憲法ゼロから憲法#11

三段階審査と違憲審査基準

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判定のものさし(順番と厳しさ)

三段階審査の全体像(①保障の有無→②制約の有無→③制約の正当性〔③-1形式的審査・③-2実質的審査→違憲審査基準〕)

2つの部品

結論規制が合憲か違憲かを決めるものさしは、2つの部品でできています。

  • 三段階審査:どんな順番で確かめるか(プロセス)です。
  • 違憲審査基準:正当化できるかを、どれくらい厳しく疑うか(目盛り)です。

注意どちらも中身が「3つ」あるので、混同しやすい区別です。

三段階審査は3つの段階、違憲審査基準は3つの厳しさです。

違憲審査基準は三段階審査の外にあるのではなく、③制約の正当性の中身です。

保障の有無(三段階審査①)

三段階審査は、保障・制約・正当性の順番で確かめます。
最初に、その行為が人権として保障されるかを、どう確かめるのでしょうか。

一番ぴったり合う条文を選ぶ

定義目の前の行為が、憲法の定めるどの人権として保障されるかを確かめます。

結論複数の人権の候補にまたがって見えても、一番ぴったり合う条文を選びます。

理由的を絞った条文は、その場面を名指しして、より手厚い保障を用意しているからです。

具体例労働組合を結成する行為です。

団体を作る点では、21条1項の結社の自由の問題にも見えます。

しかし、勤労者の団結を保障する28条があるので、28条を選びます。

注意行為をした人が人権を持つ主体と言えるかも、このレベルで確認します(外国人や団体など)。

28条第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

設例:駅前広場の禁止条例

結論政治的な意見表明のための演説や署名活動は、21条1項の表現の自由として保障されます。

理由どちらも、自分の考えを他人に伝えようとする行為だからです。

具体例ある市が、市営の駅前広場での演説や署名活動を、一律に禁止する条例を定めたとします。

21条第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)1項:集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。

制約の有無(三段階審査②)

行為が人権として保障されることは、確かめられました。
次に、その行為に本当に制約がかかっているかを、どう見るのでしょうか。

制約があるか

結論保障された行為に、実際に制約がかかっているかを確認します。

理由保障されていても、何の制約も受けていなければ、憲法上の争いにはならないからです。

制約の強さ

定義制約には、強さの違いがあります。

  • 直接的かつ強度な制約:行為そのものを、名指しで禁止するような制約です。
  • 間接的・付随的な制約:別の目的の規制が、たまたま副次的に、その行為にも影響する場合です。

結論駅前広場の禁止条例は、直接的かつ強度な制約に当たります。

演説や署名活動そのものを名指しして、全面的に禁止しているからです。

具体例道路工事のために、集会の場所が一時的に使えなくなるのは、間接的・付随的な制約です。

注意この強さは、違憲審査基準(第7節)の選び方に効いてきます。

制約の正当性:形式的審査(三段階審査③-1)

駅前広場の禁止条例は、表現の自由への直接的かつ強度な制約です。
では、その制約が正当化できるかを、まず形の面からどう確かめるのでしょうか。

合憲性審査(違憲審査)

定義制約が正当か否かの検討全体を、合憲性審査(または違憲審査)といいます。

  • 形式的審査:外側の形を見ます(本節)。
  • 実質的審査:中身を見ます(第5節)。

条文裁判所が81条で持つ違憲審査の権限を、実際に働かせるのがこのステップです。

注意合憲性審査は、実質的審査だけの呼び名ではありません。

形式的審査を含む、③全体を指します。

81条第六章 司法(76〜82条)最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。

法律の根拠(法律の留保)

定義人権を制限するには、法律の根拠が要ります(法律の留保)。

結論法律の根拠が無ければ、それだけで、その制約は違憲です。

理由法律の根拠が無いのに人権を制限することは、法治主義に反するからです。

注意法律の留保には2つの顔があります。

ここで使うのは、「法律の根拠が無ければ制限できない」という良い方の顔だけです。

明確性

結論表現の自由を制限する法律や、刑罰を科す法律は、内容が明確でなければなりません。

理由規制の中身があいまいだと、どこまでが禁止されるか誰にも分かりません。

すると、本当は自由なはずの行為まで控えてしまいます(萎縮効果)。

条例と法律の根拠

結論「法律の根拠」というときの根拠には、条例も含まれます。

理由条例も、住民が選んだ議員の議会が、憲法と法律の範囲内で定めるルールだからです。

具体例駅前広場の禁止条例は、市の議会が定めた条例です。

何を禁止するかも、はっきり書かれています。

そのため、形式的審査はクリアします。

制約の正当性:実質的審査(三段階審査③-2)

駅前広場の禁止条例は、形式的審査をクリアしました。
では、中身の審査では、どのような道に分かれるのでしょうか。

2つの分岐

定義合憲性審査のうち、中身を見る場面が実質的審査です。

結論実質的審査は、2つに分かれます。

  • 絶対的禁止:理由のいかんを問わず、憲法が絶対的に禁止している場合です。
  • 一定の制約を許容:絶対にダメとまでは言えず、どこまでの制約なら許されるか、程度の問題になります。

絶対的禁止(検閲)

定義検閲は、おおまかに言うと、発表される前の中身を、行政があらかじめ審査して止めるようなものです。

結論絶対的禁止の代表例が、検閲です(21条2項)。

具体例駅前広場の禁止条例は、検閲には当たりません。

場所を決めて、行為そのものを一律に禁止しているだけで、性質が異なるからです。

そのため、一定の制約を許容する場合の道に進みます。

21条第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)2項:検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。

なぜ目盛りを先に決めておくのか

一定の制約が許容される場合は、どこまでの制約なら許されるかが問題になります。
では、なぜ天秤で比べるだけでなく、目盛りを先に決めておく必要があるのでしょうか。

比較衡量の弱点

定義比較衡量とは、規制で得られる利益と、失われる利益を、天秤に乗せて比べる方法です。

結論比較衡量には、2つの弱点があります。

  • 公益に偏りやすい:国側の利益は、比べる前から大きく見えてしまいます。
  • 判断がぶれる:事案ごとに裁判官がそのつど判断するので、同じような事案でも裁判官によって結論が変わります。

理由天秤には、裁判官の主観的な判断を拘束する仕組みがありません。

そのため、公益の皿が大きく見える傾向が、そのまま結論に出てしまいます。

具体例それぞれの弱点は、次のように現れます。

  • 偏り:「地域全体の生活環境」と「一軒の営業の自由」を並べると、皿の大きさが初めから違って見えます。
  • ぶれ:同じ駅前広場の事件でも、「秩序の方が重い」「表現の方が重い」のどちらも成り立ってしまいます。

違憲審査基準の出発点

結論事案の中身を見る前に、どれくらい厳しく疑うか、目盛りをあらかじめ固定しておきます。

これが、違憲審査基準という発想の出発点です。

理由2つの弱点を、それぞれ抑えられるからです。

  • ぶれ:裁判官が変わっても同じ目盛りで測るので、判断がぶれにくくなります。
  • 偏り:目盛りそのものを厳しく設定しておけば、公益に偏りにくくなります。

違憲審査基準の3層

目盛りを先に決めておけば、判断のぶれと公益への偏りを抑えられます。
では、その目盛りには、どのような段階があるのでしょうか。

違憲審査基準の3層(厳格審査基準=やむにやまれぬ必要不可欠な公共的利益・必要最小限度/中間審査基準=十分に重要・実質的関連性・LRAの基準/合理性の基準=正当・合理的関連性・明白性の基準・明白性の原則)

目的と手段

結論どの層でも、見るポイントは規制の目的その目的を達成する手段の2つです。

理由2つが揃わなければ、人権の制限を正当化できないからです。

  • 目的:制限に見合うだけの理由があるかを見ます。
  • 手段:その理由のために、本当に必要な範囲かを見ます。

注意厳しさが変わると、目的と手段の要求レベルが同じ向きに変わります。

厳しく疑うとは、国の側により重い説明を求めることなので、目的も手段も同時に重くなります。

厳格審査基準

結論一番厳しい基準です。

  • 目的:やむにやまれぬ必要不可欠な公共的利益でなければなりません。
  • 手段:必要最小限度、つまりこれ以上ないというくらい絞り込んだ方法でなければなりません。

具体例目的の目安は、人の生命や身体を守るといったレベルの利益です。

中間審査基準(LRAの基準)

定義LRAとは、より制限的でない、他の選びうる手段のことです(その頭文字)。

結論真ん中の基準です。

  • 目的:必要不可欠とまでは言えなくても、十分に重要と言えれば足ります。
  • 手段:目的との間に、しっかりとした実質的関連性があれば足ります。

具体例交通の安全を保つといった利益なら、十分に重要と言えます。

注意もっと制限の少ない代わりの手段(LRA)があるなら、そちらを使うべきだったと判断されます。

合理性の基準(明白性の基準・明白性の原則)

結論一番緩やかな基準です。

  • 目的:正当と言えれば足ります(目的そのものがおかしいと言えなければ通ります)。
  • 手段:一応のつながり(合理的関連性)があれば足ります。

注意裁判所は、明らかに不合理だと言えない限り、口を出さないという姿勢を取ります。

1つの規制を3つの基準で測る

違憲審査基準は、厳格・中間・合理性の3層に分かれます。
では、同じ禁止条例に3つの基準を当てはめると、結論はどうなるのでしょうか。

駅前広場の禁止条例を3つの基準で測った結果(厳格審査基準→違憲/中間審査基準→違憲/合理性の基準→合憲)と、目的・手段の審査の中身

当てはめ

結論目的が広場の秩序維持、手段が全面禁止の条例は、厳格と中間では違憲、合理性では合憲です。

  • 厳格審査基準:仮に目的を認めたとしても、全面禁止では必要最小限度とは言えません。
  • 中間審査基準:全面禁止でなくても目的は達成できるので、実質的関連性は認められません。
  • 合理性の基準:全面禁止も、明らかに不合理だとまでは言い切れません。

注意厳格と中間は、どちらも「もっと絞った方法があるか」を問います。

違うのは、目的にどこまでの重さを求めるかと、代わりの手段をどこまで探すかの厳しさです。

基準を選ぶことの重み

結論同じ条例・同じ事実でも、どの基準を選ぶかで結論が変わります

理由だからこそ、基準を選ぶこと自体に、恣意的でない理由が必要になります。

理由が無ければ、都合のいい基準をあとから選んでいるだけ、と言われても反論できません。

注意どの基準をいつ使うかの理由づけは、3層の中身とは別に必要です。

制約が直接的か付随的かという強さ(第3節)も、その判断の材料になります。

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