離婚と子①親権者の定め・監護者・親子交流
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第7章 親族 #326/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
8歳の子がいる夫婦の離婚 親権者はどちらか
図:冒頭の設例
- A(父・42歳・会社員)とB(母・40歳・パート)は離婚することになった
- 二人の子C(長男・8歳・小学2年生)は今、Bと暮らしている
- A→C・B→C=親子の関係は離婚で切れない
- 問い=親権者はAとBのどちらか
- 二人ともなれるのか
離婚しても、Cくんの親であることは変わりません。今日は、離婚のときに、子について何を決めるのかを見ます。問いは3つです。1つめ、親権者は誰か。2つめ、Cくんは誰と暮らすのか。3つめ、Aさんは離婚後もCくんに会えるのか。先に1つだけ答えます。条文の上では、二人とも親権者になる道が開いています。ただし、条件があります。その条件は、今日の山場で確かめます。まずは地図を見ましょう。
図:今日の地図
- 離婚の効果の3分類=身分上の効果/財産上の効果/親子関係上の効果(今日の前半=誰が子を育てるか)
- 今日の3つの問い=親権者は誰か/誰と暮らすか(監護)/離れた親と会えるか(交流)
- 別の回で扱う欄=お金のこと・子の氏
離婚の効果は、3つに分けて整理しました。身分上の効果、財産上の効果、そして親子関係上の効果です。今日は、その最後の、親子関係上の効果の前半です。誰が子を育てるのかを見ます。お金のことと、子の氏は、別の回で扱います。貫く軸は1本です。離婚で終わるのは、夫婦の関係だけです。親子の関係は続きます。だから離婚のときは、子のために何を決めるかが問題になります。決められなければ、裁判所が補います。
離婚しても親の責任は続く 817条の12
図:親の責務(817条の12)
- 1項=子の人格を尊重し、年齢と発達の程度に配慮して養育する
- その子が自己と同程度の生活を維持できるよう扶養する。2項=婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使と義務の履行で、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力する。
今日の全部の土台になる条文があります。817条の12です。
条文民法817条の12
民法第817条の12 (親の責務等) 父母は、子の心身の健全な発達を図るため、その子の人格を尊重するとともに、その子の年齢及び発達の程度に配慮してその子を養育しなければならず、かつ、その子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならない。 2 父母は、婚姻関係の有無にかかわらず、子に関する権利の行使又は義務の履行に関し、その子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならない。
1項です。父母は、子の人格を尊重し、年齢と発達の程度に配慮して、子を養育しなければなりません。さらに、その子が自己と同程度の生活を維持できるよう、扶養しなければなりません。2項です。婚姻関係の有無にかかわらず、父母は、子に関する権利の行使と義務の履行で、互いに人格を尊重し、協力しなければなりません。たとえば、Cくんの進学や病気のように、子に関することは、離婚したあとも、二人で向き合う場面が出てきます。扶養の義務の本体と、養育費は、別の回で扱います。前に、有責配偶者からの離婚請求を見ました。そこでも、経済的に自立して生活することを、まだ期待できない子、つまり未成熟の子がいるかどうかが見られました。離婚の場面では、子の利益が、いつも物差しに入ります。以下の話は、すべてこの土台の上にあります。
親権者は離婚の種類で決め方が違う 819条1項・2項・5項
図:親権者とは
- 親権=子の監護・教育(820条)+子の財産の管理と代表(824条)
- 婚姻中は父母の双方が親権者(818条2項)
- 離婚するとき、誰が親権者を決めるかが離婚の種類で分かれる
親権者という言葉から確かめます。親権者とは、子の監護と教育をして、子の財産を管理し、子を代表する、権利と義務を持つ人です。子を手元で世話して、育てることです。食事をさせる、学校に通わせる、住む場所を決める、といった日々の世話を指します。結婚している間は、父母の双方が親権者です。818条2項です。Aさん、Bさんも、今は二人とも親権者です。離婚すると、ここが変わります。離婚の種類によって、誰が親権者を決めるかが分かれます。
図:親権者の決まり方(離婚の種類×決める人)
- 協議離婚=父母が協議で、双方又は一方を定める(1項)
- 裁判離婚=裁判所が、父母の双方又は一方を定める(2項)
- 協議が調わない・できない=家庭裁判所が父又は母の請求で協議に代わる審判(5項)。脇=双方も可・ただし7項で必ず一方になる場合がある。
条文民法819条1項・2項
民法第819条(離婚又は認知の場合の親権者)第1項・第2項 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その双方又は一方を親権者と定める。 2 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
協議離婚は、1項です。父母が協議で、その双方又は一方を親権者と定めます。裁判離婚は、2項です。裁判所が、父母の双方又は一方を親権者と定めます。
条文民法819条5項
民法第819条(離婚又は認知の場合の親権者)第5項 5 第一項、第三項又は前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。
協議離婚で、話し合いがまとまらないときは、どうなりますか。5項です。協議が調わないとき、又は協議ができないときは、家庭裁判所が、父又は母の請求によって、協議に代わる審判をします。この審判は、親権者を決めるための審判です。前に見た審判離婚、つまり調停に代わる審判は、離婚そのものを成立させるもので、別のものです。整理します。決める人は、協議離婚なら父母です。調わなければ家庭裁判所です。裁判離婚なら裁判所です。調停離婚と審判離婚では、調停や審判の中で、親権者が定められます。そして、どの場合も、条文の言葉は、双方又は一方です。双方も、一方も、選べるように書いてあります。ここは、知識を更新する場所です。2026年3月までは、離婚後は必ず、父母のどちらか一方でした。4月から、819条は、双方又は一方です。ほかに3項があります。子の出生前に離婚したときは、親権は母が行います。出生のときに子を手元で育てているのは、通常は母だと考えられるからです。出生後に、父母の協議で、双方又は父と定めることもできます。認知した子の4項は、別の回で扱います。
山場 双方か一方か 7項の物差し
図:合意か裁判所か
問いです。双方を親権者にできる、が答えなら、どんな場合でも、双方にしてよいのでしょうか?子のためになるなら、二人ともでいい気がしますが、何か例外がありそうです。例外があります。それが7項です。ただし、7項が働く場面は限られます。AさんとBさんが話し合って、二人とも親権者にすると合意したとします。この場合、7項の判断は働きません。7項は、裁判所が判断する場面の物差しだからです。裁判離婚の2項と、協議に代わる審判の5項と、親権者をあとから変える6項の裁判です。親権者は、まず父母が話し合って決めるのが基本です。裁判所は、決められないときに補う役なので、合意があれば、7項の判断には入りません。ただ、暴力のせいで話し合い自体ができなければ、5項の審判になり、7項が働きます。また、暴力をおそれて言わされた合意なら、受け皿があります。家庭裁判所が、合意までの経過を見て、親権者を変えられます。その変更の裁判でも、7項が働きます。
図:7項の物差し
- 考慮するもの=子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情
- 必ず一方にするとき=双方にすると子の利益を害すると認められるとき
- 1号=父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがある/2号=暴力等を受けるおそれの有無、協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難
条文民法819条7項
民法第819条(離婚又は認知の場合の親権者)第7項 7 裁判所は、第二項又は前二項の裁判において、父母の双方を親権者と定めるかその一方を親権者と定めるかを判断するに当たっては、子の利益のため、父母と子との関係、父と母との関係その他一切の事情を考慮しなければならない。この場合において、次の各号のいずれかに該当するときその他の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、父母の一方を親権者と定めなければならない。 一 父又は母が子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるとき。 二 父母の一方が他の一方から身体に対する暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動(次項において「暴力等」という。)を受けるおそれの有無、第一項、第三項又は第四項の協議が調わない理由その他の事情を考慮して、父母が共同して親権を行うことが困難であると認められるとき。
前半です。裁判所は、双方か一方かを判断するときに、子の利益のため、一切の事情を考慮しなければなりません。一切の事情の中身として、条文は、父母と子との関係と、父と母との関係を挙げています。後半が、必ず一方になる場合です。双方にすると子の利益を害すると認められるときは、一方に定めなければなりません。例として、2つの号があります。1号は、父又は母が、子の心身に害悪を及ぼすおそれがあると認められるときです。そういう親を親権者に加えることは、子の利益を害します。2号は、父母の一方が、他の一方から暴力等を受けるおそれがあるなど、父母が共同して親権を行うことが困難なときです。設例で比べます。AさんがBさんに、日常的に暴力を振るってきました。裁判所は、二人を親権者にできるでしょうか?
暴力のおそれがあるので、できないと思います。2号に当たるので、必ず一方です。では、暴力などはなくて、教育の方針で折り合いがつかず、話し合いがまとまらなかっただけだとします。これはどうでしょう。協議が調わなかっただけでは、必ず一方にはなりません。2号が考慮に入れるのは、協議が調わない理由です。調わなかった事実そのものではありません。理由に、暴力等のおそれや、話し合い自体ができない事情があれば、共同して親権を行うのが困難と認められやすくなります。ただの意見の食い違いなら、ほかの事情と合わせて判断します。
なぜ、暴力のおそれがあると、必ず一方なのですか。親権者が二人いれば、子のことを二人で関わって決める場面が出てくるからです。暴力のおそれがある相手と、対等に向き合わせることも、害のおそれのある親に関わらせることも、子の利益に反します。冒頭の問いに戻ります。AさんとBさんは、二人とも親権者になれます。ただし、裁判所が決める場面で、双方にすると子の利益を害するときは、必ず一方です。ここは、論文で論点になりうる箇所です。双方か一方かを、7項の文言に沿って説明できるようにしてください。双方を親権者にしたときに、親権をどう行うかは、別の回で扱います。
親権者の変更は家庭裁判所だけ 819条6項・8項
図:親権者の変更
- 協議だけでは変えられない
- 家庭裁判所が、子の利益のため必要があると認めるとき、子又はその親族の請求によって変更できる(6項)
- 8項=協議で定めた親権者を変更するかの判断では、協議の経過・その後の事情の変更その他の事情を考慮(暴力等の有無・調停や裁判外紛争解決手続の利用の有無・公正証書の作成の有無も勘案)
親権者を決めたあとで、事情が変わることもあります。親権者の変更です。
条文民法819条6項
民法第819条(離婚又は認知の場合の親権者)第6項 6 子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、子又はその親族の請求によって、親権者を変更することができる。
6項です。子の利益のため必要があると認めるときに、家庭裁判所が、子又はその親族の請求によって、変更できます。押さえる点は2つです。1つめ、変更は、必ず家庭裁判所です。2つめ、請求できるのは、子又はその親族です。子自身も、請求できます。父母だけで変えることは、できません。父母の協議だけでは、変更できません。親権者が誰かは、子の生活を左右します。親の都合だけで動かさず、子の利益のために必要かを、家庭裁判所が確かめる仕組みです。たとえば、親権者のBさんが、長く入院して、Cくんを育てられなくなったとします。Aさんは、親族として、変更を請求できます。親権者でない親も、血のつながった親族です。請求できる人に入ります。もう1つ、8項です。父母の協議で定めた親権者を変更するかどうかは、協議の経過を考慮して判断します。経過を見るときは、暴力等の有無や、調停の利用、公正証書の作成なども勘案します。不適正な合意に対応するための定めです。公正証書とは、公証人が作る公の書類です。たとえば、Aさんの暴力をおそれたBさんが、言われるままに、Aさんを親権者とする合意をしていたとします。こうした協議の経過が、変更するかどうかの判断で考慮されます。
離婚届を出せる条件 765条
図:離婚の届出の受理(765条)
- 夫婦間に成年に達しない子がある場合、次のいずれかを認めた後でなければ受理できない。1号=親権者の定めがされている
- 2号=親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされている。要件でないもの=監護者・親子交流・養育費の取決め。2項=違反して受理されても離婚の効力は妨げられない。
次は、離婚届です。前に、役所が離婚の届出を受け取るとき、確かめる範囲を見ました。思い出してください。役所が確かめるのは、どんな範囲だったでしょうか?記載事項や必要な書類が、そろっているかという範囲でした。そして、子がいる夫婦の届出には、もう1つ要件があります。
条文民法765条
民法第765条(離婚の届出の受理) 離婚の届出は、その離婚が前条において準用する第七百三十九条第二項の規定その他の法令の規定に違反しないこと及び夫婦間に成年に達しない子がある場合には次の各号のいずれかに該当することを認めた後でなければ、受理することができない。 一 親権者の定めがされていること。 二 親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること。 2 離婚の届出が前項の規定に違反して受理されたときであっても、離婚は、そのためにその効力を妨げられない。
夫婦間に、成年に達しない子がある場合です。次のどちらかを認めた後でなければ、受理できません。1号、親権者の定めがされていること。2号、親権者の指定を求める家事審判又は家事調停の申立てがされていること。問いです。親権者の話し合いがまとまらないまま、離婚届は出せるでしょうか?出せます。親権者の指定を求める調停か審判の申立てをしていれば、2号に当たって、受理されます。なぜ、2号があるのですか。親権者の争いが長引くと、離婚そのものが進まなくなるからです。先に離婚を成立させて、親権者は家庭裁判所に決めてもらえるようにしてあります。境界の例を並べます。親権者の記載がなく、調停や審判の申立てもない届出は、受理されません。親権者は記載したけれど、監護者と親子交流の取決めがない届出は、受理されます。この2つは、要件ではないからです。2項もあります。要件に違反して受理されても、離婚は有効です。前に見たとおりです。受理の要件は、役所が届出を受け取るときに確かめる範囲で、離婚が成立するための要件ではないからです。
親権者と監護者は分けられる 766条
図:親権者と監護者の分離
- A(父=親権者・子の財産の管理と代表)、B(母=監護者・Cと同居して世話をする)、C(子)
- A→C=財産の管理・代表(824条)/B→C=日々の監護・教育・居所(824条の3)
- 脚注=766条4項「監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない」
次の問いです。Cくんは、離婚後、誰と暮らすのか。親権者とは別の話なのか。親権は、子の監護と教育、そして財産の管理と代表を含みます。親権者が一人なら、その人が全部を担います。ところが、766条は、離婚のとき、監護だけを別に定められるようにしています。
条文民法766条
民法第766条(離婚後の子の監護に関する事項の定め等) 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者又は子の監護の分掌、父又は母と子との交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。 2 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、同項の事項を定める。 3 家庭裁判所は、必要があると認めるときは、前二項の規定による定めを変更し、その他子の監護について相当な処分を命ずることができる。 4 前三項の規定によっては、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない。
1項です。離婚のとき、子の監護をすべき者、つまり監護者を、協議で定められます。子の監護の分掌も定められます。分掌とは、分担することです。たとえば、平日はBさんが世話をして、休日はAさんが世話をする、という分け方です。教育のことは一方に委ねて、ほかは話し合う、という分け方もあります。協議が調わなければ、2項で、家庭裁判所が定めます。3項は変更です。設例で見ます。親権者はAさん、監護者はBさんと定めたとします。Cくんと同居して、毎日の世話をするのは、監護者のBさんです。一方、Cくんの財産を管理したり、Cくんを代表して契約をしたりするのは、親権者のAさんのままです。4項の、監護の範囲外では、父母の権利義務に変更を生じない、という定めの帰結です。
監護者の権限は、子の監護の範囲に限られます。逆に、AさんもBさんも親権者のままで、Bさんだけを監護者にすることもできます。この場合、Bさんは、Cくんの監護と教育、居所の指定などを、単独でできます。824条の3です。中身は、別の回で扱います。一例として、二人とも親権を手放したくないとき、親権者は二人のままにして、日々の世話はBさん、と折り合いをつけることがあります。裁判離婚の場合は、771条が766条を準用します。裁判所が、同じ事項を定めます。ここで、1つ大事な判断があります。誰が、監護者を定める審判を申し立てられるのか、という問いです。
図:事案
- 決定文の範囲
- 子の祖母が、孫の母とその再婚相手を相手方として、孫の監護をすべき者を定める審判を申し立てた。母は孫を祖母宅に残して家を出て、以後、祖母が単独で監護していた。原審は祖母を監護者に指定。最高裁は原決定を破棄し、申立てを却下した。
事案です。ある子の祖母が、孫の監護をすべき者を定める審判を申し立てました。母は、孫を祖母の家に残して家を出ていて、その後は、祖母が一人で孫を育ててきました。原審は、祖母を監護者に指定しました。最高裁は、その決定を破棄して、申立てを却下しました。
判例最決令3・3・29 民集75巻3号952頁
祖母は、孫の監護者を定めるよう申し立てられない したがって,父母以外の第三者は,事実上子を監護してきた者であっても,家庭裁判所に対し,子の監護に関する処分として子の監護をすべき者を定める審判を申し立てることはできないと解するのが相当である。
結論です。父母以外の第三者は、事実上子を監護してきた者であっても、監護者を定める審判を申し立てることはできません。決定は、理由を挙げています。まず、766条2項は、1項の協議の主体である父母の申立てにより、家庭裁判所が定めることを予定している、と述べます。次に、事実上子を監護してきた第三者が申し立てられる旨の規定はなく、監護の事実をもって父母と同視することもできない、と述べます。さらに、子の利益を最も優先して考慮するという766条1項後段は、第三者に申立てを許容する根拠にならない、と述べます。結局、766条の適用でも類推適用でも、第三者は申し立てられない、という結論です。決め手を一言で言えば、766条が、父母の協議とその代わりの手続という構造になっているからです。第三者を入れる文言がありません。境界の例で比べます。Cくんの父であるAさんが、監護者を定める審判を申し立てる場合は、父母の申立てなので、できます。Cくんを世話してきた祖母が申し立てる場合は、父母ではないので、できません。この決定は、現在の規定になる前の条文の下のものです。ただ、766条1項と2項の、協議の主体が父母であるという骨組みは、今も同じです。監護者を定める申立てを、第三者に認める規定は、設けられていません。ですから、結論は、今も維持されると考えられます。ただし、これは改正後の判例ではなく、条文の構造から導いた整理です。
この決定が判断したのは、監護者を定める申立てについてです。祖父母が孫との交流を求められるかは、別の問題で、別の回で扱います。
離れた親と子の交流 取決めは任意でも子の利益が最優先
図:親子交流
- 766条1項・2項・817条の13
- 条文の語=父又は母と子との交流
- 判決の語=面会交流。協議で定める(子の利益を最も優先して考慮)→協議が調わない・できない=家庭裁判所が定める(766条2項)。取決めがなくても離婚届は受理される(765条)。婚姻中の別居にも同じ定め(817条の13)。
3つめの問いです。Aさんは、離婚後もCくんに会えるのか。766条1項は、父又は母と子との交流を、協議で定めると規定しています。判決や実務では、面会交流とも言います。同じものです。子と別に暮らす親が、子に会ったり、手紙や電話で連絡を取ったりすることです。設例なら、監護しているのはBさんです。Aさんは、Cくんと同居しない親になります。具体的な定めの例です。毎月第2土曜日の午前10時から午後4時まで。受渡しは駅の改札付近。こういう取決めです。これを決めないと、離婚届は出せないんですか。違います。親子交流の取決めは、離婚届の受理の要件ではありません。765条は、親権者の定めか申立てだけを要件にしていました。ただし、決めるときは、766条1項後段のとおり、子の利益を最も優先して考慮しなければなりません。
なぜ、親の都合ではなく、子の利益なのですか。交流は、子が離れて暮らす親ともつながりを保てるかどうかに関わる取決めだからです。親が会いたいかどうかより、子にとってどうか、を軸にします。協議が調わないとき、又はできないときは、766条2項で、家庭裁判所が定めます。817条の13もあります。婚姻中に別居しているときの親子の交流にも、同じ、子の利益を最優先にする定めがあります。取決めが守られないときにどうするかは、別の回で扱います。
今日の地図(保存版)
図:離婚のときに決めること
- 空欄
- 必須=( )。任意だが決めるなら子の利益が最優先=( )・( )。決まらないときの補い=( )。別の回で扱う欄=お金のこと・子の氏。
最後に、表を埋めましょう。離婚のときに決めることの、必須はどれで、任意はどれでしょうか?必須は、親権者の定めです。届出の受理の要件でもあります。任意なのは、監護者と、親子交流です。ただし、決めるときは、子の利益を最優先にします。決まらないときは、家庭裁判所が定めます。親権者は819条5項、監護者と交流は766条2項です。答えを板にします。
図:離婚のときに決めること
- 必須=親権者の定め(765条=親権者の指定を求める調停・審判の申立てでも可)/任意だが決めるなら子の利益が最優先=監護者・監護の分掌/親子交流(766条1項)
- 決まらないとき=親権者は家庭裁判所(819条5項)・監護者と交流は家庭裁判所(766条2項)
- 別の回で扱う欄=お金のこと・子の氏
冒頭の問いに答えます。Cくんの親権者は、二人ともなれます。819条は、双方又は一方と定めているからです。ただし、裁判所が判断する場面では、子の心身への害悪のおそれや、暴力等で共同して親権を行うのが困難なときなど、双方にすると子の利益を害するなら、必ず一方です。父母が合意して双方と定めたときは、7項の判断は働きません。Cくんは、親権者と別に、監護者を定めて、その人と暮らすこともできます。Aさんとの交流は、子の利益を最優先に定めます。離婚しても、親子は続きます。そのために、何を決め、決まらなければ誰が補うのか。今日の表で、整理しておいてください。
参照条文
- 民法817条の12
- 民法819条1項・2項
- 民法819条5項
- 民法819条7項
- 民法819条6項
- 民法765条
- 民法766条