憲法ゼロから憲法#6

人権とは何か

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人権の3つの性質(11条)

人権の性質3点表(固有性=人間であることに当然に伴う/不可侵性=国家権力・法律でも侵せない/普遍性=人種・性別・身分に関係なく及ぶ、根拠はいずれも11条)

固有性・不可侵性・普遍性

定義人権には、次の3つの性質があります。

  • 固有性:人間であることに当然に伴う権利で、国家から恵んでもらったものではありません。
  • 不可侵性:国家権力によっても、法律によっても、侵すことができません。
  • 普遍性:人種・性別・身分に関係なく、すべての人間に当然に及びます。

結論人権は「国家が与える恩恵」ではなく、人間であることから当然に生まれる権利です。

条文3つの性質を定めているのが、11条です。

「侵すことのできない永久の権利」が不可侵性を、「現在及び将来の国民」が普遍性・固有性を裏づけます。

注意明治憲法の臣民権には、3つの性質がありませんでした。

  • 固有性:天皇が与えた恩恵にすぎず、与えた側はいつでも取り上げられました。
  • 不可侵性:法律で簡単に制限できました。
  • 普遍性:「臣民」は天皇との関係で決まる立場で、そこから外れた人には及びませんでした。

📍 第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)📜 11条国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

97条との関係

条文97条も、同じ3つの性質を、「信託された」という言葉で言い直しています。

📍 第十章 最高法規(97〜99条)📜 97条この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

人権の根拠(個人の尊重)

定義個人の尊重とは、一人ひとりの人間を、かけがえのない存在として尊重する考え方です。

国家や社会のための道具として扱わない、という発想です。

全体のために個人を犠牲にする全体主義とは、正反対です。

結論人が人権を当然に持つ根拠は、個人の尊重にあります。

条文13条の「すべて国民は、個人として尊重される」に表れています。

注意個人の尊厳と呼ぶ基本書もあります。

同じものの別の呼び名です。

📍 第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)📜 13条すべて国民は、個人として尊重される生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

人権総則の入り口(11条・12条・13条)

定義11条・12条・13条の3つは、人権総則の入り口にあたる条文です。

条文12条は、権利を「国民の不断の努力によつて」保持しなければならない、と定めています。

権利は、黙っていても守られるわけではありません。

📍 第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)📜 12条この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

「人権」と「憲法上の権利」

人権は、人間であることから当然に生まれる権利です。
では、「人権」という言葉が指す範囲は、誰が使っても同じなのでしょうか。

「人権」と「憲法上の権利」の対比表(近時の有力説=前国家的な権利だけを人権と呼び憲法上の権利と区別/多くの基本書=両方とも人権と呼ぶ)

定義前国家的な権利とは、国家ができる前から、人が当然に持つ権利です。

憲法上の権利とは、憲法が条文として書き込んだ権利です。

結論試験との関係では、どちらの呼び方を採るかの実益は、あまり大きくありません。

大事なのは、「人権」という言葉に複数の段階があると知っておくことです。

注意このノートでは、広い意味で「人権」という言葉を使います。

人権の分類(5類型)

広い意味の人権は、性質によって分類できます。
では、どのような分類があり、それぞれ国家とどう向き合うのでしょうか。

人権の分類5類型表(自由権・参政権・社会権・受益権・総則的権利の性質と具体例)

定義各分類は、国家との関係で、次のようにも呼ばれます。

  • 自由権:国家からの自由です。何かをしてもらうのではなく、放っておいてもらう権利です。
  • 参政権:国家への自由です。
  • 社会権:国家による自由です。自由権とは、向きが逆です。
  • 受益権:国務請求権とも呼ばれます。国家の仕組みを使って、自分の権利を実現してもらう権利です。

分類の相対性(知る権利)

人権は、5つの類型に分類できます。
では、1つの人権は、必ずどれか1つの類型に決まるのでしょうか。

分類は相対的

結論分類は絶対ではなく、相対的です。

「この人権は自由権だ」と1つに固定するより、その場面でどの側面が働いているかを見ます。

知る権利の3側面

知る権利の3側面表(自由権的側面=集会情報の公表を止める場面/参政権的側面=投票先を決める場面/受益権・社会権的側面=情報公開請求の場面)

定義知る権利は、表現の自由から導かれる権利です。

結論同じ知る権利が、場面によって3つの側面を見せます。

  • 自由権:「余計な口出しをするな」として働きます。
  • 参政権:意味のある一票を投じる前提として、参政権を支えます。
  • 受益権・社会権:国や自治体に「開示せよ」と積極的に求める性格を帯びます。

注意試験で問われるのは、「知る権利は何権に分類されるか」の暗記ではありません。

問題文の中で、どの側面が問題になっているかを見分けることです。

権利の強さ(3段階)

25条は、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障しています。
では、生活が苦しい人は、25条だけを根拠に、裁判所で必ず救済を受けられるのでしょうか。

3つの段階

権利の強さ3段階表(具体的権利=裁判規範性あり/抽象的権利=具体化する立法が必要〈例:25条→生活保護法〉/プログラム規定=裁判規範性なし)

定義3つの段階は、次のとおりです。

  • 具体的権利:それだけで、裁判所に救済を求められる権利です。
  • 抽象的権利:権利として存在はしますが、具体化する法律があって初めて、裁判所を動かせます。
  • プログラム規定:国政の目標を示すだけで、裁判規範性はありません。

結論憲法に書いてある権利にも、強さの段階があります。

注意プログラム規定は、人権そのものではありません

25条の生存権の位置づけ

結論25条の生存権は、抽象的権利にとどまります。

25条だけを根拠に裁判所へ行っても、直ちに救済されるわけではありません。

理由生活保護法のような具体化する法律があって、初めて具体的な請求として機能するからです。

注意次の2点を区別します。

  • 書いてあることと勝てること:憲法に書いてあることと、裁判で勝てることは別です。差を生むのは、具体化する法律が間にあるかどうかです。
  • 平和的生存権:25条の生存権は、前文の平和的生存権とは別の権利です。

📍 第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)📜 25条1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

制度的保障

ここまでは、人権そのものの性質と強さを見てきました。
では、人権ではなく制度そのものを憲法が保障するとは、どういう考え方なのでしょうか。

制度的保障の理論の歴史(形式的法治主義の明治憲法→制度的保障の理論が歯止めに→法の支配の日本国憲法→採用の必要性は乏しくむしろ人権保障を弱めうる→採用の2要件)

制度的保障の意義

定義制度的保障とは、ある制度そのものを、憲法が客観的に保障するという考え方です。

人権そのものではなく、それを支える入れ物を守る発想です。

結論制度の核心部分は、法律の改廃では変えられず、憲法改正が必要になります。

具体例20条の政教分離です(国家と宗教を分離する制度)。

📍 第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)📜 20条1項:信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。3項:国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。

理論が生まれた理由

定義形式的法治主義とは、手続さえ踏めば、中身がどうであれ法律が通ってしまう考え方です。

結論制度的保障は、権利そのものが弱かった時代の歯止めとして生まれました。

理由明治憲法の臣民権は、天皇からの恩恵で、法律で簡単に制限できました(外見的立憲主義の状態)。

そこで、「権利」とは別に「制度」を憲法上保障し、その核心だけは立法でも侵せないと解しました。

こうして、一定の歯止めをかけることができたのです。

日本国憲法の下での評価

結論法の支配を採る日本国憲法の下では、採用の必要性は乏しいとされます。

それどころか、むしろ人権保障を弱めてしまうことがあります。

理由それぞれ、次の理由によります。

  • 必要性が乏しい:法の支配は法律の中身まで問うので、権利自体がすでに守られています。
  • 人権保障を弱める:核心さえ守られていれば、中身がいくら削られても、法的には文句を言えません。制度そのものを守ることと、その中身の充実を守ることは別なのです。

具体例政教分離にこの理論を当てはめると、国家と宗教の結びつきが、かなりの程度許容されうることになります。

その結果、少数者の信教の自由が、かえって害される可能性があります。

注意「制度的保障=人権を守る理論」と単純に暗記しないようにします。

制度的保障が使われていることは、人権が守られていることを意味しません。

採用の2要件

結論制度的保障を採用するには、次の2つの要件を満たす必要があります。

  • 核心:制度の核心が明確であること。
  • 人権との関係:制度と人権との関係が密接であること。

理由核心が決まらないまま持ち出すと、「核心だから法律では動かせない」という結論だけが一人歩きするからです(1つ目の要件)。

具体例「地域の文化」を制度として保障せよ、という主張は、2つの要件を満たしません。

  • 核心:守るべき核心が、どこまでなのか決まりません。
  • 人権との関係:その文化が、誰のどの人権を支えているのかが、はっきりしません。

注意2つの要件を満たさない限り、安易に制度的保障を持ち出すべきではありません。

人権の享有主体(国民・天皇皇族・未成年者)

ここまでは、人権の中身を見てきました。
では、そもそも誰が人権を持つのでしょうか。

国民

国民の享有主体性表(国民の要件=10条→国籍法/血統主義=国籍法2条/出生地主義=アメリカなど/国籍離脱の自由=22条2項・無国籍になる自由は無い)

結論日本国民の要件は、憲法ではなく、国籍法という法律が定めます。

条文10条が、国民の要件を法律に委ねています。

22条2項は、国籍を離脱する自由を保障しています。

注意次の2点に気をつけます。

  • 血統主義と出生地主義:親を見るのが血統主義、生まれた場所を見るのが出生地主義です。対比で押さえます。
  • 国籍離脱:無国籍になる自由まではありません。国籍法が、その手続に一定の制限を置いています。

📍 第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)📜 10条日本国民たる要件は、法律でこれを定める。

📍 第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)📜 22条2項:何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない。

天皇・皇族

天皇皇族・未成年者の特例表(天皇・皇族=国民として人権享有主体・象徴という特別な地位から選挙権・政治活動の自由は制限/未成年者=当然に人権享有主体・心身の発達過程にあることから限定的パターナリスティックな制約)

結論天皇も皇族も、原則として、国民として人権の享有主体です。

ただし、象徴という特別な地位を理由に、必要最小限度の特例が認められます。

理由選挙権や政治活動の自由が制限されるのは、特定の政党に肩入れしては、国民統合の象徴になれないからです。

未成年者

定義限定的なパターナリスティックな制約とは、本人自身を守るために、本人の自由のほうを制限する制約です。

結論未成年者も、当然に人権の享有主体です。

ただし、心身の発達過程にあることを理由に、一定の限定的な制約が認められます。

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