法の下の平等——「同じ扱い」ではなく「違う扱いの理由」を問う
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第3章 人権各論 ㉑/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
14条1項の3つの論点——「平等」は何を求めているか
図:14条1項は三つの論点に分かれる
- ①「法の下に」②「平等」③後段列挙事由
- 平等には二つの軸がある(絶対的平等・相対的平等/形式的平等・実質的平等)
まず、14条1項の条文を見てみます。「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」。これが1項です。実は3つの論点に分けて読みます。「法の下に」、「平等」、後段に並ぶ理由です。順番を入れ替えて、真ん中の「平等」から入ります。ここが決まらないと、残りの二つが測れないからです。実は、その「同じに扱う」という理解が誤解のもとです。全員を機械的に同じに扱うことを絶対的平等と呼びますが、日本国憲法が求めているのは、これではありません。求めているのは相対的平等です。各人の年齢や収入、障害の有無といった、現実の違いを前提に、同じ事情のもとでは均等に扱うことを求めます。
たとえば、障害者用の駐車スペースを、健常者用より広く取る条例があるとします。絶対的平等には反しますが、各人の事情に応じた扱いとして、相対的平等の範囲内だと説明できます。逆に、同じ条例が、車の色が赤い人にだけ広い区画を割り当てたら、どうでしょうか。こちらは、違う扱いをする理由が見つかりません。同じ「広さを変える」でも、事情に対応していない区別は、相対的平等では説明できません。問われているのは、その違う扱いに、どれだけの理由があるか、という一点です。今日いちばん大事な軸になります。所得が多い人ほど税率が上がるのは、負担できる力が違うからです。事情の違いに対応した扱いですから、相対的平等の範囲内です。
皇位のほうは、条文の作りの話になります。最後にもう一度戻ってきます。もう一つ、平等には別の軸があります。形式的平等と、実質的平等です。形式的平等は機会や条件をそろえること、実質的平等は結果に目を配ることです。採用試験でいえば、誰でも受けられるようにするのが形式的平等です。受けた結果、特定の層がほとんど受からないと分かったときに、そこへ手を入れるかどうかが、実質的平等の話になります。土台は形式的平等ですが、結果の面にも一定の目配りをすることまでは、通説も否定していません。あくまで、してよい、というだけです。その手の入れ方——採用や入学で一定の枠を設けるような手当てがどこまで許されるかは、判例をまとめて読む次の回で扱います。
実質的平等への配慮を、加味してよいというだけで、加味しなければならないとまでは言っていません。そこを混同しないでください。実質的平等を正面から要求するなら、それは25条以下の、社会権が担う役割になります。役割が分かれています。
「法の下に」の意味——縛られるのは、国会も
図:「法の下に」は法適用の平等と法内容の平等の両方を求める
- ①法適用の平等→行政・司法を拘束②法内容の平等→立法権をも拘束
- この立場を通説は立法者拘束説と呼ぶ
「平等」の中身が決まりました。地図の一つ目、「法の下に」に戻ります。まず、条文の全体を見てください。
条文日本国憲法 14条1項・2項・3項
日本国憲法 第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。
2項と3項は、あとで触れます。まずは1項です。「法の下に」を素直に読むと、法律を適用する場面で、平等でなければならない、という意味に読めます。これを法適用の平等と呼びますが、これだけで十分でしょうか。ある会社に、残業代を計算する規程があるとします。全社員に同じ計算式が適用されます。ここで、その計算式自体が、勤続年数の短い社員の時給を、意図的に低く見積もるものだったら、どうでしょうか。法律を適用する場面だけを見ていると、中身が不平等な法律そのものには、手が出せません。そこで通説は、「法の下に」平等というのは、法律を適用する場面だけでなく、法律の中身自体の平等まで含む、と読みます。つまり、法律を作る国会そのものも拘束される、という考え方です。
これを、立法者拘束説と呼びます。今日、いちばん答案に直結する一句です。理由は二つあります。一つは、法の支配という考え方です。ハンコが全部そろっていても、法律の中身まで問う——あの考え方です。その下では、憲法は、法律を作る側も拘束する法になります。もう一つの理由は、もし法適用だけが平等でよいとすると、法律の中身がどれだけ不平等でも、憲法は止められません。幸福追求権の回で見たとおり、13条前段は、一人ひとりを、集団の一部としてではなく扱え、という一文です。中身が不平等な法律を止められないなら、その一文が、意味を持たなくなります。
この二つの理由から、「法の下に」は、法適用の平等と、法内容の平等の両方を含む、と読まれています。
後段列挙事由①——限定か、例示か
図:後段列挙事由は限定列挙ではなく例示列挙である
- 後段列挙事由以外の不合理な差別も14条前段で禁止される
- 判例と通説で意味づけが異なる(判例=単なる例示/通説=特別の意味〈基準を高める〉)
残る三つ目、後段に並ぶ理由に入ります。人種、信条、性別、社会的身分、門地。この5つです。門地というのは、家柄や、生まれのことです。この5つを、まとめて後段列挙事由と呼びます。答案でも、この呼び方を使います。ここで、後段列挙事由の話の続きを開きます。差別されないのは、この5つの理由による場合だけでしょうか。実はそうではありません。この5つは限定列挙ではなく例示列挙だと、判例も通説も一致して解しています。限定列挙と読むと、5つに入らない理由でさえあれば、どれだけ不合理でも憲法は何も言えなくなるからです。14条1項が禁じているのは、理由のない違う扱いそのものです。理由があるかどうかは、5つに入るかどうかでは決まりません。
5つに入らない理由として、年齢や、障害の有無があります。条文には並んでいませんが、理由のない区別なら、やはり14条1項に反します。だから5つはあくまで例であって、それ以外の理由による不合理な差別も、14条1項の前段で禁止されます。ここまでは、判例も通説も同じ立場です。では次の疑問です。5つに当てはまる場合と当てはまらない場合とで、扱いに違いは出るのでしょうか。ここで、判例と通説が割れます。最高裁は、この5つを単なる例示と解しているものと思われます。列挙されているかどうかを、重視しないという立場です。
これに対して通説は、違う見方をします。人種や性別、社会的身分といった理由で人を分けることは、民主主義や個人主義の理念に照らして、原則として不合理だと考えます。通説は、この5つに当たる区別には特別の意味があると考え、その区別が合理的かどうかを審査する基準を高める、という形で警戒を表します。ただ、「厳しく審査する」というのは、通説の立場です。「判例が、後段列挙事由を厳しく審査する」というのは、誤りです。判例と通説、どちらの立場かで、この5つの理由の重みが、まったく違って見えます。ここを、正確に押さえておいてください。
後段列挙事由②——「社会的身分」の広さ
図:社会的身分の範囲は判例と学説で広さが違う
- 最高裁=人が社会において占める継続的な地位
- 学説=後天的・脱却困難・社会的評価を伴う地位に限定
- 当てはまる例とあてはまらない例で線引きを確認する(長期失業の経歴=候補になりうる/血液型=候補にすらならない)
5つの理由のうち、社会的身分だけは、範囲がはっきりしません。そこで、定義が問題になった判例があります。
判例最高裁判所大法廷判決・昭和39年5月27日(民集18巻4号676頁)
「社会的身分」の意義(待命処分事件) 憲法14条1項及び地方公務員法13条にいう社会的身分とは、人が社会において占める継続的な地位をいうものと解される。
最高裁は、社会的身分を、こう定義しました。かなり、広い定義です。職業や、家柄、前科の有無など、いろいろなものが、この定義に当てはまりそうです。判例は、広い定義でも困りません。5つに当たっても、審査を厳しくしないからです。入り口が広くても、その先で扱いが変わらないなら、絞る実益がありません。実は、ここでも判例と学説で扱いが違います。学説は、もっと限定的に解きます。ここで思い出してください。通説は、後段列挙事由に、特別の意味を認めて、審査を厳しくする、という立場でした。もし社会的身分を、広いまま使うと、ほとんど何でも、社会的身分に含まれてしまいます。厳格審査の入り口を、広げすぎないために、学説は、社会的身分を絞る必要があるんです。
生まれつきの属性ではなく、後から就いた立場であること。まわりからの評価がついて回り、自力では抜け出しにくいこと。そういう地位に絞り込む、という限定の仕方です。たとえば、「かつて長期間、失業していたという経歴」。これは後天的に負う地位で、負の評価を伴いやすく、学説の定義に当てはまりうる候補です。一方、当てはまらない例は「血液型」です。後天的に得た地位でもなく、抜け出せるかどうかという軸にも、そもそも乗りません。社会的身分の候補にすら、なりません。広い定義と、狭い定義。両方を、押さえておいてください。
審査の枠組み——学説の物差しと、判例の測り方
図:学説は先に基準を選び、判例は要素を総合考慮して密度を決める
- 学説=先に基準をセレクト〈厳格審査・中間審査・合理性の基準〉
- 判例=①区別事由②区別のかかる権利等を総合考慮して審査密度を設定
- 具体例で確かめる(大学院入試35歳未満限定の例)
ここまでで、どんな区別に警戒が必要かが、見えてきました。次は、その警戒をどう審査するか、という話に入ります。区別が、合理的かどうかを判定する物差しの話です。まず学説の立場から見ていきます。学説は、後段列挙事由による区別を、まず違憲だと疑ってかかります。合理的だと言う側が説明しきれなければ違憲——これを違憲性の推定と呼びます。そのうえで、原則として厳格審査基準で審査します。物差しを3段階に並べた回で、いちばん厳しかったものを当てます。厳しい順に、厳格審査基準・中間審査基準・合理性の基準、と並びました。
厳しさの違いは、区別する側に求める、説明の重さです。目的がどれだけ大事か、手段がどれだけぴったりか。厳しい物差しほど、その両方を強く求めます。列挙されていない理由でも、精神的自由や選挙権に関わる区別なら、やはり厳格審査です。選挙権は精神的自由とは別の権利ですが、扱いは同じ側です。どちらも、おかしな決まりを自分たちで直すための、筋道そのものだからです。経済的自由に関わる区別は、さらに二つに分かれます。規制の目的が、弱い立場の人を守るための積極目的なら、いちばん緩やかな合理性の基準です。危険を防ぐための消極目的なら、中間審査基準になります。
手厚さは政策の選択で、立法府のほうが判断できるからです。危険の有無なら裁判所も判断できるので、消極目的は中間審査です。これを目的二分論と呼びます。道具そのものは、職業を選ぶ自由を正面から扱う回で開きます。今日は名前と結論だけ持っていってください。覚えていますか。人権を二つの束に分けて、物差しを変える道具を作りました。学説の基準セレクトは、実はあの道具を、そのまま平等の場面で使っているだけなんです。精神的自由か経済的自由かで物差しを変え、経済的自由なら、さらに規制目的で物差しを変える。この考え方をそのまま持ち込みます。
ここが、今日いちばん整理してほしいところです。判例は、そもそも審査基準を先に選ぶという発想に立っていません。判例は、後段列挙事由に当たるかどうかも、あまり重視していません。学説が最初に見る入口そのものが、判例にはそもそも無いんです。近時の判例は、二つの要素を総合的に考慮します。一つは、どんな理由による区別か。もう一つは、その区別がどんな権利や利益に関わるかです。この二つを総合的に考慮して、どれだけ厳格に、あるいは大雑把にあてはめるかという、審査密度のレベルを設定します。ここが決定的な違いです。学説と判例は、「厳しさの度合いが違う」のではありません。「厳しさの決め方の、作りが違う」んです。学説は先に物差しを選んでから測り、判例は測りながら密度を決めていきます。
具体的な材料で、確かめてみましょう。「大学院への進学は、35歳未満の者に限る」という規則があったとします。これは年齢という理由による区別であり、教育を受ける機会という、利益についての区別でもあります。学説なら、年齢は列挙事由ではないので、教育を受ける権利との関わりなどから、当てはまる基準をセレクトします。判例なら、同じ二つの情報を総合的に考慮して、どれだけ緻密にあてはめるかを決めます。ここを、体で覚えておいてください。どちらの作りでも、最後に問われているものは同じです。この違う扱いに、どれだけの理由が要るのか。今日の軸は、ここでも変わりません。
平等の問題の処理手順——自由権とは別の型
図:平等の問題は自由権の三段階審査とは別の手順で処理する
- ア:何に着目した区別か・どんな権利利益の区別かを明示→イ:「法の下に」「平等」を論じ合理的区別は許されると中間結論→ウ:基準セレクトまたは審査密度の設定→あてはめ
- 自由権と平等では出発点が違う(自由権=制約から正当化へ/平等=比較の相手を立てて合理的区別かを問う)
ここまで作った道具を、答案でどう使うか、手順にまとめます。実は、注意点があります。平等の問題は、自由権の処理手順とは別物です。三段階審査は、物差しの回で一緒に見た、確かめる順番でした。保障されているか、制約があるか、正当化できるか——この三段です。自由権は、この二段目と三段目で勝負がつきますが、平等の問題は、そこから始まりません。平等は、その人ひとりを見ても、問題が立たないからです。誰と比べて、どこが違う扱いなのか。相手を置いて、はじめて問いになります。だから、何から始めるかも変わります。まず、一つ目のステップです。平等が問題になる理由を明示します。何に着目した区別なのか、誰と誰を比べ、どんな権利や利益についての区別なのかです。二つ目のステップです。「法の下に」と「平等」を論じて、合理的な区別は許される、という中間結論を出します。
ここまで見てきたとおり、平等は違う扱いの理由を問うルールでした。だから、理由のある区別は許される、という前提を、まず答案の上に置きます。学説の立場なら審査基準をセレクトし、判例の立場なら審査密度を設定します。そのうえで、実際にあてはめて結論を出します。さっきの大学院の例、「35歳未満に限る」でやってみましょう。一つ目、年齢という理由による区別で、教育を受ける機会についての区別だと明示します。二つ目、合理的な理由があれば、この区別は許される、という中間結論を立てます。三つ目、学説なら基準をセレクトし、判例なら密度を設定して、実際に、年齢制限に合理性があるかをあてはめます。
35歳に合理性があるかは、どの物差しを当てるかで動きます。緩やかな物差しなら通りやすく、厳しい物差しなら、なぜ35歳なのかを説明しきれるかが問われます。答えが一つに決まらないからこそ、持ち帰るのは結論ではなく、この順番のほうです。この3つの順番を、体で覚えておいてください。
14条2項・3項——貴族制度の禁止と、栄典
図:14条2項3項は1項の理念を具体的な制度で裏打ちする
- 2項=貴族制度の廃止
- 3項=栄典に特権を伴わせない・一代限り
- 平等を徹底させる規定は14条の外にもある(普通選挙の原則15条3項・家族生活における両性の本質的平等24条・教育の機会均等26条・議員資格と選挙人資格の平等44条)
- 明治憲法19条と比べると保障の範囲が違う(公務就任資格の平等というかたちでしか保障していなかった)
最後に、1項の裏打ちとなる、2項と3項を見ておきます。2項を読んでみます。「華族その他の貴族の制度は、これを認めない」。生まれや家柄による特権階級を、制度として作ること自体を禁じています。3項も見てください。「栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴わない」。さらに、その効力は受け取った本人、一代限りです。1項が理念を掲げ、2項と3項が具体的な制度で裏打ちしています。ここで、比べてみたい条文があります。明治憲法には、19条という条文がありました。公務に就く資格について、法律や命令の定める資格に応じて、均しく文武の官に任じられる、という内容です。
明治憲法が保障していたのは、公務に就く資格の平等、というかたちだけでした。1項から3項まで、平等を何重にも具体的な形で書き込んでいます。しかも、平等を徹底させる規定は、14条の外にもあります。普通選挙の原則、家族生活における両性の本質的平等、教育の機会均等、議員や選挙人の資格の平等。中身は、それぞれを扱う回で見ていきます。宣言だけで終わる条文ではない、ということが、ここからも見えてきます。ここで、皇位が例外とされる理由を開きます。まず1項です。生まれで地位が決まるというのは、今日の言葉でいえば、門地による区別です。
ですから世襲は、平等原則からすると、正面からの例外にあたります。象徴という地位の特殊性から、憲法自身が、平等原則の例外を認めたものと解されています。例外を作ったのが法律なら14条違反ですが、これを定めたのは憲法自身——2条です。2項のほうも、根は同じです。14条2項が禁じているのは、憲法の外側にある、貴族のような特権階級を新たに作ることです。皇位は、特権階級を新たに作ることとは違います。憲法2条が自ら世襲と定めた、憲法の内側にある制度です。憲法が自ら認めた例外は、憲法の他の条項と衝突しません。これで、残っていた宿題を開くことができました。
今日の地図(保存版)
図:今日の内容を一本の線に戻す
- 「平等」=同じ扱いでなく違う扱いの理由を問うルール
- 今日作った道具を振り返る(法の下に・後段列挙事由・審査の枠組み・処理手順)
- 次回は列挙事由の判例を扱う(尊属殺・国籍法・非嫡出子相続分・再婚禁止期間・夫婦同氏・アファーマティブアクションは次回)
最後に、今日の内容を、一本の線に戻します。「平等」は、同じ扱いを求めるルールではなく、違う扱いをするなら、それだけの理由を示せ、というルールでした。今日、道具をいくつも作りました。法内容まで縛る「法の下に」、例示にとどまる後段列挙事由、学説の基準セレクトと、判例の審査密度、そして処理手順。次は、この道具を実際の判例に当てはめて、尊属殺や、国籍法、非嫡出子の相続分といった事件を読んでいきます。そこへ、話をつなげていきます。
参照条文
- 日本国憲法 14条1項・2項・3項