憲法ゼロから憲法#21

法の下の平等

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14条1項の3つの論点と「平等」の意味

3つの論点

結論14条1項は、3つの論点に分けて読みます。

  • 「法の下に」:縛られるのは誰か、という論点です。
  • 「平等」:何を求めるルールか、という論点です。
  • 後段列挙事由:人種・信条・性別・社会的身分・門地の意味です。

14条|第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)1項:すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

絶対的平等と相対的平等

定義平等の1つ目の軸は、次の2つです。

  • 絶対的平等:全員を機械的に同じに扱うことです。
  • 相対的平等:年齢・収入・障害の有無などの現実の違いを前提に、同じ事情のもとでは均等に扱うことです。

結論日本国憲法が求めるのは、相対的平等です。

理由現実に違いがあるのに、無理に同じに扱うほうが、かえって不合理だからです。

具体例違う扱いでも、事情に対応していれば説明できます。

  • 障害者用の区画:健常者用より広く取る条例は、事情に応じた扱いなので相対的平等の範囲内です。
  • 車の色:赤い車の人にだけ広い区画を割り当てる条例は、違う扱いの理由が見つかりません。
  • 所得税:所得が多いほど税率が上がるのは、負担できる力の違いに対応した扱いです。

注意問われるのは違う扱いそのものではなく、違う扱いにどれだけの理由があるかです。

形式的平等と実質的平等

定義平等の2つ目の軸は、次の2つです。

  • 形式的平等:機会や条件をそろえることです。
  • 実質的平等:結果にも目を配ることです。

結論通説は、形式的平等を土台としつつ、結果の面に一定の目配りをすることまでは否定しません。

具体例採用試験を誰でも受けられるようにするのが、形式的平等です。

結果として特定の層がほとんど受からないとき、そこへ手を入れるかが実質的平等の問題です。

注意実質的平等への配慮は、許容(してよい)であって、要求(しなければならない)ではありません。

実質的平等を正面から求めるのは、25条以下の社会権の役割です。

25条|第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

「法の下に」の意味(立法者拘束説)

「平等」は、違う扱いにどれだけの理由があるかを問うものでした。
では、「法の下に」平等であるとき、縛られるのは誰なのでしょうか。

「法の下に」平等の2つの意味(法適用の平等=行政・司法を拘束/法内容の平等=立法権をも拘束)と、この立場を立法者拘束説と呼ぶことを示す図

法適用の平等と法内容の平等

定義「法の下に」の読み方は、次の2つです。

  • 法適用の平等:法律を適用する場面で、平等に扱うことです。
  • 法内容の平等:法律の中身そのものが、平等であることです。

結論通説は、「法の下に」は法適用の平等と法内容の平等の両方を含むと読みます。

法律を作る国会も拘束されるという考え方で、立法者拘束説といいます。

理由理由は2つです。

  • 法の支配:法の支配の下では、憲法は法律を作る側も拘束する法だからです。
  • 13条前段:中身が不平等な法律を止められないなら、一人ひとりを集団の一部としてでなく扱うという13条前段が、意味を持たなくなるからです。

具体例全社員に同じ計算式で残業代を出す規程でも、式そのものが勤続年数の短い社員の時給を低く見積もるなら、中身が不平等です。

法適用の平等だけでは、この式そのものに手が出せません。

13条|第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

後段列挙事由(限定列挙か例示列挙か)

「法の下に」は、国会まで縛る言葉でした。
では、14条1項の後段に並ぶ5つの理由は、差別が禁じられる場合を限るものなのでしょうか。

例示列挙

定義後段列挙事由とは、人種・信条・性別・社会的身分・門地の5つです。

門地とは、家柄や生まれのことです。

結論後段列挙事由は、限定列挙ではなく例示列挙です(判例・通説とも一致)。

5つ以外の理由による不合理な差別も、14条1項前段で禁止されます。

理由限定列挙と読むと、5つに入らない理由なら、どれだけ不合理でも憲法は何も言えなくなるからです。

14条1項が禁じるのは、理由のない違う扱いそのものです。

具体例年齢や障害の有無は5つに入りませんが、理由のない区別なら14条1項に反します。

単なる例示か特別の意味か

後段列挙事由の意味づけを判例(単なる例示・基準を高めない)と通説(特別の意味・審査基準を高める)で比べた表

結論5つに当たるかで扱いが変わるかは、判例と通説で分かれます。

  • 判例:最高裁は、5つを単なる例示と解しているものと思われます。
  • 通説:5つに当たる区別には特別の意味があるとして、審査の基準を高めます。

理由通説は、これらの理由で人を分けることを、民主主義や個人主義の理念に照らして原則として不合理だと考えるからです。

注意「判例は後段列挙事由を厳しく審査する」というのは誤りです。

厳しく審査するのは通説の立場で、判例は基準を高める発想そのものを取っていません。

「社会的身分」の意義(判例と学説)

後段列挙事由のうち、人種や性別はイメージしやすい理由です。
では、範囲がはっきりしない「社会的身分」は、どこまでを指すのでしょうか。

「社会的身分」の範囲を最高裁の定義(人が社会において占める継続的な地位)と学説の定義(後天的・自力では抜け出しにくい・評価を伴う地位に限定)で比べ、長期間の失業歴と血液型で線引きを示した表

待命処分事件

事案地方公務員が待命処分を受け、その処分が争われた事件です。

結論最高裁は、社会的身分を広く定義しました。

憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、「人が社会において占める継続的な地位」をいうものと解される、としています。

理由判例は、5つに当たっても審査を厳しくしないので、入り口が広くても絞る実益がありません。

具体例職業・家柄・前科の有無など、いろいろなものがこの定義に当てはまりそうです。

待命処分事件最高裁判所大法廷判決「社会的身分」の意義憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解される。

学説の限定

結論学説は、社会的身分を限定的に解します。

  • 後天性:生まれつきの属性ではなく、後から就いた立場であることです。
  • 社会的評価:まわりからの評価がついて回ることです。
  • 脱却困難:自力では抜け出しにくいことです。

理由広いまま使うと、ほとんど何でも社会的身分に含まれ、厳格審査の入り口が広がりすぎるからです。

具体例候補になるかは、次のように分かれます。

  • 長期間の失業歴:後天的に負う地位で、負の評価を伴いやすいので、当てはまりうる候補です。
  • 血液型:後天的に得た地位でもなく、抜け出せるかという軸にも乗らないので、候補にすらなりません。

審査の枠組み(学説の基準と判例の審査密度)

後段列挙事由と社会的身分で、どんな区別に警戒が必要かが見えました。
では、区別が合理的かどうかは、どのように審査するのでしょうか。

学説の基準

定義学説の枠組みで使う言葉は、次のとおりです。

  • 違憲性の推定:区別を合理的だと言う側が説明しきれなければ、違憲とする扱いです。
  • 基準の厳しさ:区別する側に求める説明の重さです。目的がどれだけ大事か、手段がどれだけぴったりかを、厳しい基準ほど強く求めます。
  • 目的二分論:経済的自由の規制を、目的(積極目的・消極目的)によって分けて物差しを変える考え方です。

結論学説は、区別の種類ごとに、先に審査基準を選びます。

  • 後段列挙事由:違憲性を推定し、原則として厳格審査基準です。
  • 精神的自由・選挙権:列挙されていない理由でも、厳格審査基準です。
  • 積極目的規制:弱い立場の人を守る経済的自由の規制は、合理性の基準です。
  • 消極目的規制:危険を防ぐ経済的自由の規制は、中間審査基準です。

理由それぞれ次の理由によります。

  • 選挙権:精神的自由と同じく、おかしな決まりを自分たちで直すための筋道そのものだからです。
  • 積極目的規制:どこまで手厚く守るかは政策の選択で、立法府のほうが判断できるからです。
  • 消極目的規制:危険の有無なら、裁判所も判断できるからです。

注意学説の基準セレクトは、二重の基準論(精神的自由か経済的自由かで物差しを変える)を平等の場面に持ち込んだものです。

二重の基準論と目的二分論は、別の道具です。

判例の審査密度

審査の決め方を学説(先に基準をセレクト)と判例(区別事由と区別のかかる権利・利益を総合考慮して密度を設定)で比べ、大学院進学の35歳未満限定を例に示した表

定義審査密度とは、どれだけ厳格に、あるいは大雑把にあてはめるかの度合いです。

結論判例は、審査基準を先に選ぶという発想に立っていません。

近時の判例は、2つの要素を総合的に考慮して、審査密度のレベルを設定します。

  • 区別事由:どんな理由による区別か、です。
  • 権利・利益:その区別が、どんな権利や利益にかかわるか、です。

具体例「大学院への進学は35歳未満に限る」という規則で比べます。

  • 学説:年齢は列挙事由ではないので、教育を受ける権利との関わりなどから基準を選びます。
  • 判例:年齢による区別と教育を受ける機会という2つの情報を総合的に考慮して、どれだけ緻密にあてはめるかを決めます。

注意判例は、後段列挙事由に当たるかどうかも、あまり重視していません。

学説と判例は、厳しさの度合いではなく、厳しさの決め方の作りが違います。

平等の問題の処理手順(自由権とは別の型)

学説は基準を選び、判例は審査密度を設定します。
では、平等の問題は、答案でどの順番で処理するのでしょうか。

平等の処理手順のフロー(ア 区別を明示→イ 合理的区別は許されるという中間結論→ウ 基準のセレクトまたは審査密度の設定→あてはめ)と、自由権との出発点の違い

自由権との違い

結論平等の問題は、自由権の三段階審査(保障→制約→正当化)とは別の手順で処理します。

理由平等は、その人ひとりを見ても問題が立たないからです。

誰と比べてどこが違う扱いなのか、比べる相手を置いて初めて問いになります。

3つのステップ

結論平等の問題は、次の順番で処理します。

  • ア 区別の明示:何に着目した区別か、誰と誰を比べ、どんな権利や利益についての区別かを示します。
  • イ 中間結論:「法の下に」と「平等」を論じ、合理的な区別は許されるという中間結論を出します。
  • ウ あてはめ:学説なら審査基準を選び、判例なら審査密度を設定して、あてはめて結論を出します。

具体例「大学院への進学は35歳未満に限る」という規則では、次のようになります。

  • ア 区別の明示:年齢による区別で、教育を受ける機会についての区別だと示します。
  • イ 中間結論:合理的な理由があれば、この区別は許されるとします。
  • ウ あてはめ:基準か密度を決めて、年齢制限に合理性があるかをあてはめます。

注意35歳という線が合理的かは、当てる物差しで動きます。

緩やかな物差しなら通りやすく、厳しい物差しなら、なぜ35歳なのかを説明しきれるかが問われます。

14条2項・3項(貴族制度の禁止と栄典)

14条1項は、平等の理念を掲げる条文です。
では、2項と3項は、その理念をどのような制度で裏打ちしているのでしょうか。

平等を徹底させる規定の表(14条2項 貴族制度の廃止/14条3項 栄典に特権を伴わせない・一代限り/15条3項 普通選挙の原則/24条 家族生活における両性の本質的平等/26条 教育の機会均等/44条 議員資格と選挙人資格の平等)と明治憲法19条との対比

2項・3項

結論1項が理念を掲げ、2項と3項が具体的な制度で裏打ちしています。

  • 2項:生まれや家柄による特権階級を、制度として作ること自体を禁じます。
  • 3項:栄典には特権が伴わず、その効力は受け取った本人の一代限りです。

条文明治憲法19条は、法律や命令の定める資格に応じて、均しく文武の官に任じられる、という内容でした。

注意平等を徹底させる規定は、14条の外にもあります(表の下4行)。

14条|第三章 国民の権利及び義務(10〜40条)2項:華族その他の貴族の制度は、これを認めない。3項:栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

皇位の世襲

結論皇位の世襲は、14条に反しません。

条文2条が、皇位は世襲のものと定めています。

理由14条の1項・2項のどちらとの関係でも、説明がつきます。

  • 1項との関係:生まれで地位が決まる世襲は門地による区別で、平等原則の正面からの例外です。象徴という地位の特殊性から、憲法自身が例外を認めたものと解されています。
  • 2項との関係:2項が禁じるのは、憲法の外側に、貴族のような特権階級を新たに作ることです。皇位は、2条が自ら世襲と定めた、憲法の内側にある制度です。

注意例外を作ったのが法律なら、14条違反になります。

憲法自身が認めた例外は、憲法の他の条項と衝突しません。

2条|第一章 天皇(1〜8条)皇位は、世襲のものであつて、国会の議決した皇室典範の定めるところにより、これを継承する。

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