民法ゼロから民法#154

金銭債権・利息・法定利率・利息制限法

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第4章 債権総論 #154/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

大地震で店が潰れても、返済の遅れに賠償は付くか

冒頭の板。カメラ店Bが改装資金として仕入先Dから百万円を借りた(利息あり・返済期日あり)。期日の前に大地震が起き店が潰れ、返済が遅れた。問い=遅れた分の遅延損害金は付くのか。 図:冒頭の板

  • カメラ店Bが改装資金として仕入先Dから百万円を借りた(利息あり・返済期日あり)
  • 期日の前に大地震が起き店が潰れ、返済が遅れた
  • 問い=遅れた分の遅延損害金は付くのか

中古カメラ店のBさんは、店の改装資金として、仕入先のDさんから百万円を借りました。利息の約束があり、返済の期日も決まっています。ところが期日の前に、大地震が起きて、店が潰れてしまいました。Bさんは期日に返せず、返済は遅れました。今日の問いは、本人のせいではない地震でも、遅れの賠償を負うのか、です。Dさんは、遅れた分の遅延損害金を、Bさんに請求できるのか。前に、物の債務は、焼けたら不能になって、責任が消える場面があると聞きました。お金も同じでは、ないんですか。そこが分かれ目です。先に答えを言うと、遅延損害金は付きます。なぜか。手がかりは1本です。お金は、世の中から無くならない。この一点から、遅延損害金も、利息も、法定利率も、通して整理します。

お金の債務には、不能が無い

対比の板。特定物=焼ければ不能/種類債権=特定までは調達義務・型番が世の中から消えなければ不能にならない/制限種類債権=範囲内が尽きれば不能/金銭債権=不能は無い(遅滞だけがある)。 図:対比の板

入る前に、前の回の確認を1問です。Cさんが、Bさんの店の倉庫にある新品の在庫の中から1台、と注文していたとします。倉庫の在庫が全部焼けたら、Bさんは、仕入先から仕入れてまで届ける義務を負うでしょうか?在庫の中から、という約束ですから、範囲の外から調達する約束はしていません。だから、履行不能になって、届ける義務は無いです。では、お金の債務ではどうか。前の回までに、特定物債権、種類債権、そして今の、在庫の中から1台、という制限種類債権を見ました。お金の債務は、この3つのどれにも当たりません。まず、金銭債権とは、金額で決まった額のお金を払わせることを内容とする債権です。貸金債権も、売買代金債権も、損害賠償の債権も、金額で決まっていれば、これに入ります。

この1枚、と決めるような約束は、特別に結ばない限り、ありません。目的は、その紙幣や硬貨ではなく、金額という価値です。だから、どの1万円札か、という特定は起きません。そしてもう1つ。世の中から、お金が無くなることは考えられません。物のように、焼けて世の中から消えるということが無い。だから、履行不能を観念しないのです。手元に今、お金が無い、という場合はどうなるんですか。それは、不能ではなく、遅れです。払えない事情があっても、債務そのものは残り、払うのが遅れた、という扱いになります。ここを混ぜないでください。なお、どの通貨で払うかは、402条1項が定めます。債務者は、特に決めていなければ、各種の通貨で払えます。403条は、外国の通貨で金額を決めたときでも、履行地の為替相場で、日本の通貨で払える、という条文です。ここは、この程度で足ります。

419条、金銭債務の3つの特則

419条の3つの特則の板。1項=賠償額は遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率(約定利率が高ければそれ)/2項=損害の証明は不要/3項=不可抗力を抗弁にできない。軸=お金は無くならない、だから払えないのは債務者の負担。 図:419条の3つの特則の板

  • 1項=賠償額は遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率(約定利率が高ければそれ)/2項=損害の証明は不要/3項=不可抗力を抗弁にできない
  • 軸=お金は無くならない、だから払えないのは債務者の負担

金銭債務には、不能が無い。その裏返しが、419条です。金銭債務の不履行に限った、3つの特則があります。

条文民法419条

民法第419条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。 2 前項の損害賠償については、債権者は、損害の証明をすることを要しない。 3 第一項の損害賠償については、債務者は、不可抗力をもって抗弁とすることができない。

1つずつ見ます。1つめ、賠償額です。遅れた分の損害は、返済が遅れた最初の時点の法定利率で計算します。ただし、契約で決めた約定利率が、それより高いなら、約定利率で計算します。賠償額は、この利率で定型化されています。ですから、実際の損害がそれより大きくても、超えた分は、原則として請求できません。詳しくは、損害賠償の回で扱います。2つめ。債権者は、損害の証明をしなくてよい。本来、賠償を求めるなら、いくら損をしたかを示す必要があります。しかし金銭債務では、実際の損害があってもなくても、この利率の額を請求できます。3つめ。ここが中心です。債務者は、不可抗力を抗弁にできません。

ふつう、債務不履行の賠償は、債務者の責めに帰することができない事由があれば、負いません。物の債務が焼けて不能になると、まず、渡せとは言えなくなります。そのうえで、債務者の落ち度なく焼けたのなら、賠償の責任も負いません。賠償を免れるのは、不能だからではなく、落ち度が無いからです。しかし金銭債務では、その抗弁が使えません。地震でも、銀行の事故でも、同じです。お金は無くならないのですから、払えないのは、払えない側が抱える負担だ、という整理です。短く覚えるなら、お金は無くならない、だから払えないのは債務者の負担、です。

具体例で当てる

関係図。DがBに百万円を貸す(利息年十パーセントの約束)。返済期日にBの返済が遅れる。法定利率は年三パーセント。 図:関係図

  • DがBに百万円を貸す(利息年十パーセントの約束)
  • 返済期日にBの返済が遅れる
  • 法定利率は年三パーセント

冒頭の設例に、3つの特則を1つずつ当てます。DさんはBさんに百万円を貸しました。利息は年十パーセントの約束です。一度、立ち止まって考えてください。Bさんの返済が遅れたとき、遅延損害金の利率は、法定利率の年三パーセントか、約定の年十パーセントか。Dさんは、これだけ損をした、と証明しなければならないか。Bさんは、大地震で店が潰れた、自分のせいではない、と言って免れるか。利率は、約定のほうが法定より高いので、年十パーセント。証明はいらなくて、地震を言っても、免れない、です。約定利率が法定利率を超えるので、1項ただし書で年十パーセント。2項で、証明は不要。3項で、不可抗力は抗弁になりません。

債務者に酷だ、という見方は分かります。ただ、この場面で守られているのは、貸したDさんの、お金を回収できるという期待です。もし、不可抗力で払えないことが抗弁になれば、貸すたびに、貸し手が災害の危険を負うことになります。そうなれば、お金は貸されにくくなります。

利息と遅延損害金は、別のもの

対比表。利息=利息の約束(利息契約)から生じる・元本を使う対価・利率は約定、無ければ404条/遅延損害金=債務不履行から生じる・遅れたことの賠償・利率は419条1項(約定が高ければ約定)。 図:対比表

ここで、混同されやすい2つを分けます。利息と、遅延損害金です。増え方は似ています。しかし、生まれる理由が違います。利息は、利息の約束から生まれます。お金を借りて使っている、その元本を使う対価です。遅延損害金は、返済が遅れたことの賠償です。債務不履行、つまり遅れたことから生まれます。だから、期日までは利息だけが付き、期日を過ぎたら、利息とは別に、遅延損害金が問題になります。利率が同じに見えることが、混同の元です。419条1項は、遅延損害金の額を決めるために、約定利率や法定利率を借りているだけです。借りているだけで、利息そのものになったわけではありません。さらに、利息の債権は、2つの段階に分けて呼びます。

基本権と支分権の板。元本百万円・年十パーセントの貸金。基本権たる利息債権=期間が経てば利息が生まれるという基本的な債権(元本債権への付従性が強い)/支分権たる利息債権=一年たって現に発生した「十万円の利息を払え」という具体的な債権(付従性が弱い)。 図:基本権と支分権の板

  • 元本百万円・年十パーセントの貸金
  • 基本権たる利息債権=期間が経てば利息が生まれるという基本的な債権(元本債権への付従性が強い)/支分権たる利息債権=一年たって現に発生した「十万円の利息を払え」という具体的な債権(付従性が弱い)

元本の債権から生まれる、利息の債権です。基本権たる利息債権と、支分権たる利息債権に分かれます。百万円を、年十パーセントで貸したとします。この貸金には、期間が経てば、利息が生まれる、という基本的な債権が付いています。これが基本権です。元本の債権との結び付きが強く、元本があってこその債権です。そして、1年たつと、十万円の利息を払え、という具体的な債権が、現に生まれます。これが支分権です。基本権から枝分かれした、個別の債権で、元本との結び付きは弱くなります。分けて呼ぶのは、元本と一緒に動くかどうかが違うからです。基本権は、元本の債権が消えれば一緒に消え、元本の債権が譲り渡されれば一緒に移ります。一方、すでに生まれた十万円の支分権は、元本から独り立ちしています。それだけを別に譲り渡せますし、時効も、1回分ごとに、それぞれの弁済期から数えます。あとで見る重利で、元本に組み入れるのも、この生まれた1回分の利息です。

法定利率、3年ごとに見直す変動制

404条の板。利息の利率=約束があればそれ、無ければ利息が生じた最初の時点の法定利率(1項)/出発点は年3%(2項)/3年を1期とし期ごとに見直す(3項)。 図:404条の板

利息の利率は、約束で決められます。では、約束が無かったら。ここで出てくるのが、法定利率、404条です。

条文民法404条

民法 第404条第1項〜第3項(法定利率) 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、その利息が生じた最初の時点における法定利率による。 2 法定利率は、年三パーセントとする。 3 前項の規定にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、三年を一期とし、一期ごとに、次項の規定により変動するものとする。

2017年の改正で、法定利率は、固定から変動制になりました。以前は、年五パーセントで固定で、商売の取引、つまり商行為から生じた債務は、年六パーセントでした。今は、民法の法定利率に一本化されています。商売の取引だけ高い、ということは、ありません。なぜ変えたのか。固定の年五パーセントは、世の中の金利が下がっても動かず、実際の相場と大きく離れていました。そこで、世の中の金利に合わせて動く仕組みにしたのです。ここで押さえるのは、数字ではなく、仕組みです。出発点は年三パーセント。3年を1期とします。そして、期ごとに、見直しが入ります。

3年ごとに、毎回、利率が変わるんですか。違います。ここが大事です。見直しをしても、たいてい動きません。見直しの物差しは、4項と5項に書いてあります。

条文民法404条

民法 第404条第4項・第5項(法定利率の変動) 4 各期における法定利率は、この項の規定により法定利率に変動があった期のうち直近のもの(以下この項において「直近変動期」という。)における基準割合と当期における基準割合との差に相当する割合(その割合に一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。 5 前項に規定する「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の六年前の年の一月から前々年の十二月までの各月における短期貸付けの平均利率(当該各月において銀行が新たに行った貸付け(貸付期間が一年未満のものに限る。)に係る利率の平均をいう。)の合計を六十で除して計算した割合(その割合に〇・一パーセント未満の端数があるときは、これを切り捨てる。)として法務大臣が告示するものをいう。

見直しの流れの板。①基準割合(過去五年分の短期貸付けの平均利率の平均を法務大臣が告示)→②直近に変動があった期の基準割合と当期の基準割合の差を出す→③差が1%以上のときだけ、その差(1%未満は切り捨て)を法定利率に加減→1%未満なら法定利率は変わらない。例=第1期の基準割合0.7%・次の期1.9%なら差1.2%→1%→年4%/次の期1.2%なら差0.5%→年3%のまま。 図:見直しの流れの板

  • ①基準割合(過去五年分の短期貸付けの平均利率の平均を法務大臣が告示)→②直近に変動があった期の基準割合と当期の基準割合の差を出す→③差が1%以上のときだけ、その差(1%未満は切り捨て)を法定利率に加減→1%未満なら法定利率は変わらない
  • 例=第1期の基準割合0.7%・次の期1.9%なら差1.2%→1%→年4%/次の期1.2%なら差0.5%→年3%のまま

見直しの流れです。まず、基準割合というものが、期ごとに、法務大臣から告示されます。これは、過去5年分ほどの、銀行の短期の貸付けの平均利率を、平均したものです。次に、直近に法定利率が変わった期の基準割合と、今の期の基準割合を比べて、差を出します。差が一パーセント以上のときだけ、その差、一パーセント未満は切り捨てて、法定利率に足すか、引くかします。差が一パーセントに届かなければ、法定利率は、そのままです。たとえば、最初の期の基準割合が、〇・七パーセントだったとします。次の期の基準割合が、一・九パーセントなら、差は一・二パーセントです。一パーセント未満を切り捨てて、一パーセント。法定利率は、年三パーセントから、年四パーセントになります。次の期の基準割合が一・二パーセントなら、差は〇・五パーセントです。一パーセントに届かないので、法定利率は、年三パーセントのままです。

現在の法定利率の板。第1期(令和2年4月1日から令和5年3月31日)基準割合0.7%/第2期(令和5年4月1日から令和8年3月31日)0.5%/第3期(令和8年4月1日から令和11年3月31日)0.4%。いずれも第1期からの変動が1%未満のため法定利率は年3%。第3期の基準割合=令和7年法務省告示第73号。次の見直しは令和11年4月1日以降。出典=法務省民事局「令和8年4月1日以降の法定利率について」。 図:現在の法定利率の板

  • 第1期(令和2年4月1日から令和5年3月31日)基準割合0.7%/第2期(令和5年4月1日から令和8年3月31日)0.5%/第3期(令和8年4月1日から令和11年3月31日)0.4%
  • いずれも第1期からの変動が1%未満のため法定利率は年3%
  • 第3期の基準割合=令和7年法務省告示第73号
  • 次の見直しは令和11年4月1日以降
  • 出典=法務省民事局「令和8年4月1日以降の法定利率について」

動くのは、基準割合が、比べる相手から一パーセント以上、離れたときだけなんです。実際の値です。最初の期の基準割合は〇・七パーセント。次の期は〇・五パーセント。今の期は〇・四パーセントです。どの期も、最初の期からの変動が一パーセント未満です。だから、法定利率は、年三パーセントのまま。数字を暗記するより、なぜ動いていないのか、を言えるようにしてください。次の見直しでは、値が変わることもありえます。

固定の板。利息が生じた最初の時点の法定利率で固定=あとで法定利率が上がっても下がっても、その貸金の利率は変わらない。例=2027年に利息が生じ始め法定利率が3%なら、その後の期で4%に上がってもこの貸金は3%のまま。 図:固定の板

  • 利息が生じた最初の時点の法定利率で固定=あとで法定利率が上がっても下がっても、その貸金の利率は変わらない
  • 例=2027年に利息が生じ始め法定利率が3%なら、その後の期で4%に上がってもこの貸金は3%のまま

すでに貸したお金の利率は、途中で法定利率が上がっても、上がりません。404条1項を、もう一度見てください。その利率は、利息が生じた最初の時点における法定利率による、とあります。一度決まった利率は、その後の見直しで、動かない。たとえば、ある貸金で、利息が生じ始めた時の法定利率が年三パーセントなら、あとの期で法定利率が年四パーセントに上がっても、この貸金の利率は、年三パーセントのままです。

基準時の比較板。利息(404条1項)=利息が生じた最初の時点の法定利率/遅延損害金(419条1項)=遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率。基準になる時点が別。適用場面=利息の利率の定めが無いとき/金銭債務の遅延損害金。 図:基準時の比較板

  • 利息(404条1項)=利息が生じた最初の時点の法定利率/遅延損害金(419条1項)=遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率
  • 基準になる時点が別
  • 適用場面=利息の利率の定めが無いとき/金銭債務の遅延損害金

そして、419条との違いです。利息の法定利率の基準は、利息が生じた最初の時点。遅延損害金の法定利率の基準は、遅滞の責任を負った最初の時点です。利息は利息が生じた時点、遅延損害金は遅れが始まった時点、つまり、Bさんのように返済の期日が決まっていれば、その期日が来た時から、です。たとえば、利息は付けるが、利率は決めていない貸金で、利息が生じ始めた時の法定利率が年三パーセント、その後の見直しで年四パーセントに上がった期に、返済が遅れたとします。期日までの利息は年三パーセント、遅れてからの遅延損害金は年四パーセントです。ここで、答案の数字が変わります。なお、損害賠償の額から、将来の利益に対する利息を引く場面でも、法定利率が使われます。これは、損害賠償の回で扱います。

重利、利息を元本に組み入れる

重利の流れの板。元本200万円・年10%→利息1年分20万円を払わない→Dが催告してもなお払わない→20万円を元本に組入れ→元本220万円→以後の利息は年22万円。単利=元本にだけ利息が付く/重利=利息にも利息が付く。 図:重利の流れの板

  • 元本200万円・年10%→利息1年分20万円を払わない→Dが催告してもなお払わない→20万円を元本に組入れ→元本220万円→以後の利息は年22万円
  • 単利=元本にだけ利息が付く/重利=利息にも利息が付く

次は、利息が利息を生む、重利です。まず、単利と重利の違いから、合意が無ければ、利息は単利です。元本にだけ、利息が付きます。ここに、利息を元本へ組み入れて、その全体に利息を付ける、という計算を加えると、利息が利息を生みます。これが重利です。利息が利息を生むのは、借り手に重い負担になります。だから、条文が、条件を絞っています。当事者が、あらかじめ合意する約定重利と、条文で認められる法定重利があります。法定重利が、405条です。

条文民法405条

民法第405条 利息の支払が一年分以上延滞した場合において、債権者が催告をしても、債務者がその利息を支払わないときは、債権者は、これを元本に組み入れることができる。

条文どおり、3つの要件です。まず1つめ。利息の支払が、一年分以上、延滞している。2つめ、債権者が催告をした。3つめ、それでも債務者が払わない。この3つが、そろえば、債権者が一方的に、元本に組み入れられます。なぜ、こんな組入れを認めるのか。利息を長く払ってもらえず、その利息に利息も付けられないとすると、貸し手は受け取るはずのお金を使えないまま、損をします。延滞された貸し手を守るための条文です。数字で見ます。BさんがDさんから二百万円を借り、利息は年十パーセント。Bさんは、1年分の利息二十万円を払わず、Dさんが催告をしても、なお払いません。Dさんは、この二十万円を元本に組み入れます。以後は、二百二十万円に利息が付き、1年で二十二万円です。

405条の条文を読めば出てくる要件です。次の問いです。この重利は、遅延損害金にも及ぶのか。

405条が遅延損害金に及ぶかの板。貸金債務の履行遅滞の遅延損害金=及ぶ(405条の趣旨が当てはまる)/不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金=及ばない(債務額が定かでないことが多く払わなくても一概に責められない/不法行為の時から催告なしに遅延損害金が発生するので組入れで債権者を保護する必要が乏しい)。 図:405条が遅延損害金に及ぶかの板

貸金の返済が遅れて生じた遅延損害金には、及びます。古くからの判例です。延滞された貸し手を守る、という405条の趣旨が、そのまま当てはまるからです。一方、不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金には、及びません。

判例最判令4・1・18 民集76巻1号1頁

不法行為の損害賠償債務の遅延損害金は、元本に組み入れられない 不法行為に基づく損害賠償債務の遅延損害金は,民法405条の適用又は類推適用により元本に組み入れることはできないと解するのが相当である。

決め手は2つです。不法行為の賠償は、債務の額が定かでないことが多く、払わなくても、一概に責められません。しかも、不法行為の時から、催告を待たずに遅延損害金が発生します。だから、組入れで債権者を守る必要が乏しいのです。貸金は、額が決まっていて、払うべきものを払わない、という遅れです。ここが、境界です。もう1点。利息の支払そのものが遅れたときは、419条の遅延損害金ではなく、405条の要件をそろえたときだけ、利息が利息を生みます。419条を当てはめると、利息が利息を生むことが当然になり、405条の要件が意味を失うからです。

利息制限法、上限と超過部分

利息制限法の上限の板。元本10万円未満=年2割/10万円以上100万円未満=年1割8分/100万円以上=年1割5分。超過部分だけが無効(契約全体は無効にならない)。趣旨=高利貸しから弱い立場の債務者を守る特別法・契約自由の例外(強行規定)。 図:利息制限法の上限の板

  • 元本10万円未満=年2割/10万円以上100万円未満=年1割8分/100万円以上=年1割5分
  • 超過部分だけが無効(契約全体は無効にならない)
  • 趣旨=高利貸しから弱い立場の債務者を守る特別法・契約自由の例外(強行規定)

最後の山です。約定利率は自由に決められるのか。利息制限法が、上限を掛けています。高い利息で、弱い立場の債務者が苦しむのを防ぐ、契約自由の例外です。

条文利息制限法1条

利息制限法第1条 金銭を目的とする消費貸借における利息の契約は、その利息が次の各号に掲げる場合に応じ当該各号に定める利率により計算した金額を超えるときは、その超過部分について、無効とする。 一 元本の額が十万円未満の場合 年二割 二 元本の額が十万円以上百万円未満の場合 年一割八分 三 元本の額が百万円以上の場合 年一割五分

上限は、元本の額で、3段階です。十万円未満は年二割。十万円以上、百万円未満は、年一割八分。百万円以上は、年一割五分です。大事なのは、超過部分だけが、無効という点です。約束の全体が、無効になるのではありません。上限を超えた分だけが、無かったことになります。

4条の板。賠償額の予定=金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行の賠償額の予定は、賠償額の元本に対する割合が上限利率の1.46倍を超えるとき、その超過部分は無効(4条1項)/違約金は賠償額の予定とみなす(4条2項)。出典=最大判昭43・7・17 民集22巻7号1505頁。例=元本100万円なら上限は年1割5分×1.46=年2割1分9厘。遅延損害金の整理=賠償額の予定があるとき→1.46倍/予定が無く利息の約定だけのとき→約定利率で算定するが、約定利率が上限を超えていれば上限の利率まで減縮される。 図:4条の板

  • 賠償額の予定=金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行の賠償額の予定は、賠償額の元本に対する割合が上限利率の1.46倍を超えるとき、その超過部分は無効(4条1項)/違約金は賠償額の予定とみなす(4条2項)
  • 出典=最大判昭43・7・17 民集22巻7号1505頁
  • 例=元本100万円なら上限は年1割5分×1.46=年2割1分9厘
  • 遅延損害金の整理=賠償額の予定があるとき→1.46倍/予定が無く利息の約定だけのとき→約定利率で算定するが、約定利率が上限を超えていれば上限の利率まで減縮される

遅延損害金の上限も、押さえます。賠償額の予定、つまり、遅れたらいくら払う、と前もって決めておく約束には、4条が、別の上限を置いています。上限利率の一・四六倍を超える部分は、無効です。たとえば、元本が百万円なら、上限は年一割五分の一・四六倍で、年二割一分九厘です。違約金も、賠償額の予定とみなされます。賠償額の予定そのものは、別の回で扱います。

条文利息制限法4条

利息制限法第4条 金銭を目的とする消費貸借上の債務の不履行による賠償額の予定は、その賠償額の元本に対する割合が第一条に規定する率の一・四六倍を超えるときは、その超過部分について、無効とする。 2 前項の規定の適用については、違約金は、賠償額の予定とみなす。

賠償額の予定が無く、利息の約定だけがあるときは、419条1項ただし書で、約定利率で、遅延損害金を計算します。ただし、その約定利率が、利息制限法の上限を超えているなら、遅延損害金の利率も、上限まで下げられます。上限を超えた部分の約定利率は無効なので、419条が借りてこられるのも、有効に残った上限までの利率だけだからです。これが、最高裁の大法廷判決の考え方です。では、上限を超える利息を、債務者が実際に払ってしまったら、どうなるのか。ここが、試験で聞かれる山です。

充当の設例板。BがDから50万円を年30%で借り毎月払い続けた。上限(年1割8分)を超える部分=無効→払っても弁済の効力が生じない→残っている元本の返済に充当(民法489条=判決当時の491条)→いずれ元本は完済→なお払い続けた分は不当利得として返還請求できる(過払金)。 図:充当の設例板

  • BがDから50万円を年30%で借り毎月払い続けた
  • 上限(年1割8分)を超える部分=無効→払っても弁済の効力が生じない→残っている元本の返済に充当(民法489条=判決当時の491条)→いずれ元本は完済→なお払い続けた分は不当利得として返還請求できる(過払金)

設例です。BさんがDさんから、五十万円を、年三十パーセントで借りました。上限は、十万円以上百万円未満なので、年一割八分です。Bさんは、この年三十パーセントを、毎月、払い続けました。

判例最大判昭39・11・18 民集18巻9号1868頁

制限超過の利息・損害金を任意に払ったときは、残っている元本に充当される 債務者が、利息制限法(以下本法と略称する)所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息、損害金を任意に支払つたときは、右制限をこえる部分は民法四九一条により残存元本に充当されるものと解するを相当とする。

制限を超えた分は、無効なんですよね。無効なら、払っても意味が無い、ということですか。そこがつまずきどころです。超過部分の債務は、無効ですから、存在しません。存在しない債務への払いは、弁済の効力を生じません。払う側が、これは利息に充てる払いです、と指定しても、その指定に意味はありません。では、払ったお金は、どこへ行くのか。この貸金で、有効に残っている債務は、上限までの利息と、元本です。Bさんの設例なら、上限の年一割八分までの利息は、毎月払った中の、上限までの部分で、もう払い終えています。だから、超えた分の払いは、有効に残っている元本の返済に回ります。これが、元本への充当です。この判決は、民法491条を根拠にしました。これは平成29年改正前の条番号で、今の条文では489条です。元本、利息、費用を払うべき場合に、足りない払いは費用、利息、元本の順に充てる、という規定です。弁済の充当の細かい規則は、別の回で扱います。無効な請求書に払ったつもりでも、その分が、貸金の残高を減らす払いに、化けるわけです。

判例最大判昭43・11・13 民集22巻12号2526頁

元本が完済となった後に支払った分は、不当利得として返還を請求できる 債務者が利息制限法所定の制限をこえて任意に利息・損害金の支払を継続し、その制限超過部分を元本に充当すると、計算上元本が完済となつたとき、その後に支払われた金額は、債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに外ならないから、この場合には、右利息制限法の法条の適用はなく、民法の規定するところにより、不当利得の返還を請求することができるものと解するのが相当である。

完済のあとは、債務そのものが、無くなっています。無いのを知らずに払った分は、不当利得として、返してもらえます。これが、いわゆる過払金の返還です。Bさんの設例なら、五十万円の元本が、超過分の充当で、いずれ計算上ゼロになります。それでも払い続けた分は、Dさんの不当な利得として、返還を請求できます。最後に、現行法の前提です。かつては、任意に払った超過分は、返還請求できない、という規定が、利息制限法にありました。今は、その規定は削除されています。貸金業法の、超過利息を有効な弁済とみなす制度も、廃止されました。だから、今は、上限を超えた利息は無効、払った分は元本に充当、完済後は返還、という結論が、そのまま現行の扱いです。消費貸借そのものの詳しい話は、別の章で扱います。

冒頭の答えと、今日の地図

まとめの板。金銭債務=不能なし(遅滞だけ)/419条=賠償額は法定利率か約定利率の高いほう・損害の証明不要・不可抗力の抗弁不可/利息=元本使用の対価≠遅延損害金=遅れの賠償/法定利率=年3%・3年1期・基準割合の差が1%以上のときだけ変動・利息が生じた最初の時点で固定(遅延損害金は遅滞の責任を負った最初の時点)/重利=1年分以上延滞・催告・組入れ(貸金の遅延損害金には及ぶ・不法行為には及ばない)/利息制限法=3段階の上限・超過部分は無効・元本充当・完済後は過払金返還。 図:まとめの板

冒頭の問いに、答えます。Bさんの返済が、地震のせいで遅れても、Dさんの遅延損害金は付きます。理由は2つです。お金の債務には、不能が無く、払えないのは遅れです。そして、419条3項で、不可抗力を抗弁にできません。賠償額は、法定利率か、約定利率の高いほうです。ただし、利息制限法の上限の範囲で、です。Dさんは、損害の証明も要りません。整理します。利息は、元本を使う対価。遅延損害金は、遅れの賠償。法定利率は、年三パーセントから始まり、3年ごとに見直され、動くのは、基準割合の差が一パーセント以上のときだけです。利息の利率は、利息が生じた最初の時点で、固定されます。重利は、1年分以上の延滞、催告、なお不払、の3つで組入れができ、貸金の遅延損害金には及びますが、不法行為の賠償債務の遅延損害金には及びません。利息制限法は、超過部分だけが無効で、払った分は元本に充当され、完済後は返してもらえます。論文では、金銭債務では不可抗力で免責されないこと、利息制限法の超過分の充当と過払金の返還が、論点になりえます。

参照条文

  • 民法419条
  • 民法404条
  • 民法405条
  • 利息制限法1条
  • 利息制限法4条

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