地方自治の本旨と地方公共団体
問い:憲法は地方自治をどういう性質のものとして保障し、法律でも侵せない核心は何か。の「地方公共団体」に当たるのはどの団体で、東京都の特別区はなぜ当たらないとされたのか。住民が地方自治を直接動かす仕組みには何があるか。
骨組み
- 1保障の性質(学説・判例):明治憲法には規定が無かった → 日本国憲法は第8章で保障。国法伝来説(承認説)=法律で廃止もできる/固有権説=固有の自治権の確認/制度的保障説=通説。判例(最判平7・2・28)も「憲法上の制度として保障」
- 2地方自治の本旨(・学説):通説は本旨を法律でも侵せない核心と解する。中身=団体自治(国から独立した団体が自らの意思と責任で=自由主義的・地方分権的)+住民自治(住民の意思に基づく=民主主義的)
- 3議会と長():1項=議会を設置。町村の総会(地方自治法94条)は合憲と解してよい。2項=長・議員・法律の定めるその他の吏員を住民が直接選挙 → 首長制。ただし不信任・解散(地方自治法178条)は議院内閣制的
- 4二段階制と道州制(学説):通説=市町村と都道府県の二段階を憲法が保障(制定当時の二段階が前提という歴史的背景)。都道府県を維持するか道州に再編するかは立法政策
- 5憲法上の「地方公共団体」の基準(最大判昭38・3・27):法律で地方公共団体として取り扱われているだけでは足らず、①社会的基盤(共同体意識)②沿革的にも現実の行政の上でも相当程度の自主立法権・自主行政権・自主財政権等。実体を備えた団体の権能は法律でも奪えない
- 6特別区は当たらない(同判決):地方自治法上は特別地方公共団体。決め手=沿革(完全な自治体だったことがない)+実際の行政(昭和21年に法律上いったん認められた自主権に、その後の法律で重大な制約=事務の都への留保・課税の制約。制約の理由は大都市行政の一体性の要請)→ 当たらない。区長を特別区の議会が都知事の同意を得て選任する方式は立法政策。今日は当たるとする見解が有力
- 7地方特別法の住民投票(・学説):国会単独立法の原則の例外。趣旨=自治権の侵害の防止。「一の」=特定の(特定の複数にも及びうる)。適用されない=①有利に扱う法律 ②国の事務・組織だけの法律 ③単なる地域の法律
- 8地方自治法上の直接民主制:直接請求=条例の制定改廃・事務の監査(50分の1)/議会の解散・議員と長の解職(原則3分の1)。地方公共団体が独自に行う住民投票(原発施設・米軍基地の受入れの是非など)の結果に、現行法上法的拘束力は無い(解散・解職の投票は過半数の同意で解散・失職)。法改正で拘束力を持たせることは憲法上許されると解されている
色の札は出どころ:条文 判例 学説。条文番号は押すと条文が出ます(押せるのは日本国憲法の条文だけ。地方自治法の条文番号は文字のまま)。最大判=最高裁判所大法廷の判決、最判=最高裁判所小法廷の判決。判決の引用は原文どおり(漢数字・昭和38年の判決は旧かな)。1〜2が保障の性質と核心、3が組織、4〜6が憲法上の「地方公共団体」に当たる団体、7〜8が住民が直接動かす仕組み。短答は「判例の立場」と「通説」を分けて問うので、出どころを混ぜない。
1地方自治の保障の性質(3つの説)学説判例
- 明治憲法には地方自治の規定が無く、法律・勅令のレベルで定められていたにとどまる。日本国憲法は第8章「地方自治」(〜)を設けて保障した。
- その保障がどういう性質のものか(地方自治の法的性質。地方自治権の根拠とも言う)について、3つの説がある。
| 説 | 中身 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 国法伝来説(承認説) | 地方自治は国法に由来する法律上の制度にすぎず、法律で廃止もできる | |
| 固有権説 | 自然人の自然権と同じく、地方公共団体にも固有の自治権があり、憲法の規定はそれを確認したもの | |
| 制度的保障説 | 地方自治という制度を憲法が保障する=法律によっても侵せない核心がある | 通説。判例も同様とされる |
- 違いの軸:固有権説は、自治権の根拠を憲法以前からある団体固有の権利に置き、憲法はそれを確認しただけと見る。制度的保障説は、根拠を憲法の保障に置き、組織・運営は法律で定める()が、核心は法律でも侵せないと見る。
- 判例として挙げられるのは定住外国人地方選挙権事件(最判平7・2・28):
- …憲法第八章の地方自治に関する規定は、民主主義社会における地方自治の重要性に鑑み、住民の日常生活に密接な関連を有する公共的事務は、その地方の住民の意思に基づきその区域の地方公共団体が処理するという政治形態を憲法上の制度として保障しようとする趣旨に出たものと解される…
- 判決は「制度的保障」という語は使っていない。「判例も制度的保障説」というのは、この言い方を受けた整理。
ある法律が「市町村が条例を作るには、毎回国の大臣の承認が要る」と定めたとする。地方自治を法律がくれた制度にすぎないと見れば(国法伝来説)、国会の判断で可能になる。制度的保障の立場では、国から独立して自分の意思で決めるという本旨の中身(団体自治=国の手出し・口出しを受けずに自分で決めること。項目2)を奪うので、違憲に傾く。
出題行政に関する統治権は憲法上国と地方に配分される(aの見解)
- 「国法伝来説によれば、地方自治は法律によっても廃止することができない」(法律で廃止もできるとする説)
- 「固有権説が通説であり、判例もこれを採る」(通説は制度的保障説。判例も同様とされる)
- 「明治憲法にも地方自治の規定が置かれていた」(規定は無く、法律・勅令のレベル)
2地方自治の本旨()条文学説
- :地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
- 制度的保障と解すると、法律によっても侵せない核心が何かが問題になる → 通説は、の「地方自治の本旨」が核心だと解する。条文が「核心」と書いているのではなく、通説の解釈。
| 団体自治 | 住民自治 | |
|---|---|---|
| 中身 | 地方自治が、国から独立した団体に委ねられ、団体自らの意思と責任のもとでなされる | 地方自治が、住民の意思に基づいて行われる |
| 要素 | 自由主義的・地方分権的要素 | 民主主義的要素 |
| 問う向き | 国から離れているか | 誰の意思で決めるか |
- 団体自治は、国からの手出し・口出しを排除する=国家から干渉されないという面なので、自由主義的と呼ばれる。
- 住民自治は、国以外の誰の意思で団体が動くか(地方の有力者などではなく住民)という面なので、民主主義的と呼ばれる。
市長も市議会も住民の選挙で選ばれるが、市の予算の使い道は一件ごとに国の出先機関の指示に従う仕組み → 住民の意思は反映されるように見えても、団体自治が欠ける。逆に、県は国から独立した団体だが、知事は地元経済団体の推薦で決まり住民は選べない仕組み → 住民自治が欠ける(にも反する)。
出題住民による条例の制定改廃の直接請求制度は団体自治を実現するもの(×)制度的保障説に立つと「地方自治の本旨」には特別の法的意味がない(×)
- 「団体自治は民主主義的要素であり、住民自治は自由主義的・地方分権的要素である」(逆)
- 「地方自治の本旨とは、住民自治のみをいう」(団体自治と住民自治の2つ)
- 「は、地方自治の組織・運営を法律に委ねているので、国会はその内容を自由に定めることができる」(法律は本旨に基かなければならない)
3議会と長()条文学説
- :地方公共団体には、法律の定めるところにより、その議事機関として議会を設置する。
- 町村総会:地方自治法94条「町村は、条例で、第八十九条第一項の規定にかかわらず、議会を置かず、選挙権を有する者の総会を設けることができる。」→ 住民自身が直接決める形で、より住民自治に資するので合憲と解してよい。根拠は地方自治法94条。
- :地方公共団体の長、その議会の議員及び法律の定めるその他の吏員は、その地方公共団体の住民が、直接これを選挙する。
- 「法律の定めるその他の吏員」=法律が直接選挙と定めた吏員だけ。地方公共団体の職員が全員、住民の直接選挙で選ばれるという意味ではない。
- 長も住民が直接選ぶ → 地方は大統領制・首長制(国は内閣総理大臣を国会が指名する議院内閣制)。
- ただし地方自治法178条に議院内閣制的な仕組みがある:議会が長の不信任を議決(議員数の3分の2以上が出席し、その4分の3以上の同意)→ 長は通知を受けた日から10日以内に議会を解散できる → 解散しないとき、または解散後初めて招集された議会で再び不信任の議決(3分の2以上が出席し、その過半数の同意)があったとき、長は職を失う。
有権者が数十人の離島の村が、条例で議会を置かず、有権者全員の総会を設けた → の議会の代わりに住民自身が直接決める形なので、合憲と解される。
出題議会と首長は独立対等なので、首長に議会の解散権は認められていない(×)小規模団体で議会を置かず選挙権者の総会を設ける規定は憲法に違反する(×)選挙管理委員会の委員を公選とすることは93条2項に基づく憲法上の要請(×)法律で地方議会を諮問機関とすることは必ずしも違憲ではない(×)小規模団体で議会に代えて選挙権者全員の総会を設けても93条1項に反しない(○)
- 「町村が条例で議会を置かず総会を設けることは、に反し違憲である」(より住民自治に資するので合憲と解してよい)
- 「により、地方公共団体の職員は、すべて住民が直接選挙しなければならない」(法律の定める吏員だけ)
- 「地方公共団体の長と議会の関係には、議院内閣制的な仕組みは一切ない」(不信任議決と解散=地方自治法178条)
4二段階制と道州制学説
- 地方自治法上の地方公共団体(1条の3):普通地方公共団体=都道府県・市町村/特別地方公共団体=特別区・地方公共団体の組合・財産区。
- 憲法上の「地方公共団体」は、法律上の地方公共団体と同じとは限らない(項目5)。
- 二段階制:地方自治法は市町村と都道府県の二段階。これが憲法上保障されているかは争いがある → 通説は、憲法制定当時の二段階を前提に地方自治を保障したという歴史的背景から、二段階を保障していると解する。
- 道州制:都道府県を維持するか、道州に再編するかは立法政策。道州で住民自治・団体自治が保障されている限り可能。
- 項目5とのつながり:通説によれば、現行の市町村と都道府県はともに憲法上の「地方公共団体」に当たる。それ以外の、当たるかに争いのある団体(特別区など)は、項目5の判決の基準で考える。
| 法律でする再編 | 二段階は | 通説での評価 |
|---|---|---|
| 都道府県を廃止し、国の下に市町村だけを置く | 崩れる | 違憲の方向 |
| 近くの3県を1つの州にまとめる。州の知事と議会は住民が選び、州が条例と独自の税を持つ。市町村は残る | 保たれる | 立法政策として可能 |
出題道州のような都道府県より広域の自治組織を設けることも直ちに違憲ではない(○)地方自治の保障は制度的保障で、法律でも侵せない核心部分を守る(aの見解)
- 「道州制の導入は、都道府県を廃止するものであるから違憲である」(二段階が保たれ、本旨が保障される限り立法政策)
- 「通説によれば、二段階制は法律で定められているにすぎず、法律で一段階にすることも自由である」(通説は二段階を憲法が保障すると解する)
5憲法上の「地方公共団体」の基準(東京都特別区事件)判例
- 何のための基準か:憲法上の「地方公共団体」に当たれば、その長・議員はにより住民が直接選挙しなければならない。当たらなければ、長の選び方は立法政策の問題になる(項目6)。
- 最大判昭38・3・27(刑集17巻2号121頁)。は何が「地方公共団体」かを明示していない → 判決は、地方自治の保障の趣旨から基準を立てた。
- 憲法が特に一章を設けて地方自治を保障するにいたつた所以のものは、新憲法の基調とする政治民主化の一環として、住民の日常生活に密接な関連をもつ公共的事務は、その地方の住民の手でその住民の団体が主体となつて処理する政治形態を保障せんとする趣旨に出たものである。
- この趣旨に徴するときは、右の地方公共団体といい得るためには、単に法律で地方公共団体として取り扱われているということだけでは足らず、
事実上住民が経済的文化的に密接な共同生活を営み、共同体意識をもつているという社会的基盤が存在し、
沿革的にみても、また現実の行政の上においても、相当程度の自主立法権、自主行政権、自主財政権等地方自治の基本的権能を附与された地域団体であることを必要とするものというべきである。 - そして、かかる実体を備えた団体である以上、その実体を無視して、憲法で保障した地方自治の権能を法律を以て奪うことは、許されないものと解するを相当とする。
- 見る所は3つ:法律上=法律が地方公共団体として扱っているか(それだけでは足りない)。
- 沿革=これまでの歴史の中で、自治体としての権能を持ち、その働きを果たしてきたか。
- 現実の行政=実際の事務や課税の運用で、その自主権が働いているか。
- 「法律で地方公共団体として取り扱われている」の例が特別区:地方自治法上は特別地方公共団体(1条の3第3項)。それだけでは憲法上の地方公共団体にならない。
社会的基盤も自主権もある市の市長を、法律で議会による選任に改めたとする → この市は基準を満たす憲法上の地方公共団体なので、市長はにより住民の直接選挙で選ぶ必要がある。実体を備えた団体の権能を法律で奪うことは許されないという判決の言葉から、に反する方向になる。
出題自主立法権等の基本的権能があれば足り、共同体意識という社会的基盤は不要(×)法律上の扱いと共同体意識の社会的基盤があれば足り、他の要件は不要(×)
- 「法律で地方公共団体として取り扱われている団体は、憲法上の地方公共団体に当たる」(それだけでは足らない)
- 「判例は、相当程度の自主立法権・自主行政権・自主財政権等が法律上与えられていれば足りるとした」(沿革的にみても、現実の行政の上においても)
6特別区は当たらない(あてはめと結論)判例学説
- 明治以来、地方団体としての長い歴史。ただし市町村のような完全な自治体だったことはない。区長は市長の任命にかかる市の有給吏員
- 昭和18年の東京都制のもとでは、全く都の下部機構
- 昭和21年の都制改正:区条例・区規則の制定権、区税などの賦課徴収権、区長公選制が法律上認められる
- 昭和22年の地方自治法:特別区は「特別地方公共団体」、原則として市に関する規定を適用
- 昭和27年の地方自治法改正:区長公選制を廃止 → 区長は特別区の議会が都知事の同意を得て選任
- 原判決(東京地裁):公選制を廃止した規定はに違反し無効 → 最高裁:破棄・差戻し
- 沿革:
- …未だ市町村のごとき完全な自治体としての地位を有していたことはなく、そうした機能を果たしたこともなかつた。
- 実際の行政:昭和21年の都制改正で、自主権は法律上いったん認められた。しかし昭和22年の地方自治法をはじめとする法律で重大な制約が加えられた(多くの事務が都に留保。地方税法でも、区税は都の条例の定めるところによるだけで、独立税には都の同意が必要)。実際も、区長公選のほかは都制下と大差がなかった。
- しかし、これら法律の建前が特別区の事務、事業の上にそのまま実現されたわけでなく、政治の実際面においては、区長の公選が実施された程度で、その他は都制下におけるとさしたる変化はなく…
- その制約の理由:
- …二三区の存する地域全体にわたり統一と均衡と計画性のある大都市行政を実現せんとする要請に基づくものであつて、所詮、特別区が、東京都という市の性格をも併有した独立地方公共団体の一部を形成していることに基因するものというべきである。
- 結論:
- しかして、特別区の実体が右のごときものである以上、特別区は、その長の公選制が法律によつて認められていたとはいえ、憲法制定当時においてもまた昭和二七年八月地方自治法改正当時においても、憲法九三条二項の地方公共団体と認めることはできない。
- 従つて、改正地方自治法が右公選制を廃止し、これに代えて、区長は特別区の議会の議員の選挙権を有する者で年齢二五年以上のものの中から特別区の議会が都知事の同意を得て選任するという方法を採用したからといつて、それは立法政策の問題にほかならず、憲法九三条二項に違反するものということはできない。
- 決め手は、自主権が法律上一度も無かったことではない。法律上いったん認められた自主権にその後の法律で重大な制約が加えられ、実際も都制下と大差なかったこと(実際の行政)と、沿革とを見て、自治の実体を否定した。
- 判断は「憲法制定当時」と「昭和27年の改正当時」に時点を限っている。垂水裁判官の補足意見は、特別区を地方公共団体とすべきだとする説を「大いに傾聴に値する」と紹介している。
- 今日の評価(学説):今日では特別区も判決のいう要件を満たし、憲法上の地方公共団体に当たるとする見解が有力。現行の地方自治法では、特別区は「基礎的な地方公共団体」として、都が一体的に処理する事務を除き、市町村の事務を一般的に処理する(281条の2第2項)。
- 有力説に立てば、特別区もの地方公共団体になり、区長は住民の直接選挙で選ばれなければならないことになる(項目5)。
出題現在の地方自治法では都の特別区も普通地方公共団体とされている(×)
- 「昭和27年の改正により、区長は都知事が区議会の同意を得て選任することとされた」(特別区の議会が都知事の同意を得て選任。主体が逆)
- 「特別区の区長は、もともと(明治以来)住民の直接選挙で選ばれていた」(東京市の時代は区長は市長が任命する市の吏員、東京都制(昭和18年)下では区は都の下部機構。公選は昭和21年の都制改正から昭和27年の改正まで)
- 「特別区には条例制定権や課税権が法律上全く認められていなかったので、地方公共団体に当たらないとされた」(昭和21年の都制改正で法律上いったん認められた。その後の法律による制約と実際の行政、沿革を見て否定)
- 「特別区は、地方自治法上、普通地方公共団体とされている」(特別地方公共団体)
- 「最高裁は、区長公選制の廃止はに違反するとした」(違反しない=立法政策。違憲・無効としたのは原判決)
7地方特別法の住民投票()条文学説
- 地方自治は「民主主義の学校」と言われる。の直接選挙に加え、直接民主制的な制度が広く認められている(この項目と項目8)。
- :一の地方公共団体のみに適用される特別法は、法律の定めるところにより、その地方公共団体の住民の投票においてその過半数の同意を得なければ、国会は、これを制定することができない。
- 国会単独立法の原則=法律は国会の議決だけで成立する(は国会を「国の唯一の立法機関」とし、は法律案は両議院で可決したとき法律となるとする)。はその例外。主たる趣旨は自治権の侵害の防止。
- 「一の」=数が1つという意味ではなく「特定の」。特定の複数の地方公共団体に適用される法律にも適用されうる。
- 住民投票が行われた実例:旧軍港市転換法は、横須賀・呉・佐世保・舞鶴の4市でそれぞれ住民投票にかけられた。
- 適用されないと解されている場合:①特定の地方公共団体を有利に扱う法律 ②国の事務・組織を定めるだけで、地方公共団体の組織・運営・権能に関係のない法律(例:北海道開発法) ③国法上の地方公共団体に当たらない単なる地域を対象とする法律(例:秋田県の八郎潟の干拓でできた土地に新たに設置された大潟村について、村長・村議会を暫定的に置かないことを定めた法律)。
港町の4つの市だけに適用される法律でも、「一の地方公共団体のみに適用される特別法」に当たりうる → 数が1つかではなく、対象が特定されているかで考える。ある県だけに国の補助金を上乗せする法律は、その県の自治権を侵すものではないので、住民投票は要らないと解されている。
出題95条の「一の地方公共団体」は「特定の」の意味で、複数団体への適用もありうる(○)地方特別法の住民投票は、住民の権利義務に直接影響する場合に限り必要(×)
- 「の『一の地方公共団体』とは、1つの地方公共団体に限られる」(特定の。特定の複数にも及びうる)
- 「特定の地方公共団体を有利に扱う法律にも、の住民投票が必要である」(適用されないと解されている)
- 「地方特別法は、住民投票の過半数の同意があれば、国会の議決なしに成立する」(制定するのは国会。住民投票の同意が無ければ国会は制定できない)
8地方自治法上の直接請求と住民投票条文学説
| 直接請求(地方自治法) | 連署 | 請求先 | 請求の後 |
|---|---|---|---|
| 条例の制定・改廃(74条) | 選挙権を有する者の総数の50分の1以上 | 長 | 長が20日以内に議会を招集し、意見を付けて付議(74条3項) |
| 事務の監査(75条) | 50分の1以上 | 監査委員 | 監査委員が監査し、結果を公表(75条3項) |
| 議会の解散(76条) | 原則3分の1以上 | 選挙管理委員会 | 選挙人の投票に付す → 過半数の同意で議会は解散(76条3項・78条) |
| 議員の解職(80条)・長の解職(81条) | 原則3分の1以上 | 選挙管理委員会 | 選挙人の投票に付す → 過半数の同意で職を失う(80条3項・81条2項・83条) |
- 条例の制定・改廃の請求からは、地方税の賦課徴収・分担金・使用料・手数料の徴収に関する条例が除かれている(74条1項)。
- ここでいう住民投票=原発施設や米軍基地の受入れの是非などについて、地方公共団体が独自に実施するもの。
- 現行の地方自治法のもとでは、こうした住民投票の結果に法的拘束力は無い=長や議会は必ずしも結果に従わなくてよい。
- 区別:議会の解散・議員と長の解職の投票(上の表)は、過半数の同意で解散・失職する(78条・83条)。の住民投票は、過半数の同意が無ければ国会がその特別法を制定できない(項目7)。
- 法律を改正して、こうした住民投票の結果に長・議会への法的拘束力を持たせることは、住民自治の見地から憲法上許されると解されている。
市が原発施設の受入れの是非について独自に住民投票を行い、反対が多数でも、現行の地方自治法では市長はその結果に法的に縛られない。ただし、法律を改正して拘束力を持たせることは、住民自治の見地から憲法上許されると解されている(「いまの法律がどうか」と「憲法上どうできるか」を分ける)。
出題地方自治の本旨から、地方公共団体が住民投票を行うことは認められる(aの見解)長は条例による住民投票の結果に従う法的義務を負わない(○)議会の解散請求や長・議員の解職請求の制度自体は憲法上の要請でない(○)長・議員の解職請求の可否を住民投票で決することは93条2項の要請(×)
- 「現行の地方自治法のもとでは、地方公共団体が独自に行う住民投票の結果は長や議会を法的に拘束する」(拘束力は無い。議会の解散・議員と長の解職の投票は別で、過半数の同意で解散・失職する)
- 「法律を改正しても、住民投票の結果に長や議会への法的拘束力を持たせることは、憲法上許されない」(住民自治の見地から憲法上許されると解されている)
- 「議会の解散の請求には、選挙権を有する者の50分の1以上の連署で足りる」(原則3分の1以上。50分の1は条例の制定改廃・事務の監査)