憲法ゼロから憲法#11

三段階審査と違憲審査基準

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問い:人権を制限する規制が合憲か違憲かは、どんな順番で、どれくらいの厳しさで確かめるのか。

骨組み

  1. 12つの部品(学説):三段階審査=確かめる順番(①保障の有無→②制約の有無→③制約の正当性)/違憲審査基準=正当化をどれくらい厳しく疑うか(厳格・中間・合理性)。どちらも「3つ」だが別の軸。違憲審査基準は③-2(一定の制約を許容する場合)の中身
  2. 2①保障の有無:その行為がどの人権として保障されるか。ピンポイントの人権を選ぶ(労働組合の結成→)。個別の規定が無ければ一般規定。享有主体性もここで見る
  3. 3②制約の有無:制約があるか+態様・強度(基準の選び方に効く)。特定の意見を禁じる=直接的かつ強度/時・場所・方法の規制も制約にあたる。判例は戸別訪問の禁止による制約を「手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない」とした(最判昭56・6・15)
  4. 4③-1 形式的審査:③全体=合憲性審査(違憲審査)。制約には法律の根拠が要る(法律の留保・立憲主義の要請)=無ければ当然に違憲(例外あり)。委任の範囲を超えた命令・法律の範囲内にない条例も落ちる。表現の自由の制約・刑罰法規は明確性も
  5. 5③-2 実質的審査:絶対的禁止(例:検閲=)=定義+あてはめ(基準は立てない)/一定の制約を許容=違憲審査基準を定立して当てはめることが多い
  6. 6比較衡量と基準論(学説):比較衡量=得られる利益と失われる利益を比べる。難点=裁判官の主観的判断を拘束し得ず、結果として公益優先に陥りやすい → 違憲審査基準は主観を縛るため。目的・手段の両方をパスすれば得られる利益が大きいとみなす
  7. 73層の基準:厳格=やむにやまれぬ必要不可欠な公共的利益/必要最小限度。中間(LRAの基準)=十分に重要/実質的関連性(LRAが無いことまで)。合理性(明白性の基準・明白性の原則)=正当/合理的関連性
  8. 8基準で結論が変わる:同じ規制でも、厳格・中間なら違憲、合理性なら合憲になりうる → 基準を選ぶ理由が要る。戸別訪問の一律禁止:最高裁=目的は正当・合理的な関連性あり → 合憲(原審は違憲)。LRAには時間帯・区画の限定や届出制を挙げる(許可制は届出制より強い規制=学説ではそれ自体が原則違憲)
人権を制限する規制①その行為は人権として保障されるか一番ぴったり合う条文を選ぶ・享有主体性も人権の問題にならないいいえはい②その行為に制約がかかっているか態様・強度も見る憲法上の争いにならないいいえはい③-1 法律の根拠はあるか命令・条例の可否/表現・刑罰は明確性も当然に違憲例外あり(被収容者)いいえはい③-2 憲法が絶対的に禁止する制約か例:検閲定義に当てはめる当たれば違憲はいいいえ(一定の制約を許容)違憲審査基準を立てて当てはめるそうすることが多い・目的と手段を審査(項目6〜8)
三段階審査の流れ。③(項目4・5)全体を合憲性審査(違憲審査)とよぶ。違憲審査基準は一番下の箱の中身で、三段階審査の外にあるものではない。

色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます(押せるのは日本国憲法の条文だけ。他の法令の条文番号は文字のまま)。短答は「判例の立場」と「通説・学説の整理」を分けて問うので、出どころを混ぜない(判例の言葉づかいが学説の定義と違う所=項目3)。最判=最高裁小法廷の判決、最大判=大法廷の判決。

12つの部品——順番と厳しさ学説

三段階審査違憲審査基準
決めるものどんな順番で確かめるか(プロセス)正当化できるかを、どれくらい厳しく疑うか(目盛り)
中身の「3つ」3つの段階:①保障の有無 ②制約の有無 ③制約の正当性3つの厳しさ:厳格審査基準・中間審査基準・合理性の基準
位置全体の骨組み③制約の正当性の中(実質的審査のうち、一定の制約が許容される場合)
  • どちらも中身が「3つ」なので混同しやすい。三段階審査の「3」は段階の数、違憲審査基準の「3」は厳しさの層の数。
  • 違憲審査基準は三段階審査の外にあるのではない。③のうち実質的審査の、一定の制約を許容する場合に使う物差し。
×にされやすい形
  • 「三段階審査とは、厳格審査基準・中間審査基準・合理性の基準の3つをいう」(3つの段階は保障・制約・正当性。3層の基準とは別の軸)
  • 「違憲審査基準は、三段階審査をすべて終えた後に別に行う審査である」(③制約の正当性の中身)

2①保障の有無——どの人権として保障されるか条文学説

  • 目の前の具体的な行為が、憲法の定めるどの人権として保障されるか(保障の範囲に入るか)を確かめる。
  • コツ=ピンポイントの人権を選ぶ。複数の人権の候補にまたがって見えても、一番ぴったり合う条文を選ぶ。個別の規定が無ければ一般規定で考える。
  • 労働組合を結成する行為:団体を作る点ではの結社の自由にも見えるが、勤労者の団結を保障するがあるのでを選ぶ。:勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。
  • 同じ型(ピンポイントの規定がある):宗教団体の結成→(宗教的結社の自由)。逆の型(個別の規定が無い):政党の結成→の結社の自由。
  • その行為をした人が人権を持つ主体といえるか(外国人・団体など=享有主体性)も、この段階で確認する。

設例:ある市が、市営の駅前広場での、政治的な意見表明を目的とした演説や署名活動を、一律に禁止する条例を定めた。演説も署名活動も自分の考えを他人に伝えようとする行為=の表現の自由として保障される(集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する)。以下の項目でこの条例を追いかける。

趣味の同好会を作る行為には、それに特化した条文が無い → 一般規定であるの結社の自由で考える。

×にされやすい形
  • 「労働組合の結成は、団体を作る行為なので、の結社の自由で考える」(団結権のがピンポイントの条文)
  • 「人権享有主体性は、制約の正当性の段階で検討する」(保障の有無の段階)

3②制約の有無——制約の態様・強度判例学説

  • 保障された行為に、実際に制約がかかっているかを確認する。何の制約も受けていなければ憲法上の争いにならない。
  • このとき制約の態様・強度にも触れることが多い=違憲審査基準の選び方に影響するから。
  • 人権制約の根拠(公共の福祉)もこの段階で問題になるが、答案では書いても一言でよい。
規制の形学説の整理原則の審査
特定の意見(観点)・表現の内容を禁じる直接的かつ強度の制約(内容規制)厳格審査
時・場所・方法の規制これも制約にあたる。人権の行使の規制を直接の目的とする直接的規制だが、内容を問わない(内容中立規制)中間審査
間接的・付随的規制人権の行使の規制を目的とせず、間接的・付随的な効果として負担を与える規制判例は緩やかな審査(戸別訪問=目的の正当性・合理的な関連性で合憲)
  • 「直接的か」と「強度か」は別の軸。特定の行為を挙げて(名指しで)禁止すれば必ず「直接的かつ強度」、という二分ではない(時・場所・方法の規制は直接的規制でも原則は中間審査)。
  • 内容規制と内容中立規制の両面を持つ規制(例:場所の規制でありながら、表現の主題に着目している)にも、厳格な審査が要る場合がある。
  • 判例は、戸別訪問という行為を名指しで禁じる規定(公職選挙法138条1項)について、それによる意見表明の自由の制約を「間接的、付随的な制約」とした(最判昭56・6・15):
  • 戸別訪問の禁止は、意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、意見表明の手段方法のもたらす弊害、
    …を防止し、もつて選挙の自由と公正を確保することを目的としているところ
  • そして、戸別訪問の禁止によつて失われる利益は、それにより戸別訪問という手段方法による意見表明の自由が制約されることではあるが、それは、もとより戸別訪問以外の手段方法による意見表明の自由を制約するものではなく、単に手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎない反面、
    …得られる利益は失われる利益に比してはるかに大きいということができる。
  • 学説の分類からすれば直接的規制にあたるもので、この「間接的、付随的」は最高裁独自の概念だと整理し、批判する見解がある。学説の定義で判例を読むと混乱する。

同じ駅前広場でも、「夜9時から朝7時まで拡声器を使った演説を禁止」なら時・場所・方法の規制(原則は中間審査)。「市長の政策を批判する演説だけ禁止」なら特定の意見を狙い撃ちにする内容規制(原則は厳格審査)。設例の条例は場所の規制でありながら「政治的な意見表明」という主題に着目している=内容規制の面も持つ。

間接的・付随的の例:公園の芝生への立入りを禁じる規則を、芝生の上で抗議の横断幕を広げた人に適用する。規則の狙いは芝の保護で表現ではないが、結果としてその人の表現に負担がかかる。

出題判例は表現の自由の間接的・付随的制約にも厳格な審査を及ぼしている(×)

×にされやすい形
  • 「判例は、戸別訪問の禁止を、意見表明への直接的かつ強度な制約であるとした」(意見表明そのものの制約を目的とするものではなく、それによる制約は手段方法の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約にすぎないとした)
  • 「行為を名指しで禁止する規制は、判例上、常に直接的かつ強度な制約とされる」(戸別訪問の禁止は名指しの禁止だが、それによる制約は「間接的、付随的な制約」とされた)
  • 「時・場所・方法の規制は、表現の内容を問わないので、人権の制約にあたらない」(これも制約にあたる)
  • 「制約の態様・強度は、違憲審査基準の選び方とは関係がない」(選び方に影響する)

4③-1 形式的審査——法律の根拠と明確性条文学説

  • 制約がある場合に、その制約が正当か否かを検討する=合憲性審査(違憲審査)。③全体の呼び名で、①形式的審査と②実質的審査に分かれる(実質的審査だけの呼び名ではない)。
  • :最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。この権限を働かせるのが③(形式的審査で違憲となる場合も含む)。
  • 法律の根拠:人権に対する制約には、法律の根拠がなければならない(法律の留保)。明文は無いが立憲主義の要請。「権利を制限するには法律の根拠が無ければならない」という意味での法律の留保で、法律の留保の良い面といわれる。
  • 法律の根拠のない人権制約は当然に違憲。ただし例外がある:刑事施設の被収容者(刑務所などに収容されている人)に対する、収容という制度に内在する制限(例:居住・移転の自由の制限)は、法律の根拠が必ずしも要らないとされる。
  • 形式的審査で落ちる型:立法の委任の範囲を逸脱した命令による制約/法律の範囲内にない条例による制約=法律の根拠に欠けるため当然に違憲。
  • 条例:=地方公共団体は、…法律の範囲内で条例を制定することができる。通説は、議会の議決した条例は民主的立法(議員は住民が直接選挙する=)で法律に準ずるから、法律留保事項(法律の根拠が要る事項=人権の制約など)も法律の委任なしに条例で定めうるとする。これに対し判例は、条例で罰則を定めるには法律の委任が要る(相当程度に具体的で限定された委任で足りる)という立場を前提にしている(最大判昭37・5・30)。
  • 明確性:表現の自由に対する制約や刑罰法規は、法律の根拠の有無だけでなく、その法律が明確といえるかも検討する。表現の自由について明確性を求める理由=規制の中身があいまいだと、どこまでが禁止されるか分からず、本来自由な表現まで控えてしまう(萎縮効果)。

設例の条例:市の議会が定めた条例で(通説の立場では法律の根拠に含まれる)、何を禁止するかもはっきり書かれている (罰則は無い前提。罰則を付けるなら、判例の立場では法律の委任が要る)→ 形式的審査はクリア。これが「公共の秩序を乱すおそれのある演説を禁止する」とだけ書いた条例なら、どの演説が禁止されるか読み取れず、明確性で問題になる。

法律が「細目は政令で定める」とだけ委ねているのに、政令が法律に無い新しい禁止行為を作った → その制約は法律の根拠を欠き、中身を見るまでもなく違憲。

×にされやすい形
  • 「合憲性審査(違憲審査)とは、実質的審査のことをいう」(制約の正当性の検討全体=形式的審査と実質的審査を含む)
  • 「法律の根拠のない人権制約は、例外なく違憲である」(被収容者の制度に内在する制限のように、法律の根拠が必ずしも要らないとされる例外がある)
  • 「明確性は、あらゆる人権の制約について審査される」(表現の自由に対する制約や刑罰法規について)
  • 「条例は法律ではないから、条例による人権制約は、法律の根拠を欠き当然に違憲である」(通説は、条例は民主的立法で法律に準ずるとする。ただし法律の範囲内にない条例は違憲)

5③-2 実質的審査——絶対的禁止か、一定の制約の許容か条文学説

憲法が制約を絶対的に禁止している場合憲法が一定の制約を許容している場合
例検閲()絶対的禁止に当たらない制約
何をするか禁止対象を定義し、国家の行為がそれに当たるかを見る。当たれば違憲。基準は立てない違憲審査基準(合憲性判定基準)を定立し、これに当てはめて合憲・違憲を判断することが多い
  • :検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。検閲の禁止は前段(後段は通信の秘密)。
  • 検閲=おおまかに言うと、発表される前の中身を、行政があらかじめ審査して止めるようなもの(定義の詳細は表現の自由の論点)。

設例の条例は、発表前に中身を審査して止めるものではない → 検閲には当たらず、一定の制約を許容する場合の道(違憲審査基準)へ進む。これに対し、市が演説の原稿を事前に全部出させ、市長が内容を見て不適当なものを禁じる仕組みなら、検閲の定義に当たるかを検討することになり、当たれば例外なく違憲。

×にされやすい形
  • 「検閲に当たる規制も、違憲審査基準を定立して、その目的と手段を審査する」(絶対的禁止=定義に当たれば違憲。基準は立てない)
  • 「検閲の禁止は後段に定められている」(前段。後段は通信の秘密)

6比較衡量と違憲審査基準論学説

  • 比較衡量=①規制で得られる利益と②失われる利益を比べ、①が高ければ制限できるとする手法。最も原始的な実質的審査の手法。
  • 難点:裁判官の主観的判断を拘束し得ず、結果として公益優先の判断に陥りやすい(原因→結果の一本の流れ)。
  • 現れ方:国側の利益は比べる前から大きく見えやすい(「地域全体の生活環境」と「一軒の営業の自由」を並べると皿の大きさが初めから違って見える)。天秤の使い方を事案ごとに裁判官がそのつど決めるので、同じ駅前広場の事件でも「秩序の方が重い」「表現の方が重い」のどちらも成り立ってしまう。
  • 違憲審査基準=比較衡量における裁判官の主観的判断を拘束するために生まれたもの。事案の中身を見る前に、どれくらい厳しく疑うかの目盛りを決めておく。
  • 違憲審査基準は天秤を捨てたのではない:目的と手段を審査し、両方をパスすれば「得られる利益の方が大きい」(=合憲)とみなす=比較衡量を型にしたもの。
×にされやすい形
  • 「違憲審査基準論は、利益の比較という考え方を否定する」(目的・手段の審査をパスすれば得られる利益が大きいとみなす=比較衡量を型にしたもの)
  • 「比較衡量の難点は、人権の側を過大に評価しやすいことである」(裁判官の主観を拘束できず、結果として公益優先に陥りやすい)

7違憲審査基準の3層——目的と手段学説

基準目的手段補足
厳格審査基準やむにやまれぬ必要不可欠な公共的利益必要最小限度規制しなくてよいものまで規制している(過剰包摂=より制限的でない手段がある)場合だけでなく、規制すべき事例を規制していない(過少包摂)場合も手段で落ちる。ほぼ全ての規制が違憲になるはず
中間審査基準(LRAの基準)十分に重要(正当なだけでは足りない)実質的関連性=合理性があるだけでは足りず、より制限的でない他の手段(LRA)が無いことまで要る厳格と合理性の間のグレーゾーンを埋める。答案ではこの基準を多用する
合理性の基準(明白性の基準・明白性の原則)正当合理的関連性=一般人が合理的と判断するものであればよい規制の不合理が明白な場合以外は合憲
  • どの層でも見るのは規制の目的とその目的を達成する手段の2つ。目的=制限に見合うだけの理由があるか/手段=その理由のために本当に必要な範囲か。
  • 厳しさが変わると、目的と手段の要求レベルが同じ向きに変わる(厳しく疑う=国の側により重い説明を求める)。
  • 手段で何があれば落ちるか:厳格=必要最小限度を超える(広すぎる=過剰包摂、または狭すぎる=過少包摂)/中間=LRAがある/合理性=目的とのつながりが明らかに不合理。
  • LRA=より制限的でない、他の選びうる手段(その頭文字)。中間審査では、LRAの不存在は実質的関連性の中身そのもの(実質的関連性とは別に足される条件ではない)。
  • 「十分に重要」は「正当」の部分集合(十分に重要な目的は正当な目的でもあるが、逆は言えない)。
中間審査基準で測る目的は十分に重要か正当なだけでは足りない違憲いいえはい手段は目的と実質的関連性を有するかより制限的でない他の手段(LRA)が無いことまで違憲LRAがあれば落ちるいいえはい合憲
中間審査基準(LRAの基準)。2問とも通れば合憲とみなす。LRAの有無は2問目の中で見る(別の3問目ではない)。厳格なら目的・手段とも1段重く、合理性なら1段軽くなる。

過少包摂:広場の静けさを守るためと言いながら政治演説だけを禁じ、同じくらいうるさい店の宣伝放送は放っておく条例は、規制すべきものを規制していないので、厳格審査では手段の要件で落ちる。

×にされやすい形
  • 「中間審査基準では、手段が目的との間に合理性を有していれば、より制限的でない他の手段があっても合憲である」(実質的関連性は、LRAが無いことまで要る)
  • 「中間審査基準の目的は、正当であれば足りる」(十分に重要。正当で足りるのは合理性の基準)
  • 「厳格審査基準の手段は、目的と実質的関連性を有すれば足りる」(必要最小限度。実質的関連性は中間)
  • 「明白性の基準は、中間審査基準の別名である」(合理性の基準の別名。中間の別名はLRAの基準)
  • 「厳格審査基準では、規制が広すぎる場合にだけ手段の要件で落ちる」(規制すべきものを規制していない過少包摂でも落ちる)

8同じ規制を3つの基準で測る——基準を選ぶ重み判例学説

設例の条例:目的=広場の秩序維持、手段=演説・署名活動の全面禁止。

基準目的手段結論
厳格やむにやまれぬ必要不可欠なレベルに達しているとは言い難い仮に目的を認めても、全面禁止は必要最小限度とはいえない(時間や場所を区切るなど、もっと絞った方法がある)違憲
中間十分に重要とは認められるかもしれない時間帯や区画の限定・届出制など、より制限的でない手段(LRA)がある=全面禁止でなくても目的を達成できる → 実質的関連性なし違憲
合理性正当全面禁止も秩序維持と一応のつながりはある=明らかに不合理とまでは言い切れない合憲
  • 厳格と中間はどちらも「もっと絞った方法があるか」を問う。違うのは、目的にどこまでの重さを求めるかと、代わりの手段をどこまで探すかの厳しさ。
  • LRAに許可制を挙げない:届出制=届け出れば原則として行える/許可制=原則として行えず、許可された場合だけ行える。学説(中間審査基準を当てはめる立場)は、表現(集団行進)について、目的には事前の届出で足りるから、許可制はそれ自体が原則違憲(実質的に届出制といえる場合だけ合憲)とする。だから代わりの手段に挙げるのは「時間帯や区画の限定」「届出制」。
  • 同じ条例・同じ事実でも、どの基準を選ぶかで結論が変わる → 基準を選ぶこと自体に恣意的でない理由が要る(理由が無ければ、都合のいい基準をあとから選んでいるだけになる)。その材料の1つが制約の態様・強度(項目3:内容規制→厳格/時・場所・方法の規制→中間が原則)。設例の条例は場所の規制でありながら政治的な主題に着目している=内容規制の面を持つので、厳格な審査を選ぶ材料になる。
  • 実在の事件で:戸別訪問の一律禁止(公職選挙法138条1項)について、原審(広島高裁)は、憲法上許される合理的で必要やむをえない限度の規制とは考えられないとして違反とし、無罪とした第一審判決を維持(検察官の控訴を棄却)。最高裁(最判昭56・6・15)は原判決を破棄して差し戻した:
  • …右の目的は正当であり、それらの弊害を総体としてみるときには、戸別訪問を一律に禁止することと禁止目的との間に合理的な関連性があるということができる。
  • 以上によれば、戸別訪問を一律に禁止している公職選挙法一三八条一項の規定は、合理的で必要やむをえない限度を超えるものとは認められず、憲法二一条に違反するものではない。
  • したがつて、戸別訪問を一律に禁止するかどうかは、専ら選挙の自由と公正を確保する見地からする立法政策の問題であつて、国会がその裁量の範囲内で決定した政策は尊重されなければならないのである。
  • 原審も最高裁も「合理的で必要やむをえない限度」という同じ言い回しを使っている=判決文からは、両者の差を「どの層の基準を使ったか」とは読めない。最高裁が使った道具は、目的の正当性と合理的な関連性、それに得られる利益と失われる利益の比較(項目3の引用)。

出題戸別訪問の禁止の範囲は、憲法に適合するよう限定して解釈しなければならない(×)戸別訪問規制の合憲性は、より狭い範囲の規制方法があるかを検討して判断すべき(×)

×にされやすい形
  • 「全面禁止に代わる手段として許可制を挙げれば、中間審査基準でも合憲の結論を導ける」(表現について許可制は届出制より強い規制で、学説ではそれ自体が原則違憲。挙げるなら時間帯・区画の限定や届出制)
  • 「最高裁は、戸別訪問の禁止について、より制限的でない他の手段の有無を審査し、それが無いから合憲とした」(目的は正当・一律禁止と目的の間に合理的な関連性がある、とした)
  • 「戸別訪問禁止規定事件では、原審も公職選挙法138条1項を合憲とした」(原審は違反として、無罪の第一審判決を維持。最高裁が破棄差戻し)
  • 「どの違憲審査基準を用いても、同じ規制なら合憲・違憲の結論は変わらない」(基準の選択で結論が変わりうる)

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