憲法ゼロから憲法#25

法の下の平等——まだ答えのない問題と、逆向きの問題

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第3章 人権各論 ㉕/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

同性間婚姻①——「両性の合意のみ」の「のみ」の意味

二十四条一項の「のみ」は男女限定の趣旨ではない+明治民法下では婚姻に戸主(および一定年齢までは父母)の同意が必要だった+「のみ」はその同意を要しないという趣旨(家制度の否定)+同性間婚姻を禁止する趣旨の規定ではない

まず、二十四条一項を、もう一度、見てください。

条文日本国憲法24条1項

憲法24条1項 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。

多くの人が、まず、そう感じます。でも、順番に考えると、違う見方ができます。この条文ができる前、明治民法のもとでは、結婚するのに、当事者どうしの意思だけでは、足りませんでした。家の長である戸主の同意が、必要だったんです。しかも、一定の年齢に達するまでは、父母の同意も必要でした。結婚は、本人二人だけでなく、家という単位の問題でした。二十四条一項の「のみ」は、ここを狙い撃ちにしています。婚姻は、当事者二人の合意だけで成立する。戸主の同意も、父母の同意も、要らない。そう言い切っているんです。家制度を否定するのが、この「のみ」の狙いです。

少なくとも、「のみ」という言葉だけからは、そうは読めません。だから、この条文が、同性どうしの結婚を禁止しているとは言えません。この理解は、一冊の本だけの見方ではありません。憲法を研究している人たちの多くと、実際の裁判の理由づけでも、同じ理解が採られています。ここを取り違えると、この先の話が全部崩れます。今日、一番、注意してほしいところです。

同性間婚姻②——許容と要請のあいだ

「禁止していない」は認めてもよいという許容にとどまる。「認めなければならない」という要請ではない。同性間婚姻の自由を十三条で保障されるとする見解も有力。 図:「禁止していない」は認めてもよいという許容にとどまる

  • 「認めなければならない」という要請ではない
  • 同性間婚姻の自由を十三条で保障されるとする見解も有力

そこは、急いではいけません。「禁止していない」と「認めなければならない」は、別の話です。「禁止していない」は、法律で認めても憲法に違反しない、という意味です。これを「許容」と呼びます。一方、「認めなければならない」は、憲法が国に義務づけている、という意味です。こちらは「要請」です。これは、以前、実質的な平等のところで見た考え方と、同じ形です。あのときは「要求」ではなく「許容」、という言い方をしました。今日は「要請」という言葉を使いますが、考え方は同じです。二十四条一項は、同性間婚姻を禁止していません。だから、法律を変えて認めることは、憲法上、許容されます。

そこはまだです。もう一つ、有力な見方があります。同性どうしで結婚する自由そのものが、十三条によって保障されている、という見解です。個別の条文では拾えない自由の、最後の受け皿でしたね。誰と結婚するかを自分で決める自由も、そこに含まれる、という考え方です。ただ、これは有力な学説であって、決まった結論ではありません。

いくつかの高等裁判所でこの問題が争われ判断が割れている+多くは違憲またはそれに近い判断だが合憲と判断したところもあった+今は最高裁で統一した判断が出るのを待っている段階

決まった結論は、まだ出ていません。いくつかの高等裁判所で、この問題が争われています。多くは違憲、またはそれに近い判断でしたが、合憲と判断したところもありました。今、最高裁判所で、統一した判断が出るのを待っている段階です。なお、この問題は、国への損害賠償を求める形で争われています。国の責任がいつ生まれるかという話は、また別の回で見ます。今日の一問の、前半が、ここにあります。

同性間婚姻③——答案をどう組み立てるか

前回使った三つの条文(十三条→十四条一項→二十四条)は同性婚にも道具として使えるが使い方が違う+前回は一つの規定に三つの条文を順番にかける直列の使い方+今日は答案でどの条文を主に立てるかという選択の問題+前回はその的になる規定(夫婦の氏を定めた民法規定)があったが今日はその規定自体が無い=だから選択になる

ここで、前回作った道具を、もう一度、持ってきます。夫婦の氏のとき、何を使ったか、覚えていますか。ただ、今日は、使い方が、前回とは違います。前回は、一つの規定に、三つの条文を、順番にかけていきました。すべてをクリアして、初めて合憲、という流れです。「直列つなぎ」、いい表現です。今日は、そうではありません。前回は、夫婦の氏を定めた法律の規定が、目の前にありました。同性どうしの結婚を認める法律が、まだありません。かける相手がいないので、順番にかける形になりません。同性どうしの結婚を認めるべきだ、という主張を組み立てるとき、どの条文を主な根拠にするか、という選び方の問題になります。

考えられる組み立て方は、大きく四つあります。

考えられる組み立ては4つ=十三条(自己決定権として構成)・十四条一項(異性愛者と同性愛者で扱いが違うという区別に着目)・二十四条一項(婚姻の自由そのものが同性間にも及ぶ)・二十四条二項(個人の尊厳と両性の本質的平等という指針への違反)+どれか一つが正解と決まっているわけではない

一つ目は、十三条です。誰と家族になるかを自分で決める——以前見た自己決定権の、一つ目の型です。性的指向に関わらず、結婚を自分で決める自由がある、という組み立てです。二つ目は、十四条一項です。異性どうしは結婚できて、同性どうしはできない、という区別に注目する組み立てです。ただ、性的指向は、十四条一項の後段に並ぶ例には、名指しでは挙がっていません。そこで、「後段の例は限定した一覧ではない」という、以前の考え方が生きてきます。もう一つ、性的指向は、自分では選べない事柄です。審査を慎重にすべきだ、という主張につながります。三つ目は、二十四条一項そのものです。「のみ」が家制度否定の趣旨に過ぎない以上、結婚の自由そのものが同性間にも及ぶ、という組み立てです。四つ目は、二十四条二項です。個人の尊厳と両性の本質的平等という指針に、今の状態が反する、という組み立てです。同性どうしには、婚姻という制度を使う道が、そもそも開かれていません。そこが個人の尊厳を欠く、という言い方です。

そこが、今日の一問の中身です。まだ、決着していません。実際の裁判でも、よりどころにする条文が、裁判所によって分かれています。前回のように、三つ全部をクリアして初めて合憲、という形には、まだなっていません。

アファーマティブ・アクション①——平等のための差別という逆説

AA=これまで不利な立場に置かれてきた人々の社会的地位を高めるためあえて優先的に扱う措置(ポジティブ・アクション/積極的差別是正措置とも)+目的は実質的平等の実現+その手段としての優遇は裏を返せば別の人への劣遇=逆差別 図:AA=これまで不利な立場に置かれてきた人々の社会的地位を高めるためあえて優先的に扱う措置

  • ポジティブ・アクション/積極的差別是正措置とも
  • 目的は実質的平等の実現
  • その手段としての優遇は裏を返せば別の人への劣遇=逆差別

ここから、もう一つの話に移ります。以前、実質的な平等を実現する手段として、名前だけ出した言葉を、覚えていますか。不利な立場にある人を、あえて優遇する取り組みです。アファーマティブ・アクションと呼ばれます。今日が、その本拠地です。定義から始めます。これまで差別されたり、不利な立場に置かれたりしてきた人々の社会的地位を、引き上げるために、意図的に優先的な取り扱いをする措置のことです。ポジティブ・アクション、あるいは、積極的差別是正措置とも呼ばれます。たとえば、採用や進学の場面で、機会に恵まれてこなかった層のために、一定の枠を用意しておく、というようなことです。

そこが、この制度の面白いところであり、難しいところです。目的は、実質的な平等を実現することです。前に見たとおり、機会をそろえるだけでなく、結果の格差にも目を配る考え方です。この目的自体は、疑いようがありません。でも、手段を見てください。ある人を優遇するということは、裏を返せば、優遇されない別の人にとっては、不利になる、ということです。平等を実現するための措置が、別の場所で新しい不平等を作り出す。これが「平等のための差別」と呼ばれる逆説です。矛盾のように見えますが、これが「逆差別」と呼ばれるものの入り口です。この先、二つのことをします。まず、この措置が論文で出たときの書き方。そのあとで、誰の何が、どれだけ奪われるのかを、数字で追います。

アファーマティブ・アクション②——論文でどちらの型を使うか

AA固有の事情を使うタイミングは2通り=一つ目は規範を通常どおり立てあてはめの1回だけで使う型/二つ目は規範を緩める理由として先に使いあてはめでも改めて使う型(答案の2箇所で働く)+優劣はないが原則として二つ目の型が推奨される

この措置が、論文試験の事案として出たとき、書き方が二つに分かれます。一つ目は、審査の物差しは、いつもどおりに立てておく書き方です。この措置らしさが答案に出てくるのは、あてはめの段階、一回だけです。区別を正当化する材料として、そこで初めて、実質的な平等という目的を使います。もう一つは、物差しを立てる段階から、この措置であることを理由に、基準や密度を、あらかじめ緩めておく書き方です。そして、そこで終わりではありません。緩めた物差しを、あてはめの段階でも、もう一度、同じ目的に照らして使います。ここが、今日いちばん覚えてほしい対比です。この措置らしい事情を、一回だけ使うか、二回使うか。

一つ目なら、物差しはいつもどおり立てて、あてはめで初めて「この枠は実質的な平等のためだ」と書きます。二つ目なら、物差しを立てる段階で先に「実質的な平等のための枠だから」と置き、あてはめでも、もう一度、同じことを持ち出します。同じ「実質的な平等」が、答案の二か所に出てくる。それが二つ目の型です。結論から言うと、二回使うほうです。どちらも間違いというわけではありませんが、原則としては、こちらが勧められています。そこは、この後、以前作った道具とつないで説明します。少し予告すると、目的の重さが、物差しの緩め方に効いてくる、という話です。ここでは、対比の形だけ、しっかり持ち帰ってください。一回だけ使うか、二回使うか。単に「厳しい・緩い」の違いではなく、使う回数が違う、という点です。

アファーマティブ・アクション③——逆差別の中身を、数字で追う

自前の例=ある資格試験の合格枠100人のうち20人を優先枠に、一般枠を80人に変更+優先枠の対象者Aは対象者どうしの順位で20人が決まる+一般枠を争う人数は変わらないのに椅子の数が減る+制度導入前なら合格していたはずの一般枠の受験者Bの一部が不合格になる=これが逆差別の中身

ここで、後回しにしていた「逆差別」に戻ります。さっき出てきた言葉を、具体的な数字で追ってみます。ある資格試験を考えてください。例年どおりなら、成績の順に、百人が合格する試験だとします。この試験の主催団体が、機会に恵まれてこなかった層のために、優先枠を二十人分、新しく設けたとします。そのかわり、一般の枠は、百人から、八十人に減らします。優先枠の対象になる層の中で、順位をつけて決めます。この層の受験者を、Aさんとします。Aさんも、無条件に受かるわけではなく、対象者どうしの順位で決まります。そこが、この話の核心です。一般枠を争う人の数は、制度が変わる前と変わりません。でも、その人たちが取り合う椅子の数は、百から、八十に減っています。この一般枠を争う受験者を、Bさんとします。制度が変わる前なら、成績の順で合格していたはずのBさんの一部が、優先枠の対象にならない層だったばかりに、八十人の枠に入りきらず、不合格になります。これが、「逆差別」の中身です。

実質的な平等を実現するための措置が、Bさんという、別の場所に、具体的な不利益を生む。これが、逆差別という言葉の、数字で見た姿です。

アファーマティブ・アクション④——なぜ、物差しを緩めてよいのか

以前作った四つの変数(目的・手段・裁量の広さ・立法事実)のうち裁量の広さに注目+この変数は領域によって逆に振れる(専門的判断が要る分野=広い/変えられない事柄が絡む=狭い)=目的の重さはその押し方の一つ+目的が重要であるほど手段の選び方について裁判所は裁量を認めやすい=目的の重さが裁量の広さに効く=これが二回使う型が推奨される理由

予告した「なぜ」に、答えます。以前、審査の厳しさを決める、四つの変数を作りました。覚えていますか。このうち、三つ目の裁量の広さに、注目してください。この変数は、領域によって逆に振れる、と前に見ました。今日は、それとは別の押し方です。目的の重さが押す向きを見ます。この措置の目的は、実質的な平等の実現でした。この目的自体は、正当性が高いと評価されやすいものです。そういう方向に働きます。目的が重要であるほど、実現手段の選び方について、裁判所は、行政や国会に、一定の裁量を認めやすくなります。これが、三つ目の変数、裁量の広さです。

物差しを立てる段階で目的を先取りするという書き方には、単に「甘くする」だけでなく、目的の重さが裁量の広さに効く、という論理が乗っています。厳格・中間・緩やかという、物差しの目盛りを回す感覚、覚えていますか。そのダイヤルを、目的の重さを理由に、緩める方向に回す。そう理解すると、筋が通ります。

アメリカではかつて大学の入試などでこの種の優遇をどこまで認めるか争われてきた+人数の枠を決める割当方式や一要素として考える考慮方式が試された+近年判断の枠組みが見直され今のアメリカの状況を一言でまとめることはできない

最後に、一つだけ触れておきます。アメリカでは、かつて、大学の入試などで、この種の優遇が、たびたび争われてきました。人数の枠をあらかじめ決めておく割当方式や、一つの判断材料として考える考慮方式など、いくつかのやり方が試されています。今のアメリカの状況は、断定できません。近年、それまでの判断の枠組みを見直す判断が示されており、今のアメリカの状況を、一言でまとめることはできません。大事なのは、外国の状況そのものより、目的の重さが物差しの緩め方に効く、という今日の論理のほうです。

今日の地図(保存版)

十四条の物差し(区別の理由を問う)→判例で結論が分かれる理由・4変数→立法事実が動くと結論が動く→十四条の外側=二十四条・動かないこともある→まだ決めていない領域とあえて違う扱いをする手段=今日、の5段を1枚に+「後段列挙事由の判例をまとめて読む」完了宣言+残るは投票価値の平等だけ+次回は精神的自由

平等の話を、五回に分けて見てきました。ここで、一枚の地図に戻します。最初に、十四条という物差しを立てました。同じ扱いかどうかではなく、違う扱いの理由を問う物差しです。次に、同じ十四条を使っているのに、なぜ結論が分かれるのか、四つの変数で見ました。その次に、法律を支えている事実そのものが動けば、結論も動くことがある、という話をしました。その後、十四条だけでは届かない領域があり、二十四条という、もう一つの物差しがあること、そして、事実が動いても、結論が動かないことがあることも見ました。今日は、憲法がまだ答えを出していない領域と、あえて違う扱いを作る手段の、二つを見ました。同性どうしの結婚は、禁止されていませんが、認める義務までは、まだ、憲法から引き出せません。最高裁の答えを、待っている段階です。この措置は、実質的な平等のために、あえて違う扱いを作る手段です。その裏側には、逆差別という不利益があり、論文で書くときは、この措置らしい事情を、一回使うか二回使うか、という対比が大事でした。

一番最初に、後段に並ぶ例をまとめて読む、と予告していました。今日で、その約束は、果たしました。一つだけ残っています。選挙の一票の重さをめぐる話です。これは、統治の仕組みを扱う、また別の回で見ます。平等の話は、今日でいったん終わりです。まず、思想や良心の自由から始めます。今日の、まだ答えの出ていない領域を扱う、という視点は、次からも、時々、顔を出します。

参照条文

  • 日本国憲法24条1項

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