及び理由を朗読し、又は主文の朗読と同時に理由の要旨を告げなければならない。

宣告をするのは、裁判長です。判決の宣告では、主文と理由を朗読するか、主文を読むのと同時に理由の要旨を告げます。弁論が終わって結審したら、それで訴訟は終わりなのですか。違います。結審は、審理を終えることにすぎません。訴訟は、判決が宣告され、それが確定するまで続いています。

自己拘束力と冒頭の問い

裁判の成立(その3)自己拘束力と言い直し。流れ=内部的成立(評議終了・主文の確定)→外部的成立(宣告=公判廷)→宣告のための公判期日の終了→自己拘束力(変更できなくなる)。「言い直しができる区間」=内部的成立から宣告のための公判期日の終了まで。外部的に成立すると裁判所自身が内容に拘束される=自己拘束力。上訴を許す裁判は上訴によってのみ変更。特別の規定による例外=訂正(上告裁判所の判決・415条)・更正(決定・423条2項) 図:裁判の成立

  • その3
  • 自己拘束力と言い直し。流れ=内部的成立(評議終了・主文の確定)→外部的成立(宣告=公判廷)→宣告のための公判期日の終了→自己拘束力(変更できなくなる)。「言い直しができる区間」=内部的成立から宣告のための公判期日の終了まで。外部的に成立すると裁判所自身が内容に拘束される=自己拘束力。上訴を許す裁判は上訴によってのみ変更。特別の規定による例外=訂正(上告裁判所の判決・415条)・更正(決定・423条2項)

外部的に成立すると、裁判所は、その内容に自分で拘束されます。変更も、撤回も、できなくなります。これを自己拘束力といいます。上訴を許す裁判は、上訴を通じてだけ、変更されます。例外は、特別の規定がある場合です。上告裁判所の判決の訂正が、415条にあります。決定については、更正が、423条2項にあります。そうすると、冒頭の問いは、難しく見えます。宣告で外部的に成立したのなら、もう言い直せないはずです。けれども、最高裁は、こう判断しました。まず、事案です。単独の裁判官が、保護観察付きの執行猶予の主文を朗読し、理由を説明しました。その後、書記官の指摘を受けて記録を見直し、約5分後に、主文は間違いだったと述べて、実刑を言い渡し直しました。前の刑の保護観察中の犯行なので、執行猶予にできないと誤解していたのです。実際には、前の刑の猶予期間はすでに経過していて、執行猶予を付けることに支障はありませんでした。最高裁は、判決の宣告について、こう述べました。

判例最判昭51・11・4 刑集30巻10号1887頁

判決の宣告と言い直し 判決の宣告は、全体として一個の手続であつて、宣告のための公判期日が終了するまでは、完了するものではない。また、判決は、事件に対する裁判所の最終的な判断であつて、宣告のための公判期日が終了するまでは、終局的なものとはならない。そうしてみると、判決は、宣告のための公判期日が終了して初めて当の裁判所によつても変更することができない状態となるものであり、それまでの間は、判決書又はその原稿の朗読を誤つた場合にこれを訂正することはもとより(略)、本件のようにいつたん宣告した判決の内容を変更してあらためてこれを宣告することも、違法ではないと解するのが相当である。

冒頭の問いの答え=判決の言い直し。判例(最判昭51・11・4)=判決の宣告は全体として一個の手続=宣告のための公判期日が終了するまでは完了しない。言い直し=期日が終了するまでは、いったん宣告した内容を変更してあらためて宣告しても違法でない。自己拘束力との関係=法廷での宣告という告知は期日が終わったときに完了する→判決が裁判所自身を縛るのもそこから。注意=言い直しが適法でも結論が覆ることはある(判例の事案=量刑が甚しく不当として破棄)。答え=言い直してよい。ただし宣告のための公判期日が終わるまで

  • 冒頭の問いの答え=判決の言い直し
  • 判例(最判昭51・11・4)=判決の宣告は全体として一個の手続=宣告のための公判期日が終了するまでは完了しない
  • 言い直し=期日が終了するまでは、いったん宣告した内容を変更してあらためて宣告しても違法でない
  • 自己拘束力との関係=法廷での宣告という告知は期日が終わったときに完了する→判決が裁判所自身を縛るのもそこから
  • 注意=言い直しが適法でも結論が覆ることはある(判例の事案=量刑が甚しく不当として破棄)
  • 答え=言い直してよい
  • ただし宣告のための公判期日が終わるまで

構造を分けます。判決の宣告は、全体で1個の手続です。そして、宣告のための公判期日が終了するまでは、完了していません。ですから、判決は、その期日が終わって初めて、当の裁判所にも変えられない状態になります。それまでは、いったん宣告した内容を変えて、あらためて宣告し直しても、違法ではありません。最初に言った自己拘束力との関係は、こうなります。法廷での宣告という告知は、宣告の期日が終わったときに、ようやく完了します。だから、判決が裁判所自身を縛るのも、そこからです。期日の途中は、まだ告知の手続の最中なのです。なぜ、期日の終わりで線を引くのか。判決は、事件に対する裁判所の最終的な判断です。最終と言えるのは、宣告の期日が終わったときです。それまでに誤りに気づいたなら、正しい判断を示させるほうが、判決の役割に合うからです。冒頭の問いの答えです。言い直してよい。ただし、宣告のための公判期日が終わるまでの間に限られます。合格発表で言えば、発表の会が終わるまでは読み間違いを直せますが、会が終わったあとは、主催者自身も動かせないのと同じです。

言い直した実刑は、最後に覆りました。そこは注意が必要です。言い直しそのものは、適法で有効でした。ところが、最高裁は、量刑が甚しく不当だと判断しました。いったん宣告した主文を変更するに至った経過を考えると、第一審判決を維持するのは著しく正義に反する、と見たのです。そこで、第一審と控訴審の判決を破棄して、最初に言い渡された執行猶予付きの判決を、自ら言い渡しました。言い直しが適法でも、結論が覆ることはあるのです。もう1つ、区別してください。判例の事案は、執行猶予を付けられるのに、付けられないと誤解した場合でした。冒頭の設例は、拘禁刑4年で、そもそも執行猶予を付けられない場合を、私が作ったものです。事情は違いますが、判決の宣告が全体で1個の手続で、期日が終わるまでは完了しないという判断の理屈は、どちらにも当てはまります。この理屈は、論文でも問われうる点です。

宣告と身柄その1 勾留状が失効する裁判

宣告と身柄その1(345条)。勾留中の被告人に対し次の裁判の告知があると勾留状は失効=釈放。無罪・免訴・刑の免除・刑の全部の執行猶予・公訴棄却(338条4号による場合を除く)・罰金・科料。失効しない=管轄違い・338条4号の公訴棄却・拘禁刑以上の実刑(実刑は343条の別の扱い)。一部執行猶予は「刑の全部の執行猶予」ではない=345条の対象外。趣旨=身体拘束の必要がなくなる裁判。例=勾留中のSに拘禁刑2年・3年間執行猶予→宣告で釈放 図:宣告と身柄その1

  • 345条
  • 勾留中の被告人に対し次の裁判の告知があると勾留状は失効=釈放。無罪・免訴・刑の免除・刑の全部の執行猶予・公訴棄却(338条4号による場合を除く)・罰金・科料。失効しない=管轄違い・338条4号の公訴棄却・拘禁刑以上の実刑(実刑は343条の別の扱い)。一部執行猶予は「刑の全部の執行猶予」ではない=345条の対象外。趣旨=身体拘束の必要がなくなる裁判。例=勾留中のSに拘禁刑2年・3年間執行猶予→宣告で釈放

次は、実務に直結する話です。判決の宣告があると、被告人の身柄は、どうなるのか。先に予想してください。勾留中の被告人に、刑の全部の執行猶予を言い渡しました。釈放されるでしょうか? 実刑だったら、保釈中の被告人は、どうなるでしょうか?大筋はそのとおりで、身柄の扱いは、判決の中身で分かれます。条文で確かめます。まず、釈放される場合です。345条です。

条文刑事訴訟法第345条

刑事訴訟法第345条 無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、公訴棄却(第三百三十八条第四号による場合を除く。)、罰金又は科料の裁判の告知があつたときは、勾留状は、その効力を失う。

列挙された裁判の告知があると、勾留状は失効します。判決が確定するのを待たず、宣告の時点で釈放されます。趣旨は、これらの裁判では、身体を拘束しておく必要がなくなるからです。たとえば、勾留中のSに、拘禁刑2年、3年間の執行猶予という判決が宣告されたとします。宣告された瞬間に、勾留状は効力を失い、Sは釈放されます。弁別の落とし穴が2つあります。1つ目は、列挙にないものです。管轄違いと、338条4号の公訴棄却、つまり手続が無効だとする場合は、345条には入っていません。勾留状は失効しません。2つ目は、一部執行猶予です。条文は、刑の全部の執行猶予と書いています。一部執行猶予は、刑の一部は実際に執行される、拘禁刑を言い渡す判決ですから、345条の対象ではありません。実刑の側、つまり次に読む343条の「拘禁刑以上の刑に処する判決」の側に入る、と覚えてください。

宣告と身柄その2 実刑判決の宣告

宣告と身柄その2(343条・344条)。拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告→保釈・勾留の執行停止は失効(343条1項・判決の宣告で当然に生じる=取消しと違い裁判所の判断を挟まない)→失効後は収容(343条2項前段=98条の準用・新たに保釈等の決定がある場合を除く)。宣告後は権利保釈(89条)と勾留更新の制限(60条2項ただし書)は不適用(344条1項)。再保釈は裁量保釈(90条)が中心(権利保釈は不適用)→344条2項=不利益が著しく高い場合に限る(ただし保釈された場合に逃亡するおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときは別)。令和5年改正(令和5年6月6日施行)で追加=従来の判断のあり方を条文で明確にしたもの。例=保釈中のSに拘禁刑2年6月(実刑)→宣告で保釈失効→収容 図:宣告と身柄その2

  • 343条・344条
  • 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告→保釈・勾留の執行停止は失効(343条1項・判決の宣告で当然に生じる=取消しと違い裁判所の判断を挟まない)→失効後は収容(343条2項前段=98条の準用・新たに保釈等の決定がある場合を除く)。宣告後は権利保釈(89条)と勾留更新の制限(60条2項ただし書)は不適用(344条1項)。再保釈は裁量保釈(90条)が中心(権利保釈は不適用)→344条2項=不利益が著しく高い場合に限る(ただし保釈された場合に逃亡するおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときは別)。令和5年改正(令和5年6月6日施行)で追加=従来の判断のあり方を条文で明確にしたもの。例=保釈中のSに拘禁刑2年6月(実刑)→宣告で保釈失効→収容

次は、実刑判決の宣告です。ここで、前の回の復習を1問です。保釈の取消しと、判決の宣告による失効は、何が違いましたか? 裁判所の判断を挟むのは、どちらですか?取消しは、裁判所が事由を判断して、決定で行います。失効は、判決の宣告があれば、判断を挟まず当然に生じます。343条1項を読みます。

条文刑事訴訟法第343条第1項

刑事訴訟法第343条第1項 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつたときは、保釈又は勾留の執行停止は、その効力を失う。

拘禁刑以上の実刑判決が宣告されると、保釈も、勾留の執行停止も、当然に失効します。保釈中のSに、拘禁刑2年6か月の実刑が宣告されたとします。その瞬間、保釈は失効します。新たに保釈などの決定がない限り、Sは、あらためて収容されます。343条2項前段が、98条を準用しているからです。勾留の執行停止は、勾留から出る道具の回で見た、勾留の効力を残したまま一時的に外に出す仕組みでした。趣旨は、345条と逆向きです。実刑が言い渡されると、刑の執行が現実に迫り、逃げる動機が強まります。だから、刑の執行を確保するために、保釈をいったん切るのです。

保釈を請求すること自体は、できます。ただし、保釈の条件が、変わります。344条です。

条文刑事訴訟法第344条第1項・第2項

刑事訴訟法第344条第1項・第2項 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第六十条第二項ただし書及び第八十九条の規定は、これを適用しない。 2 拘禁刑以上の刑に処する判決の宣告があつた後は、第九十条の規定による保釈を許すには、同条に規定する不利益その他の不利益の程度が著しく高い場合でなければならない。ただし、保釈された場合に被告人が逃亡するおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときは、この限りでない。

1項です。宣告後は、60条2項ただし書と、89条が適用されません。60条2項ただし書は、勾留の更新を原則1回に限る定めです。この制限が外れます。89条は、保釈の回で見た権利保釈、つまり除外事由に当たらなければ請求があれば許す保釈です。これが使えなくなります。したがって、保釈は、裁判所の裁量で認める、90条の保釈が中心になります。そして2項です。この裁量保釈を許すには、90条に規定する不利益、つまり、健康上、経済上、社会生活上、防御の準備上の不利益などの程度が、著しく高い場合でなければなりません。ただし、保釈されても被告人が逃亡するおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときは、この限りではありません。

2項の性格を見ておきます。2項は、令和5年の改正で加わり、同じ年の6月6日に施行されました。従来から、実刑判決の宣告後の裁量保釈は、慎重に判断されていました。その判断のあり方を、条文で明確にしたものです。整理します。宣告の前は、権利保釈と裁量保釈の2段です。実刑が宣告されると、保釈は失効して、収容されます。再び保釈を求めるなら、権利保釈は使えず、裁量保釈が中心です。そのうえで、不利益が著しく高いか、逃亡のおそれの程度が高くない相当な理由があるときに、許されることになります。

宣告と身柄その3 無罪判決のあとの再勾留

宣告と身柄その3 無罪判決のあとの再勾留。流れ=A(被告人)→第1審で無罪(勾留状は345条で失効・釈放)→B(検察官)が控訴→C(控訴審)が勾留できるか。最決平12=できる(60条1項・時期に特段の制約なし)。記録等の調査で無罪判決の理由の検討を経たうえでなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、勾留の理由と必要性があれば審理の段階を問わず勾留できる(新たな証拠の取調べを待つ必要なし)。最決平19=嫌疑の程度は無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重に判断・第1審段階におけるものよりも強いものが要求される。実刑後の保釈失効(343条)とは別の話 図:宣告と身柄その3 無罪判決のあとの再勾留

  • 流れ=A(被告人)→第1審で無罪(勾留状は345条で失効・釈放)→B(検察官)が控訴→C(控訴審)が勾留できるか
  • 最決平12=できる(60条1項・時期に特段の制約なし)
  • 記録等の調査で無罪判決の理由の検討を経たうえでなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、勾留の理由と必要性があれば審理の段階を問わず勾留できる(新たな証拠の取調べを待つ必要なし)
  • 最決平19=嫌疑の程度は無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重に判断・第1審段階におけるものよりも強いものが要求される
  • 実刑後の保釈失効(343条)とは別の話

最後の論点です。第一審で無罪になり、345条によって勾留状が失効して、被告人Aは釈放されました。検察官Bが控訴しました。このとき、控訴審のCは、Aを、あらためて勾留できるのでしょうか。345条の趣旨を重んじて、できないと考える立場もありました。ところが、最高裁は、できると判断しました。事案は、不法残留などの外国人の被告人です。無罪判決で釈放されると、入管で退去強制の手続が進むという状況でした。控訴審は、第1回の公判の前、控訴趣意書の提出前に、記録だけを調べて勾留しました。最高裁は、こう述べました。

判例最決平12・6・27 刑集54巻5号461頁

無罪判決後の控訴審による勾留 裁判所は、被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由がある場合であって、刑訴法六〇条一項各号に定める事由(以下「勾留の理由」という。)があり、かつ、その必要性があるときは、同条により、職権で被告人を勾留することができ、その時期には特段の制約がない。 ……第一審裁判所が犯罪の証明がないことを理由として無罪の判決を言い渡した場合であっても、控訴審裁判所は、記録等の調査により、右無罪判決の理由の検討を経た上でもなお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると認めるときは、勾留の理由があり、かつ、控訴審における適正、迅速な審理のためにも勾留の必要性があると認める限り、その審理の段階を問わず、被告人を勾留することができ、所論のいうように新たな証拠の取調べを待たなければならないものではない。

結論は、できる、です。60条1項は、裁判所が職権で被告人を勾留できる時期に、特段の制約を設けていません。無罪判決のあとでも、控訴審が、記録を調べ、無罪判決の理由を検討したうえで、なお罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があり、勾留の理由と必要性があるなら、審理の段階を問わず勾留できます。新たな証拠の取調べを待つ必要もありません。無罪になった被告人にとって、何の歯止めもなく勾留されてしまうのですか。違います。歯止めを示したのが、もう1つの最高裁の判断です。この事件は、覚醒剤取締法違反などで起訴された外国人の被告人で、在留資格がなく、無罪判決のあとは入管に収容されていました。訴訟記録が控訴審に届いた日の翌日に、再び勾留されました。

判例最決平19・12・13 刑集61巻9号843頁

無罪判決後の勾留と嫌疑の程度 刑訴法345条は、無罪等の一定の裁判の告知があったときには勾留状が失効する旨規定しており、特に、無罪判決があったときには、本来、無罪推定を受けるべき被告人に対し、未確定とはいえ、無罪の判断が示されたという事実を尊重し、それ以上の被告人の拘束を許さないこととしたものと解されるから、被告人が無罪判決を受けた場合においては、同法60条1項にいう「被告人が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由」の有無の判断は、無罪判決の存在を十分に踏まえて慎重になされなければならず、嫌疑の程度としては、第1審段階におけるものよりも強いものが要求されると解するのが相当である。

345条の趣旨を、勾留の判断に生かしたものです。無罪判決があれば、本来無罪推定を受ける被告人に、無罪の判断が示されたという事実を尊重する必要があります。だから、控訴審が勾留するときの嫌疑の程度は、第一審の段階より強いものが求められます。整理します。無罪のあとでも、控訴審は勾留できます。ただし、勾留の理由と必要性があることに加えて、嫌疑が第一審段階より強いものでなければなりません。この強い嫌疑の要求は、無罪判決が出た場合の話です。無罪の判断が示されたという事実を尊重するためです。この再勾留の話は、実刑判決のあとの保釈の失効とは、別の話です。混同しないでください。この点も、論文で問われうるところです。

裁判の確定は地図の一マス

裁判の確定(地図の1マス)。形式的確定=通常の不服申立てができなくなった状態/内容的確定=確定で裁判の内容が効力を持つこと(拘束力・執行力)。中身は後の回 図:裁判の確定

  • 地図の1マス
  • 形式的確定=通常の不服申立てができなくなった状態
  • 内容的確定=確定で裁判の内容が効力を持つこと(拘束力・執行力)。中身は後の回

地図の最後の1マスだけ、確かめておきます。裁判の確定です。通常の不服申立てができなくなった状態を、形式的確定といいます。そして、確定によって、裁判の内容が拘束力や執行力を持つことを、内容的確定といいます。その効力を、内容的確定力と呼びます。今日は、この2つの言葉の区別だけにとどめます。中身は、地図の後ろのほうで、あらためて扱います。

節目のミニ事例と短答

節目のミニ事例と短答。(a)令状の発付は命令・第1回公判期日前の勾留は命令・以後は決定/(b)公訴棄却で判決=338条・決定=339条/(c)免訴判決に無罪を主張して上訴できるか×/(d)判決の宣告だけを残して裁判官が代わった→更新不要/(e)宣告のための公判期日が終わる前に主文を言い直す→適法/(f)勾留中の被告人に刑の全部の執行猶予→釈放・実刑を宣告された保釈中の被告人→保釈失効・収容/(g)一審無罪後に控訴審が勾留→できる・嫌疑は第1審段階より強いもの/(h)実刑宣告後の裁量保釈は不利益が著しく高い場合に限る(逃亡のおそれの程度が高くない相当な理由があれば別) 図:節目のミニ事例と短答

節目のミニ事例です。最初の3つ。1つ目。逮捕状の発付は、判決、決定、命令のどれですか。第1回公判期日より前の勾留の裁判と、期日より後の勾留の裁判は、どう違いますか。逮捕状の発付は、裁判官がする命令です。第1回公判期日より前の勾留は、裁判官の命令で、期日より後は、裁判所が行う決定です。2つ目。公訴棄却が判決になるのは、何条の場合ですか。338条です。339条の公訴棄却は決定でした。3つ目。免訴判決に対して、無罪を主張して上訴できますか。できません。免訴事由があるときは免訴を言い渡すほかなく、無罪を求めて実体審理を要求できないからです。次の2つは、成立の問題です。判決の宣告だけを残して裁判官が代わりました。公判手続の更新は必要ですか。

必要ありません。315条の但書で、判決の宣告をする場合は、更新が要りません。内部的に成立したあとは、告知するだけだからです。もう1問。宣告のための公判期日が終わる前に、いったん言い渡した主文を言い直しました。これは違法ですか。適法です。判決の宣告は、全体で1個の手続で、期日が終わるまでは完了しません。ただ、量刑が不当なら、結論が覆ることはありえます。次は、身柄の問題が3つです。勾留中の被告人に刑の全部の執行猶予を言い渡すと、どうなりますか。実刑を宣告された保釈中の被告人は、どうなりますか。全部の執行猶予なら、345条で勾留状が失効して釈放されます。実刑なら、343条で保釈が失効して収容されます。残る2つは、○×です。第一審で無罪になった被告人を、控訴審が勾留できる。○です。ただし、嫌疑の程度は、第一審段階より強いものが必要です。実刑判決の宣告後は、裁量保釈も、不利益が著しく高い場合に限られます。これも○ですが、保釈された場合に逃亡するおそれの程度が高くないと認めるに足りる相当な理由があるときは、この限りではありません。

今日の地図(保存版)

まとめの地図。裁判=裁判機関の意思表示を内容とする訴訟行為。分類=終局/非終局→実体(有罪・無罪)/形式(管轄違い・公訴棄却・免訴)。判決・決定・命令=主体・口頭弁論・理由・上訴。成立=内部的成立→外部的成立(告知)→宣告のための公判期日の終了。宣告後の身柄=345条で勾留状失効(無罪・免訴・刑の免除・全部の執行猶予・公訴棄却・罰金・科料)/343条・344条で実刑宣告後は保釈失効・裁量保釈が中心/無罪後も控訴審は勾留できる(嫌疑は第1審より強いもの)。冒頭の問いの答え=宣告のための公判期日が終わるまでは言い直せる 図:まとめの地図

  • 裁判=裁判機関の意思表示を内容とする訴訟行為
  • 分類=終局/非終局→実体(有罪・無罪)/形式(管轄違い・公訴棄却・免訴)
  • 判決・決定・命令=主体・口頭弁論・理由・上訴
  • 成立=内部的成立→外部的成立(告知)→宣告のための公判期日の終了
  • 宣告後の身柄=345条で勾留状失効(無罪・免訴・刑の免除・全部の執行猶予・公訴棄却・罰金・科料)/343条・344条で実刑宣告後は保釈失効・裁量保釈が中心/無罪後も控訴審は勾留できる(嫌疑は第1審より強いもの)
  • 冒頭の問いの答え=宣告のための公判期日が終わるまでは言い直せる

今日のまとめです。裁判とは、裁判機関の意思表示を内容とする訴訟行為です。令状の発付や保釈の許否も裁判で、起訴や弁論は裁判ではありません。中身の軸では、終局か非終局かで分け、終局裁判を実体裁判と形式裁判に分けました。免訴は形式裁判で、免訴判決に無罪を主張して上訴することはできません。形の軸では、判決、決定、命令です。判決と決定は裁判所、命令は裁判官。判決だけが口頭弁論を要し、理由は常に必要です。上訴は、判決が控訴と上告、決定が抗告、命令が準抗告です。同じ公訴棄却でも、338条は判決、339条は決定です。成立は、内部的成立と外部的成立の2段階です。内部的成立のあとは告知するだけですから、判決の宣告だけを残して裁判官が代わっても、更新は要りません。外部的に成立すると自己拘束力が生じますが、判決の宣告は全体で1個の手続です。冒頭の問いの答えは、宣告のための公判期日が終わるまでは、言い直してよい、です。宣告後の身柄です。無罪、免訴、刑の免除、刑の全部の執行猶予、公訴棄却、罰金、科料では、勾留状が失効します。拘禁刑以上の実刑では、保釈が失効し、再び保釈を求めるなら権利保釈は使えず、裁量保釈が中心で、不利益が著しく高い場合か、逃亡のおそれの程度が高くない相当な理由がある場合に、許されます。無罪のあとでも、控訴審は、嫌疑が第一審段階より強いものであることを条件に、勾留できます。次は、有罪判決の中身です。判決書には何を書き、罪となるべき事実を、どこまで具体的に書くのかを見ます。

参照条文

  • 刑事訴訟法第43条第1項〜第3項
  • 刑事訴訟法第44条第1項・第2項
  • 刑事訴訟法第280条
  • 刑事訴訟法第315条
  • 刑事訴訟法第342条
  • 刑事訴訟規則第34条
  • 刑事訴訟規則第35条第1項・第2項
  • 刑事訴訟法第345条
  • 刑事訴訟法第343条第1項
  • 刑事訴訟法第344条第1項・第2項

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