刑事訴訟法ゼロから刑事訴訟法#156

裁判の確定と一事不再理効の発生

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第7章 裁判 ⑥/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

導入

今日の問い2つ。①ある窃盗事件で無罪が確定した。半年後に有力な新証拠が見つかった→同じ事件を改めて起訴できるか。一方、起訴状の謄本が届かず公訴棄却で終わった事件は、届け直して起訴し直せた(前に見た)。同じ「裁判が確定した」のに、なぜ一方は蒸し返せず、他方は蒸し返せるのか。②詐欺で起訴された被告人Xが、船の事故を装って自分の死亡を公的に記録させ、「被告人死亡」で公訴棄却の決定が確定した。のちにXは生きていたと分かった→同じ詐欺を改めて起訴できるか 図:今日の問い2つ

  • ①ある窃盗事件で無罪が確定した
  • 半年後に有力な新証拠が見つかった→同じ事件を改めて起訴できるか
  • 一方、起訴状の謄本が届かず公訴棄却で終わった事件は、届け直して起訴し直せた(前に見た)
  • 同じ「裁判が確定した」のに、なぜ一方は蒸し返せず、他方は蒸し返せるのか
  • ②詐欺で起訴された被告人Xが、船の事故を装って自分の死亡を公的に記録させ、「被告人死亡」で公訴棄却の決定が確定した
  • のちにXは生きていたと分かった→同じ詐欺を改めて起訴できるか

前回、略式命令は、期間が過ぎると、確定した判決と同じ効力を持つ、と言いました。では、その効力とは、いったい何でしょうか。問いは2つあります。1つ目。ある窃盗事件で、無罪が確定しました。半年後に、有力な新証拠が見つかりました。検察官は、同じ事件を、改めて起訴できるでしょうか。一方で、起訴状の謄本が被告人に届かず、公訴棄却で終わった事件は、届け直して起訴し直せる、と前に見ました。どちらも、裁判が確定しています。それなのに、なぜ一方は蒸し返せず、他方は蒸し返せるのでしょうか。2つ目。詐欺で起訴された被告人Xが、船の事故を装って、自分が死亡したと公的に記録させました。裁判所は、被告人の死亡を理由に、公訴を棄却する決定をして、それが確定しました。のちに、Xは生きていたと分かりました。検察官は、同じ詐欺を、改めて起訴できるでしょうか。

2つ目は、確定した決定の効力と、逃げ得を許さない要請が、ぶつかる場面です。先に答えの形だけ言います。1つ目は、実体に入って、有罪か無罪かの危険にさらしたかどうかで分かれます。2つ目は、効力は認めたうえで、逃げ得を許さない理屈を立てます。

今日の地図は4歩。①確定とは何か ②確定で生じる効力の地図 ③拘束力(公訴棄却の確定にも)④一事不再理効(根拠・どの裁判で生じるか)+範囲を見る視点の見取り図 図:今日の地図は4歩

  • ①確定とは何か
  • ②確定で生じる効力の地図
  • ③拘束力(公訴棄却の確定にも)④一事不再理効(根拠・どの裁判で生じるか)+範囲を見る視点の見取り図

今日の地図です。1歩目は、確定とは何か。2歩目は、確定で生じる効力の整理。3歩目は、拘束力です。公訴棄却のような手続の裁判にも及ぶのかを見て、問い2に答えます。4歩目は、山場の一事不再理効です。根拠と、どの裁判で生じるのかを見て、問い1に答えます。最後に、その効力が及ぶ範囲を、見取り図として1枚だけ見ます。

裁判の確定とは何か

確定。外部的成立(告知)=判決は公判廷で宣告→(上訴で覆る余地)→形式的確定=上訴などの通常の不服申立てで争えなくなった状態。形式的確定力=上訴審で取消し・変更できなくなる効力(有罪・無罪にも免訴・公訴棄却などの形式裁判にも生じる)。確定する3場面=①上訴期間の経過(控訴の提起期間14日・373条)②上訴の放棄・取下げ(359条・361条=した者は更に上訴できない)③上訴棄却の裁判の確定。上告審の判決=宣告から10日(415条の訂正申立期間)の経過等で確定(418条)。上告棄却決定など決定の確定は上訴の回 図:確定

  • 外部的成立(告知)=判決は公判廷で宣告→(上訴で覆る余地)→形式的確定=上訴などの通常の不服申立てで争えなくなった状態
  • 形式的確定力=上訴審で取消し・変更できなくなる効力(有罪・無罪にも免訴・公訴棄却などの形式裁判にも生じる)
  • 確定する3場面=①上訴期間の経過(控訴の提起期間14日・373条)②上訴の放棄・取下げ(359条・361条=した者は更に上訴できない)③上訴棄却の裁判の確定
  • 上告審の判決=宣告から10日(415条の訂正申立期間)の経過等で確定(418条)
  • 上告棄却決定など決定の確定は上訴の回

最初に、確定とは何かを確かめます。その前に、前回の復習です。略式命令は、いつ、確定判決と同一の効力を生じるのでしたか?正式裁判の請求期間が過ぎたときか、請求が取り下げられたときです。470条でした。では、確定そのものを見ます。裁判は、告知されると、外部的に成立します。判決なら、公判廷での宣告です。ただし、成立しただけでは、まだ決まりではありません。上訴をすれば、内容が覆る余地があるからです。そこで、外部的に成立した裁判が、上訴などの通常の不服申立てで、もう争えなくなった状態を、形式的確定、または単に確定といいます。この状態になると、上訴審でも、裁判を取り消したり、変更したりできなくなります。この効力を、形式的確定力といいます。有罪や無罪だけでなく、免訴や公訴棄却などの手続の裁判にも生じます。

成立は、外に出たこと。確定は、もう争えないこと、です。成立しただけの間は、上訴で覆ります。確定したあとに覆すには、再審などの特別の道が要ります。それは、あとの回で見ます。では、いつ確定するのか。上訴を許さない裁判は、告知と同時に確定します。上訴を許す裁判は、3つの場面で確定します。1つ目は、上訴の期間が過ぎたとき。第一審判決への控訴は、条文があります。

条文刑事訴訟法第373条

刑事訴訟法第373条 控訴の提起期間は、十四日とする。

14日です。2つ目は、上訴の放棄や取下げです。359条と361条のとおり、放棄や取下げをした人は、もう上訴できません。3つ目は、上訴を棄却する裁判が確定したときです。たとえば、控訴が棄却されて、上告もなかったときです。最高裁の判決は、宣告されたら、その場で確定ですか。そこは、よく間違えるところです。宣告と同時ではありません。

条文刑事訴訟法第418条

刑事訴訟法第418条 上告裁判所の判決は、宣告があつた日から第四百十五条の期間を経過したとき、又はその期間内に同条第一項の申立があつた場合には訂正の判決若しくは申立を棄却する決定があつたときに、確定する。

415条の期間とは、判決の訂正を申し立てられる期間で、宣告の日から10日です。この期間が過ぎるか、訂正の申立てへの判断があって、はじめて確定します。なお、上告棄却の決定などの確定は、上訴の回で見ます。今日は、上告審の判決は宣告と同時ではなく10日後、とだけ押さえてください。

確定で生じる効力の地図

確定で生じる効力の地図(時系列)。外部的成立→自己拘束力(裁判所自身が変更・撤回できない=全ての裁判)/形式的確定→①執行力(裁判の内容を強制的に実現できる=実体裁判のうち有罪判決・471条)②拘束力(後の訴訟で他の裁判所が矛盾する判断をできない=実体・形式の両方に生じるが実益は形式裁判)→①②=内容的確定力/③一事不再理効(確定裁判の対象になった事件と同一の事件について再び公訴提起・審理できない=実体裁判と免訴)=内容的確定力とは別の根拠(二重の危険)で生じる別の効力 図:確定で生じる効力の地図

  • 時系列
  • 外部的成立→自己拘束力(裁判所自身が変更・撤回できない=全ての裁判)
  • 形式的確定→①執行力(裁判の内容を強制的に実現できる=実体裁判のうち有罪判決・471条)②拘束力(後の訴訟で他の裁判所が矛盾する判断をできない=実体・形式の両方に生じるが実益は形式裁判)→①②=内容的確定力
  • ③一事不再理効(確定裁判の対象になった事件と同一の事件について再び公訴提起・審理できない=実体裁判と免訴)=内容的確定力とは別の根拠(二重の危険)で生じる別の効力

確定すると、何が生じるのか。効力を3本に分けて見ます。試合にたとえます。試合終了のホイッスルが鳴ったあと、何が起きるか。結果が実行される。ほかの審判が、その結果と矛盾する判定をしない。同じ対戦を、もう一度やり直さない。この3つが、順に、執行力、拘束力、一事不再理効です。地図の左から読みます。外部的に成立した時点で、裁判所自身が、その裁判を変更も撤回もできなくなります。これを自己拘束力といい、全ての裁判に生じます。第7章の最初の回で見ました。形式的確定のあとに生じるのが、3本です。1本目は、執行力。裁判の内容を、強制的に実現できる力です。実体裁判のうち、実際に執行するのは有罪判決だけです。

条文刑事訴訟法第471条

刑事訴訟法第471条 裁判は、この法律に特別の定のある場合を除いては、確定した後これを執行する。

原則は、確定してから執行します。2本目は、拘束力。後の訴訟で、ほかの裁判所が、確定した裁判と矛盾する判断をできない効力です。3本目は、一事不再理効。確定した裁判の対象になった事件と同一の事件について、再び公訴を提起したり、審理したりできない効力です。第7章の最初の回で、確定によって、裁判の内容が拘束力や執行力を持つことを、内容的確定といいました。つまり、内容的確定力とは、執行力と拘束力のことです。そして、一事不再理効は、その内容的確定力から導かれる効力ではありません。二重の危険という、別の根拠で生じる、別の効力です。地図で、一事不再理効を別の枠にしたのは、そのためです。理由は、のちほど見ます。

拘束力と形式裁判

拘束力。根拠=訴訟の一回性(1つの事件は、上訴審まで含めた意味での裁判所の1回の公権的判断で確定的に解決すべき)。形式裁判(公訴棄却など)にも妥当する。補強=管轄違いが確定し他に管轄裁判所がないとき、検察官は直近上級裁判所に管轄指定を請求しなければならない(15条2号)→形式裁判に拘束力があるから必要な制度。範囲=その裁判の直接の理由となった判断だけ(最決昭56・7・14)。実体裁判には一事不再理効が働くので拘束力を持ち出す意味がない。別事件への拡張は通説否定 図:拘束力

  • 根拠=訴訟の一回性(1つの事件は、上訴審まで含めた意味での裁判所の1回の公権的判断で確定的に解決すべき)
  • 形式裁判(公訴棄却など)にも妥当する
  • 補強=管轄違いが確定し他に管轄裁判所がないとき、検察官は直近上級裁判所に管轄指定を請求しなければならない(15条2号)→形式裁判に拘束力があるから必要な制度
  • 範囲=その裁判の直接の理由となった判断だけ(最決昭56・7・14)
  • 実体裁判には一事不再理効が働くので拘束力を持ち出す意味がない
  • 別事件への拡張は通説否定

3歩目です。拘束力から見ます。なぜ、後の裁判所は、前の確定した裁判に縛られるのか。根拠は、訴訟の一回性です。1つの事件は、上訴審までを含めた、裁判所の1回の公権的な判断で、確定的に解決すべきだ、という要請です。判断を何度もやり直されては、手続が終わりません。公訴棄却は、中身を判断していない手続の裁判です。それでも縛られるんですか。縛られます。この要請は、形式裁判にも当てはまるからです。裏づけになる制度があります。管轄違いが言い渡されて確定し、ほかに管轄のある裁判所がないとき、検察官は、直近上級の裁判所に、管轄を指定するよう請求しなければなりません。15条2号です。なぜ、こんな遠回りが要るのか。管轄違いの裁判に拘束力があるからです。拘束力がなければ、管轄違いを言った裁判所に、起訴し直せば足ります。ただし、拘束されるのは、その裁判の直接の理由となった判断だけです。事案を見ます。起訴状の書き方があいまいで、訴因が特定されていない、として、公訴棄却の判決が確定しました。検察官は、起訴状を書き直して、もう一度起訴しました。そこで、最初の起訴で、公訴時効の進行が止まっていたかどうかが争われました。最高裁は、時効の進行は止まっていた、と判断しました。そして、前の判決が、後の裁判所を拘束する範囲を、こう述べました。

判例最決昭56・7・14 刑集35巻5号497頁

公訴棄却の確定判決の拘束力の範囲 前記確定判決の理由中本件の受訴裁判所を拘束するのは、旧起訴は実体審理を継続するのに十分な程度に訴因が特定されていないという判断のみであり、 …… という趣旨に解し得る部分は、本件の受訴裁判所を拘束しないと解すべきである

前記確定判決とは、前の、公訴棄却の判決です。拘束するのは、旧起訴は、訴因が特定されていない、という判断のみ。前の判決は、理由づけの一つとして、旧起訴は、建物の表示登記と保存登記という2つの罪の、どちらを起訴したのか一見はっきりしない、とも述べていました。ここまで縛られるなら、最初の起訴は、どちらの罪の時効も止めなかった、となりかねません。拘束するのは、訴因が特定されていない、という判断だけなので、後の裁判所は、時効は止まっていた、と判断できたのです。なぜ、直接の理由だけなのか。結論を直接支えた判断こそが、その訴訟で決着のついた中身だからです。結論に要らない言い回しまで縛ると、決着していない点で、後の裁判所の手を縛ることになります。確認です。公訴棄却の判決が確定したとき、後の裁判所を拘束するのは、判決のどの部分ですか?

直接の理由となった判断だけです。この事案なら、訴因が特定されていない、という判断です。なお、実体裁判では、一事不再理効が働くので、拘束力を持ち出す意味がありません。また、別の事件にまで拘束力を広げる見解もありますが、通説は否定します。別の事件は、事件ごとに、裁判官が自由心証で判断します。

設例・死亡を偽装した被告人

設例の流れ。投資詐欺で起訴(Xは保釈中)→船の転覆事故を装い、偽の目撃証言をさせるなどして、X死亡と公的に記録させる→裁判所が被告人の死亡を理由に決定で公訴棄却(339条1項4号)→確定→Xが生きていたと判明→検察官が同じ詐欺で再起訴→裁判所はどうするか?/拘束力があるとすれば=再起訴は許されず公訴棄却の判決(338条4号)/だが偽装した被告人の「逃げ得」には批判が多い。偽装工作そのものは別の罪として起訴できる 図:設例の流れ

  • 投資詐欺で起訴(Xは保釈中)→船の転覆事故を装い、偽の目撃証言をさせるなどして、X死亡と公的に記録させる→裁判所が被告人の死亡を理由に決定で公訴棄却(339条1項4号)→確定→Xが生きていたと判明→検察官が同じ詐欺で再起訴→裁判所はどうするか?/拘束力があるとすれば=再起訴は許されず公訴棄却の判決(338条4号)/だが偽装した被告人の「逃げ得」には批判が多い
  • 偽装工作そのものは別の罪として起訴できる

問い2に戻ります。Xの流れを、時間順に見ます。Xは、投資詐欺で起訴され、保釈中でした。そこで、船の転覆事故に遭ったと見せかけました。偽の目撃証言をさせるなどして、自分が死亡したと、公的に記録させたのです。

条文刑事訴訟法第339条第1項

刑事訴訟法第339条第1項 左の場合には、決定で公訴を棄却しなければならない。 …… 四 被告人が死亡し、又は被告人たる法人が存続しなくなつたとき。

被告人が死亡したときは、決定で公訴を棄却します。裁判所は、Xの死亡を前提に、この決定をしました。決定は確定しました。ところが、Xは生きていました。検察官は、同じ詐欺で、再び起訴しました。拘束力があるとすれば、どうなるか。前の決定の判断、つまり、被告人が死亡した、という判断に、後の裁判所は縛られます。すると、再起訴は許されず、裁判所は、公訴棄却の判決をすべきだ、という見解があります。公訴提起の手続が無効だ、という338条4号の判決です。公訴棄却には、決定と判決の2種類がある、と前に見ました。死亡は決定、手続の無効は判決です。

それだと、Xは、死んだふりをして、詐欺の責任から逃げ切れてしまいませんか。そこが、この設例の問題です。偽装した被告人にまで、逃げ得を認める結論には、批判が多いのです。なお、偽装工作そのものは、別の罪として起訴できます。ただ、元の詐欺を裁けなくなるのは別の話です。拘束力そのものを否定して、再起訴を許すという道も考えられます。しかし、先に見た最高裁の流れからは、取りにくい道です。そこで、拘束力は認めたうえで、再起訴を許す理屈を立てます。

再起訴を許す3つの考え方

再起訴を許す3つの考え方(見解)。①事情の変更=拘束力は事情が変われば及ばない。339条1項4号は、裁判所が確かめた「死亡」の証拠状況を前提にした事由→その証拠状況が変わったこと自体が事情の変更。弱点=死者が生き返ったわけではない。②蒸し返し禁止の狙い=拘束力の狙いは訴訟の蒸し返し防止。事由ごとに性質を見る。心神喪失での公判停止(314条1項)と同様、再起訴を有効にしても止まっていた公判が再開するだけ。弱点=事由ごとの判断で基準があいまい。③禁反言=拘束力は検察官の禁反言(被告人に有利な判断が出た以上、訴追側は矛盾する主張をできない)。偽装した被告人は、その利益を主張する資格がない。弱点=拘束力の説明を、被告人側の事情に引きずる 図:再起訴を許す3つの考え方

  • 見解
  • ①事情の変更=拘束力は事情が変われば及ばない。339条1項4号は、裁判所が確かめた「死亡」の証拠状況を前提にした事由→その証拠状況が変わったこと自体が事情の変更。弱点=死者が生き返ったわけではない。②蒸し返し禁止の狙い=拘束力の狙いは訴訟の蒸し返し防止。事由ごとに性質を見る。心神喪失での公判停止(314条1項)と同様、再起訴を有効にしても止まっていた公判が再開するだけ。弱点=事由ごとの判断で基準があいまい。③禁反言=拘束力は検察官の禁反言(被告人に有利な判断が出た以上、訴追側は矛盾する主張をできない)。偽装した被告人は、その利益を主張する資格がない。弱点=拘束力の説明を、被告人側の事情に引きずる

再起訴を許す理屈として、3つの考え方があります。1つ目は、事情の変更です。拘束力は、前提になった事情が変われば、及ばない、という考え方です。被告人の死亡による公訴棄却は、裁判所が確かめた、死亡の証拠状況を前提にしています。その証拠状況が、偽装だった、と変わりました。これを、事情の変更と見ます。弱点は、死んだ人が生き返ったわけではない、という点です。2つ目は、拘束力の狙いに立ち返る考え方です。拘束力の狙いは、訴訟の蒸し返しを防ぐことです。それなら、公訴棄却の事由ごとに、その性質を見て決めます。たとえば、被告人が心神喪失で、公判を停止した場合は、314条1項のとおり、回復すれば公判が再開します。同じように、死亡による公訴棄却でも、再起訴を有効にしたところで、止まっていた公判が再開するだけで、蒸し返しの問題は生じない、という考え方です。弱点は、事由ごとに決めるので、基準があいまいになる点です。3つ目は、禁反言です。拘束力を、検察官の禁反言と捉えます。いったん被告人に有利な判断が出た以上、訴追する側は、矛盾する主張をできない、という考え方です。それなら、判断を偽装で引き出した被告人は、その利益を主張する資格がない、となります。弱点は、裁判の効力の説明が、被告人がどう振る舞ったか、という事情に引きずられる点です。

違いは理屈の立て方だけです。問い2の答えは、公訴棄却の決定にも拘束力は及ぶ。ただし、偽装した被告人の逃げ得を許さないために、これらの考え方で、再起訴を許す、ということです。この3つのうち、どの構成で書くかは、論文でも論点になりえます。

一事不再理効とは

一事不再理効。憲法39条=①既に無罪とされた行為については刑事上の責任を問われない ②同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われない→無罪でも有罪でも、確定したら同じ事件を二度とやり直せない。「刑事上の責任を問う」=二度処罰することだけでなく、二度起訴されて刑事裁判に付されることまで含めて読む。定義=確定裁判の対象になった事件と同一の事件について、再び公訴提起・審理することは許されない効力。手続面=再起訴されたら、裁判所は中身に入らず免訴(337条1号) 図:一事不再理効

  • 憲法39条=①既に無罪とされた行為については刑事上の責任を問われない ②同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問われない→無罪でも有罪でも、確定したら同じ事件を二度とやり直せない
  • 「刑事上の責任を問う」=二度処罰することだけでなく、二度起訴されて刑事裁判に付されることまで含めて読む
  • 定義=確定裁判の対象になった事件と同一の事件について、再び公訴提起・審理することは許されない効力
  • 手続面=再起訴されたら、裁判所は中身に入らず免訴(337条1号)

ここから、山場の4歩目です。一事不再理効です。根拠の条文から読みます。第7章の前半でも出ました。

条文憲法第39条

憲法第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。

2文あります。1文目の後半は、既に無罪とされた行為について、責任を問われない。2文目は、同一の犯罪について、重ねて、責任を問われない。つまり、無罪になっても、有罪になっても、確定したら、同じ事件を、二度とやり直せない、ということです。責任を問う、というのは、二度、罰することだけですか。違います。二度、起訴されて、刑事裁判にかけられること自体を、含めて読みます。裁判を受ける被告人の負担は、大きいからです。罰が実際に二度下されなくても、同じ事件で、二度、法廷に立たされるだけで、重い負担です。そこで、一事不再理効の定義です。確定した裁判の対象になった事件と、同一の事件について、再び公訴を提起したり、審理したりすることが、許されない効力です。手続の面では、条文があります。

条文刑事訴訟法第337条

刑事訴訟法第337条 左の場合には、判決で免訴の言渡をしなければならない。 一 確定判決を経たとき。 二 犯罪後の法令により刑が廃止されたとき。 三 大赦があつたとき。 四 時効が完成したとき。

1号が、確定判決を経たとき、です。再起訴があっても、裁判所は、中身には入りません。免訴で打ち切ります。免訴は、前に見た、処罰する権利そのものが消えている場面でした。問い1の前半の答えです。無罪が確定した窃盗を、新証拠で蒸し返すことは、許されません。検察官が再起訴しても、免訴で終わります。

根拠・二重の危険と検察官上訴

根拠。かつて=裁判の内容的確定力に由来すると考えるのが通説。穴=内容的確定力は判断された内容(訴因)にしか生じない。例:偽造した領収書で金をだまし取った(私文書偽造・同行使と詐欺は牽連犯=一罪)→詐欺だけで起訴され確定→偽造には効力が及ばず、偽造で起訴できてしまう(一罪の一部だけを裁いたのに)。現在=二重の危険説(通説)=一度訴追の危険にさらされた者は、二度と同じ危険にさらされない(政策的なもの)。確定の前後で線を引く=確定前の検察官上訴は「継続した一つの危険」の続き/確定後の蒸し返しは二度目の危険(最大判昭25・9・27)。確定後に不利益に覆す道はない=再審は有罪の言渡しを受けた者の利益のために(435条柱書) 図:根拠

  • かつて=裁判の内容的確定力に由来すると考えるのが通説
  • 穴=内容的確定力は判断された内容(訴因)にしか生じない
  • 例:偽造した領収書で金をだまし取った(私文書偽造・同行使と詐欺は牽連犯=一罪)→詐欺だけで起訴され確定→偽造には効力が及ばず、偽造で起訴できてしまう(一罪の一部だけを裁いたのに)
  • 現在=二重の危険説(通説)=一度訴追の危険にさらされた者は、二度と同じ危険にさらされない(政策的なもの)
  • 確定の前後で線を引く=確定前の検察官上訴は「継続した一つの危険」の続き/確定後の蒸し返しは二度目の危険(最大判昭25・9・27)
  • 確定後に不利益に覆す道はない=再審は有罪の言渡しを受けた者の利益のために(435条柱書)

では、なぜ蒸し返せないのか。根拠を見ます。かつては、裁判の内容的確定力に由来する、と考えるのが通説でした。確定した裁判の内容に、効力が生じるから、同じ内容は蒸し返せない、という発想です。ところが、穴があります。内容的確定力は、判断された内容、つまり訴因にしか生じないからです。例を作ります。偽造した領収書を使って、金をだまし取りました。私文書偽造と同行使と、詐欺は、牽連犯で、全体として一罪です。ところが、検察官は、詐欺だけを起訴して、有罪が確定しました。内容的確定力だけなら、効力は詐欺にしか及びません。すると、同じ一罪の一部の偽造で、起訴できてしまいます。一罪の一部だけを裁いたのに、残りを裁き直せる、というのは、おかしいでしょう。

そこで、現在の通説は、二重の危険説です。一度、訴追の危険にさらされた人は、二度と、同じ危険にさらされない、という政策的な根拠です。危険は、訴因ごとではなく、事件ごとに負うものです。検察官は、一罪の全体を、1つの起訴でまとめて裁判にかけられました。ですから、その一部で起訴して危険にさらせば、一罪の全体について、危険にさらしたことになります。一事不再理効が、内容的確定力と別の枠だった理由が、これです。ここで、疑問が出ます。二重の危険なら、第一審で、一度、危険にさらされたのに、検察官が、不利益に変更するよう上訴するのは、憲法違反ではないでしょうか。最高裁は、こう答えました。

判例最大判昭25・9・27 刑集4巻9号1805頁

検察官上訴と二重の危険 その危険とは、同一の事件においては、訴訟手続の開始から終末に至るまでの一つの継続的状態と見るを相当とする。されば、一審の手続も控訴審の手続もまた、上告審のそれも同じ事件においては、継続せる一つの危険の各部分たるにすぎないのである。

危険とは、手続の開始から終わりまでの、一つの継続した状態です。第一審も、控訴審も、上告審も、継続した一つの危険の各部分にすぎません。確定するまでは、正しい結論を探している途中です。上訴は、その同じ手続を続けて誤りを直す場であって、裁判を新しく始め直すものではないからです。したがって、検察官が、有罪や、より重い刑を求めて上訴しても、二重の危険ではなく、憲法39条に違反しません。無罪判決への上訴でも、量刑不当を理由とする上訴でも、同じです。ここで、線が引けます。確定の前の上訴は、一つの危険の続きです。確定のあとの蒸し返しは、二度目の危険です。判決の確定で、一度目の危険が終わります。上訴の中身は、上訴総論の回で見ます。確定したあとに、不利益に覆す道もありません。再審は、有罪の言渡しを受けた人の利益のためにだけ、請求できます。435条の柱書です。不利益再審がない理由は、一事不再理効の裏返しです。詳しくは、再審の回で見ます。

どの裁判の確定で生じるか

一事不再理効が生じる裁判・生じない裁判。背骨=実体に入って、被告人を有罪とされる危険にさらしたか。有罪判決=生じる(理由=実体判決が確定した以上、同じ事件で再び有罪の危険にさらすことは許されない)/無罪判決=生じる(同)/公訴棄却(判決・決定)・管轄違い=生じない(実体の判断をせず手続を打ち切っただけ・直せば再起訴できる)/免訴=形式裁判だが生じる(337条の事由は、およそその事件について公訴提起を認めるべきでない典型場面=政策的に再起訴を認めない。再起訴されたら337条1号で免訴)/略式命令=確定すれば確定判決と同一の効力(470条)=生じる 図:一事不再理効が生じる裁判・生じない裁判

  • 背骨=実体に入って、被告人を有罪とされる危険にさらしたか
  • 有罪判決=生じる(理由=実体判決が確定した以上、同じ事件で再び有罪の危険にさらすことは許されない)/無罪判決=生じる(同)/公訴棄却(判決・決定)・管轄違い=生じない(実体の判断をせず手続を打ち切っただけ・直せば再起訴できる)/免訴=形式裁判だが生じる(337条の事由は、およそその事件について公訴提起を認めるべきでない典型場面=政策的に再起訴を認めない。再起訴されたら337条1号で免訴)/略式命令=確定すれば確定判決と同一の効力(470条)=生じる

では、どの裁判が確定すると、一事不再理効が生じるのか。問い1の本体です。その前に、前に見た区別を思い出してください。管轄違い、公訴棄却、免訴のうち、確定したあと、同じ事件を起訴し直せないのは、どれでしょうか?免訴だけです。処罰する権利そのものが消えているので、再訴できません。管轄違いと公訴棄却は、手続の不備なので、直せば再訴できます。今日は、その理由を、二重の危険から整理します。背骨は1本です。実体に入って、被告人を、有罪とされる危険にさらしたか。有罪判決と、無罪判決は、実体の判決です。確定すれば、一事不再理効が生じます。実体の判断が出た以上、同じ事件で、もう一度、有罪の危険にさらして、手続の負担や苦痛を与えることは、許されません。公訴棄却と、管轄違いは、生じません。実体の判断をせず、手続を打ち切っただけだからです。試合のたとえでいえば、始まる前に流れた試合です。組み直せば、もう一度できます。有罪の危険にさらされた、とはいえません。この2つに一事不再理効が生じない、というのが通説です。起訴状の謄本が届かなかった事件は、届け直して、起訴し直せます。

免訴は、形式裁判ですが、一事不再理効が生じる、例外です。理由は、337条の事由にあります。確定判決を経た、刑が廃止された、大赦があった、時効が完成した。これらは、前に見たとおり、処罰する権利そのものが消えている場面です。何度起訴し直しても、有罪にはなりません。およそその事件について、公訴提起を認めるべきでない、典型的な場面です。もう一度起訴を許しても、被告人に、法廷に立つ負担を負わせるだけです。ですから、政策的に、再起訴を認めないのが妥当だ、と考えられます。免訴が確定したあとに、再起訴されたら、どうなるのか。そのときは、確定判決を経たとして、337条1号で、再び免訴です。時効完成の4号ではありません。略式命令も、確認します。

条文刑事訴訟法第470条

刑事訴訟法第470条 略式命令は、正式裁判の請求期間の経過又はその請求の取下により、確定判決と同一の効力を生ずる。正式裁判の請求を棄却する裁判が確定したときも、同様である。

確定すれば、確定判決と同一の効力ですから、実体裁判の確定と同じように、一事不再理効が生じます。前回の最後の効力の中身が、これです。問い1の答えです。無罪は、実体に入った裁判ですから、二重の危険を経ています。だから、蒸し返せません。公訴棄却は、実体に入っていないので、直せば、起訴し直せます。免訴だけは、手続の裁判でも、一事不再理効が生じます。

節目のミニ事例

節目のミニ事例。(a)公訴棄却の決定が確定した事件を、誤りを直して起訴し直した。免訴にしなければならない→×(公訴棄却には一事不再理効が生じない・直せば起訴できる)。(b)時効完成で免訴になった事件が再起訴された。免訴にするなら根拠は337条4号である→×(確定判決を経たとして337条1号)。(c)共犯者の1人が有罪で確定した。別の共犯者にも一事不再理効が及ぶ→×(判決を受けた被告人だけ・249条)。(d)略式命令が請求期間の経過で確定した。同じ事件で再び起訴された。免訴にする→○(確定判決と同一の効力・470条・337条1号) 図:節目のミニ事例

  • (a)公訴棄却の決定が確定した事件を、誤りを直して起訴し直した
  • 免訴にしなければならない→×(公訴棄却には一事不再理効が生じない・直せば起訴できる)
  • (b)時効完成で免訴になった事件が再起訴された
  • 免訴にするなら根拠は337条4号である→×(確定判決を経たとして337条1号)
  • (c)共犯者の1人が有罪で確定した
  • 別の共犯者にも一事不再理効が及ぶ→×(判決を受けた被告人だけ・249条)
  • (d)略式命令が請求期間の経過で確定した
  • 同じ事件で再び起訴された
  • 免訴にする→○(確定判決と同一の効力・470条・337条1号)

節目のミニ事例です。1つ目。公訴棄却の決定が確定した事件を、誤りを直して、起訴し直した。裁判所は、免訴にしなければならない。正しいでしょうか。2つ目。時効の完成で免訴になった事件が、再び起訴された。免訴にするなら、根拠は337条4号である。3つ目。共犯者の1人が、有罪で確定した。別の共犯者にも、一事不再理効が及ぶ。次に見ます。最後の4つ目。略式命令が、請求期間の経過で確定した。同じ事件で、再び起訴された。免訴にする。弁別の軸は、実体に入ったか、そして免訴の事由は何号か、です。

範囲を見る3つの視点

一事不再理効の範囲を見る3つの視点(見取り図)。①主観的範囲=誰に=判決を受けた被告人だけ(共犯者にも及ばない・249条)。②客観的範囲=どの事実に=確定判決を経た訴因に限らず、その訴因と公訴事実の同一性(単一性か狭義の同一性のどちらか)のある範囲。理由=検察官は同一性のある範囲なら一個の起訴や訴因変更で審判を求められた(256条5項・312条1項)→被告人は訴因変更が可能な範囲まで危険を負担。単一性は罪数論で決まる(単純一罪・包括一罪・科刑上一罪)。③時間的範囲=いつの時点まで=原則として第一審の判決宣告時までに判明しうる行為。送り=訴訟条件を欠く事実・常習一罪は次の回、単純窃盗の併合罪どうしはその次の回 図:一事不再理効の範囲を見る3つの視点

  • 見取り図
  • ①主観的範囲=誰に=判決を受けた被告人だけ(共犯者にも及ばない・249条)。②客観的範囲=どの事実に=確定判決を経た訴因に限らず、その訴因と公訴事実の同一性(単一性か狭義の同一性のどちらか)のある範囲。理由=検察官は同一性のある範囲なら一個の起訴や訴因変更で審判を求められた(256条5項・312条1項)→被告人は訴因変更が可能な範囲まで危険を負担。単一性は罪数論で決まる(単純一罪・包括一罪・科刑上一罪)。③時間的範囲=いつの時点まで=原則として第一審の判決宣告時までに判明しうる行為。送り=訴訟条件を欠く事実・常習一罪は次の回、単純窃盗の併合罪どうしはその次の回

最後に、一事不再理効が及ぶ範囲を、見る視点だけ、1枚で確認します。中身は、次の回以降です。その前に、復習の質問です。公訴事実の同一性は、単一性と狭義の同一性の、両方がなければならないのでしょうか。それとも、どちらか一方で足りるのでしょうか?どちらか一方で足ります。視点は3つです。誰に、どの事実に、いつの時点まで。1つ目は、誰に。主観的範囲です。一事不再理効は、判決を受けた被告人だけに及びます。共犯者にも及びません。

条文刑事訴訟法第249条

刑事訴訟法第249条 公訴は、検察官の指定した被告人以外の者にその効力を及ぼさない。

公訴の効力は、検察官が指定した被告人以外に及びません。ですから、共犯者の1人が有罪で確定しても、別の共犯者に、一事不再理効は及びません。2つ目は、どの事実に。客観的範囲です。確定した判決を経た訴因だけでなく、その訴因と、公訴事実の同一性がある範囲まで及びます。この物差しは、審判の対象と公訴事実の同一性の回で、訴因変更・二重起訴と並べて見たものと同じです。理由は、検察官は、同一性のある範囲なら、一個の起訴や訴因変更で、審判を求められたからです。ですから被告人は、訴因変更が可能な範囲まで、危険を負担したことになります。3つ目は、いつの時点まで。時間的範囲です。原則は、第一審の判決の宣告時までに、判明しうる行為です。なぜ、その時点か。そこまでなら、検察官は、訴因変更で、その行為も同じ手続に載せて審理を求められたからです。たとえば、常習として繰り返された窃盗のような集合犯が、判決の前後にまたがるときに、問題になります。

例外は、ないんですか。あります。訴訟条件を欠く事実や、繰り返された犯罪では、一事不再理効が遮断される場面があります。中身は、次の回で見ます。そのさらに次の回で、窃盗が複数あったときの、判例を見ます。

今日の地図(保存版)

まとめの整理表。自己拘束力=成立時・全ての裁判/執行力=有罪判決(471条)/拘束力=形式裁判で実益・直接の理由となった判断だけ/一事不再理効=実体裁判(有罪・無罪・略式の確定)と免訴(憲39条・337条1号・根拠は二重の危険)。問い①=無罪・有罪は実体に入り二重の危険を経たので蒸し返せない/公訴棄却は実体に入っていないので直せば起訴し直せる/免訴だけは形式裁判でも生じる。問い②=公訴棄却決定にも拘束力は及ぶが、偽装した被告人の逃げ得を許さないため、事情の変更・蒸し返し禁止の狙い・禁反言のいずれかの考え方で再起訴を許す 図:まとめの整理表

  • 自己拘束力=成立時・全ての裁判/執行力=有罪判決(471条)/拘束力=形式裁判で実益・直接の理由となった判断だけ/一事不再理効=実体裁判(有罪・無罪・略式の確定)と免訴(憲39条・337条1号・根拠は二重の危険)
  • 問い①=無罪・有罪は実体に入り二重の危険を経たので蒸し返せない/公訴棄却は実体に入っていないので直せば起訴し直せる/免訴だけは形式裁判でも生じる
  • 問い②=公訴棄却決定にも拘束力は及ぶが、偽装した被告人の逃げ得を許さないため、事情の変更・蒸し返し禁止の狙い・禁反言のいずれかの考え方で再起訴を許す

今日のまとめです。確定した裁判には、4つの効力がありました。外部的に成立した時点で、全ての裁判に生じる自己拘束力。有罪判決で実際に使う執行力。形式裁判で意味を持つ、直接の理由となった判断に限る拘束力。そして、実体裁判と免訴に生じる、一事不再理効です。問い1の答えです。無罪も有罪も、実体に入って、被告人を危険にさらした裁判です。だから、確定すれば、同じ事件を蒸し返せません。公訴棄却は、実体に入っていないので、直せば起訴し直せます。免訴だけは、手続の裁判でも、一事不再理効が生じます。問い2の答えです。公訴棄却の決定にも、拘束力は及びます。ただし、偽装した被告人の逃げ得を許さないために、事情の変更、蒸し返しの禁止、禁反言という考え方で、再起訴を許します。一事不再理効は、同じ事件には及びます。では、同じ事件とは、どこまでの範囲か。告訴がなくて起訴できなかった事実にも及ぶのか。繰り返された犯罪はどうか。次は、その範囲を見ます。

参照条文

  • 刑事訴訟法第373条
  • 刑事訴訟法第418条
  • 刑事訴訟法第471条
  • 刑事訴訟法第339条第1項
  • 憲法第39条
  • 刑事訴訟法第337条
  • 刑事訴訟法第470条
  • 刑事訴訟法第249条

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