憲法ゼロから憲法#7

外国人の人権とマクリーン事件

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問い:憲法は「何人も」と「国民は」を書き分けている。この書き分けどおりに、外国人への保障の有無は決まるか。

骨組み

  1. 1享有主体性:外国人=日本国籍を持たずに日本に在住する者(無国籍者を含む)。否定説(第3章の表題)・文言説(「何人も」の規定だけ)は採られない。性質説(判例・通説)=権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き、外国人にも及ぶ
  2. 2マクリーン事件・在留(最大判昭53・10・4):外国人は入国する自由も在留の権利も憲法上保障されない=在留の許否は国の裁量。更新の不許可が違法になるのは、判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合に限る
  3. 3マクリーン事件・政治活動(同):政治活動の自由にも保障は及ぶ。ただしわが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等は除く。保障は外国人在留制度のわく内=更新の際に消極的な事情としてしんしゃくされないことまでの保障は無い → 不許可は適法
  4. 4選挙権:国政=保障されない(最判平5・2・26)。地方=の「住民」は日本国民=保障されない(最判平7・2・28)。ただし傍論で、永住者等に法律で地方選挙権を与えることは禁止されていない(与えなくても違憲でない)
  5. 5公務就任権:通説=3分類の①(統治作用に直接関わる管理職)だけ国民に限る。判例(最大判平17・1・26)=公権力行使等地方公務員は原則日本国籍者。それと経るべき職を含む一体的な管理職の任用制度なら、国民に限る昇任は合理的な理由あり=に反しない
  6. 6社会権(通説):所属する国が保障すべき権利 → 憲法上は保障されない(法律で及ぼすのは許される)。判例=外国人の処遇は国の政治的判断・限られた財源の下で、自国民を在留外国人より優先してよい(最判平元・3・2 塩見訴訟。定住外国人か否かの区別はしていない)。不法残留者を生活保護の対象外としても合憲(最判平13・9・25)。ただし性質説から「社会権は範囲外だから、外国人には労働基本権()の適用が無い」と一律には導けない
  7. 7出入国:入国×(国際慣習法)・在留×/出国○(最大判昭32・12・25。・出国の手続は合憲)/再入国×(最判平4・11・16。学説の批判が強い)
  8. 8保障される人権:自由権は原則保障(経済的自由は制限されうる)。平等権・請願権・裁判を受ける権利・刑事補償請求権も保障(程度が弱まる場合はありうる)。ただし「我が国との関係が国民と異なるから、裁判を受ける権利の保障の程度に差を設けてもよい」とはならない。国家賠償請求権だけ相互主義(国家賠償法6条)

色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます(押せるのは日本国憲法の条文だけ。他の法令の条文番号は文字のまま)。短答は「判例の立場」と「通説」を分けて問うので、出どころを混ぜない。

1外国人の人権享有主体性(否定説・文言説・性質説)条文判例学説

  • 外国人=日本国籍を持たずに日本に在住する者。無国籍者も含む。
  • 条文の主語は書き分けられている:「何人も」(例:の職業選択の自由)/「国民は」(例:の生存権)。しかし保障の有無は、この書き分けだけでは決まらない(判例・通説)。問うべきは、どの人権が、どの範囲で外国人に及ぶか。
中身批判・評価
否定説第3章の表題「国民の権利及び義務」を根拠に、外国人には人権規定が適用されない人権は原則として前国家的な権利(・)/憲法は国際協調主義(前文第3段・)→ 採られない
文言説(肯定説)「何人も」の規定の権利だけが外国人にも保障されるも「何人も」なので、国籍離脱の自由まで外国人に保障されてしまう。外国人はもともと日本国籍を持たないので矛盾する → 採られない
性質説(肯定説)権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き、外国人にも適用される判例・通説。判例の定式はマクリーン事件(項目3)
  • 性質説は考え方の枠組みにすぎない。中身を埋めるのは人権ごとの理由づけ(項目4〜8)。
ある人権が外国人に保障されるか権利の性質上日本国民のみを対象とするものか条文の主語(何人も/国民は)では決めない保障されない選挙権・入国・在留などはいいいえ外国人にも保障が及ぶただし外国人在留制度のわく内で
性質説(判例・通説)の判定。性質の中身は、国民主権に関わるか(選挙権・公務就任権の一部)/所属する国が保障すべきものか(社会権)/国家の裁量に属するか(入国・在留)/前国家的な自由か(自由権)、で読み分ける。

出題22条2項は「何人も」なので、国籍離脱の自由は在留外国人にも保障が及ぶ

×にされやすい形
  • 「は『何人も』と定めるから、外国人の職業選択の自由は日本国民と全く同じに保障される」(文言説の発想。性質説では経済的自由に外国人であることを理由とする制限が許されうる)
  • 「判例は、『何人も』と定める規定の権利だけが外国人に保障されるとする」(判例は性質説)
  • 「外国人とは外国の国籍を持つ者をいい、無国籍者は含まない」(無国籍者も含む)

2マクリーン事件——入国・在留と国の裁量判例

  1. 米国籍の上告人が、語学学校の英語教師として在留期間1年の許可で上陸
  2. 入国後わずか17日でその語学学校を辞め、別の団体に英語教師として就職(無届転職)
  3. 在留中、ベトナム戦争反対・日米安保条約反対・出入国管理法案反対などの集会・デモ・ビラ配りに参加(政治活動)。いずれも平和的かつ合法的な行動の域を出ず、参加の態様は指導的・積極的ではなかった
  4. 1年の更新を申請 → 「出国準備期間」として120日だけ更新を許可
  5. 改めて1年の更新を申請 → 法務大臣が不許可。理由=無届転職と政治活動(判決は、なかでも政治活動が重視されたとする)
  • 憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。
  • その前提:は日本国内の居住・移転の自由を定めるだけで、外国人の入国については規定していない。国際慣習法上、国家は特別の条約がない限り外国人を受け入れる義務を負わず、受け入れるか・どんな条件を付けるかを自由に決められる(最大判昭32・6・19を参照)。
  • 在留期間の更新(出入国管理令21条3項)は、法務大臣の広い裁量に任される。
  • その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法となるものというべきである。

更新の不許可を争っても、裁判所は「自分ならどう判断するか」で置き換えない。判断の基礎となった重要な事実の誤認や、事実の評価が明白に合理性を欠くことなどにより、全く事実の基礎を欠くか・社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかかを見るだけ。

×にされやすい形
  • 「外国人は、在留期間の更新を受ける権利を憲法上保障されている」(在留の権利も、引き続き在留することを要求しうる権利も保障されない)
  • 「マクリーン事件で更新が不許可とされた理由は、政治活動だけであった」(無届転職と政治活動。なかでも政治活動が重視された)
  • 「法務大臣の判断は、裁判所が相当と考える判断と異なれば違法となる」(全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合に限り違法)

3マクリーン事件——政治活動の自由と在留制度のわく内判例学説

  • 憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり、
    政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。
  • 外国人の在留の許否は国の裁量にゆだねられ、わが国に在留する外国人は、憲法上わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求することができる権利を保障されているものではなく、
    …外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であつて、
    在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障、すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情としてしんしやくされないことまでの保障が与えられているものと解することはできない。
  • 在留中の外国人の行為が合憲合法な場合でも、法務大臣がその行為を当不当の面から日本国にとつて好ましいものとはいえないと評価し、また、右行為から将来当該外国人が日本国の利益を害する行為を行うおそれがある者であると推認することは、右行為が上記のような意味において憲法の保障を受けるものであるからといつてなんら妨げられるものではない。
  • あてはめ:
  • 前述の上告人の在留期間中のいわゆる政治活動は、その行動の態様などからみて直ちに憲法の保障が及ばない政治活動であるとはいえない。
  • しかし、わが国の基本的な外交政策を非難し、日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものも含む → そう評価して更新を不許可とした判断は、社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかとはいえない → 不許可は適法(違憲の問題も生じない)。
在留中の外国人の政治活動わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等か外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないもの保障が及ばないはいいいえ保障が及ぶ在留制度のわく内(更新の際に不利にしんしゃくされうる)
マクリーン事件の判示。保障が及ぶ活動でも、在留期間の更新の判断でそれを不利な事情として考慮されないことまでは保障されない。本件の活動は保障の外とはいえないとされたが、不許可は適法とされた。
政治活動の自由の範囲の言い方
判例(マクリーン)わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等、外国人の地位にかんがみ認めることが相当でないものを除き保障が及ぶ
通説わが国の政治問題への不当な干渉にならない範囲で認められる。理由=精神的自由は前国家的で、外国人の意見も民主主義に有益。範囲が限られるのは、参政権が国民主権原理から国民だけのものだから
判例への批判保障するといいながら、使えば在留で不利益に考慮されうる → 政治活動の自由を認めていないのと同じではないか
  • 境目は2段:①その活動に保障が及ぶか(入り口)/②保障が及んでも、在留の許否の判断で不利な事情として考慮されうるか(在留制度のわく内)。判決は①も②も述べたが、本件の結論(不許可は適法)を決めたのは②=考慮されないことまでの保障は無い、という点。「保障される」と「不利益抜きで自由にできる」は同じではない。

マクリーン事件の活動(平和的かつ合法的な集会・デモへの参加で、指導的・積極的でない)は、その行動の態様などからみて直ちに保障の外とはいえないとされた。それでも、日本の外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものを含むと評価して更新を不許可とした判断は、社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかとはいえない → 保障の内側の活動でも、更新の判断で不利に考慮されうる。

出題外国人の政治活動の自由も、政治的意思決定に影響する活動等を除き保障が及ぶ(○)外国人の政治活動の自由は、政治的意思決定に影響する活動でも憲法上保障される(×)在留中の人権の行使を、在留期間の更新の際に消極的事情としてしんしゃくできる外国人の政治活動の自由の保障は、政治的意思決定に影響する活動等には及ばない

×にされやすい形
  • 「判例は、外国人の政治活動の自由は、日本国民と同様に、限定なく保障されるとした」(政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等を除く)
  • 「政治活動の自由が保障されている以上、その活動を理由に在留期間の更新を不許可とすることは違憲である」(保障は在留制度のわく内。更新の際にしんしゃくされないことまでの保障は無い)
  • 「最高裁は、上告人の政治活動は憲法の保障が及ばない活動であると認定した」(直ちに保障が及ばない活動とはいえないとしたうえで、不許可を適法とした)
  • 「行為が合憲合法であれば、法務大臣はそれを更新の判断で考慮できない」(合憲合法な場合でも好ましくないと評価してよい)

4選挙権(国政と地方)条文判例学説

憲法上の保障法律で与えること
国政無い(判例・通説)許されないと解されている(学説の整理。判例は述べていない)
地方無い(判例・通説)禁止されていない(判例の傍論・許容説)。与えなくても違憲ではない
  • 国政:国政選挙は国民主権(前文・)を具体化する場面 → 性質上日本国民のみ。
  • 最判平5・2・26(国政選挙権)は、マクリーン事件(最大判昭53・10・4)を引いてこう述べた。
  • 国会議員の選挙権を有する者を日本国民に限っている公職選挙法九条一項の規定が憲法一五条、一四条の規定に違反するものでないことは、
    …同五三年一〇月四日大法廷判決…の趣旨に徴して明らかであり
  • 最判平7・2・28(定住外国人の地方選挙権)は、についてこう述べた。
  • 公務員を選定罷免する権利を保障した憲法一五条一項の規定は、権利の性質上日本国民のみをその対象とし、右規定による権利の保障は、我が国に在留する外国人には及ばないものと解するのが相当である。
  • 地方・憲法上の保障:外国人もその地域に住んでいればの「住民」に入る、という見解もある。しかし判例・通説は保障しない。
  • 前記の国民主権の原理及びこれに基づく憲法一五条一項の規定の趣旨に鑑み、地方公共団体が我が国の統治機構の不可欠の要素を成すものであることをも併せ考えると、
    憲法九三条二項にいう「住民」とは、地方公共団体の区域内に住所を有する日本国民を意味するものと解するのが相当であり、右規定は、我が国に在留する外国人に対して、地方公共団体の長、その議会の議員等の選挙の権利を保障したものということはできない。
  • 地方・法律で与えてよいか:禁止説(国政と同じに考え、法律による付与も許されない)/許容説(許される)。許容説が有力で、判例も同じ趣旨を述べた。理由=国政と地方で担う事務の違い(国民主権原理との関わりの深さが違う。住民の日常生活に密接な公共的事務は、その地方の住民の意思で処理する)。
  • 我が国に在留する外国人のうちでも永住者等であってその居住する区域の地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、その意思を日常生活に密接な関連を有する地方公共団体の公共的事務の処理に反映させるべく、法律をもって、地方公共団体の長、その議会の議員等に対する選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上禁止されているものではないと解するのが相当である。
  • しかしながら、右のような措置を講ずるか否かは、専ら国の立法政策にかかわる事柄であって、このような措置を講じないからといって違憲の問題を生ずるものではない。
  • この部分は上告棄却という結論を導くのに必要な部分ではない=傍論とされる(判決の直接の結論ではない)。

国会が、地域と特に緊密な関係を持つ永住者に市長・市議会議員の選挙権を与える法律を作っても、傍論によれば憲法上禁止されない。作らないことも違憲ではない。市の条例で与えた場合は、傍論が「法律をもって」と述べている以上その射程に入らず、結論は判旨からは出ない。

出題特段に緊密な関係の永住者等でも、法律で地方選挙権を付与するのは憲法上禁止(×)判例は、外国人に法律で地方選挙権を付与するのは憲法上一律に禁止とした(×)在留外国人には地方公共団体の長・議員の選挙権が憲法上保障されていない(○)93条2項の住民は日本国民だが、永住者等に法律で選挙権を付与するのは禁止されない(○)

×にされやすい形
  • 「の『住民』には外国人も含まれるから、外国人の地方選挙権は憲法上保障される」(判例は区域内に住所を有する日本国民と解した)
  • 「判例は、永住者等に地方選挙権を与える法律を制定しないことは違憲であるとした」(措置を講じるかは専ら立法政策の問題。講じなくても違憲ではない)
  • 「判例は、国政選挙権を法律で外国人に与えることも違憲であるとした」(判例が述べたのは、国民に限る公職選挙法の規定が違憲でないことまで)
  • 「判例は、条例によって外国人に地方選挙権を与えることも禁止されないとした」(判旨は「法律をもって」)

5公務就任権と東京都管理職選考事件条文判例学説

  • 公務就任権=公務員になる資格。またはに含まれると解されている。
  • 通説は公務を3つに分け、①だけを日本国民のみの対象とする(①は公権力の行使・公の意思の形成に直接関わる=国民主権原理が及ぶ)。
通説の3分類通説の結論判例の概念(ほぼ対応)
①公権力の行使・公の意思形成への参画で、直接に統治作用に関わる管理職国民のみ公権力行使等地方公務員=原則として日本国籍者
②専門的・技術的分野のスタッフなど、統治作用への関わりが弱い管理職外国人にも保障①に昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職=①と一体の制度なら国民に限ってよい
③補佐的・補助的な事務、もっぱら学術的・技術的な専門分野の事務外国人にも保障(採用済みの職員の昇任の事件で、争点ではない)
  • 最高裁は通説の3分類を使っていない。独自の「公権力行使等地方公務員」という概念を立て、通説なら保障が及ぶ②にほぼ当たる職まで、一体の制度を理由に国民に限ってよいとした=判例は通説とずれる。
  • ②は管理職であることが前提。判決の事実にある「企画や専門分野の研究を行うなどの職務を行い、事案の決定権限を有せず、事案の決定過程にかかわる蓋然性も少ない管理職」は、通説の②にほぼ当たる(判決が通説の分類で述べたわけではない)。
  • 事案:大韓民国籍の特別永住者が、東京都に保健婦として採用された後(都は保健婦の国籍要件を外していた)、課長級の管理職選考を国籍を理由に受けられなかった。最高裁で争われたのは国家賠償法1条1項に基づく慰謝料請求。上告したのは都=判決文の「上告人」は東京都。
審級受験させなかったこと理由の要点
原審違法管理職にも統治作用への関わりが弱いものがある → その任用には外国人にも・の保障が及ぶ → 慰謝料を一部認容
最高裁違法でない一体的な管理職の任用制度のもとで国民に限るのは合理的な理由に基づく区別 → 原判決の上告人敗訴部分を破棄(請求棄却の第一審を維持)
  • 地方公務員のうち,住民の権利義務を直接形成し,その範囲を確定するなどの公権力の行使に当たる行為を行い,若しくは普通地方公共団体の重要な施策に関する決定を行い,又はこれらに参画することを職務とするもの(以下「公権力行使等地方公務員」という。)については,次のように解するのが相当である。
  • 国民主権の原理に基づき,国及び普通地方公共団体による統治の在り方については日本国の統治者としての国民が最終的な責任を負うべきものであること(憲法,参照)に照らし,原則として日本の国籍を有する者が公権力行使等地方公務員に就任することが想定されているとみるべきであり,
    我が国以外の国家に帰属し,その国家との間でその国民としての権利義務を有する外国人が公権力行使等地方公務員に就任することは,本来我が国の法体系の想定するところではないものというべきである。
  • 普通地方公共団体が,公務員制度を構築するに当たって,公権力行使等地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築して人事の適正な運用を図ることも,その判断により行うことができるものというべきである。
  • 普通地方公共団体が上記のような管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,合理的な理由に基づいて日本国民である職員と在留外国人である職員とを区別するものであり,上記の措置は,労働基準法3条にも,憲法にも違反するものではないと解するのが相当である。
  • そして,この理は,前記の特別永住者についても異なるものではない。
  • 原審がいうように,上告人の管理職のうちに,企画や専門分野の研究を行うなどの職務を行うにとどまり,公権力行使等地方公務員には当たらないものも若干存在していたとしても,上記判断を左右するものではない。
  • 段階を分ける:一体の制度を作ること自体は地方公共団体の判断でできる(合理性を問うていない)/合理的な理由が問われるのは日本国民に限る区別の側。
  • 本件の都は、管理職に昇任すれば、いずれは公権力行使等地方公務員に就くことがあるのが当然の前提だった → 一体的な任用制度を設けていたといえる。
  • 最高裁は、に基づく公務就任権が外国人に保障されるかを正面からは判断していない(補足意見は「なお重大な問題として残されている」とする)。
外国籍の職員の管理職への昇任公権力行使等地方公務員の職か住民の権利義務を直接形成する・重要な施策の決定を行う等原則日本国籍者外国人の就任は法体系の想定外はいいいえ一体的な管理職の任用制度か公権力行使等の職と、昇任に必要な経験を積むために経るべき職を包含国民に限ってよい外国籍の職員を外せる。合理的な理由に基づく区別=14条1項・労基法3条に反しないはいいいえ判決は述べていない一体の制度という前提が欠ける
東京都管理職選考事件の2段。どちらの「はい」も、外国籍の職員を外してよい側。一体の制度でない場合(別ルートの研究職の管理職ポストなど)は判決の前提が欠ける方向に動くが、結論は判旨からは出ない。

出題公権力行使等地方公務員には、原則として日本国籍者の就任が想定され外国人は想定外(○)判決は、管理職に公権力行使等地方公務員が含まれることを前提としている(○)一体的な管理職任用制度で、日本国民の職員に限り昇任させる措置は14条1項に反しない(○)公権力を行使するかにかかわらず、外国人の地方公務員就任は法体系の想定外(×)職務の性質にかかわらず外国籍者に管理職選考の受験を認めない措置は労基法3条違反(×)

×にされやすい形
  • 「最高裁は、通説の3分類に従い、統治作用への関わりが弱い管理職には外国人も就任できるとした」(独自の概念を立て、一体の制度なら国民に限ってよいとした)
  • 「判例は、特別永住者には公務就任権が一切認められないとした」(一体的な管理職任用制度のもとで国民に限って昇任を認める措置が、特別永住者にも許されるとしただけ)
  • 「東京都は、外国人の職員採用そのものを認めていなかった」(採用済みの職員の管理職選考の受験資格の事件)
  • 「判例は、一体的な任用制度を構築すること自体に合理的な理由が必要であるとした」(制度の構築は地方公共団体の判断でできる。合理的な理由が問われるのは国民に限る区別)
  • 「公権力行使等地方公務員に当たらない管理職が若干存在すれば、一律に受験させないのは違法となる」(判断を左右しない)

6社会権(塩見訴訟・不法残留者と生活保護)判例学説

  • 社会権=国に積極的な給付を求める権利。各人が所属する国によって保障されるべき権利 → 性質上、外国人には憲法上保障されない(通説。判例も同じ立場と解されている)。
  • ただし財政事情などの支障が無い限り、法律で外国人にも及ぼすことは許される。
  • 労働基本権()も社会権に数えられるが、性質説から「参政権や社会権は範囲外だから、外国人には労働基本権の適用がない」と一律に導くことはできない。
憲法上の権利法律との関係
国民の生存権ある()法律が憲法上の権利を具体化する
外国人の社会権無い法律で与えるかどうかが立法府の判断に委ねられる
  • 似ているのは「法律次第で決まる」点だけ。外国人には、法律が具体化する憲法上の権利そのものが無い。
  • 塩見訴訟の事案:上告人は幼少期にはしかで失明。障害福祉年金の廃疾認定日(昭和34年11月1日)には大韓民国籍で、その後帰化して日本国籍を取得してから請求した。法律は認定日に日本国民でない者には支給しないと定めていた(国籍条項)→ 請求棄却。
  • 社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。
  • 判決が比べたのは「自国民」と「在留外国人」。在留外国人の中で、定住外国人かどうかを区別して論じてはいない。
  • また、経過的な性格を有する右障害福祉年金の給付に関し、廃疾の認定日である制度発足時の昭和三四年一一月一日において日本国民であることを要するものと定めることは、合理性を欠くものとはいえない。
  • 重ねた理由:の具体化は立法府の広い裁量/この年金は制度発足時の経過的な無拠出制の年金で、支給対象の決定にもともと広範な裁量がある/外国人の処遇は国の政治的判断。帰化した者を遡って救う措置をとるかも立法府の裁量(国籍条項は昭和56年の法改正で既に削除されており、その改正の効果を遡らせるかどうかを立法府の裁量とした。将来の法改正が望ましいといった判断は示していない)。・・に違反しない。
  • 最判平13・9・25:不法残留者が交通事故で負傷し、生活保護を申請して却下された事案。
  • 不法残留者を保護の対象に含めるかどうかが立法府の裁量の範囲に属することは明らかというべきである。
  • 不法残留者が緊急に治療を要する場合についても,この理が当てはまるのであって,立法府は,医師法19条1項の規定があること等を考慮して生活保護法上の保護の対象とするかどうかの判断をすることができるものというべきである。
  • 医師法19条1項=「診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない。」立法府は、この規定があること等を考慮して判断できる、とされた。
  • → ・に違反しない。

出題特別永住者を障害福祉年金の支給対象から一切除外するのは不合理な差別(×)不法残留者を生活保護法の保護の対象としないのは14条1項に違反する(×)判決は定住外国人か否かを区別し、自国民を定住外国人より優先できるとした(×)判決は、将来的には法改正で国籍要件を撤廃するのが望ましいとの判断を示した(×)社会保障で在留外国人をどう処遇するかは立法府の広い裁量に委ねられる(○)障害福祉年金で在留外国人を支給対象から除外しても14条1項に違反しない(○)人権の性質で個別に判断する考えによれば、外国人に労働基本権の適用はない(×)

×にされやすい形
  • 「社会権は外国人に保障されないから、法律で外国人に社会保障を及ぼすことも許されない」(法律で及ぼすのは許される)
  • 「塩見訴訟の原告は、請求の時点で外国人であったため年金を受けられなかった」(請求時は帰化して日本国民。認定日に日本国民でなかったことが理由)
  • 「判例は、限られた財源の下でも自国民と在留外国人を同等に扱わなければならないとした」(自国民を優先してよい)
  • 「塩見訴訟の判決は、定住外国人か否かを区別しつつ、自国民を定住外国人より優先的に扱うことも許されるとした」(定住か否かの区別はしていない。比べたのは自国民と在留外国人)
  • 「塩見訴訟の判決は、将来的には法律を改正して国籍要件を撤廃するのが望ましいとの判断を示した」(そのような判断は示していない)
  • 「性質説によれば社会権は外国人の保障の範囲外だから、外国人には労働基本権の適用がない」(社会権という分類から、労働基本権の適用まで一律に否定することはできない)
  • 「不法残留者でも、緊急に治療を要する場合には生活保護の対象としなければ違憲となる」(緊急に治療を要する場合にも立法府の裁量の理が当てはまる)

7入国・在留・出国・再入国条文判例学説

保障判例理由
入国無い最大判昭32・6・19(マクリーン事件も同旨)は入国を定めない。誰を入国させるかは国家の自由裁量=今日の国際慣習法
在留無いマクリーン事件入国の自由が無い以上、在留の自由も無い
出国ある最大判昭32・12・25の外国移住の自由は、性質上外国人に限って保障しない理由はない。ただし出国の手続は合憲。同じ22条2項でも国籍離脱の自由は外国人に及ばない=条文の主語ではなく性質で決まる
再入国無い最判平4・11・16(森川キャサリーン事件)先例の趣旨に徴して明らか、とだけ述べる。学説からの批判が強い
  • 出国:無証印で朝鮮へ出国しようとした外国人の処罰(出入国管理令25条違反)が争われた。
  • 憲法二二条二項は「何人も、外国に移住し、又は国籍を離脱する自由を侵されない」と規定しており、ここにいう外国移住の自由は、その権利の性質上外国人に限つて保障しないという理由はない。
  • 右は、出国それ自体を法律上制限するものではなく、単に、出国の手続に関する措置を定めたものであり、
    …同令一条に規定する本邦に入国し、又は本邦から出国するすべての人の出入国の公正な管理を行うという目的を達成する公共の福祉のため設けられたものであつて、合憲性を有するものと解すべきである。
  • → 出国の自由の主張は退けられ、処罰は覆らなかった。外国人の出国も手続の規制は受ける。入国=国家の自由裁量/出国=憲法上の自由(出国の手続の定めは合憲とされた)=結論が逆。
  • 再入国=一度日本を出た外国人が、もう一度日本に戻ること。
  • 我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されているものでないことは、
    …の趣旨に徴して明らかである。
  • 引かれた先例は、入国の自由を否定した最大判昭32・6・19とマクリーン事件。判決は、それ以上の理由を書いていない。学説からは、生活の本拠に戻る自由なので人権として保障されるべきだ、という批判が強い。

外国人も日本から出て行く自由は保障される。しかし出国の際の手続を無視して出国しようとすれば、処罰されうる(手続の定めは出国そのものの制限ではない)。

日本で家族と暮らす外国人が、海外旅行のための再入国許可を申請して不許可になった → 判例によれば、憲法上の一時旅行の自由の侵害にはならない。

出題空欄オ=b:出国の自由はあるが、再入国の自由には争いがある生活の本拠を持つ外国人には22条2項により一定の場合に再入国の自由が認められる(×)判例は、在留外国人に在留期間内の外国への一時旅行の自由を保障している(×)

×にされやすい形
  • 「外国人には、入国の自由と同様に、出国の自由も憲法上保障されない」(出国の自由は保障される)
  • 「出国の自由が保障される以上、出国の際に旅券に証印を受けさせる手続は違憲である」(出国そのものの制限ではなく、出入国の公正な管理のための手続=合憲)
  • 「判例は、在留外国人には外国へ一時旅行する自由が憲法上保障されるとした」(保障されているものでない)
  • 「の居住・移転の自由には、外国人が日本に入国する自由も含まれる」(国内の居住・移転の自由を定めるだけで、入国については規定していない)

8保障される人権(自由権・その他の権利)条文学説

  • 自由権:社会権と違い、前国家的・自然権的な権利 → 原則として外国人にも保障される。
  • 経済的自由には、外国人であることを理由とする一定の制限が許されうる。例:公証人法12条1項1号(日本国民であることが任命の条件)/電波法5条1項1号(日本の国籍を有しない人には無線局の免許を与えない。ただし同条2項でアマチュア無線局などは除外)。
  • 平等権()・請願権()・裁判を受ける権利()・刑事補償請求権()も外国人に保障される。ただし保障の程度が弱まる場合はありうる。
  • ただし裁判を受ける権利について、「外国人は我が国との関係が日本国民と異なるので、日本国民に比べて保障の程度に差を設けることも許される」とはならない。
  • 国家賠償請求権()は、相互主義が妥当すると解されている=相手の国が日本人に賠償請求を認めているなら、日本もその国の人に認める。
  • 国家賠償法6条:この法律は、外国人が被害者である場合には、相互の保証があるときに限り、これを適用する。
権利外国人への保障
自由権原則保障(経済的自由は法律で制限されうる)
政治活動の自由保障(政治的意思決定等に影響を及ぼす活動等を除く・在留制度のわく内)=項目3
平等権・請願権・裁判を受ける権利・刑事補償請求権保障(程度が弱まる場合はありうる。ただし「我が国との関係が異なるから裁判を受ける権利の保障の程度に差を設けてよい」とはならない)
国家賠償請求権相互主義(国家賠償法6条)

A国が自国の公務員の不法行為について日本人に賠償を認めていなければ、日本の公務員から損害を受けたA国人には国家賠償法は適用されない。一方、勾留の後に無罪となった外国人の刑事補償の請求には、この相互の保証という条件は付かない。

出題国籍要件を14条1項に反しないとしたことは、同項の趣旨が外国人に及ぶ考えと矛盾しない(○)自由権はその性質上いずれも外国人に日本国民と同様に保障される(×)外国人には日本国民と比べ、裁判を受ける権利の保障の程度に差を設けてよい(×)

×にされやすい形
  • 「外国人は我が国との関係が日本国民と異なるので、日本国民に比べて裁判を受ける権利の保障の程度に差を設けることも許される」(そうはならない)
  • 「刑事補償請求権も、国家賠償請求権と同様に、相互主義によって保障される」(相互主義が採られているのは国家賠償請求権)
  • 「外国籍の者は、無線局の免許を一切受けられない」(アマチュア無線局などは除外されている)
  • 「自由権は前国家的な権利だから、外国人の経済的自由を外国人であることを理由に制限することはできない」(経済的自由には一定の制限が許されうる)

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