特別権力関係論と被収容者の人権
問い:公務員や刑事施設の被収容者の人権は、「特別な身分だから」という理由で制限できるのか。
骨組み
- 1特別権力関係論(明治憲法下の理論):同意(公務員・国立大学の学生)または法律(被収容者)によって国家の特別な支配に服する関係。妥当するとされた3つ=①法律の留保の排除 ②広範な人権制限 ③司法審査の排除
- 2否定(学説):専断的な人の支配を肯定する理論 → 法の支配に立つ日本国憲法では採れない。代わりに、関係ごとに制限の根拠と限度を個別に問う
- 3被収容者の制約の根拠(通説):憲法が収容関係の存在と自律性を認めている(・参照)。被収容者=受刑者だけでなく未決拘禁者(被疑者・被告人)も
- 4被収容者の制約の内容(通説):制度に内在する制限は法律の根拠が必ずしも要らない(例=居住・移転の自由)。ただし少なくとも拘禁の確保・戒護・矯正教化の目的のための制約でなければならない(矯正教化は受刑者だけ)
- 5よど号事件・閲読の自由(最大判昭58・6・22):新聞紙・図書等の閲読の自由は、・の趣旨・目的から派生原理として当然に導かれ、(個人の尊重)の趣旨に沿う。ただし絶対無制限ではない
- 6よど号事件・制限の基準(同):一般的、抽象的なおそれでは足りない。具体的事情のもとで放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性が必要+制限の程度は必要かつ合理的な範囲
- 7よど号事件・結論(同):法令=要件・範囲内でのみ制限を許す趣旨と解して憲法に違反しない/処分=蓋然性ありとした所長の認定に合理的な根拠があり、かつ制限が必要とした判断に合理性があれば適法(裁量の逸脱・濫用なし)。乗っ取り事件の記事を一定期間すべて抹消した措置も適法
- 8喫煙禁止事件(最大判昭45・9・16):未決拘禁者の喫煙禁止は、必要性の程度と制限される人権の内容・制限の態様の較量で必要かつ合理的 → に違反しない。相当の蓋然性の基準は使っていない
- 9公務員(通説):根拠=憲法が公務員関係の存在と自律性を認めている(・参照)。ただし被収容者と違い、必ず法律の根拠が要る(法律の留保は外せない)
色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます(押せるのは日本国憲法の条文だけ。監獄法・国家公務員法などの条文番号は文字のまま)。最大判=最高裁大法廷の判決。判決文の「監獄」は当時の法律の言葉で、今の刑事施設・拘置所を指す。
1特別権力関係論とは何だったか学説
- 特別権力関係=同意または法律によって、国家の特別な支配に服する関係。
- 同意による関係=公務員・国立大学の学生/法律による関係=刑事施設の被収容者。
- 特別権力関係論=明治憲法の時代に、この人たちの人権制限を説明した理論。現在は否定されている。
- 明治憲法にも、不十分ながら「法律によって権利を制限する」という意味の法律の留保はあった。特別権力関係にある者にはそれすら及ばなかった。
| この関係の中で妥当するとされたこと | 中身 |
|---|---|
| ① 法律の留保の排除 | 法律の根拠が無くても人権を制限できる |
| ② 広範な人権制限 | 広い範囲で人権を制限できる |
| ③ 司法審査の排除 | その制限に裁判所の審査が及ばない |
被収容者が手紙を出すことを全面的に禁じられた → この理論のもとでは、禁止を定めた法律が無くてもよく(①)、範囲が広くてもよく(②)、裁判所に訴えることもできない(③)。
出題特別権力関係論では、法律の根拠なく人権を制限でき、裁判所の審査も及ばない(○)法律に基づく特別権力関係の例は、受刑者の在監関係と公務員の在勤関係(×)
- 「公務員は法律によって、被収容者は同意によって、特別権力関係に入る」(逆=公務員・国立大学の学生が同意、被収容者が法律)
- 「特別権力関係論のもとでも、人権の制限には法律の根拠が必要とされた」(①法律の留保の排除)
- 「特別権力関係論のもとでは、制限に対して司法審査が及ぶとされた」(③司法審査の排除)
2特別権力関係論の否定と、その後の考え方学説条文
- 否定の理由の中心:特別権力関係論は、専断的な国家権力の支配=人の支配を肯定する理論そのもの → 法の支配に立脚する日本国憲法のもとでは採用できない。
- 否定の理由の中心は法の支配。そのうえで、3つの効果がそれぞれ何とぶつかるかを整理すると、下の表のとおり。
- 代わりの考え方:公務員・被収容者・国立大学の学生を一括りの身分として扱わない。関係ごとに、根拠(なぜ制限できるか)と限度(どこまで制限できるか)を個別に問う。
| 効果 | ぶつかるもの |
|---|---|
| ① 法律の根拠なしの制限 | 法律の留保(国会を唯一の立法機関とするの趣旨) |
| ② 広範な制限 | 人権保障そのもの |
| ③ 司法審査の排除 | 裁判を受ける権利()・違憲審査制() |
- :何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪はれない。
- :最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。
出題特別権力関係論は権力服従性という形式で一括し、人権制約を一般的に許容する点が問題(○)法律の根拠なく人権を制限でき司法審査も及ばない特別権力関係論は、現憲法下で妥当し難い(○)法律関係の特殊性だけで人権制約は正当化できず、関係ごとに具体的に検討すべき伝統的な特別権力関係論は、日本国憲法の下では妥当し得ない
- 「特別権力関係論は、日本国憲法のもとでも通説として維持されている」
- 「日本国憲法のもとでも、公務員・被収容者・国立大学の学生は、特別な身分として一括りに扱われる」(関係ごとに根拠と限度を問う)
- 「特別な身分にある者の人権は、その身分にあることを理由に当然に制限される」
3被収容者への制約の根拠学説条文
- 被収容者=受刑者だけでなく、未決拘禁者(被疑者・被告人として勾留されている者)も含む。
- 通説:憲法が刑事収容施設の収容関係の存在と自律性を認めている(・参照)ことに根拠を求める。憲法自身が、一般国民と異なる制約を予定している者。
- 「自律性」=収容関係の中の管理を、一定程度その関係自体に委ねることを憲法が認めている、ということ(個々の被収容者が自分で決めるという意味ではない)。だから法律の根拠が緩む余地が出る(項目4)。
- 条文から読むと:後段は「犯罪に因る処罰の場合を除いては」と、刑罰としての苦役を予定する。は「法律の定める手続によらなければ」自由を奪われないと定め、手続を踏んだ自由の剥奪を予定する → 憲法は刑の執行・拘禁の場を前提にしている。
- 抑留・拘禁の要件を定めるも、同じ方向の手がかりとして加える見解もある(通説が挙げるのは・)。
- 考え方:「例外だから制限される」のではなく、「憲法の内側にある関係だから、その内側でだけ制限できる」。
- :何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
出題刑事施設被収容者に一般権力関係と異なる人権制限を行う必要性は今も肯定できる施設内の規律・秩序の維持に必要なら、未決拘禁者の身体・行為の自由の制限もやむを得ない(○)
- 「未決拘禁者は、被収容者に含まれない」
- 「の『犯罪に因る処罰の場合を除いては』は、前段の奴隷的拘束の禁止にも係る」(後段の苦役にだけ係る。奴隷的拘束の禁止は例外のない絶対的な禁止)
- 「被収容者の人権が制限されるのは、収容が憲法の外にある例外的な関係だからである」
4被収容者への制約の内容と目的学説
- 制度に内在する制限は、法律の根拠が必ずしも要らない。立法の委任の範囲も通常より広くなりうる=法律の留保が排除されたり、弱まったりしうる。
- 「制度に内在する」=収容という制度そのものから当然に生じる制限。例:収容すること自体が、居住・移転の自由を制限している。
- 例:被収容者の居住・移転の自由()の制限には、法律の根拠は不要と解される。
- 一般国民には許されない程度の制約も、正当化されうる。
- ただし目的の限定がある:少なくとも次の目的を達成するための制約でなければならない(これらの目的のための制約であることが最低限の条件。目的に入っても、手段が正当かは別に問われる)。①拘禁の確保(逃亡を防ぎ収容を維持する)②戒護(施設内の規律・秩序=保安の維持)③矯正教化(受刑者を教育し更生させる)。
- ③矯正教化は有罪が確定した受刑者だけの目的。被疑者・被告人には妥当しない。
- 目的自体は正当・重要と認められやすい → 勝負は、手段が正当かを事案ごとに見るところ。
- 特別権力関係論との違い:緩められうるのは、憲法自身が収容関係を予定しているから。法の枠ごと外れるのではない(下の表)。
| 特別権力関係論(否定) | 今の通説(被収容者) | |
|---|---|---|
| 制限の根拠 | 国家の特別な支配に服する関係 | 憲法が収容関係の存在と自律性を認めている |
| 法律の根拠が要らない範囲 | 制限の全部 | 制度に内在する制限だけ(必ずしも要らない) |
| 目的の限定 | なし(広範な制限) | 少なくとも拘禁の確保・戒護・矯正教化のための制約 |
| 裁判所の審査 | 及ばない | 及ぶ(よど号事件・喫煙禁止事件で最高裁が判断) |
施設の運営に何の支障も無いのに、所長が個人的に気に入らないという理由だけで本を取り上げる → どの目的にも当たらない=許されない。未決勾留中の被告人に更生のための反省文を強制する → 矯正教化は使えない目的なので、この理由では正当化できない(受刑者なら目的としては成り立つ)。
- 「矯正教化は、未決拘禁者を含む被収容者すべてについての収容の目的である」
- 「被収容者の人権の制限には、どんな場合も個別の法律の根拠が要る」(制度に内在する制限は必ずしも要らない)
- 「収容されている以上、施設の判断でどのような目的のためにも制限できる」
5よど号ハイジャック新聞記事抹消事件——閲読の自由の保障判例
- 上告人らは公安事件関係の被告人として東京拘置所に勾留され、新聞を定期購読していた
- 東京拘置所長が、赤軍派学生による航空機乗っ取り事件に関する新聞記事を、一定期間すべて抹消して配付
- 上告人らが国家賠償を求めた → 最高裁大法廷は上告棄却(裁判官全員一致)
- 前提:未決勾留は、逃亡・罪証隠滅の防止のため、被疑者・被告人の居住を監獄内に限定するもの。その目的に必要かつ合理的な範囲で、それ以外の行為の自由も制限されることを免れない。施設内の規律・秩序の維持のための制限も、やむをえない。
- これらの意見、知識、情報の伝達の媒体である新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や、表現の自由を保障した憲法二一条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところであり、また、すべて国民は個人として尊重される旨を定めた憲法一三条の規定の趣旨に沿うゆえんでもあると考えられる。
- 引かれた条文:(思想及び良心の自由)・(表現の自由)=導く元/=「個人として尊重される」の部分(幸福追求権の部分ではない)。
- 理由:さまざまな意見・知識・情報に接することは、個人として思想・人格を形成・発展させるうえで欠くことができず、民主主義社会における思想・情報の自由な伝達・交流を実効あるものにするためにも必要。
- このような閲読の自由は、生活のさまざまな場面にわたり、極めて広い範囲に及ぶものであつて、もとより上告人らの主張するようにその制限が絶対に許されないものとすることはできず、それぞれの場面において、これに優越する公共の利益のための必要から、一定の合理的制限を受けることがあることもやむをえないものといわなければならない。
出題知る権利の要旨:21条1項で保障/(b)21条1項の派生原理/21条の精神に照らし尊重新聞紙等の閲読の自由は、21条の趣旨・目的から派生原理として当然に導かれる(○)
- 「判例は、閲読の自由をの幸福追求権から直接導いた」(導く元は・。は個人の尊重の趣旨に「沿う」)
- 「未決拘禁者には、新聞を読む自由は憲法上保障されない」
- 「閲読の自由は憲法上保障されるから、その制限は絶対に許されない」
- 「判決の当事者は、勾留中の被疑者であった」(公安事件関係の被告人)
6よど号事件——閲読の自由を制限できる基準判例
- まず一般的な枠組み(喫煙禁止事件=昭45・項目8を引用):
- これらの自由に対する制限が必要かつ合理的なものとして是認されるかどうかは、右の目的のために制限が必要とされる程度と、制限される自由の内容及び性質、これに加えられる具体的制限の態様及び程度等を較量して決せられるべきものである
- そのうえで、閲読の自由について絞りを足す:
- これにより拘禁される者は、当該拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての自由を保障されるべき者であるから、監獄内の規律及び秩序の維持のためにこれら被拘禁者の新聞紙、図書等の閲読の自由を制限する場合においても、それは、右の目的を達するために真に必要と認められる限度にとどめられるべきものである。
- 右の制限が許されるためには、当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず、被拘禁者の性向、行状、監獄内の管理、保安の状況、当該新聞紙、図書等の内容その他の具体的事情のもとにおいて、その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり、かつ、その場合においても、右の制限の程度は、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまるべきものと解するのが相当である。
- 判決は「真に必要と認められる限度」に続けて「したがつて」と述べ、その中身を下の基準(相当の蓋然性+必要かつ合理的な範囲)で示している。
- 相当の蓋然性と、必要かつ合理的な範囲は「かつ」で結ばれる=両方が要る。
- 「相当の蓋然性」は条文の言葉ではない。判例が、閲読の自由を制限する場面で示した物差し。
「前に問題を起こしたことがあるから、念のため新聞は全部読ませない」→ 記事の中身も施設の今の状況も見ていない=一般的、抽象的なおそれにとどまり、相当の蓋然性に届かない。蓋然性があっても、問題の記事だけ抜けば足りるのに新聞全体を止め続ければ、必要かつ合理的な範囲の要件で引っかかる方向に動く。
出題閲読の制限には、規律・秩序の維持に放置できない障害が生じる相当の蓋然性が必要(○)未決拘禁者の新聞購読の制限は、より制限的でない他の手段の有無で判断すべき(×)
- 「規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあれば、閲読を制限できる」
- 「相当の蓋然性が認められれば、制限の程度は問われない」(必要かつ合理的な範囲も要る)
- 「判例は、規律が現実に害された場合に限って制限を許す」(求めるのは障害が生ずる相当の蓋然性)
7よど号事件——法令の判断と処分の判断判例
- 法令:監獄法31条2項(在監者の文書・図画の閲読を制限できるとし、内容を命令に委任)→ 監獄法施行規則86条1項(要件)→ 法務大臣訓令・法務省矯正局長依命通達(範囲・方法)。
- その文言上はかなりゆるやかな要件のもとで制限を可能としているようにみられるけれども、上に述べた要件及び範囲内でのみ閲読の制限を許す旨を定めたものと解するのが相当であり、かつ、そう解することも可能であるから、右法令等は、憲法に違反するものではないとしてその効力を承認することができるというべきである。
- 処分:相当の蓋然性があるか・どんな制限が必要かは、監獄内の実情に通暁した監獄の長の裁量的判断にまつべき点が少なくない。
- 障害発生の相当の蓋然性があるとした長の認定に合理的な根拠があり、その防止のために当該制限措置が必要であるとした判断に合理性が認められる限り、長の右措置は適法として是認すべきものと解するのが相当である。
- 本件:抹消処分当時まで、公安事件関係の被拘禁者による東京拘置所内の規律・秩序へのかなり激しい侵害行為が相当頻繁に行われていた+記事はいずれも赤軍派学生による航空機乗っ取り事件 → 相当の蓋然性ありとした所長の判断に合理的な根拠あり。乗っ取り事件の記事の全部を一定期間抹消した措置にも、裁量権の逸脱又は濫用の違法があったとはいえない。
| 法令(監獄法31条2項など) | 本件の抹消処分 | |
|---|---|---|
| 判断のしかた | 文言はゆるいが、基準の要件・範囲内でのみ制限を許す趣旨と限定して解釈 | 所長の認定に合理的な根拠・判断に合理性があるかを見る(裁量の尊重) |
| 結論 | 憲法に違反しない | 適法(裁量の逸脱・濫用なし) |
判決は、当時の拘置所の状況などの具体的事情を挙げたうえで、乗っ取り事件の記事を一定期間全部抹消した措置にも裁量権の逸脱・濫用はないとした。審査は、裁判所が相当の蓋然性の有無を自ら認定し直す形ではなく、所長の判断に合理性があるかを見る形。
判決は処分について「適法」(裁量権の逸脱・濫用なし)という語を使う。法令を限定して解釈したうえで、処分はその枠に収まっているか=違法か適法かを見ている。処分を「合憲とした」と要約する説明もあるが、法令(憲法に違反しない)と処分(適法)を分けて押さえる。
- 「最高裁は、本件の抹消処分を違法とした」
- 「最高裁は、監獄法などの規定は文言がゆるやかなので違憲無効とした」(限定して解釈し、憲法に違反しないとした)
- 「記事の全部を抹消したことは、必要かつ合理的な範囲を超えるとされた」
8喫煙禁止事件判例
- 事案:監獄法施行規則96条のうち、未決勾留により拘禁された者に喫煙を禁止する規定が、に違反するかが争われた。
- 右の制限が必要かつ合理的なものであるかどうかは、制限の必要性の程度と制限される基本的人権の内容、これに加えられる具体的制限の態様との較量のうえに立つて決せられるべきものというべきである。
- 当てはめ:喫煙を許すと罪証隠滅のおそれがあり、火災発生の場合には被拘禁者の逃走が予想される → 拘禁の本質的目的を達することができない。他方、煙草は生活必需品とまでは断じがたい嗜好品で、禁止は人体に直接障害を与えるものではない。
- 喫煙の自由は、憲法一三条の保障する基本的人権の一に含まれるとしても、あらゆる時、所において保障されなければならないものではない。
- 結論:喫煙禁止という程度の自由の制限は必要かつ合理的 → に違反しない(上告棄却)。
- 禁止は法律ではなく施行規則によっていたが、判決はこの点を問題にしていない。
| 喫煙禁止事件(昭45) | よど号事件(昭58) | |
|---|---|---|
| 制限された自由 | 喫煙の自由(に含まれるとしても) | 新聞紙の閲読の自由(・の派生原理) |
| 判断の枠組み | 必要性の程度と人権の内容・制限の態様の較量だけ | 同じ較量(喫煙判決を引用)+相当の蓋然性・必要かつ合理的な範囲 |
| 結論 | 規則の規定はに違反しない | 法令は憲法に違反しない・処分は適法 |
出題未決拘禁者の喫煙禁止はやむを得ない措置で、必要かつ合理的な制限(○)
- 「喫煙禁止事件で、最高裁は相当の蓋然性の基準を用いて合憲とした」(較量で判断。相当の蓋然性は後のよど号事件の閲読の自由について)
- 「判例は、喫煙の自由はで保障されるから、拘禁中も禁止できないとした」
- 「判例は、喫煙の自由がの基本的人権に含まれると断定した」(「含まれるとしても」)
9公務員の特別の制約学説条文
- 通説:憲法が公務員関係の存在と自律性を認めている(・参照)から、一般国民とは異なる特別の制約が許されうる。
- は公務員の基本理念を定める。
- :公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
- :すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
- :内閣は、他の一般行政事務の外、左の事務を行ふ。
四 法律の定める基準に従ひ、官吏に関する事務を掌理すること。 - ただし被収容者と違い、公務員であることを理由に法律の留保を排除することは許されない=公務員の人権を制限するには必ず法律の根拠が要る。
- 公務員関係の「自律性」=個々の公務員が自分のことを自分で決めるという意味ではなく、国家と公務員との関係=国会・内閣から個々の公務員へ一定のコントロールが及ぶ関係のこと。も、官吏の事務を内閣の自由に任せず「法律の定める基準に従ひ」とする。
- 制約される人権(中身の当否は人権の各論で扱う):
| 制約される人権 | 現行法の例 |
|---|---|
| 政治的行為の自由() | 国家公務員は政治的行為が広く禁止され、刑罰が付く(国家公務員法102条・人事院規則14-7) |
| 裁判官の表現の自由 | 「品位を辱める行状」(裁判所法49条) |
| 労働基本権() | 国家公務員法98条2項・地方公務員法37条 |
| 被収容者 | 公務員 | |
|---|---|---|
| 根拠の立て方(通説) | 収容関係の存在と自律性(・参照) | 公務員関係の存在と自律性(・参照) |
| 法律の根拠 | 制度に内在する制限は必ずしも要らない | 必ず要る(法律の留保は外せない) |
公務員の政治活動を、役所の内規だけで禁止することはできない → 国家公務員法と人事院規則という法律(とその委任)が根拠になっている。被収容者の居住・移転の制限に法律の根拠が要らないのとは、ここが逆。
出題国家公務員は「全体の奉仕者」なので、その人権も一定の制約に服することがある(○)
- 「公務員にも、被収容者と同じく、法律の根拠なしに人権を制限できる場合がある」(公務員は法律の留保を外せない)
- 「により、内閣は官吏に関する事務を自由に定めることができる」(「法律の定める基準に従ひ」)
- 「公務員の人権の制約は、公務員が特別権力関係にあることで説明される」(否定された理論)