刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#148

被害者の関与②被害者参加と損害の回復

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第6章 公判の応用 ⑤/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

導入

今日の地図と問い。被害者への配慮の4本柱=保護(済)/情報提供(済)/関与参加=心情等の意見陳述(前回・済)・被害者参加(今日)/損害回復(今日)。問い=被害者が検察官の隣に座り被告人に自分で質問できるなら、検察官の代わりに有罪・無罪を争えるのか 図:今日の地図と問い

  • 被害者への配慮の4本柱=保護(済)/情報提供(済)/関与参加=心情等の意見陳述(前回・済)・被害者参加(今日)/損害回復(今日)
  • 問い=被害者が検察官の隣に座り被告人に自分で質問できるなら、検察官の代わりに有罪・無罪を争えるのか

法廷で、検察官の隣に、被害者が座っています。被告人に、自分の口で質問もできます。それなら、被害者は、検察官の代わりに、有罪か無罪かを争えるのでしょうか。実は、被害者は検察官の代わりにはなれません。被害者にできることは、法律が数えた5つだけです。そして、できないことも、はっきり決まっています。今日の山場は、この線引きです。前回の終わりに予告した、被害者が裁判に参加する仕組みを、今日は扱います。地図で位置を確かめます。被害者への配慮は、4本の柱でした。保護と、情報提供は済みました。関与や参加のうち、前回の心情等の意見陳述も済んでいます。今日は、その次の段階の被害者参加と、柱の4本目、損害回復です。設例は、少し変えます。飲食店を営むSさんが、被告人のRに殴られて、怪我をしました。傷害の事件です。問いは1つです。参加した被害者は、検察官の代わりになれるのか。答えは、5つの権限と、認められない権限を並べたところで出します。

なぜ参加制度ができたのか

参加制度の背景。心情等の意見陳述は「限られた意見の陳述」にとどまる→不十分とされた。犯罪被害者等基本法(平成16年)=尊厳にふさわしい処遇を保障される権利(基本理念・3条1項)/刑事手続への参加の機会を拡充する制度整備を国・地方公共団体に求める(18条)→平成17年の基本計画=直接関与できる制度を検討→平成19年改正で被害者参加制度(運用開始は翌年)。ただし導入の条件=検察官と被告人・弁護人が主導して主張・立証するという基本構造を損なわない 図:参加制度の背景

  • 心情等の意見陳述は「限られた意見の陳述」にとどまる→不十分とされた
  • 犯罪被害者等基本法(平成16年)=尊厳にふさわしい処遇を保障される権利(基本理念・3条1項)/刑事手続への参加の機会を拡充する制度整備を国・地方公共団体に求める(18条)→平成17年の基本計画=直接関与できる制度を検討→平成19年改正で被害者参加制度(運用開始は翌年)
  • ただし導入の条件=検察官と被告人・弁護人が主導して主張・立証するという基本構造を損なわない

まず、なぜこの制度ができたのかです。前回の意見陳述は、被害者が気持ちを述べる制度でした。しかし、述べられるのは、限られた意見だけです。法廷の流れを見て、必要なことを聞く場面はありません。そこで、以前の回の年表で見た、平成16年の犯罪被害者等基本法です。被害者の尊厳にふさわしい処遇を保障される権利を、基本理念に掲げました。そして、刑事手続への関与の制度を整えるよう、国などに求めた法律です。18条です。翌年の基本計画で、被害者が直接関われる制度の検討が決まり、平成19年の改正で、被害者参加制度が導入されました。ここで、大事な但し書きがあります。導入にあたって、検察官と、被告人や弁護人が、主張と立証を主導するという、裁判の基本の形を損なわないように、慎重な配慮がされました。この配慮が、今日の底流です。あとで、冒頭の問いの答えとして戻ってきます。

参加できる者と許可の手続

参加の許可の流れ(316条の33)。被害者等・法定代理人(または委託を受けた弁護士)→あらかじめ検察官に申出(2項)→検察官が意見を付して裁判所に通知→裁判所が被告人又は弁護人の意見を聴く→犯罪の性質・被告人との関係等を考慮して相当と認めるとき、決定で許可(1項)。許可された者=被害者参加人。取消し(3項)=被害者等でないことが明らかになった/罰条変更で対象事件でなくなった/相当でないと認めるに至った。許否の決定は公判前整理手続の中でもできる(316条の5・12号) 図:参加の許可の流れ

  • 316条の33
  • 被害者等・法定代理人(または委託を受けた弁護士)→あらかじめ検察官に申出(2項)→検察官が意見を付して裁判所に通知→裁判所が被告人又は弁護人の意見を聴く→犯罪の性質・被告人との関係等を考慮して相当と認めるとき、決定で許可(1項)。許可された者=被害者参加人。取消し(3項)=被害者等でないことが明らかになった
  • 罰条変更で対象事件でなくなった
  • 相当でないと認めるに至った。許否の決定は公判前整理手続の中でもできる(316条の5・12号)

条文は、316条の33です。まず1項を、全文で読みます。

条文刑事訴訟法第316条の33第1項柱書

刑事訴訟法第316条の33第1項柱書 裁判所は、次に掲げる罪に係る被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から、被告事件の手続への参加の申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、決定で、当該被害者等又は当該被害者の法定代理人の被告事件の手続への参加を許すものとする。

申し出られる罪は、号で絞られています。続けて、各号を読みます。

条文刑事訴訟法第316条の33第1項各号

刑事訴訟法第316条の33第1項各号(対象事件) 一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪 二 刑法第百七十六条、第百七十七条、第百七十九条、第二百十一条、第二百二十条又は第二百二十四条から第二百二十七条までの罪 三 前号に掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(第一号に掲げる罪を除く。) 四 自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)第四条、第五条又は第六条第三項若しくは第四項の罪 五 第一号から第三号までに掲げる罪の未遂罪

部品に分けます。申し出られるのは、被害者等と、被害者の法定代理人です。被害者等は、前回までと同じ意味で、被害者本人と、被害者が亡くなったり心身に重大な故障があったりする場合の、配偶者、直系の親族、兄弟姉妹です。この人たちから委託を受けた弁護士も、申し出られます。裁判所が、決定でします。ただし、その前に、被告人又は弁護人の意見を聴きます。聴く相手は、被告人の側です。そして、犯罪の性質や、被告人との関係などを考えて、相当と認めるときに許します。続きの2項と3項を読みます。

条文刑事訴訟法第316条の33第2項・第3項

刑事訴訟法第316条の33第2項・第3項 2 前項の申出は、あらかじめ、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。 3 裁判所は、第一項の規定により被告事件の手続への参加を許された者(以下「被害者参加人」という。)が当該被告事件の被害者等若しくは当該被害者の法定代理人に該当せず若しくは該当しなくなつたことが明らかになつたとき、又は第三百十二条の規定により罰条が撤回若しくは変更されたため当該被告事件が同項各号に掲げる罪に係るものに該当しなくなつたときは、決定で、同項の決定を取り消さなければならない。犯罪の性質、被告人との関係その他の事情を考慮して被告事件の手続への参加を認めることが相当でないと認めるに至つたときも、同様とする。

2項です。申出は、あらかじめ、検察官にします。裁判所に直接ではありません。検察官は、意見を付けて、裁判所に通知します。前回の意見陳述と、同じ形です。窓口は、検察官です。3項の前半が、被害者参加人の定義です。許可を受けた人を、被害者参加人と呼びます。許可されたあとに、取り消されることもあるのですか。あります。3つの場合です。被害者等ではないことが明らかになったとき。罰条が変更されて、対象の事件でなくなったとき。そして、参加を認めることが相当でないと認めるに至ったときです。もう1つ、押さえます。参加を許すかどうかの決定は、公判前整理手続の中でもできます。316条の5の12号です。ただし、あとで見るとおり、公判前整理手続の期日に、参加人が出席することは、認められていません。許可はできても、期日には出られない。この組み合わせです。

対象事件

対象事件(316条の33第1項1〜5号)。人の生命・身体・自由を害する罪に限定。1号=故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人・傷害・傷害致死・強盗致死傷・危険運転致死傷・不同意性交等致死傷等)。2号=不同意わいせつ(176)・不同意性交等(177)・監護者わいせつ及び監護者性交等(179)・業務上過失致死傷等(211)・逮捕監禁(220)・略取誘拐等(224〜227)。3号=2号のほか、その犯罪行為に2号の罪の犯罪行為を含む罪(例=強盗・不同意性交等)。4号=自動車運転死傷処罰法4条・5条・6条3項4項。5号=1〜3号の未遂。過失も入る。対象外の例=窃盗・恐喝・詐欺・薬物犯罪。前回の意見陳述は罪名の制限なし 図:対象事件

  • 316条の33第1項1〜5号
  • 人の生命・身体・自由を害する罪に限定。1号=故意の犯罪行為により人を死傷させた罪(殺人・傷害・傷害致死・強盗致死傷・危険運転致死傷・不同意性交等致死傷等)。2号=不同意わいせつ(176)・不同意性交等(177)・監護者わいせつ及び監護者性交等(179)・業務上過失致死傷等(211)・逮捕監禁(220)・略取誘拐等(224〜227)。3号=2号のほか、その犯罪行為に2号の罪の犯罪行為を含む罪(例=強盗・不同意性交等)。4号=自動車運転死傷処罰法4条・5条・6条3項4項。5号=1〜3号の未遂。過失も入る。対象外の例=窃盗・恐喝・詐欺・薬物犯罪。前回の意見陳述は罪名の制限なし

号を、順に見ます。対象になるのは、個人の尊厳の根幹にある、人の生命、身体、自由を害する罪です。5つの型があります。1号は、故意の犯罪行為で、人を死傷させた罪です。傷害や傷害致死、殺人のほか、強盗致傷や危険運転致死傷などです。結果的加重犯、つまり、傷害のつもりが死なせてしまった傷害致死のような罪も入ります。2号は、不同意わいせつ、不同意性交等、監護者わいせつ及び監護者性交等、業務上過失致死傷等、逮捕及び監禁、略取と誘拐などの罪です。3号は、2号の罪のほかに、その犯罪行為に、2号の罪の犯罪行為を含む罪です。たとえば、強盗と、不同意性交等が一緒になった罪です。4号は、自動車運転死傷処罰法の、過失運転致傷などです。5号は、1号から3号の未遂罪です。

過失の罪も入る点が、短答の落とし穴です。2号の業務上過失致死傷も、4号の過失運転致傷も入ります。故意の罪だけではありません。この点は、あとで見る、被告人に賠償を命じる手続、損害賠償命令と対比します。覚えておいてください。逆に、入らない罪は、何ですか。窃盗、恐喝、詐欺、薬物犯罪などです。生命、身体、自由を害する罪ではないからです。設例で確かめます。RがSさんを殴って怪我をさせた。傷害ですから、1号で、Sさんは参加を申し出られます。一方、前回の設例のように、Rが脅してお金を出させた恐喝なら、参加はできません。

恐喝の被害者は、何もできないのですか。違います。前回の意見陳述には、罪名の制限がありませんでした。恐喝でも、Sさんは、心情を述べられます。罪名が限られるのは、参加のほうです。前回の予告の、答え合わせです。

公判期日への出席

権限1 公判期日への出席(316条の34)。参加人(または委託を受けた弁護士)は公判期日に出席できる(1項)。公判期日は参加人に通知(2項)。多数のとき裁判所は代表者の選定を求められる(3項)。審理の状況・人数等に照らし相当でないとき全部又は一部の出席を許さない(4項)。公判準備での証人尋問・検証にも準用(5項)。公判前整理手続の期日には出席できない。出席時の道具(316条の39)=付添い/被告人との間の遮へい/傍聴人との間の遮へい 図:権限1 公判期日への出席

  • 316条の34
  • 参加人(または委託を受けた弁護士)は公判期日に出席できる(1項)。公判期日は参加人に通知(2項)。多数のとき裁判所は代表者の選定を求められる(3項)。審理の状況・人数等に照らし相当でないとき全部又は一部の出席を許さない(4項)。公判準備での証人尋問・検証にも準用(5項)。公判前整理手続の期日には出席できない。出席時の道具(316条の39)=付添い
  • 被告人との間の遮へい
  • 傍聴人との間の遮へい

ここから、参加人の5つの権限を、順に見ます。1つ目は、出席です。316条の34を、全文で読みます。

条文刑事訴訟法第316条の34

刑事訴訟法第316条の34 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、公判期日に出席することができる。 2 公判期日は、これを被害者参加人に通知しなければならない。 3 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士が多数である場合において、必要があると認めるときは、これらの者の全員又はその一部に対し、その中から、公判期日に出席する代表者を選定するよう求めることができる。 4 裁判所は、審理の状況、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の数その他の事情を考慮して、相当でないと認めるときは、公判期日の全部又は一部への出席を許さないことができる。 5 前各項の規定は、公判準備において証人の尋問又は検証が行われる場合について準用する。

1項で、参加人は、公判期日に出席できます。実際には、検察官の隣に座るのが運用です。2項で、公判期日は、参加人に通知されます。例外があります。4項です。審理の状況や、人数などを考えて、相当でないときは、全部又は一部の出席を許さないことができます。たとえば、参加人があとで証人になる予定で、先に審理を聞くと、証言に影響が出るおそれがあるときです。3項は、人数が多いときの代表者の選定です。5項は、公判準備での証人尋問や検証への準用です。もう1つ、条文は「公判期日」と書いています。公判前整理手続の期日は、含まれません。さきほどの、許否の決定はできても期日には出られない、の理由です。ところで、被告人の目の前に座るのは、つらい場合もあります。そのための道具が、316条の39にあります。ここで、復習を1問です。以前の回で見た、証人尋問での付添い、遮へい、ビデオリンクは、何条で、どんな場合に使えましたか?

付添いは157条の4、遮へいは157条の5、ビデオリンクは157条の6でした。付添いは、不安や緊張のおそれがあるとき。遮へいとビデオリンクは、それに加えて、相当と認めるときでした。参加人にも、同じ形の道具があります。316条の39です。著しく不安や緊張を覚えるおそれがあるとき、付添いを付けられます。被告人との間と、傍聴人との間に、遮へいを設けることもできます。道具は、証人のときと同じ発想です。

検察官への意見の申述

権限2 検察官への意見申述(316条の35)。参加人は検察官に対し、その事件についての検察官の権限の行使に関し意見を述べられる。検察官は権限を行使し又は行使しないこととしたとき、必要に応じ理由を説明する義務を負う。意見に従う義務はない。例=傷害致死の事件で遺族が殺人への訴因変更を希望→検察官は殺意を立証する証拠がないことを説明 図:権限2 検察官への意見申述

  • 316条の35
  • 参加人は検察官に対し、その事件についての検察官の権限の行使に関し意見を述べられる。検察官は権限を行使し又は行使しないこととしたとき、必要に応じ理由を説明する義務を負う。意見に従う義務はない。例=傷害致死の事件で遺族が殺人への訴因変更を希望→検察官は殺意を立証する証拠がないことを説明

2つ目は、検察官への意見の申述です。316条の35です。

条文刑事訴訟法第316条の35

刑事訴訟法第316条の35 被害者参加人又はその委託を受けた弁護士は、検察官に対し、当該被告事件についてのこの法律の規定による検察官の権限の行使に関し、意見を述べることができる。この場合において、検察官は、当該権限を行使し又は行使しないこととしたときは、必要に応じ、当該意見を述べた者に対し、その理由を説明しなければならない。

参加人は、検察官の権限の行使について、意見を言えます。検察官は、権限を行使した、あるいは行使しないと決めたときに、必要に応じて、理由を説明しなければなりません。意見に従う義務は、あるのですか。ありません。義務は、理由を説明することです。たとえば、被害者が亡くなった傷害致死の事件で、遺族が、殺人罪への訴因変更を求めたとします。検察官は、殺意を立証する証拠がない、と説明すれば足ります。訴因を決める権限は、検察官にあるからです。趣旨は、こうです。前回の意見陳述は、あらかじめ気持ちを伝える制度でした。しかし、公判は、刻々と進みます。検察官と参加人が、その場で意思疎通できるようにする。それがこの規定です。ここから先の3つの権限も、同じ型です。窓口は、検察官です。

証人尋問と被告人質問

権限3 証人尋問(316条の36)と権限4 被告人質問(316条の37)。証人尋問=情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項に限る。検察官の尋問が終わった後直ちに・尋問事項を明らかにして検察官に申出→検察官が意見を付して通知→裁判所が被告人又は弁護人の意見を聴き許可。被告人質問=参加人が意見の陳述をするために必要がある場合に限る。あらかじめ質問事項を明らかにして検察官に申出→検察官が意見を付して通知→裁判所が被告人又は弁護人の意見を聴き許可。どちらも裁判長は範囲外の尋問・質問を制限できる

3つ目と4つ目は、尋問と質問です。まず、証人尋問の316条の36を、全文で読みます。

条文刑事訴訟法第316条の36

刑事訴訟法第316条の36 裁判所は、証人を尋問する場合において、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者がその証人を尋問することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、審理の状況、申出に係る尋問事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、情状に関する事項(犯罪事実に関するものを除く。)についての証人の供述の証明力を争うために必要な事項について、申出をした者がその証人を尋問することを許すものとする。 2 前項の申出は、検察官の尋問が終わつた後(検察官の尋問がないときは、被告人又は弁護人の尋問が終わつた後)直ちに、尋問事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら尋問する場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。 3 裁判長は、第二百九十五条第一項から第四項までに規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする尋問が第一項に規定する事項以外の事項にわたるときは、これを制限することができる。

長い条文ですが、核は1つです。尋問できるのは、情状に関する事項の、証人の供述の証明力を争うために必要な事項だけです。犯罪事実に関するものは、除かれます。以前の回の、反対尋問の範囲と同じ言葉です。具体例で見ます。被告人Rの側が呼んだ情状証人が、Rは、何度も謝罪に来た、と述べたとします。参加人は、いつ来たのか、と尋ねられます。謝罪が本当だったのか、信用できるのかを、確かめるための質問です。これが、供述の証明力を争う、ということです。他方、その証人が、犯罪事実について述べたことは、証明力を争うためであっても、参加人は尋問できません。犯罪事実の立証は、検察官と被告人側の領分だからです。手続は、いつもの型です。検察官の尋問が終わった後、すぐに、尋問事項を明らかにして、まず検察官に申し出ます。検察官は、意見を付けて、裁判所に通知します。裁判所は、被告人又は弁護人の意見を聴いて、許可します。許可がなければ、尋問はできません。範囲を超えたら、裁判長が制限します。次に、被告人質問です。条文は、316条の37です。

条文刑事訴訟法第316条の37

刑事訴訟法第316条の37 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、その者が被告人に対して第三百十一条第二項の供述を求めるための質問を発することの申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士がこの法律の規定による意見の陳述をするために必要があると認める場合であつて、審理の状況、申出に係る質問をする事項の内容、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、申出をした者が被告人に対してその質問を発することを許すものとする。 2 前項の申出は、あらかじめ、質問をする事項を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、当該事項について自ら供述を求める場合を除き、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。 3 裁判長は、第二百九十五条第一項、第三項及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士のする質問が第一項に規定する意見の陳述をするために必要がある事項に関係のない事項にわたるときは、これを制限することができる。

参加人が被告人に質問できるのは、意見の陳述をするために必要がある場合です。この意見の陳述には、前回の心情等の意見陳述と、このあと見る、事実や法律の適用についての意見陳述が含まれます。Rが、犯行の動機を、ほんの出来心だった、と説明したとします。Sさんが、その説明に納得できない。あとの意見陳述で、動機の不自然さを指摘したい。そのために、質問します。これが、意見陳述に必要がある場合です。この質問は、意見を述べるための材料集めです。罪を立証するための質問ではありません。立証は、検察官の仕事だからです。そして、心情等の意見陳述は、犯罪事実を認定する証拠になりません。もう1つの意見陳述も、訴因の範囲内に限られます。述べられる意見が狭ければ、その材料を集める質問も、同じだけ狭くなります。訴因の範囲内なら、事実関係を尋ねる質問もできます。ただし、たとえば、傷害致死で起訴された事件で、殺意があったことを立証するための質問を重ねる。これはできません。手続は、証人尋問と同じ型です。質問事項を明らかにして、まず検察官に申し出て、検察官が意見を付けて通知し、裁判所が許可します。

事実又は法律の適用についての意見陳述

権限5 事実又は法律の適用についての意見陳述(316条の38)。検察官の論告・求刑(293条1項の意見の陳述)の後に・訴因として特定された事実の範囲内で、犯罪事実と法律の適用について意見を述べる(いわば参加人版の論告・求刑)。傷害致死の訴因なのに殺人を前提にした意見は述べられない。あらかじめ意見の要旨を明らかにして検察官に申出→検察官が意見を付して通知→裁判所が審理の状況等を考慮して許可(被告人又は弁護人の意見を聴く規定なし)。範囲を超える陳述は裁判長が制限(3項)。4項=証拠とはならない 図:権限5 事実又は法律の適用についての意見陳述

  • 316条の38
  • 検察官の論告・求刑(293条1項の意見の陳述)の後に・訴因として特定された事実の範囲内で、犯罪事実と法律の適用について意見を述べる(いわば参加人版の論告・求刑)。傷害致死の訴因なのに殺人を前提にした意見は述べられない。あらかじめ意見の要旨を明らかにして検察官に申出→検察官が意見を付して通知→裁判所が審理の状況等を考慮して許可(被告人又は弁護人の意見を聴く規定なし)。範囲を超える陳述は裁判長が制限(3項)。4項=証拠とはならない

5つ目は、事実又は法律の適用についての意見陳述です。316条の38です。

条文刑事訴訟法第316条の38

刑事訴訟法第316条の38 裁判所は、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士から、事実又は法律の適用について意見を陳述することの申出がある場合において、審理の状況、申出をした者の数その他の事情を考慮し、相当と認めるときは、公判期日において、第二百九十三条第一項の規定による検察官の意見の陳述の後に、訴因として特定された事実の範囲内で、申出をした者がその意見を陳述することを許すものとする。 2 前項の申出は、あらかじめ、陳述する意見の要旨を明らかにして、検察官にしなければならない。この場合において、検察官は、意見を付して、これを裁判所に通知するものとする。 3 裁判長は、第二百九十五条第一項、第三項及び第四項に規定する場合のほか、被害者参加人又はその委託を受けた弁護士の意見の陳述が第一項に規定する範囲を超えるときは、これを制限することができる。 4 第一項の規定による陳述は、証拠とはならないものとする。

要するに、参加人版の、論告と求刑です。検察官の論告、求刑の後に、参加人が、犯罪事実と、法律の適用について、意見を述べます。293条1項の、検察官の意見の陳述です。その後に、参加人が、たとえば、Rには、傷害罪が成立し、拘禁刑何年が相当だと考える、と述べられます。ただし、範囲があります。訴因として特定された事実の範囲内です。傷害致死の訴因なのに、殺人を前提にした意見は、述べられません。訴因を決めるのは、検察官だからです。手続は、これまでと同じです。意見の要旨を明らかにして、検察官に申し出ます。検察官が意見を付けて通知し、裁判所が、審理の状況などを考えて許可します。ここで、1点だけ、違いがあります。条文を見てください。1項に、被告人又は弁護人の意見を聴く、という文言がありません。証人尋問や被告人質問の許可とは違って、被告人側の意見を聴く必要はないのです。

事実の認定の証拠にならないのはもちろんです。量刑の資料にもなりません。純然たる意見だからです。検察官の論告が、証拠でないのと同じです。この点は、あとで、前回の意見陳述との比較表で整理します。その前に、1問です。論告の後に、参加人が意見を述べるとき、被告人側の意見は聴かなければなりませんか?聴く必要はない、でした。申出は検察官にして、許可は裁判所が、審理の状況などを考慮して決めます。

認められない権限と当事者主義

参加人の権限=5つ/認められない権限=4つ。5つ=出席(316条の34)・検察官への意見申述(35)・証人尋問(36)・被告人質問(37)・事実又は法律の適用についての意見陳述(38)。認められない=公判請求権(247条)・訴因設定権(256条3項・312条1項)・証拠調べ請求権(298条1項)・上訴権(351条1項)。共通点=申出は検察官に→裁判所が許可(出席・意見申述を除く)。主張・立証の主役は検察官と被告人・弁護人のまま=当事者主義は変わらない

  • 参加人の権限=5つ/認められない権限=4つ
  • 5つ=出席(316条の34)・検察官への意見申述(35)・証人尋問(36)・被告人質問(37)・事実又は法律の適用についての意見陳述(38)
  • 認められない=公判請求権(247条)・訴因設定権(256条3項・312条1項)・証拠調べ請求権(298条1項)・上訴権(351条1項)
  • 共通点=申出は検察官に→裁判所が許可(出席・意見申述を除く)
  • 主張・立証の主役は検察官と被告人・弁護人のまま=当事者主義は変わらない

ここで、冒頭の問いに戻ります。もう1問、先に聞きます。参加人が、自分で証拠調べを請求できないのは、なぜだと思いますか?立証の責任は、検察官にあるからだと思います。参加人に認められない権限が、4つあります。起訴は、検察官の権限で、247条です。訴因の設定も検察官で、256条3項と、312条1項が根拠です。証拠調べの請求は、当事者である検察官と被告人側のもので、298条1項です。上訴は、検察官又は被告人のもので、351条1項です。整理します。参加人の5つの権限は、2つのタイプに分かれます。1つは、検察官に意見を言って、権限の行使を促すもの。意見の申述です。もう1つは、検察官と被告人側の主張立証に、意見や情状の限度で加わるもの。尋問、質問、意見陳述です。出席は、その土台です。

意見申述と出席を除いて、申出は検察官に、許可は裁判所に。この共通の型が、5つの権限の骨格です。そして、主張と立証の主役は、あくまで、検察官と、被告人、弁護人です。冒頭の問いの答えです。参加人は、検察官の代わりには、なれません。訴追と立証は、検察官のままで、参加人は、そこに、意見と情状の限度で加わるのです。背景の節で見た、基本の形を損なわない配慮は、この形で、実現されています。喩えるなら、舞台脇に上がれる観客です。演出家の検察官に、意見を伝えられます。ただし、脚本と配役は、変えられません。そして、舞台に声を出すときは、劇場の許可が要ります。参加人の権限の限界は、論文でも論点になりえます。

2つの意見陳述の比較表

比較表=心情等の意見陳述(292条の2)vs 事実又は法律の適用についての意見陳述(316条の38)。犯罪事実の認定の証拠=どちらもならない/量刑資料=前者○・後者×/申出先=どちらも検察官/実施の要件=前者は原則実施・後者は裁判所の許可/弁護人等の質問=前者は趣旨を明確にする範囲で可・後者は不可(弁論で反論)/書面による代替=前者は可(7項)・後者は不可(口頭主義)/陳述できる者=前者は罪名の制限なしの被害者等・法定代理人・後者は参加を許された参加人(対象事件に限る)/内容=前者は被害に関する心情その他の意見・後者は事実又は法律の適用(訴因の範囲内)

  • 比較表=心情等の意見陳述(292条の2)vs 事実又は法律の適用についての意見陳述(316条の38)
  • 犯罪事実の認定の証拠=どちらもならない/量刑資料=前者○・後者×/申出先=どちらも検察官/実施の要件=前者は原則実施・後者は裁判所の許可/弁護人等の質問=前者は趣旨を明確にする範囲で可・後者は不可(弁論で反論)/書面による代替=前者は可(7項)・後者は不可(口頭主義)/陳述できる者=前者は罪名の制限なしの被害者等・法定代理人・後者は参加を許された参加人(対象事件に限る)/内容=前者は被害に関する心情その他の意見・後者は事実又は法律の適用(訴因の範囲内)

もう1つの山場、比較表です。その前に、前回の復習を1問です。心情等の意見陳述は、犯罪事実の証拠になりますか? 量刑では考慮されますか?犯罪事実の証拠にはなりません。でも、犯情以外の事情に限って、量刑の資料として考慮されます。では、今日の316条の38の意見陳述と、比べます。縦に、比べる軸、横に、2つの制度です。犯罪事実の認定の証拠。どちらも、なりません。量刑の資料。前回の心情は、犯情以外の事情に限って、なります。今日の意見陳述は、なりません。ここが、いちばん大事な分かれ目です。同じ意見なのに、なぜ、分かれるのですか。性質が違うからです。前回の心情は、被害者の苦しみそのものです。情状として、量刑で評価される事情です。今日の意見陳述は、検察官の論告と同じ、純然たる意見です。そのため、4項は、証拠とはならない、と明記しています。ですから、証拠にも、量刑の資料にもなりません。具体例です。夜も眠れず、今も店に立つのが怖い、という訴えは、事情です。前回の制度で述べて、量刑で考慮されます。他方、Rには、傷害罪が成立し、拘禁刑何年が相当だ、という話は、意見です。今日の制度で述べて、聞いてもらえますが、証拠にはなりません。残りの軸です。申出先は、どちらも検察官です。実施の要件は、前回は、原則として陳述させる。今日は、裁判所の許可が要ります。

弁護人側の質問は、前回は、趣旨を明確にするためなら、できます。今日は、できません。弁護人は、弁論で反論すればよいからです。書面での代替は、前回は、できます。今日は、できません。意見の陳述は、口頭で行う、口頭主義だからです。陳述できる人は、前回は、罪名の制限がない被害者等と法定代理人。今日は、許可を受けた参加人で、対象事件に限られます。内容は、前回は、被害に関する心情その他の意見。今日は、事実又は法律の適用で、訴因の範囲内です。

国選被害者参加弁護士

国選被害者参加弁護士(犯罪被害者保護法11条〜)。参加人(弁護士に委託して316条の34〜38の行為をさせようとする者)のうち資力が基準額に満たない者は、被害者参加弁護士の選定を裁判所に請求できる。請求は日本司法支援センター(法テラス)を経由。裁判所が選定・費用は国。選定は審級ごと・参加許可が取り消されると効力を失う。弁護士に頼めない参加人にも旅費・日当の支給がある。弁護士は被疑者・被告人の権利擁護だけでなく被害者支援にも役割を持つ 図:国選被害者参加弁護士

  • 犯罪被害者保護法11条〜
  • 参加人(弁護士に委託して316条の34〜38の行為をさせようとする者)のうち資力が基準額に満たない者は、被害者参加弁護士の選定を裁判所に請求できる。請求は日本司法支援センター(法テラス)を経由。裁判所が選定・費用は国。選定は審級ごと・参加許可が取り消されると効力を失う。弁護士に頼めない参加人にも旅費・日当の支給がある。弁護士は被疑者・被告人の権利擁護だけでなく被害者支援にも役割を持つ

弁護士に頼みたくても、費用が心配な人もいます。そこで、国選被害者参加弁護士の制度があります。犯罪被害者保護法の11条以下です。発想は似ています。参加人が、弁護士に委託して、316条の34から38までの行為をさせようとするとき、資力が基準額に満たなければ、裁判所に、被害者参加弁護士の選定を請求できます。請求は、日本司法支援センター、通称、法テラスを経由します。裁判所が選定し、費用は、国が負担します。選定は、審級ごとです。参加の許可が取り消されると、効力を失います。また、遠くから通う参加人のために、旅費や日当の支給もあります。もう1つ、弁護士の役割です。弁護士は、被疑者や被告人の権利を守るだけではなく、被害者の支援にも、役割を持ちます。被告人の弁護人であっても、被害者への対応を誤ると、示談を壊して、被告人自身の利益を害することがあります。覚えておいてください。

刑事和解

損害回復その1 刑事和解(犯罪被害者保護法19条)。示談書だけでは強制執行ができない(債務名義にならない)。被告人と被害者等が、民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る)について合意→共同して合意の公判調書への記載を申し立てられる(1項)。申立先=被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所。時期=弁論の終結までに・公判期日に出頭して書面を提出(3項)。効果=公判調書の記載は裁判上の和解と同一の効力(4項)→強制執行ができる。第三者の保証・連帯債務も一緒に記載できる(2項)。罪名の制限なし 図:損害回復その1 刑事和解

  • 犯罪被害者保護法19条
  • 示談書だけでは強制執行ができない(債務名義にならない)。被告人と被害者等が、民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る)について合意→共同して合意の公判調書への記載を申し立てられる(1項)。申立先=被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所。時期=弁論の終結までに・公判期日に出頭して書面を提出(3項)。効果=公判調書の記載は裁判上の和解と同一の効力(4項)→強制執行ができる。第三者の保証・連帯債務も一緒に記載できる(2項)。罪名の制限なし

ここから、2つ目の柱、損害の回復です。参加は、手続に加わる制度でした。損害の回復は、被告人から、実際にお金を取り戻す制度です。1つ目は、刑事和解です。設例です。Rが、Sさんに、治療費として、100万円を払う、と約束しました。示談です。ところが、Rが払わない。示談書だけでは、強制執行はできません。強制執行の根拠になる書面を、債務名義と呼びますが、示談書は、それにならないからです。改めて、民事訴訟を起こして、判決を取らなければなりません。そこで、19条です。全文で読みます。

条文犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第19条

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第19条 刑事被告事件の被告人と被害者等は、両者の間における民事上の争い(当該被告事件に係る被害についての争いを含む場合に限る。)について合意が成立した場合には、当該被告事件の係属する第一審裁判所又は控訴裁判所に対し、共同して当該合意の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。 2 前項の合意が被告人の被害者等に対する金銭の支払を内容とする場合において、被告人以外の者が被害者等に対し当該債務について保証する旨又は連帯して責任を負う旨を約したときは、その者も、同項の申立てとともに、被告人及び被害者等と共同してその旨の公判調書への記載を求める申立てをすることができる。 3 前二項の規定による申立ては、弁論の終結までに、公判期日に出頭し、当該申立てに係る合意及びその合意がされた民事上の争いの目的である権利を特定するに足りる事実を記載した書面を提出してしなければならない。 4 第一項又は第二項の規定による申立てに係る合意を公判調書に記載したときは、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を有する。

1項です。被告人と被害者等が、民事上の争いについて合意したとき、共同して、その合意を公判調書に書いてほしい、と申し立てられます。罪名の制限は、ありません。窃盗でも、恐喝でも、使えます。申立先は、被告事件が係属している第一審裁判所か、控訴裁判所です。3項です。時期は、弁論の終結まで、つまり、判決の前に審理を締めくくるときまでです。公判期日に出頭して、合意を記載した書面を出します。そして、4項です。公判調書に記載すると、その記載は、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。裁判上の和解とは、裁判所で成立した和解のことで、その調書は、判決と同じく、債務名義になります。つまり、強制執行ができます。示談書に、判決並みの力を持たせる手続です。

保証人がいる場合は、どうなりますか。2項です。第三者が保証や連帯責任を約したときは、その人も、一緒に申し立てて、調書に記載してもらえます。

損害賠償命令

損害回復その2 損害賠償命令(犯罪被害者保護法24条以下)。対象=故意の死傷/不同意わいせつ・不同意性交等・監護者わいせつ及び監護者性交等/逮捕・監禁/略取・誘拐・人身売買等/それらを含む罪(及び未遂)。過失の死傷は対象外。申立人=被害者又はその一般承継人(相続人等)。申立先=被告事件の係属する地方裁判所のみ・弁論の終結まで・書面。流れ=申立て→有罪の言渡し→直ちに審理期日(35条1項)→刑事記録を取り調べ(4項)→原則4回以内の審理期日(3項)→決定(37条)→異議(38条1項・2週間)。異議なし=確定判決と同一の効力(5項)/適法な異議あり=命令は効力を失い通常の民事訴訟へ(4項・39条)。無罪・免訴・公訴棄却や対象外の罪での有罪なら却下(28条) 図:損害回復その2 損害賠償命令

  • 犯罪被害者保護法24条以下
  • 対象=故意の死傷
  • 不同意わいせつ・不同意性交等・監護者わいせつ及び監護者性交等
  • 逮捕・監禁
  • 略取・誘拐・人身売買等
  • それらを含む罪(及び未遂)。過失の死傷は対象外。申立人=被害者又はその一般承継人(相続人等)。申立先=被告事件の係属する地方裁判所のみ・弁論の終結まで・書面。流れ=申立て→有罪の言渡し→直ちに審理期日(35条1項)→刑事記録を取り調べ(4項)→原則4回以内の審理期日(3項)→決定(37条)→異議(38条1項・2週間)。異議なし=確定判決と同一の効力(5項)
  • 適法な異議あり=命令は効力を失い通常の民事訴訟へ(4項・39条)。無罪・免訴・公訴棄却や対象外の罪での有罪なら却下(28条)

2つ目は、損害賠償命令です。刑事裁判の成果を使って、民事の賠償を、簡単に認めてもらう手続です。条文は、犯罪被害者保護法の24条から始まります。24条1項を、全文で読みます。

条文犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第24条第1項柱書

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第24条第1項柱書 次に掲げる罪に係る刑事被告事件(刑事訴訟法第四百五十一条第一項の規定により更に審判をすることとされたものを除く。)の被害者又はその一般承継人は、当該被告事件の係属する裁判所(地方裁判所に限る。)に対し、その弁論の終結までに、損害賠償命令(当該被告事件に係る訴因として特定された事実を原因とする不法行為に基づく損害賠償の請求(これに附帯する損害賠償の請求を含む。)について、その賠償を被告人に命ずることをいう。以下同じ。)の申立てをすることができる。

部品に分けます。申し立てられるのは、被害者又はその一般承継人です。一般承継人とは、被害者が亡くなったときの相続人などです。申立先は、被告事件が係属している、地方裁判所に限られます。時期は、弁論の終結までです。

条文犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第24条第1項各号

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第24条第1項各号 一 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪又はその未遂罪 二 次に掲げる罪又はその未遂罪  イ 刑法(明治四十年法律第四十五号)第百七十六条(不同意わいせつ)、第百七十七条(不同意性交等)又は第百七十九条(監護者わいせつ及び監護者性交等)の罪  ロ 刑法第二百二十条(逮捕及び監禁)の罪  ハ 刑法第二百二十四条から第二百二十七条まで(未成年者略取及び誘拐、営利目的等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等)の罪  ニ イからハまでに掲げる罪のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪(前号に掲げる罪を除く。)

対象の罪は、参加と同じですか。違います。ここが大事です。1号は、故意の犯罪行為による死傷です。2号は、不同意わいせつなど、逮捕及び監禁、略取と誘拐などです。過失の死傷は入りません。さきほどの、参加の対象事件では、過失運転致傷も入りました。参加は○でも、損害賠償命令は×になる事件が、あるのです。流れは、板のとおりです。審理は、有罪の言渡しの後に始まります。35条を、全文で読みます。

条文犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第35条

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第35条 刑事被告事件について刑事訴訟法第三百三十五条第一項に規定する有罪の言渡しがあった場合(当該言渡しに係る罪が第二十四条第一項各号に掲げる罪に該当する場合に限る。)には、裁判所は、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理のための期日(以下「審理期日」という。)を開かなければならない。ただし、直ちに審理期日を開くことが相当でないと認めるときは、裁判長は、速やかに、最初の審理期日を定めなければならない。 2 審理期日には、当事者を呼び出さなければならない。 3 損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、四回以内の審理期日において、審理を終結しなければならない。 4 裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べをしなければならない。

有罪の言渡しがあると、裁判所は、直ちに、審理期日を開きます。審理は、特別の事情がない限り、4回以内で終わらせます。最初の審理期日で、刑事事件の訴訟記録を取り調べます。ここが、この制度の趣旨です。刑事手続の成果を利用して、被害者が、改めて民事訴訟を起こす負担を減らし、簡易迅速に解決する。刑事事件を担当した地方裁判所が扱います。結論は、決定で出ます。ここまでの流れは、有罪の言渡しがなければ進みません。無罪や、免訴、公訴棄却のとき、あるいは、対象ではない罪で有罪になったときは、申立ては却下されます。決定に不服があるときの38条を、全文で読みます。

条文犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第38条第1項・第4項・第5項

犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第38条第1項・第4項・第5項 当事者は、損害賠償命令の申立てについての裁判に対し、前条第三項の規定による送達又は同条第四項の規定による告知を受けた日から二週間の不変期間内に、裁判所に異議の申立てをすることができる。 4 適法な異議の申立てがあったときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、仮執行の宣言を付したものを除き、その効力を失う。 5 適法な異議の申立てがないときは、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有する。

異議ができるのは、当事者、つまり、被告人と、申立人の双方です。決定の送達などから、2週間の不変期間内です。不変期間とは、裁判所も延ばせない期間です。適法な異議があれば、命令は、効力を失います。ただし、仮執行宣言、つまり、確定の前でも強制執行してよいという宣言が付いたものは、除きます。そして、39条により、通常の民事訴訟に、移ります。申立ての時に、訴えを起こしたものとみなされます。異議がなければ、確定判決と同一の効力を持ちます。つまり、強制執行ができます。流れを整理します。申立て、有罪の言渡し、4回以内の審理、決定。そのあと、異議があれば民事訴訟へ。なければ、確定判決と同じです。

参加・和解・損害賠償命令の弁別

弁別表。対象罪名=参加は限定(過失運転致死傷を含む)/和解は制限なし/命令は限定(過失は含まない)。誰が=参加は被害者等・法定代理人(委託を受けた弁護士)/和解は被告人と被害者等(共同)/命令は被害者又は一般承継人。いつまで=参加は申出(公判前〜)/和解・命令は弁論の終結まで。効果=参加は手続への関与(損害賠償は別)/和解は裁判上の和解と同一の効力=強制執行/命令は異議がなければ確定判決と同一の効力。限界=被告人に資力がなければ実効的でない→犯罪被害者等給付金・被害回復給付金支給制度・被害回復分配金支払制度 図:弁別表

  • 対象罪名=参加は限定(過失運転致死傷を含む)/和解は制限なし/命令は限定(過失は含まない)
  • 誰が=参加は被害者等・法定代理人(委託を受けた弁護士)/和解は被告人と被害者等(共同)/命令は被害者又は一般承継人
  • いつまで=参加は申出(公判前〜)/和解・命令は弁論の終結まで
  • 効果=参加は手続への関与(損害賠償は別)/和解は裁判上の和解と同一の効力=強制執行/命令は異議がなければ確定判決と同一の効力
  • 限界=被告人に資力がなければ実効的でない→犯罪被害者等給付金・被害回復給付金支給制度・被害回復分配金支払制度

3つの制度を、表で弁別します。軸は4つです。対象の罪名、時期、申し立てる人、効力です。罪名です。参加は、人の生命、身体、自由を害する罪で、過失運転致死傷も入ります。刑事和解は、罪名の制限がありません。損害賠償命令は、限定されていて、過失は含みません。時期です。和解と命令は、どちらも、弁論の終結までです。申し立てる人は、和解が、被告人と被害者等の共同。命令は、被害者又は一般承継人です。効力です。和解は、裁判上の和解と同一の効力で、強制執行ができます。命令は、異議がなければ、確定判決と同一の効力です。異議があれば、民事訴訟に移ります。参加は、手続に関与する制度で、損害賠償は、別の問題です。

過失運転致死傷なら、参加はできます。刑事和解も、罪名の制限がないので、できます。しかし、損害賠償命令は、過失の死傷が対象外なので、できません。なぜ外したのか。交通事故のような過失の事件は、過失の割合などが争いになりやすく、4回以内の簡単な審理には収まりにくいからです。保険会社を含めて解決を図る必要がある事件が多く、この手続の簡易迅速という趣旨に合わないのです。この組み合わせが、短答の定番です。最後に、限界を1つ。和解も命令も、被告人に資力がなければ、実際にお金は取れません。そのための、公的な経済的支援があります。犯罪被害者等給付金。被害回復給付金支給制度。被害回復分配金支払制度。今日は、名前だけ、挙げておきます。

節目のミニ事例と短答。1 RがSさんを殴り怪我をさせた事件でSさんは参加できるか/恐喝事件なら参加できるか/2 参加人が被告人に「殺す気だったのか」と聞き続けたい(訴因が傷害致死)/3 参加人が拘禁刑何年にしてほしいと言いたい/4 参加人が証拠調べを自分で請求したい/5 交通事故の遺族が参加し損害賠償命令も申し立てたい。短答○×=参加の許可は被告人又は弁護人の意見を聴く(○)・申出は検察官(○)・前整期日に出席できる(×)・316条の38の陳述は量刑資料になる(×)・損害賠償命令は地裁・弁論終結まで(○) 図:節目のミニ事例と短答

  • 1 RがSさんを殴り怪我をさせた事件でSさんは参加できるか/恐喝事件なら参加できるか/2 参加人が被告人に「殺す気だったのか」と聞き続けたい(訴因が傷害致死)/3 参加人が拘禁刑何年にしてほしいと言いたい/4 参加人が証拠調べを自分で請求したい/5 交通事故の遺族が参加し損害賠償命令も申し立てたい
  • 短答○×=参加の許可は被告人又は弁護人の意見を聴く(○)・申出は検察官(○)・前整期日に出席できる(×)・316条の38の陳述は量刑資料になる(×)・損害賠償命令は地裁・弁論終結まで(○)

節目のミニ事例です。参加人が何をできるか、考えてください。1つ目。Rが、Sさんを殴って、怪我をさせた事件で、Sさんは、参加できますか。恐喝の事件なら、どうですか。傷害は、1号で、参加できます。恐喝は、参加できません。ただ、意見陳述と刑事和解はできますが、損害賠償命令はできないと思います。2つ目。傷害致死で起訴された事件で、参加人が、被告人に、殺す気だったのか、と聞き続けたい。できますか。できません。質問は意見の陳述に必要な範囲で、訴因の範囲内に限られるからです。3つ目。参加人が、拘禁刑何年にしてほしい、と求刑のような意見を言いたい。

4つ目。参加人が、証拠調べを、自分で請求したい。5つ目。交通事故の遺族が参加して、損害賠償命令も申し立てたい。短答の確認も、続けます。参加の許可は、被告人又は弁護人の意見を聴く。○です。申出は、検察官にする。○です。公判前整理手続の期日にも、参加人は出席できる。×です。316条の38の陳述は、量刑資料になる。×です。損害賠償命令は、地方裁判所に、弁論の終結までに申し立てる。○です。

今日の地図(保存版)

まとめの地図。被害者参加=許可の流れ(申出は検察官→裁判所が被告人側の意見を聴いて許可)・対象事件(人の生命・身体・自由を害する罪・過失も入る)・5つの権限(出席/意見申述/証人尋問/被告人質問/意見陳述)・認められない4つ(公判請求・訴因設定・証拠調べ請求・上訴)。比較表=量刑資料は前回○・今回×。損害回復=刑事和解(罪名制限なし・裁判上の和解と同一の効力)/損害賠償命令(有罪言渡し後・4回以内・異議で民事訴訟へ・過失は対象外)。冒頭の問いの答え=代わりにはなれない 図:まとめの地図

  • 被害者参加=許可の流れ(申出は検察官→裁判所が被告人側の意見を聴いて許可)・対象事件(人の生命・身体・自由を害する罪・過失も入る)・5つの権限(出席/意見申述/証人尋問/被告人質問/意見陳述)・認められない4つ(公判請求・訴因設定・証拠調べ請求・上訴)
  • 比較表=量刑資料は前回○・今回×
  • 損害回復=刑事和解(罪名制限なし・裁判上の和解と同一の効力)/損害賠償命令(有罪言渡し後・4回以内・異議で民事訴訟へ・過失は対象外)
  • 冒頭の問いの答え=代わりにはなれない

今日のまとめです。被害者が、手続に加わる仕組みと、お金を取り戻す仕組みを見ました。参加人は、被害者等か、法定代理人で、許可を受けた人です。申出は、検察官にして、裁判所が、被告人又は弁護人の意見を聴いて、決定で許可します。対象は、人の生命、身体、自由を害する罪で、過失も入ります。窃盗や恐喝は、対象外です。権限は、5つです。出席。検察官への意見の申述。情状の証明力を争う、証人尋問。意見の陳述に必要な、被告人質問。論告の後の、事実又は法律の適用についての意見陳述。出席と意見申述を除いて、申出は検察官に、許可は裁判所です。公判請求、訴因設定、証拠調べ請求、上訴は、認められていません。比較表の核心は、量刑資料でした。前回の心情は、犯情以外の事情に限って、量刑で考慮されます。今日の意見陳述は、純然たる意見で、証拠にも、量刑の資料にもなりません。損害回復は、2つです。刑事和解は、罪名の制限がなく、公判調書の記載が、裁判上の和解と同一の効力を持ちます。損害賠償命令は、有罪の言渡しの後、4回以内の審理で決定が出ます。異議があれば、民事訴訟へ移ります。過失は、対象外です。冒頭の問いの答えです。参加人は、検察官の代わりには、なれません。主張と立証の主役は、検察官と、被告人、弁護人のままで、参加人は、意見と情状の限度で、加わります。当事者主義は、変わりません。被害者の関与は、これで終わりです。次は、第7章の、裁判の意義と種類です。判決と、決定と、命令が、どう違うのかを見ます。

参照条文

  • 刑事訴訟法第316条の33第1項柱書
  • 刑事訴訟法第316条の33第1項各号
  • 刑事訴訟法第316条の33第2項・第3項
  • 刑事訴訟法第316条の34
  • 刑事訴訟法第316条の35
  • 刑事訴訟法第316条の36
  • 刑事訴訟法第316条の37
  • 刑事訴訟法第316条の38
  • 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第19条
  • 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第24条第1項柱書
  • 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第24条第1項各号
  • 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第35条
  • 犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事手続に付随する措置に関する法律第38条第1項・第4項・第5項

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