民法ゼロから民法#13

法律行為とは何か——意義・種類・成立要件・準法律行為

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第1章 民法総則 ⑬/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

この回の設例

この回は一つの事件を追うのではなく、論点ごとに小さな具体例をいくつも使います。登場するのはすべてA・B・C という抽象的な当事者です(学説を「A説・B説」と呼ぶ場合と字面が衝突しないよう、事案の人物はいつもこの記号で呼びます)。代表的な場面は次のとおりです。

  • 自転車の売買(本編を通して繰り返し使う基準例)……Aが自分の自転車をBに3万円で売ろうとして「売るよ」と言い、Bが「買います」と応じる。
  • 契約の取消し……Aがだまされて結んだ契約を、Aの意思表示だけで取り消す(相手方はB)。
  • 遺言……Aが一人で遺言書を書く(相手方なし)。
  • 法人の設立……A・B・Cの3人が「一緒に法人をつくろう」と合意する。
  • 消費貸借・使用貸借・寄託……ABにお金を貸す/本を貸す/荷物を預かってもらう。
  • 保証契約……ABの借金の保証人になる。
  • 催告(意思の通知)……ABに「早く払ってください」と督促する。
  • 債権譲渡の通知(観念の通知)……Aが持っている債権をCに譲渡し、そのことを債務者Bに知らせる。

これまでの回では、意思表示(心裡留保・通謀虚偽表示・錯誤・詐欺強迫)という”部品”の壊れ方を見てきました。今日は、その部品を組み立てた”完成品”――法律行為そのものを扱います。

法律行為の意義——意思表示という部品の完成品

問いかけ:法律行為ー定義した条文は?

  • 法律行為ー定義した条文は?
  • 売買・遺言・取消し・会社設立
  • 今日はこの言葉の正体を組み立てる

売買契約も、遺言も、契約の取消しも、会社の設立も、民法では「法律行為」という一つの言葉でくくられます。これだけ何度も出てくる言葉なら、民法のどこかに定義があってよさそうなものですが、実は民法典に「法律行為」を定義した条文は一つもありません。

今日の地図

  • 今日の地図
    • ① 法律行為の意義
    • ② 民法の文法(法律要件→法律効果)
    • ③ 3つの種類(契約・単独行為・合同行為)
    • ④ 成立要件(諾成・要物・要式)
    • ⑤ 準法律行為

この回は、この5つを順番に、具体例で腑に落としていきます。

法律行為の意義

  • 法律行為とは|意思表示を要素とする法律要件
    • 当事者が望んだとおりの効果を、民法が実現する仕組み
    • 私的自治の道具
  • なぜ一つの言葉にまとめるのか
    • 共通ルールを総則という一か所にくくり出すため

一言で言えば、法律行為とは意思表示を要素とする法律要件のことです。かみ砕くと、Aが自分の自転車をBに3万円で売りたいと思って「売るよ」と言い、Bが「買います」と応じれば、AB間には売買という権利義務の関係が生まれます。法律行為とは、当事者が望んだとおりの効果を、民法が実現してくれる仕組みです。これは私的自治――自分の法律関係は自分で決めていい、という考え方の道具でもあります。

そして「法律行為」も、これから扱う「準法律行為」も「合同行為」も、条文に定義規定がある言葉ではありません。ドイツ法学に由来する、講学上の概念です。それでも90条(公序良俗)・91条(任意規定)など、随所でこの言葉が使われます。共通するルールを一か所にまとめて書けるからです。民法は、その共通ルールを総則という部屋に置きました。だから90条・91条は「法律行為は」と一度書くだけで、売買にも、遺言にも、会社設立にも、まとめて効きます。定義がないのに、民法で一番よく使われる言葉――これが今日の入口です。

民法の文法——法律要件と法律効果

法律要件→法律効果の図解

  • 民法の文法|法律要件 → 法律効果
    • 法律事実
  • 人の精神作用に基づくもの
    • 意思表示・準法律行為
  • 基づかないもの(事件)
    • 時の経過・出生・死亡
  • 具体例:自転車の売買
    • A「売るよ」+B「買います」→所有権移転・代金債権

ここで、これから民法を読むときずっと使う道具を確認しておきます。民法の条文は、だいたい「こういう事実があれば」「こういう権利義務が生じる」という形をしています。その事実の部分を法律要件、生じる権利義務――権利の発生・変更・消滅を法律効果と呼びます。

自転車の例で確かめると、Aの「売るよ」とBの「買います」が合致した瞬間が、法律要件が満たされた瞬間です。自転車の所有権がBに移り、Aは3万円を請求できる権利を得ます。これが法律効果です。売買を定める555条も同じ形をしています。「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約する」までが法律要件、「その効力を生ずる」が法律効果です。

そして、法律要件を組み立てている個々の事実のことを法律事実と呼びます。法律事実には、人の心の動きに基づくもの(意思表示・準法律行為)と、基づかないもの(事件――時の経過・出生・死亡など、人が意図して起こすものではない事実)があります。これは暗記する規範ではなく、条文を読むための地図です。一度腑に落としておけば、この先ずっと使い回せます。

法律行為の3種類——契約・単独行為・合同行為

3種類一覧+具体例

  • 法律行為の3種類
  • 契約(向き合う2つの意思表示)
    • 例:A「売るよ」⇄B「買います」
  • 単独行為(1つの意思表示)
    • 例:Aが契約を取り消す
  • 合同行為(同じ方向の複数意思表示)
    • 例:A・B・Cが法人をつくる合意

法律行為は3種類あり、意思表示の数と向きで分かれます。

1つ目は契約です。向き合う2つの意思表示が合致して成立します。Aの「売るよ」とBの「買います」――この2つが向き合っています。

2つ目は単独行為です。1つの意思表示だけで効果が生じます。Aがだまされて結んだ契約を取り消す場面がその例で、取消しはAの意思表示1つで足ります。Bの同意はいりません。Aが一方的に「取り消す」と表示すれば、それだけで効果が生じます。

3つ目は合同行為です。同じ方向を向いた複数の意思表示です。契約は向き合いますが、合同行為は並びます。A・B・Cの3人が「一緒に法人をつくろう」と合意する場面がその例で、3人とも「作りたい」という同じ方向を向いています。

3つに分けると、大きく2つのことが変わります。1つ目は成立に何が要るか、2つ目は相手に届ける必要があるか、です。ただし主役はいつも契約と単独行為であり、合同行為は「こういう形もある」と知っておけば十分です。

単独行為の2つの顔——相手方はいるか

単独行為の分岐(相手方の有無)

  • 単独行為の2つの顔
  • 相手方のある単独行為
    • 取消し・解除・追認・相殺
    • 必ず相手方に届く
  • 相手方のない単独行為
    • 遺言・所有権の放棄
    • 一人で完結

単独行為には2つの顔があります。1つは相手方のある単独行為で、取消し・解除・追認・相殺がこれにあたります(追認は「もう取り消さない」と確定させること、相殺は互いの債務を差し引きで消すこと――どちらも本体は別の回で扱います)。Aが取り消すという意思表示は、Bに届いて初めて効力を持ちます。ここは、意思表示が届いた時点で効力が生じる到達主義(97条)の話とつながります。

もう1つは相手方のない単独行為で、遺言や所有権の放棄が典型です。Aが1人で遺言書を書けば、それだけで完結します。誰かに届ける必要も、誰かの同意も必要ありません。届くかどうかで、2つの顔が分かれます。

契約はいつ成立するか——原則、合意だけでいい

契約はいつ成立する?

  • 契約はいつ成立する?
  • 原則:合意だけで成立
    • A「3万円で売るよ」(申込み)
    • →B「買います」(承諾)
    • 契約成立→所有権移転・代金債権発生

ここから契約に絞って、成立の仕方を見ていきます。条文は522条です。

条文民法522条(契約の成立と方式)

1 契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する。 2 契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない

Aの「3万円で売るよ」が申込み、Bの「買います」が承諾です。この2つが合致した瞬間に契約は成立します(1項)。契約書は必要ありません。2項の「書面の作成その他の方式を具備することを要しない」がそれを示しています。口約束だけで契約は成立します。このように、当事者間の意思表示の合致だけで成立する契約を諾成契約と呼びます。ここは判例が作った物差しではなく、条文を読めばそのまま出てくる要件です。丸暗記ではなく、1項2項の中身が分かっていれば十分です。

522条2項は2017年改正で新設

  • 2017年改正で新設された明文
  • 522条2項の改正
    • 旧法:解釈上の原則(明文なし)
    • 現行:条文上の根拠あり
  • 方式の自由の本拠地
    • この条文が契約自由を支える

「口約束だけで契約が成立する」というのは、実はこの522条2項が2017年の改正で新しく書き加えられた条文だという点とセットで押さえておきたいところです。改正前は明文の規定がなく、解釈上の原則とされていました。今は条文にはっきり根拠がある原則です。以前扱った契約自由の原則(521・522条)のうち、方式の自由の本拠地が、まさにこの522条2項にあります。

例外①:物を渡さないと成立しない契約——要物契約

要物契約とは+現行なお要物な3類型

  • 要物契約とは
    • 定義:合意+目的物の引渡しで成立する契約
  • 現行でも要物な3類型
    • 書面によらない消費貸借(587条)
    • 質権設定(344条)
    • 手付契約(557条1項)

契約成立の原則(諾成主義)には、2つの例外があります。1つ目が要物契約――意思表示の合致だけでは足りず、目的物を実際に渡すことまで成立要件になっている契約です。Aが友人Bにお金を貸す消費貸借がその代表で、587条は実際に金銭その他の物を受け取ることで効力を生じる、と定めています。渡すまでは契約が成立していません。ほかにも、Aが時計をBに質に入れる質権設定(344条)、家を買う契約で手付金を渡す手付契約(557条1項)も、現行でなお要物のままです。

改正の罠:旧整理✕→現行✓

  • 改正の罠:要物契約の変更
  • 旧法時代の整理(間違い)
    • 要物契約=消費貸借・使用貸借・寄託
  • 現行の正しい整理
    • 消費貸借:書面によらない場合は要物(587条)
    • 消費貸借:書面でする場合は諾成(587条の2)
    • 使用貸借(593条):諾成に改正
    • 寄託(657条):諾成に改正

ここが本題です。「要物契約=消費貸借・使用貸借・寄託」と覚えている人が多いのですが、これは古い整理です。2017年の改正で、使用貸借と寄託は要物契約から外れました。Aが本をBに貸す約束をした時点で、もう契約は成立します。593条は「引き渡すことを約し」「返還をすることを約することによって」効力を生ずる、と定めており、渡す前の約束の時点で成立します。Aが荷物をBに預ける約束をした時点で、657条により契約は成立します。寄託も同じです。どちらも旧法では要物でしたが、改正で諾成契約に変わりました。

消費貸借はどうでしょうか。原則は要物のままですが、ここにも例外があります。587条の2、書面でする消費貸借です。Aが書面でBにお金を貸す約束をすれば、お金を渡す前でも契約は成立します。ただし、Bは受け取る前なら契約を解除できます。まとめると、現行で要物契約として残るのは書面によらない消費貸借・質権設定・手付契約の3つだけです。教材の版によっては旧整理のまま書かれていることもあるので注意したいところです。

なぜ諾成にしたのか——改正の方向

  • 改正の方向
  • 旧法の反省
    • 渡すまで契約が成立しない
    • →当事者の合意を軽く見すぎている
  • 方向転換
    • 当事者の合意を尊重する

「渡すまで契約が成立しない」というのは、当事者の合意を軽く見すぎているという反省があります。この改正は、当事者の合意を尊重する方向へ進んでいる、という民法全体の流れの一部でもあります。

例外②:書面がないと効力を持たない契約——要式行為

要式行為とは(板:定義+実例一覧)

  • 要式行為とは
    • 定義:合意に加え、書面など方式まで必要な行為
  • 実例
    • 保証契約(446条2項)→書面必須
    • 遺言(960条)→法定の方式必須
    • 婚姻(739条)→届出必須

もう1つの例外が要式行為――合意に加えて、書面などの方式まで求められる場合です。Aが、Bの借金の保証人になってあげる場面がその典型です。

条文民法446条(保証人の責任等)

1 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。 2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。

保証契約は、書面がなければ効力を生じません(2項)。口約束だけでは足りない――諾成主義の原則に対する、明確な例外です。電磁的記録でされた場合も書面がされたものとみなされる(3項)ので、データでの保証契約も認められます。ほかにも要式行為はあり、遺言(960条)は決められた方式に従わなければならないとされ、婚姻(739条)は届出をして初めて効力を生じます。

なぜ方式を求めるのか

  • なぜ方式を求めるのか
  • ① 軽率な約束を防ぐ
    • 例:友達だから気軽に保証人→後で高額請求
  • ② 証拠を残す
    • 例:後で「言った・言わない」の争い防止
  • ③ 第三者への影響が大きい
    • 例:婚姻→戸籍・相続関係など多くに影響

方式を求める理由は大きく3つあります。1つ目は軽率な約束を防ぐためです。「友達だから」と気軽に保証人を引き受けて、後で高額な借金を背負う人が実際に多いのです。2つ目は証拠を残すためです。書面があれば、後で「言った・言わない」の争いを防げます。3つ目は第三者に与える影響が大きい場面だからです。婚姻のように戸籍や相続関係など、多くの人に影響する場合は、はっきりした手続きが必要になります。原則は方式不要ですが、慎重さ・証拠・第三者への影響が大きい場面では、例外的に方式が求められます。保証債務そのものの本体は債権総論の回で改めて扱います。ここでは要式行為の実例として押さえておきましょう。

似て非なるもの——準法律行為

準法律行為とは+意思の通知(催告)

  • 準法律行為とは
    • 定義:意思表示によらず法律効果が生じる行為
  • 意思の通知(催告)
    • 例:A「早く払ってください」とBに催告
    • →時効の完成猶予という効果を法律が決める
    • (Aの望みとは関係なく)

法律行為とよく似ていますが、決定的に違うものが準法律行為です。定義は「意思表示によらないで、法律上の効果を発生させる行為」。準法律行為には大きく2つあります。意思の通知観念の通知です。

意思の通知の例が、Aが「早く払ってください」とBに督促する催告です。Aが望んでいるのは「早く払ってほしい」という気持ちですが、催告に法律がくっつける効果はそれだけではありません。催告をすると、時効の完成が一時的に止まるという効果が法律上、自動的についてきます。Aは時効を止めたくて督促したわけではないのに、Aの意図とは関係なく法律がその効果を決めてしまいます。ここが、法律行為との決定的な違いです。法律行為は当事者が望んだとおりの効果が生じるのに対し、準法律行為は法律が勝手に効果を決めてしまいます。

観念の通知——債権譲渡の通知

  • 観念の通知——債権譲渡の例
  • 事実の説明(観念の通知)
    • Aが自分の持つ債権をCに譲渡
    • Aが債務者Bに「債権はCに移った」と通知
  • 法律が決めた効果
    • 譲渡をBに対抗できるようになる

もう1つの観念の通知は、ある事実を知らせる行為です。Aが自分の持つ債権をCに譲渡したことを、債務者Bに知らせる通知がこれにあたります。この通知があると、譲渡をBに対抗できるようになるという効果が法律上つきます。Bに対して「この債権はもう私のものだ」と言えるようになる、ということです。Aが通知に込めた意図は、単に「事実を伝える」ことだけです。

対比:効果を決めるのは当事者か、法律か

  • 効果を決めるのは誰か
  • 法律行為
    • A「売るよ」
    • →望んだとおりの効果(売買成立)
  • 準法律行為
    • A「早く払ってください」と催告
    • →法律が決めた効果(時効の完成猶予)

意思表示は「この効果を発生させたい」という意欲そのものが中身です。準法律行為は、事実の通知や認識の表明が中身で、効果は法律が別に用意しています。なお、準法律行為にも意思表示の規定――例えば到達主義のようなルール――が類推される余地はありますが、ここでは深入りしません。催告は無権代理の回で、債権譲渡の通知は債権譲渡の回で、承認と時効の更新は時効の回で、それぞれ改めて扱います。今日は、名前と法律行為との違いだけ押さえておけば十分です。

今日の地図(保存版)

まとめ①:法律行為の骨格

  • まとめ①:法律行為の骨格
  • ① 法律行為の意義
    • 意思表示を要素とする法律要件
  • ② 民法の文法
    • 法律要件→法律効果
  • ③ 3種類
    • 契約・単独行為・合同行為

法律行為とは、意思表示を要素とする法律要件でした。民法は、法律要件が満たされると法律効果が生じる、という文法で条文を組み立てています。単独行為には、相手方のある場合とない場合の2つの顔がありました。

まとめ②:成立要件と準法律行為

  • まとめ②:成立要件と準法律行為
  • ① 成立要件
    • 原則:諾成主義
    • 例外:要物契約・要式行為
  • ② 準法律行為
    • 意思の通知・観念の通知

契約の成立は、原則、合意だけで足りる諾成主義でした。例外的に、物の引渡しまで要る要物契約、書面などの方式まで要る要式行為がありました(要物契約は2017年の改正で使用貸借と寄託が外れ、縮小しています)。そして最後に準法律行為。意思表示によらず、法律が効果を決めてしまう点で、法律行為とは決定的に違いました。

自己テスト

自己テスト

  • 自己テスト
  • 準法律行為が法律行為と決定的に違う点は?
  • 契約に書面が要らないのは原則か例外か
    • 根拠条文も一緒に

準法律行為が、法律行為と決定的に違う点は何でしょうか?

答えを見る前に、声には出さず、自分の力で思い出してみてください。

答え合わせ

法律行為は、当事者が望んだとおりの効果が生じます。準法律行為は、当事者の意図とは関係なく、法律が効果を決めてしまいます。ここが決定的な違いです。

契約に書面が要らないのは、原則ですか、例外ですか。根拠条文も一緒に答えてください。

こちらも、声には出さず考えてみてください。

答え合わせ

書面が要らないのは原則で、根拠は522条2項です。例外は要物契約と要式行為でした。

短答ひっかけ

  • 「法律行為」を定義した条文は民法に無い。 90条・91条など随所で使われていますが、いずれも定義規定ではありません。「準法律行為」「合同行為」も同じで、どれもドイツ法学に由来する講学上の概念です。条文の中に定義を探しても見つかりません。
  • 522条2項は2017年改正で新設された明文。 改正前の民法には方式の自由を定めた条文が無く、解釈上の原則とされていました。「昔から条文にあった」と思い込まないこと。
  • 🔴 「要物契約=消費貸借・使用貸借・寄託」は古い整理。 2017年改正で使用貸借(593条)と寄託(657条)は諾成契約になりました。現行でなお要物なのは ①書面によらない消費貸借(587条)②質権設定(344条)③手付契約(557条1項) の3つです。古い教材のまま覚えていると、改正で外れた2つを要物のまま答えてしまいます。
  • 消費貸借は「書面かどうか」で分かれる。 書面でするなら諾成(587条の2第1項)、書面によらなければ要物(587条)。消費貸借をまるごと要物・まるごと諾成のどちらかに寄せると誤りです。
  • 587条の2第2項=借主は受け取る前なら解除できる。 書面で諾成契約が成立しても、実際にお金を受け取る前であれば借主から解除できます。
  • 保証は書面がないと効力を生じない(446条2項)。電磁的記録でも可(3項)。「契約は口約束で成立する」という原則の例外で、成立ではなく効力の話として条文が書かれています。
  • 準法律行為は、効果を決めるのが当事者ではなく法律。 意思の通知(催告)・観念の通知(債権譲渡の通知など)は、本人が望んだ内容ではなく法律が定めた効果が生じます。ここが法律行為との決定的な違いです。
  • 単独行為は「相手方のあるもの」と「相手方のないもの」に分かれる。 取消し・解除・追認・相殺は相手方に届く必要があり、遺言・所有権の放棄は一人で完結します。
  • 555条を引用するときは語を落とさない。 正しくは「当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約する」。とくに「相手方に」(移転の向き)と「これに対してその」(対価性=双務契約の根拠)は法的に意味のある語です。

論文の型

この回は概念を整理する回で、解釈によって規範を立てる場面はありません。ただし答案で契約の成立を論じるときの順序は決まっています。

契約が成立しているかを論じる型

  1. 申込みと承諾が合致したかを認定する(522条1項)
  2. 方式は原則として不要(522条2項)=契約書がなくても成立する
  3. 例外に当たらないかを条文番号で特定する
    • 要物契約か(書面によらない消費貸借587条/質権設定344条/手付契約557条1項)
    • 要式行為か(保証446条2項3項/遺言960条/婚姻739条 など)
  4. 成立が認められたら、次は有効かどうかの検討に移る(成立と有効は別の関門)

「成立」と「有効」を混ぜないことが、この段階で一番効く区別です。成立要件は本回、有効要件は次回以降の話になります。

次回は、法律行為が”有効”になるための関門――確定性、適法性、そして公序良俗(90条)を見ていきます。

参照条文

  • 民法522条(契約の成立と方式)
  • 民法446条(保証人の責任等)

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