実親子関係の成立と嫡出推定(772条)
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第7章 親族 #330/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
離婚して100日後に生まれた子の父は、誰か
図:冒頭の設例
- A(母)・B(前の夫)・C(今の夫)・D(子)
- AとBは婚姻して2年ほど暮らし離婚(これを0日目)→30日後にAがCと再婚→離婚から100日後(Cとの婚姻から70日後)にDが生まれた
- 問い=Dの父は、前の夫Bか、今の夫Cか
今日の問いは1つです。Dさんの父は、前の夫のBさんでしょうか。それとも、今の夫のCさんでしょうか。予想は、そこで置いておいてください。答えは山場で出します。ただ、1つだけ先に言います。父が誰かは、DNAで決まるのではなく、法律が、日付を手がかりに決めるのです。血のつながりでは決まらないんですか。それが今日の主題です。婚姻の回で、嫡出推定は別の回で扱う、と予告しました。今日が、その回です。
図:今日の地図
- ①親子の関係は、母と父で決まり方が違う
- ②父は婚姻を手がかりに推定する=772条
- ③日付の時間軸で引く(200日・300日)
- ④再婚していたら3項と4項
- 貫く軸=母は見える・父は見えない
今日の地図です。1つめ。親子の関係は、母と父で、決まり方が違います。2つめ。父は、婚姻を手がかりに推定します。772条です。3つめ。その推定は、日付の時間軸で引きます。200日と300日が出てきます。そして、4つめ。母が再婚していたら、どうなるか。3項と4項です。貫く軸は1本です。母は見える。父は見えない。見えない父を、見える手がかりで先に決めておく。この軸で、全部がつながります。
母は見える・父は見えない 親子の地図
図:親子の地図
- 法律上の親子=実親子(今回〜)/養親子(別の回)
- 実親子の成立のしかた=母:分娩の事実で当然に成立/父:婚姻中(または婚姻前に懐胎して婚姻後に出生)→嫡出推定(772条)・婚姻外→認知(779条)
- 理由=分娩は外から見える/父子の血縁は外から見えない→外から見える手がかり(婚姻)で先に決める
- 嫡出(子)=婚姻関係にある父母から生まれた子
親子には、2種類あります。血のつながりを基礎にした実親子と、縁組で作る養親子です。養親子は、別の回で扱います。今日は実親子です。実親子は、母と父で、成立のしかたが違います。母は、子を産んだという事実で決まります。父は、嫡出子なら、嫡出推定で決まります。婚姻の外で生まれた子なら、認知で決まります。認知とは、父が、この子は自分の子だと認めることです。嫡出子という言葉を、定義しておきます。婚姻関係にある父母から生まれた子のことです。婚姻の外で生まれた子は、嫡出でない子です。判決では、非嫡出子と呼びます。
母と父で決まり方が違うのは、外から見えるかどうかの違いです。出産は、誰の目にも明らかな事実です。産んだ人が、母です。ところが、父は違います。父と子の血縁は、外からは見えません。身近な喩えで言うと、役所の窓口です。出産は、その場に記録が残ります。ところが、父は、記録が残りません。そこで、結婚という、外から見える記録を使って、先に担当を割り当てておくのです。割り当てておかないと、生まれた直後の子の身分が、定まりません。それは、子にとって困ります。ですから、婚姻を手がかりに、父を推定するのです。ここで、前に見た権利能力の回を思い出しましょう。権利能力は、出生によって始まります。出生とは、子が母体から、どこまで出たときでしたか?
母体から、全部が露出したときです。分娩は、そのくらいはっきりした出来事なので、母子関係の手がかりになります。
母子関係は分娩で決まる 認知は要らず・代理出産でも
図:母子関係①
- 最高裁判決
- 事案=母と子の親子関係の存在確認が争われた事件。判旨=母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生する。
まず、母子関係です。母と子の間に親子関係があるかどうか、その確認が争われた事件がありました。最高裁は、こう述べました。
判例最判昭37・4・27 民集16巻7号1247頁
母子関係は、母の認知を待たず、分娩の事実により当然に発生する 母とその非嫡出子との間の親子関係は、原則として、母の認知を俟たず、分娩の事実により当然発生すると解するのが相当である。
父の場合は、婚姻外の子なら、認知が必要です。母は違います。認知しなくても、産んだという事実で、当然に母子関係が生じます。なお、嫡出子の場合は、772条が、子を産んだ女性が母であることを前提に、作られています。産んだ人が母、というのは、当たり前に思えます。争いになるんですか。なります。代理出産です。日本人夫婦の精子と卵子を使って、アメリカのネバダ州の女性に、双子を産んでもらいました。夫婦は、この子たちを嫡出子とする出生届を出しましたが、受理されませんでした。夫婦は、卵子を提供した妻が、母だと主張しました。
図:母子関係②(最高裁決定)
- 事案=日本人夫婦の精子・卵子を使い、米国ネバダ州の女性が出産した双子について、夫婦を父母とする嫡出子の出生届→受理されず。判旨=出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず、懐胎・出産していない女性とは、卵子を提供した場合でも母子関係は成立しない。理由=出産という客観的かつ外形上明らかな事実
- 母子関係を早期に一義的に確定させることが子の福祉にかなう。
最高裁は、卵子の提供者は母ではない、と判断しました。懐胎とは、子を身ごもることです。一義的とは、ただ1つに決まる、という意味です。判旨です。
判例最決平19・3・23 民集61巻2号619頁
代理出産で生まれた子の母は、懐胎し出産した女性である 現行民法の解釈としては、出生した子を懐胎し出産した女性をその子の母と解さざるを得ず、その子を懐胎、出産していない女性との間には、その女性が卵子を提供した場合であっても、母子関係の成立を認めることはできない。 ……民法が、出産という事実により当然に法的な母子関係が成立するものとしているのは、……出産という客観的かつ外形上明らかな事実をとらえて母子関係の成立を認めることにしたものであり、かつ、出産と同時に出生した子と子を出産した女性との間に母子関係を早期に一義的に確定させることが子の福祉にかなうということもその理由となっていたものと解される。
⭐ 論文で書く規範:【規範(判例で立てる)】出生した子の母は、その子を懐胎し出産した女性である。その子を懐胎、出産していない女性とは、卵子を提供した場合でも母子関係が成立しない。 (解釈で立てる規範(出どころ=判例)。条文は出産した女性が母であると書いていない。決め手=出産は客観的で外形上明らかな事実であり、母子関係を早期に一義的に確定させることが子の福祉にかなうから。論文で論点になりうる)
遺伝的につながっているのは、卵子を提供した妻ですよね。それでも母ではないんですか。そこが、この判例の肝です。決め手は、見える事実か、見えない血縁か、です。産んだことは、外から明らかです。卵子の提供は、外からは分かりません。母子関係の基準は、一義的に、明確でなければなりません。そうでないと、生まれた子の身分が、すぐに定まりません。境界の例で比べます。自分の卵子を使って、自分で子を産んだ場合は、産んだ女性が、そのまま母です。他人の卵子で産んだ場合も、産んだ女性が母です。どちらも、産んだ人が母、で一貫します。母について、この決定が示したのは、今の民法のもとで、母は誰か、という点です。代理出産を認めてよいかどうかには、答えていません。この決定は、立法による速やかな対応が強く望まれる、とも述べました。その後、法律ができました。他人の卵子を使った生殖補助医療で、子を懐胎し出産した女性を、その子の母とする、と定めています。判例の結論が、条文になったわけです。
父子関係と772条1項 嫡出推定は二つのことを言う
図:772条1項の2つの効果
- ①父の推定=前段:妻が婚姻中に懐胎した子→その婚姻における夫の子と推定/後段:女が婚姻前に懐胎した子で、婚姻が成立した後に生まれたものも同様
- ②嫡出子の身分=推定を受ける子は、嫡出子となる
- 婚姻外の子の父は認知(779条・別の回)
次は父です。婚姻している夫婦の子の父は、772条の推定で決まります。今日の残りは、この1つの条文を読む作業です。全文を出します。
条文民法772条
民法第772条(嫡出の推定) 妻が婚姻中に懐胎した子は、当該婚姻における夫の子と推定する。女が婚姻前に懐胎した子であって、婚姻が成立した後に生まれたものも、同様とする。 2 前項の場合において、婚姻の成立の日から二百日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定し、婚姻の成立の日から二百日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から三百日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定する。 3 第一項の場合において、女が子を懐胎した時から子の出生の時までの間に二以上の婚姻をしていたときは、その子は、その出生の直近の婚姻における夫の子と推定する。 4 前三項の規定により父が定められた子について、第七百七十四条の規定によりその父の嫡出であることが否認された場合における前項の規定の適用については、同項中「直近の婚姻」とあるのは、「直近の婚姻(第七百七十四条の規定により子がその嫡出であることが否認された夫との間の婚姻を除く。)」とする。
1項から順に読みます。1項は、2つのことを定めています。1つめは、父の推定です。前段。妻が婚姻中に懐胎した子は、その婚姻における夫の子と推定されます。後段。婚姻する前に懐胎して、婚姻が成立した後に生まれた子も、同様に推定されます。2つめは、嫡出子の身分です。推定を受けた子は、夫婦の嫡出子になります。見出しの、嫡出の推定、という言葉は、この両方を指しています。後段の、婚姻前に懐胎した子というのは、結婚前にできた子ということですか。婚姻前に子ができて、婚姻したあとに生まれたような場合です。この後段は、令和4年の改正で入りました。
婚姻の前に子ができて、そのまま婚姻した夫婦なら、その子の父は、夫であることが多いからです。生まれた子は、夫婦の子として育てられるのが通常です。ここでも、婚姻という見える手がかりで、先に父を割り当てておくのです。嫡出でない子の父は、認知で決まります。779条です。認知は、別の回で扱います。推定ですから、覆すことができます。ただ、覆せるのは、否認という手続だけで、その道は限られています。これは、次の回で扱います。
2項 懐胎の時期を推定する 200日と300日
図:2項の読み方
- 1項を使うには、いつ懐胎したかが分かる必要がある→出生の日から逆算して推定する
- 婚姻の成立の日から200日以内に生まれた子=婚姻前に懐胎(→1項後段)/婚姻の成立から200日を経過した後〜婚姻の解消・取消しから300日以内に生まれた子=婚姻中に懐胎(→1項前段)
- 境界=200日ちょうどは以内(2項前段)/201日目からが経過後(2項後段)/300日目までが以内
1項を使うには、いつ懐胎したかが分かる必要があります。ところが、懐胎の時期は、証明が容易ではありません。そこで2項が、出生の日から逆算して、懐胎の時期を推定します。200日と300日は、妊娠の長さを手がかりにした数字です。身ごもってから生まれるまでは、短くてもおよそ200日、長くてもおよそ300日、と考えられてきました。この2つの長さから、逆算するのです。その前に、婚姻の取消しの回を思い出しましょう。婚姻が取り消されたとき、取り消す前に生まれた子は、嫡出子でなくなるでしょうか?取消しは将来に向かってだけ効力があるので、嫡出子のままです。取消しは、離婚と同じく、そこから先に向かって、婚姻を終わらせます。ですから2項は、離婚と並べて、取消しの日から300日以内に生まれた子も、婚姻中に懐胎したと推定するのです。2項を、時間軸で読みます。婚姻の成立の日から、200日以内に生まれた子は、婚姻前に懐胎したものと推定されます。すると、1項の後段で、夫の子と推定されます。婚姻の成立から200日を経過した後から、婚姻の解消か取消しの日から300日以内までに生まれた子は、婚姻中に懐胎したものと推定されます。すると、1項の前段で、夫の子と推定されます。解消とは、離婚や夫の死亡で、婚姻が終わることです。
2項の後段は、読み方に注意が要ります。2つの場面を、又は、でつないでいます。婚姻が続いている間に生まれたなら、成立から200日を経過した後の子。婚姻が終わった後に生まれたなら、解消や取消しから300日以内の子。この2つをつなげると、成立から200日を経過した後から、解消や取消しから300日以内まで、という1つの帯になります。この帯に生まれた子が、婚姻中に懐胎したと推定されます。境界の言い方を決めておきます。200日ちょうどは、以内です。2項の前段です。201日目からが、経過後です。2項の後段です。300日目までが、以内です。
図:時間軸の演習
- 婚姻が1回
- 軸=婚姻成立→200日→(離婚)→離婚から300日。例1=AがCとだけ婚姻し、婚姻成立から40日後にDが生まれた→200日以内=婚姻前懐胎(2項前段)→Cの子(1項後段)。例2=AがBと婚姻して離婚→再婚せず、離婚から150日後にDが生まれた→離婚から150日=300日以内→婚姻中に懐胎(2項後段)→Bの子(1項前段)。301日目以降は2項の推定の外。
婚姻が1回の場合を、引いてみます。AさんがCさんとだけ婚姻し、婚姻の成立から40日後に、Dさんが生まれました。婚姻の前にできた子でも、1項の後段で、夫の子と推定されます。次です。AさんがBさんと婚姻して離婚し、再婚しませんでした。離婚から150日後に、Dさんが生まれました。ここで、1つ気づいてほしい点があります。婚姻が1回なら、前段で引いても、後段で引いても、結論は、その夫の子です。違うのは、理由が、前段か後段かだけです。200日の線が決めるのは、父が誰かではありません。懐胎が婚姻の前か、婚姻中か、つまり、1項の前段と後段の、どちらで推定するかです。どちらの側に生まれても夫の子になるのは、1項が、後段で、婚姻前に懐胎した子も拾っているからです。答案では、2項のどちらの段から、1項のどちらの段へつなぐかを、書き分けます。婚姻が2回ある場面でも、200日の線で結論は変わりません。2人分の推定が立つかを分けるのは、前の夫の側の、300日の線です。重なったら、3項が出てきます。境界のすぐ外も、確認しておきます。離婚から301日目以降に生まれた子は、この2項の推定の外に出ます。その子の父をどう定めるかは、別の回で扱います。ここで問いです。前の夫との離婚から250日後に、子が生まれました。母は、離婚の30日後に、再婚しています。前の夫と今の夫、どちらの婚姻から見ても、推定は立つでしょうか?
前の夫は、離婚から300日以内なので、立ちます。今の夫は、再婚から220日後なので、200日を経過した後で、婚姻中に懐胎と推定されて、これも立ちます。2人分の推定が、立っています。これが、今日の山場の入口です。
3項 再婚していたら、出生の直近の婚姻の夫
図:設例の時間軸
- B婚姻 ── 離婚(0日)── 30日後 C再婚 ── 離婚から100日後 D出生
- Bとの関係=婚姻の成立から200日を経過した後・離婚から300日以内→婚姻中に懐胎(2項後段)→Bの子と推定(1項前段)
- Cとの関係=婚姻の成立から70日=200日以内→婚姻前に懐胎(2項前段)→Cの子と推定(1項後段)
- →推定が2人分=父性の推定の重複
冒頭の設例に戻ります。DさんはBさんとの離婚から100日後、Cさんとの婚姻から70日後に生まれました。1項と2項を、2回引いてみます。Bさんとの関係です。Bさんとの婚姻は2年ほど続いたので、成立から200日を経過しています。出生は、離婚から100日後で、300日以内です。2項の後段で、婚姻中に懐胎と推定されて、1項の前段で、Bさんの子と推定されます。Cさんとの関係です。出生は、婚姻の成立から70日後で、200日以内です。2項の前段で、婚姻前に懐胎と推定されて、1項の後段で、Cさんの子と推定されます。
えっ。Bさんの子と推定されて、Cさんの子とも推定される。1人の子に、父が2人ですか。これを、父性の推定の重複、と呼びます。重複とは、2人分の推定が立つことです。憲法の回で、再婚禁止期間を見たとき、この重複の話が出ました。重複したままだと、Dさんの父が、決まりません。子の身分が、定まらないのは、困ります。そこで3項が、1人に絞ります。3項です。女が子を懐胎した時から出生の時までの間に、二以上の婚姻をしていたときは、その子は、出生の直近の婚姻における夫の子と推定します。出生に一番近い婚姻です。設例では、Cさんとの婚姻です。Bさんとの婚姻は、離婚で終わっています。Cさんとの婚姻が、後から始まって、出生のときまで続いています。
どうして、前の夫ではなく、今の夫なんですか。母が再婚したあとに生まれた子は、今の夫の家庭で育つのが通常で、今の夫の子である可能性も高いと考えられるからです。その夫を父としておくのが、子の身分を早く安定させる道です。
図:3項で絞る
- 設例=懐胎から出生までにBとCの2回の婚姻→出生の直近の婚姻=Cとの婚姻→Cの子と推定
- 冒頭の答え=今の夫Cの子と推定される
- 変形(離婚から250日後に出生)=Bは300日以内・Cは婚姻から220日で200日経過後→やはり重複→3項でC
- 200日の以内/経過後は、Cの推定の理由が前段か後段かが変わるだけで、結論は同じ
冒頭の答えが出ました。Dさんは、今の夫のCさんの子と推定されます。先ほどの、離婚から250日の変形も、同じです。重複して、3項で、Cさんです。200日の線は、Cさんの推定の理由が、前段か後段かを変えるだけで、結論は変わりません。反対に、離婚から320日後に生まれた子なら、Bさんとの関係では300日を過ぎていて、推定は立ちません。推定はCさんの1人分だけなので、3項を使うまでもなく、Cさんの子です。直感は、わりと自然です。ただ、法律は、DNAではなく、婚姻という、外から見える手がかりで、先に決めます。手がかりが2つ立ったら、出生に一番近い婚姻に、絞る。これが3項です。ここは、論文で論点になりうる箇所です。設例の日付を、1項、2項、3項の順に、引ける力が問われます。ここまでで、母は分娩、父は推定、という骨組みと、婚姻が1回の場合と、2回の場合の引き方が、閉じました。続けて、残りの2つの話に進みます。
再婚禁止期間が要らなくなった理由と、改正の適用範囲
図:3項と再婚禁止期間
- 以前は、女性の再婚に待つ期間を置いて、父性の推定の重複を避けていた(733条)
- 3項が重複を1人に絞るので、待つ期間は不要→733条は令和4年の改正で削除(2024年4月1日施行)
- 新しい772条は、2024年4月1日以後に生まれた子に適用
- それより前に生まれた子の嫡出の推定は、従前の例による
ここで、再婚禁止期間との関係を、一言で受けます。重複は、今は3項で解きます。ですから、重複を避けるために、再婚まで待たせる期間は、要らなくなりました。733条は、令和4年の改正で削除されました。設例は、改正後の世界の話です。適用範囲も、事実を1つだけ言っておきます。改正後の772条は、2024年4月1日以後に生まれた子に適用されます。それより前に生まれた子の嫡出の推定は、従前の例によります。従前の例とは、改正前の条文が、そのまま使われる、という意味です。
4項 否認されたら前の夫へ繰り上がる
図:4項の繰り上がり
- 2段
- 1段目=A─C(婚姻)→D=3項でCの子と推定。2段目=Cの子との推定が否認された→3項の「直近の婚姻」を「否認された夫との婚姻を除く直近の婚姻」と読む→A─B(婚姻)→D=4項でBの子と推定。否認=推定を覆すこと(次の回)。
最後に、4項です。3項でCさんの子と推定されたDさんについて、その推定が、覆された場合を考えます。覆されるって、どういうことですか。否認です。夫や子などが、夫の子ではない、と争って、推定を覆すことです。詳しくは、次の回です。ここでは、否認されたとして、その先の話をします。4項は、3項の、直近の婚姻、を読み替えます。否認された夫との婚姻を除いた、直近の婚姻、と読むのです。設例です。Cさんの子との推定が、否認で覆りました。Cさんとの婚姻を除くと、直近の婚姻は、Bさんとの婚姻です。ですから、Dさんは、Bさんの子と推定されます。
否認されたら、その夫を除いて、次に直近の婚姻の夫へ、繰り上がります。否認されたまま父がいないと、子の身分が、また定まりません。そこで、懐胎の時期に婚姻していた、もう1人の夫に、推定を移すのです。比べてみます。母が再婚しなかった場合、つまり、婚姻が1回だけなら、否認されたあとに、繰り上げる先の婚姻が、ありません。4項は、婚姻が2回以上のときの特則です。ここで、冒頭の答えが、完成します。Dさんは、今の夫のCさんの子と推定されます。それが否認されれば、前の夫のBさんの子と推定されます。ただし、推定は覆せますが、覆す道は、限られています。誰が、いつまでに、どんな手続で覆せるのか。それは、次の回で扱います。
今日の地図(保存版)
図:今日のまとめ
- ①母は分娩・父は婚姻中(または婚姻前に懐胎して婚姻後に出生)なら推定・婚姻外なら認知/母子関係は認知不要(分娩の事実)・代理出産でも産んだ女性が母
- ②772条の読み順=1項(父の推定+嫡出子の身分)→2項(200日以内=婚姻前に懐胎/経過後〜300日以内=婚姻中に懐胎)→3項(二以上の婚姻は出生の直近の婚姻の夫)→4項(否認されたらその夫を除く直近へ繰り上がり)③冒頭の答え=今の夫Cの子と推定・否認されればBの子と推定
最後にまとめます。柱は3本です。1本目。母は分娩で決まり、父は婚姻なら推定、婚姻外なら認知で決まります。分娩は外から見えて、父の血縁は見えないからです。代理出産でも、産んだ女性が母です。2本目。772条の読み順です。1項は、父の推定と、嫡出子の身分。2項は、200日と300日で、懐胎の時期を推定。3項は、二以上の婚姻なら、出生の直近の婚姻の夫。4項は、否認されたら、その夫を除く直近へ繰り上がり。3本目。冒頭の答えです。離婚から100日後に生まれ、母が離婚の翌月に再婚していたなら、Dさんは、今の夫のCさんの子と推定されます。それが否認されれば、前の夫のBさんの子と推定されます。
日付を、1項、2項、3項、4項の順に引けば、父が決まるんですね。ただし、推定は覆せます。覆す道が限られている点は、次の回で確かめます。
参照条文
- 民法772条