憲法ゼロから憲法#23

法の下の平等——条文は変わっていないのに、判断が変わる

⬇ 印刷用PDF

第3章 人権各論 ㉓/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

非嫡出子相続分①——相続分が、半分になる規定

遺産1200万円を嫡出子Bと嫡出でない子Cで分ける(旧規定=B800万円・C400万円/現行なら各600万円)+民法900条4号ただし書(当時)は嫡出でない子の相続分を嫡出子の半分と定めていた 図:遺産1200万円を嫡出子Bと嫡出でない子Cで分ける

  • 旧規定=B800万円・C400万円/現行なら各600万円
  • 民法900条4号ただし書(当時)は嫡出でない子の相続分を嫡出子の半分と定めていた

では、一つ目の規定から見ます。相続の場面です。ある方が亡くなり、1200万円の遺産を残したとします。相続人は、亡くなった方の嫡出子であるBさんと、嫡出でない子であるCさんの、二人だけだったとします。法律上結婚している父母から生まれた子が嫡出子、そうでない子が嫡出でない子です。前回、国籍法のところで出てきましたね。当時の民法には、そうならない規定がありました。九百条四号のただし書です。

条文民法900条4号(平成25年改正前・ただし書)

民法900条4号ただし書(当時) 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の二分の一とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする。

これに当てはめると、Bさんが800万円、Cさんが400万円になります。ちなみに、この規定は改正され、今はこの区別がありません。今の規定なら、BさんもCさんも、600万円ずつ、同じ金額になります。実は、この規定については、最高裁の判断が二回出ています。しかも、結論が違います。まず一回目から、見てみましょう。

非嫡出子相続分②——最初の判断、合憲

一回目の判断は合憲(①法律婚の尊重と嫡出でない子の保護の調整という立法理由には合理的な根拠がある②法定相続分は遺言が無いときに補充的に働く規定にすぎない③立法府の合理的な裁量の限界を超えたとまではいえない) 図:一回目の判断は合憲

判例最高裁判所大法廷決定・平成7年7月5日(民集49巻7号1789頁)

非嫡出子相続分規定訴訟(合憲) 民法が法律婚主義を採用している以上,法定相続分は婚姻関係にある配偶者とその子を優遇してこれを定めるが,他方,非嫡出子にも一定の法定相続分を認めてその保護を図ったものである。

最高裁は、まず、民法が法律婚を基本とする制度だという前提から始めます。法律婚というのは、届出をした結婚のことです。法定相続分は、結婚している配偶者と、その子を優遇して定められていますが、一方で、嫡出でない子にも、一定の相続分を認めて、保護を図ったものだ、としました。法律婚を重んじる気持ちと、非嫡出子の保護、この二つのバランスを取った規定だ、という理解です。もう一つ、考慮された事情があります。法定相続分は、遺言が無いときに、はじめて働く、補充的な規定にすぎない、という点です。遺言によって、相続分を自由に指定できる以上、この規定だけを絶対視する必要はない、という理由づけです。こうした事情を踏まえ、最高裁は、立法府に与えられた合理的な裁量の限界を超えたとまではいえない、として、合憲だと判断しました。

この時点では、この規定は生き延びました。

非嫡出子相続分③——同じ規定が、違憲になる

二回目の決定は違憲(相続制度の合理性は時代とともに変遷する事柄だから不断に検討・吟味されるべき)+立法事実の変化(婚姻・家族形態の多様化/諸外国はほぼ差異を設けていない/補充性はもう合理性判断の決め手にならない) 図:二回目の決定は違憲

  • 相続制度の合理性は時代とともに変遷する事柄だから不断に検討・吟味されるべき
  • 立法事実の変化(婚姻・家族形態の多様化/諸外国はほぼ差異を設けていない/補充性はもう合理性判断の決め手にならない)

同じ規定について、もう一度、最高裁の判断が出ました。最高裁は、まず考え方の土台から確認します。相続制度をどう作るかは、いろいろな事情を総合的に考えて決めるべきもので、しかも、その事情は時代とともに移り変わる、と述べています。だから規定の合理性は、個人の尊厳と法の下の平等という理念に照らして、絶えず検討され、吟味されなければならない、としました。目的も、枠組みも、前の決定と同じままです。変わったのは、その枠組みに当てはめる先の事実のほうです。前回でいえば、四つ目の変数——立法事実が動いた、ということです。まず、婚姻や家族のかたちが著しく多様化し、それにつれて、国民の意識も大きく多様化しています。もう一つ、日本以外で、嫡出子と嫡出でない子の相続分に差を設けている国は、欧米にはなく、世界的にも限られた状況だとしました。

そして、大きな転換があります。前の決定では、この規定が遺言の無いときだけ働く、補充的なものだという点が、合憲の理由の一つでした。ここが、ひっくり返ります。

判例最高裁判所大法廷決定・平成25年9月4日(民集67巻6号1320頁)

非嫡出子相続分規定違憲決定①(合理性の消失) 法律婚という制度自体は我が国に定着しているとしても,上記のような認識の変化に伴い,上記制度の下で父母が婚姻関係になかったという,子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許されず,子を個人として尊重し,その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきているものということができる。 遅くともAの相続が開始した平成13年7月当時においては,立法府の裁量権を考慮しても,嫡出子と嫡出でない子の法定相続分を区別する合理的な根拠は失われていたというべきである。

そこが崩れます。遺留分——遺言でも奪えない最低限の取り分には、この区別がそのまま残るからです。決定は、その部分について、この規定は明確な差別そのものだ、としました。規定が存在すること自体が、その子の出生のときから差別意識を生じさせかねない。だから補充的だということは、もう合理性の判断で重要性を持たない、としました。そして、核心のフレーズです。法律婚という制度自体は定着しているとしても、父母が婚姻関係になかったという、子には選ぶことも直すこともできない事柄を理由に、その子に不利益を及ぼすことは、許されないとしました。

自分の意思や努力ではどうにもならない事柄を理由にした不利益は、慎重に見る。国籍法で使ったこの軸が、相続でもそのまま効いています。以上を総合して、最高裁はこう結論づけました。相続が始まった時点で、もう、区別を支える合理的な根拠は失われていた、という判断です。この「いつから違憲だったか」という点は、次に、決定の効力という問題につながります。

非嫡出子相続分の効力④——過去に遡る、しかし、覆さない

決定の効力は二段構え(①相続が始まった時点まで遡って違憲だったと認める②その間に裁判や合意で確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼさない)+「これからの相続にだけ効く」という理解は誤り 図:決定の効力は二段構え

  • ①相続が始まった時点まで遡って違憲だったと認める②その間に裁判や合意で確定的なものとなった法律関係には影響を及ぼさない
  • 「これからの相続にだけ効く」という理解は誤り

最後に、この決定が、いつからの相続に効くのかを、正確に見ておきます。実は、「これから先の相続にだけ効く」というわけではありません。ここを、正確に区別してほしいところです。

判例最高裁判所大法廷決定・平成25年9月4日(民集67巻6号1320頁)

非嫡出子相続分規定違憲決定②(決定の効力) 本決定の違憲判断は,Aの相続の開始時から本決定までの間に開始された他の相続につき,本件規定を前提としてされた遺産の分割の審判その他の裁判,遺産の分割の協議その他の合意等により確定的なものとなった法律関係に影響を及ぼすものではないと解するのが相当である。

決定は、二段構えです。一段目は、いつから違憲だったか、という話です。さきほど見たとおり、最高裁は、相続が始まった時点まで遡って、もう合理的な根拠は失われていた、と判断しました。二段目が、この引用の部分です。相続が始まった時点から、この決定が出るまでの間に、ほかにも開始された相続があります。そうした相続のうち、審判や、話し合いによる合意などで、すでに決着がついてしまったものについては、この判断は影響しません。だから、「これから先の相続にだけ効く」という理解は、正確ではありません。過去に遡って違憲だったと認めたうえで、確定してしまったものだけは、あえて覆さない、という構造です。

法的な安定性にも、配慮した判断だといえます。

再婚禁止期間①——女性にだけ、待つ期間があった

当時の民法733条1項は女性にだけ前の婚姻の解消・取消しから6か月の再婚禁止期間を課していた(男性には無い)+この事件は再婚が遅れた女性が国に賠償を求めた訴訟 図:当時の民法733条1項は女性にだけ前の婚姻の解消・取消しから6か月の再婚禁止期間を課していた

  • 男性には無い
  • この事件は再婚が遅れた女性が国に賠償を求めた訴訟

ここからは、二つ目の規定に移ります。今度は、結婚の場面です。かつての民法には、女性にだけ、離婚してから一定の期間、再婚できないという規定がありました。男性にはありませんでした。女性にだけ、半年です。条文を見てみましょう。

条文民法733条1項(平成28年改正前)

民法733条1項(当時・平成28年改正前) 女は、前婚の解消又は取消しの日から六箇月を経過した後でなければ、再婚をすることができない。

この事件では、離婚した女性が、この規定のせいで、望んだ時期に再婚できませんでした。そこで、こういう規定を国会が直さずに放置したのは違法だとして、国に賠償を求める裁判を起こしました。そこは大事なところです。日本の裁判所は、法律そのものを取り消す仕組みを持ちません。具体的な事件の中で、この規定は憲法に反する、と主張していく形になります。この事件では、国に賠償を求める形が選ばれました。結論から言うと、認められませんでした。国会が法律を直さなかったことの責任は、また別の要件で判断されるからです。その要件は、統治の回でまとめて扱います。今日見るのは、規定そのものが憲法に反するかどうか、という部分です。

再婚禁止期間②——なぜ、100日で足りるのか

当時の民法772条の父性推定(①婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定②婚姻の成立から200日を経過した後または婚姻の解消から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定)+いつ妊娠したかは外から分からないので生まれた日から逆算する 図:当時の民法772条の父性推定

  • ①婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定②婚姻の成立から200日を経過した後または婚姻の解消から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定
  • いつ妊娠したかは外から分からないので生まれた日から逆算する

まず、なぜ待つ期間が必要だったのか、そこから見ます。生まれた子の父親を誰と考えるか、民法には決まりがあります。

条文民法772条1項・2項(令和4年改正前)

民法772条1項・2項(当時・令和4年改正前) 妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子と推定する。 婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。

順番に見ましょう。一項は、結婚している間に妊娠した子は、夫の子と推定する、です。妊娠の時期は、外からは分かりません。だから二項が、生まれた日から逆算します。結婚から200日を過ぎて生まれた子。または、離婚から300日以内に生まれた子。これらは、結婚している間に妊娠したものとして扱う、という決まりです。例えば、離婚したその日に再婚した場合を考えてみます。

離婚した日にすぐ再婚し270日後に子が生まれた例=前の夫との関係では離婚から300日以内・今の夫との関係では再婚から200日経過後=父と推定される人が二人になる(父性の推定の重複)

離婚したその日に再婚して、そこから270日後に、子どもが生まれたとします。まず、前の夫との関係で見ます。離婚から270日ですから、300日以内です。すると、前の夫の子と推定されます。再婚から270日ですから、200日を過ぎています。すると、今の夫の子とも推定されます。これが、父性の推定の重複と呼ばれる問題です。誰が父親かが決まらないまま、争いになりかねません。推定が重なるのを避けるために、離婚してから少し待ってもらう。それが、再婚を待つ期間の目的でした。計算してみましょう。前の夫の推定が届くのは、離婚から300日目までです。今の夫の推定が始まるのは、再婚から200日を過ぎた後です。

離婚から100日待って再婚すれば、今の夫の推定が始まるのは、離婚から数えて、300日を過ぎた後になります。だから、100日待てば、重なりは起きません。90日だと、今の夫の推定が始まるのは、離婚から290日を過ぎた後です。前の夫の推定は、まだ300日目まで届いていますから、10日ぶん重なります。そこが、この判決の分かれ目になります。

再婚禁止期間③——合憲になるのは、どこまでか

審査の枠組み(①区別する立法目的に合理的な根拠があるか②区別の具体的内容が立法目的との関連で合理性を持つか)+婚姻をするについての自由は憲法24条1項の趣旨に照らし十分尊重に値する 図:審査の枠組み

  • ①区別する立法目的に合理的な根拠があるか②区別の具体的内容が立法目的との関連で合理性を持つか
  • 婚姻をするについての自由は憲法24条1項の趣旨に照らし十分尊重に値する

最高裁が、どういう順番で考えたかを見ます。まず、結婚するかどうかを自分で決める自由について述べます。この自由は、憲法二十四条一項の趣旨に照らして、十分に尊重に値する、としました。結婚そのものを制限する規定ですから、男女で違う扱いをしている点と、結婚の自由を直接制限している点、この両方が問題になります。そのうえで、二つの質問を立てます。一つ目は、区別する目的に、合理的な根拠があるか。二つ目は、区別の具体的な中身が、その目的との関連で合理性を持つか。同じ道具を、そのまま当てています。目的のほうは、さきほど見た、父性の推定の重複を避けることです。子の父親が誰かが早く決まることは大切ですから、この目的には合理性がある。

判例最高裁判所大法廷判決・平成27年12月16日(民集69巻8号2427頁)

女性再婚禁止期間違憲判決①(立法目的・100日部分は合憲) 本件規定の立法目的は,女性の再婚後に生まれた子につき父性の推定の重複を回避し,もって父子関係をめぐる紛争の発生を未然に防ぐことにあると解するのが相当であり,父子関係が早期に明確となることの重要性に鑑みると,このような立法目的には合理性を認めることができる。 女性の再婚後に生まれる子については,計算上100日の再婚禁止期間を設けることによって,父性の推定の重複が回避されることになる。 よって,本件規定のうち100日の再婚禁止期間を設ける部分は,憲法14条1項にも,憲法24条2項にも違反するものではない

そして、中身のほうです。100日の部分については、計算上、この期間を置けば推定の重複が避けられます。だから、100日の再婚を待つ期間を設ける部分は、十四条一項にも、二十四条二項にも違反しない、としました。そこは、はっきり合憲です。ここは取り違えられやすいところです。再婚禁止期間そのものが違憲になった、というのは誤解です。違憲とされたのは、100日を超える部分だけです。前回、国籍法で見た部分違憲と同じ手当てです。二つ目の例に当たります。もう一つ出てきた二十四条二項も、条文を見ておきましょう。

条文日本国憲法24条2項

憲法24条2項 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

十四条一項が、扱いの平等を問うのに対して、二十四条二項は、家族に関する法律を作るときの土台を定めています。この回では、もう一つの根拠がある、というところまでで結構です。

再婚禁止期間④——作られた当時は、不合理ではなかった

立法当時の評価(医療や科学技術が未発達で父子関係の判定が難しかった=期間に幅を持たせる考え方にも理解し得る面がある/6か月と定めたことが不合理であったとはいい難い)+その後の変化で今日は正当化が困難に 図:立法当時の評価

  • 医療や科学技術が未発達で父子関係の判定が難しかった=期間に幅を持たせる考え方にも理解し得る面がある/6か月と定めたことが不合理であったとはいい難い
  • その後の変化で今日は正当化が困難に

ここが、今日いちばん大事なところです。100日を超える部分について、最高裁は、いきなり違憲だとは言いませんでした。まず、この規定が作られた当時の評価から始めます。昔は、父子関係を確かめる手段が、今ほどありませんでした。だから、推定が重なる期間ぴったりに区切らず、少し幅を持たせておく。そういう考え方にも、理解できる面がある、と述べています。そのうえで、半年と定めたこと自体が不合理だったとは言いがたい、と述べました。ここの言い回しが、とても正確です。

判例最高裁判所大法廷判決・平成27年12月16日(民集69巻8号2427頁)

女性再婚禁止期間違憲判決②(立法当時は合理的だった) 上記のような旧民法起草時における諸事情に鑑みると,再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず,一定の期間の幅を設けることが父子関係をめぐる紛争を未然に防止することにつながるという考え方にも理解し得る面があり,このような考え方に基づき再婚禁止期間を6箇月と定めたことが不合理であったとはいい難い。 このことは,再婚禁止期間の規定が旧民法から現行の民法に引き継がれた後においても同様であり,その当時においては,国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものであったとまでいうことはできない

この言い方が大事です。素晴らしい規定だった、とは言っていません。かといって、国会に許された範囲を超えていた、とも言えない。つまり、当時としては、裁量の範囲内に収まっていた、という評価です。そして、ここが今日の背骨につながります。この判決は、昔の国会が間違っていた、とは言っていません。ではなぜ、違憲という結論になったのか。

再婚禁止期間⑤——今日では、正当化できない

医療や科学技術が発達した今日では期間に幅を設けることを正当化するのは困難=100日超過部分は憲法14条1項に違反するとともに憲法24条2項にも違反するに至っていた+その後の改正(平成28年に100日へ短縮/令和4年改正で条文そのものが削除)

動いたのは、条文ではなく、その規定を支えていた事実のほうでした。医療や科学技術が発達し、父子関係を確かめる手段が変わりました。昔は、生まれた時期から逆算して推定するしかありませんでした。今は、ディーエヌエー型の鑑定で、父子関係そのものを直接調べられます。推定が重なる期間ぴったりに区切らず幅を持たせることを、今日において正当化するのは困難になった、と述べています。

判例最高裁判所大法廷判決・平成27年12月16日(民集69巻8号2427頁)

女性再婚禁止期間違憲判決③(今日では正当化困難) しかし,その後,医療や科学技術が発達した今日においては,上記のような各観点から,再婚禁止期間を厳密に父性の推定が重複することを回避するための期間に限定せず,一定の期間の幅を設けることを正当化することは困難になったといわざるを得ない。 以上を総合すると,本件規定のうち100日超過部分は,遅くとも上告人が前婚を解消した日から100日を経過した時点までには,婚姻及び家族に関する事項について国会に認められる合理的な立法裁量の範囲を超えるものとして,その立法目的との関連において合理性を欠くものになっていたと解される。

この事件の原告が、前の結婚を解消してから100日が経った時点までには、もう合理性を欠いていた、という言い方をしています。相続の決定も、この判決も、判決が出た日からではありません。そのうえで、結論です。

判例最高裁判所大法廷判決・平成27年12月16日(民集69巻8号2427頁)

女性再婚禁止期間違憲判決④(結論) 本件規定のうち100日超過部分が憲法24条2項にいう両性の本質的平等に立脚したものでなくなっていたことも明らかであり,上記当時において,同部分は,憲法14条1項に違反するとともに,憲法24条2項にも違反するに至っていたというべきである。

男女で違う扱いをした点と、家族に関する法律の土台の点、その両方に反する、という結論でした。そして、この規定のその後にも触れておきます。この判決のあと、国会は規定を100日に短縮しました。さらにそのあとの改正で、この条文そのものが無くなりました。今の民法には、再婚を待つ期間という制度自体がありません。番号だけが残っていて、中身は「削除」とだけ書かれています。そういう状態です。ですから、今も女性だけ再婚できない期間がある、と答えると誤りになります。ここは、答案でも気をつけてください。

二つを並べる——動いたのは、事実のほう

2つの規定の比較(目的=どちらも変わっていない/判断の枠組み=どちらも変わっていない/規定の文言=どちらも変わっていない)+動いたのは立法事実だけ(婚姻・家族の多様化と諸外国の状況/医療・科学技術の発達) 図:2つの規定の比較

  • 目的=どちらも変わっていない/判断の枠組み=どちらも変わっていない/規定の文言=どちらも変わっていない
  • 動いたのは立法事実だけ(婚姻・家族の多様化と諸外国の状況/医療・科学技術の発達)

今日見た二つを、横に並べてみます。まず、目的です。相続分のほうは、法律婚の尊重と、嫡出でない子の保護の調整。再婚を待つ期間のほうは、父と推定される人が二人になるのを避けること。そこが大事です。目的は、最初から最後まで、同じままです。次に、判断の枠組みです。区別の目的に合理的な根拠があるか。そして、区別の中身が目的との関連で合理性を持つか。同じです。最高裁は、途中で審査を厳しくしたわけではありません。裁量の広さという変数も、動いていないと確かめておきます。そして、条文の文言も、一文字も変わっていません。

動いたのは、区別を支えていた事実のほうです。相続分のほうは、婚姻や家族のかたちが多様になり、諸外国でも差を設けない形が当たり前になっていました。再婚を待つ期間のほうは、医療や科学技術が発達しました。こうした事実の変化が、立法事実が動く、ということの中身です。答案でも、ここを書けるかどうかで差がつきます。この規定は違憲です、と結論だけ書くのではなく、制定当時は合理性があったが、その後にこういう事実が変わった、だから今は合理性を失っている、という順で書けると、説得力が出ます。

今日の地図(保存版)

今日の内容を一本の線に戻す(条文も枠組みも変わらないまま結論が動くのは立法事実が変わるから)+次回は性別と家族制度(夫婦の名字・同性どうしの結婚・積極的な差別是正措置) 図:今日の内容を一本の線に戻す

  • 条文も枠組みも変わらないまま結論が動くのは立法事実が変わるから
  • 次回は性別と家族制度(夫婦の名字・同性どうしの結婚・積極的な差別是正措置)

今日の内容を、一本の線に戻します。同じ条文、同じ枠組みで測っているのに、結論が変わることがある。区別を支えていた事実が、変わったからです。嫡出でない子の相続分は、一度は合憲とされ、のちに違憲とされました。女性にだけ課された再婚を待つ期間は、作られた当時は不合理とまではいえず、今日では、100日を超える部分の正当化が困難になっていました。そこを押さえておいてください。それから、二つの細かい点です。違憲の判断は、必ずしも判決の日から先だけに効くわけではないこと。そして、違憲になるのは規定の一部分だけのことがある、ということ。

夫婦の名字を同じにしなければならない決まりや、同性どうしの結婚。それから、不利な立場にある人をあえて優遇する取り組みを扱います。今日の見方も、そのまま持ってきてください。

参照条文

  • 民法900条4号(平成25年改正前・ただし書)
  • 民法733条1項(平成28年改正前)
  • 民法772条1項・2項(令和4年改正前)
  • 日本国憲法24条2項

憲法 全体ロードマップへ →