縁組の無効・取消しと離縁
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第7章 親族 #337/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
実の親でない人の代諾は、あとから認められるか
図:冒頭の設例
- A(養親になる人)
- B・D(Cの戸籍上の母・父。実の父母ではない)
- C(養子。縁組のとき5歳)
- E(Cの実の親)
- B・Dが、Cの法定代理人として代諾し、AとCの縁組届が受理された
- Eは何も知らない
- Cは20歳のとき事情を知り、Aを養親と認めて縁組を続けたい
- 問い=この縁組は有効にできるか
- できるなら、いつから有効か
今日の問いは、2つです。この縁組は、有効にできるのか。できるなら、いつから有効なのか。答えを先に言います。20歳のCさんが、あとから縁組を認めれば、縁組は有効にできます。しかも、5歳のときの縁組の日から、はじめから有効です。なぜそうなるのかを、判例で確かめていきます。前の2回で、縁組が成立するまでと、成立したあとの効果を見ました。15歳未満の子の縁組は、法定代理人が代わって承諾する、代諾縁組でした。今日は、その縁組にどこか問題があったとき、そして縁組をやめるときを見ます。
図:今日の地図
- 縁組に問題があったとき=①縁組の無効と追認(802条)②縁組の取消し(803〜808条)
- 縁組をやめるとき=③離縁の道(協議・死後・裁判)④離縁の効果(729条・816条)
- 軸=問題があったとき(無効・取消し)とやめるとき(離縁)を分ける
今日の地図です。4つ進みます。①縁組の無効と追認。②縁組の取消し。ここまでが、縁組に問題があったときの話です。③離縁の道。④離縁の効果。ここからが、縁組をやめるときの話です。貫く軸は、1本です。問題があったから縁組をなかったことにする話と、有効な縁組をこれから終わらせる話を、分けてください。
縁組の無効と、代諾縁組の追認
図:縁組の無効
- 802条
- 無効になるのは次の場合に限る。①人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき(縁組意思の中身は、親子関係を作る意思=縁組の成立の回の整理)②当事者が縁組の届出をしないとき(ただし、方式を欠くだけなら効力は妨げられない)。無効の主張=縁組無効の訴え(人事訴訟法2条3号)。
まず、無効から見ます。条文は、802条です。縁組の成立を見た回で出した条文を、もう一度出します。
条文民法802条
民法第802条(縁組の無効) 縁組は、次に掲げる場合に限り、無効とする。 一 人違いその他の事由によって当事者間に縁組をする意思がないとき。 二 当事者が縁組の届出をしないとき。ただし、その届出が第七百九十九条において準用する第七百三十九条第二項に定める方式を欠くだけであるときは、縁組は、そのためにその効力を妨げられない。
縁組が無効になるのは、この2つに限られます。1号は、縁組意思がないとき。2号は、届出をしないとき。ただし、証人が足りないなど、方式を欠くだけなら、効力は妨げられません。縁組意思の中身は、縁組の成立を見た回で確かめたとおりです。親子関係を作る意思でした。無効を争うには、縁組無効の訴えを起こします。人事訴訟法2条3号が定める訴えです。
図:代諾権のない者の代諾縁組の追認
- 最判昭27・10・3
- 判旨の4つの流れ=①15歳未満の子の代諾は法定代理→代理権が無ければ一種の無権代理②無権代理の追認の規定の趣旨を類推→養子は15歳に達した後に追認できる③方式は無い(明示・黙示)・養親の双方に対してする④適法に追認すれば、はじめから有効。当てはめ=C(20歳)→追認できる→5歳の縁組の日から有効。
さて、設例です。縁組の成立を見た回で、藁の上からの養子を見ました。他人の子を実の子として出した出生届は、縁組届にはなりませんでした。ですから、BさんとDさんは、Cさんの親ではなく、法定代理人でもありません。代諾する権利、つまり代諾権がありません。代諾権のない人が、Cさんに代わって承諾した縁組は、どうなるのでしょうか。代理の権利がない人が代わりにした承諾ですから、Cさんの承諾がないのと同じです。判例は、これを、一種の無権代理と見ます。無権代理は、総則で見ました。代理権のない人が、本人の名前でした行為です。本人が追認しなければ、本人に効果は及びません。代諾権のない者の代諾縁組も、有効な縁組にはなりません。無効です。ここで、2つ、思い出してください。無効な婚姻の追認は、いつから有効になるのでしたか。無権代理の追認は、116条の、どの部分に従いますか?
無効な婚姻の追認は、届出の時にさかのぼって有効になるのでした。116条本文の趣旨を類推するんでしたよね。無権代理の追認は、契約の時にさかのぼって有効になって、ただし書で、第三者の権利は害せません。では、代諾権のない者の代諾縁組は、どうなるか。判例を2つ見ます。まず1つ目です。
判例最高裁判所第二小法廷判決 昭和27年10月3日(民集6巻9号753頁)
代諾権のない者の代諾縁組の追認 十五歳未満の子の養子縁組に関する、家に在る父母の代諾は、法定代理に基くものであり、その代理権の欠缺した場合は一種の無権代理と解するを相当とするのであるから、民法総則の無権代理の追認に関する規定、及び前叙養子縁組の追認に関する規定の趣旨を類推して、旧民法八四三条の場合においても、養子は満十五歳に達した後は、父母にあらざるものの自己のために代諾した養子縁組を有効に追認することができるものと解するを相当とする。 しかして、この追認は、前示追認と同じく何らその方式についての規定はないのであるから、明示若しくは黙示をもつてすることができる。その意思表示は、満十五歳に達した養子から、養親の双方に対してなさるべきであり、養親の一方の死亡の後は、他の一方に対してすれば足るものであり、適法に追認がなされたときは、縁組は、これによつて、はじめから、有効となるものと解しなければならない。
読み解きます。家に在る父母とは、当時、15歳未満の子に代わって縁組を承諾するとされていた、子と同じ家にいる父母のことです。前叙の、養子縁組の追認に関する規定とは、この判決が先に挙げた、縁組の追認についての規定です。判旨にある旧民法の条文は、当時の規定で、いまの797条にあたります。判旨の流れは、4つです。1つ目。15歳未満の子の代諾は、法定代理に基づきます。その代理権がなければ、一種の無権代理です。2つ目。そこで、無権代理の追認の規定の趣旨を類推します。そして、養子は、満15歳に達した後は、父母でない者が自分のためにした代諾縁組を、有効に追認できます。3つ目。追認に、決まった方式はありません。明示でも、黙示でもできます。養子から、養親の双方に対してします。養親の一方が死亡した後は、他方に対してすれば足ります。4つ目。適法に追認がされたとき、縁組は、はじめから有効になります。
判旨がその理由を述べているわけではないので、ここは整理です。縁組では、養子が15歳になれば、本人が自分で承諾できました。前の回で見た、15歳の境目です。自分で承諾できる年齢になった養子が、あとから自分で認める。それなら、本人の意思を尊重できる、ということです。設例に当てはめます。Cさんは、20歳です。15歳を過ぎています。ですから、追認できます。追認の相手は、養親のAさんです。方式は、決まっていません。黙示でもよい、というのが判旨です。たとえば、事情を知ったあとも、Aさんを養親として扱い続けた、という事実から、追認の意思が読み取れる場合もあります。そして、適法に追認すれば、縁組は、はじめから有効です。5歳のときの縁組の日から、Aさんの養子だった扱いになります。境目も確認します。Cさんが何も言わず、追認もしなければ、有効にはなりません。追認があって、はじめて有効になります。
図:116条ただし書は持ち込まない
- 最判昭39・9・8
- 119条=無効な行為は追認しても有効にならない→身分行為は例外(事実として築かれた関係を尊重)。116条ただし書=第三者の権利を害せない(取引の安全)→養子縁組の追認には類推適用しない(身分関係は事実関係を重視)。
身分行為の特徴です。婚姻の無効の追認も、同じ例外でした。事実として築かれてきた関係を、尊重するからです。さて、2つ目の判例です。追認にも、116条ただし書は、使うのでしょうか。
判例最高裁判所第三小法廷判決 昭和39年9月8日(民集18巻7号1423頁)
養子縁組の追認と116条ただし書 所論は、養子縁組の追認についても民法一一六条但書の規定が適用されることを前提とするものであるが、本件養子縁組の追認のごとき身分行為については、同条但書の規定は類推適用されないものと解するのが相当である。けだし事実関係を重視する身分関係の本質にかんがみ、取引の安全のための同条但書の規定をこれに類推適用することは、右本質に反すると考えられるからである。
読み解きます。この判決が述べるのは、養子縁組の追認のような身分行為には、116条ただし書は類推適用されない、ということです。理由は、身分関係の本質です。身分関係は、事実関係を重視します。取引の安全のための116条ただし書を当てはめるのは、その本質に反する、とされました。116条ただし書は、追認がさかのぼることで、第三者の権利が害されるのを防ぐ規定でした。取引の安全を守るためです。縁組に持ち込むと、どうなるか。追認の前に、Cさんが養子でないことを前提にして、権利を得た人がいたとします。ただし書を当てはめると、その人との関係でだけ、Cさんは、Aさんの子ではない扱いになります。同じCさんが、相手によって、子だったり、子でなかったりします。親子かどうかは、誰との間でも同じでなければ困ります。ここは判決の言葉ではなく、整理です。
図:追認の3種の対比
- ①無効な婚姻の追認(最判昭47・7・25)=届出の時にさかのぼって有効(116条本文の趣旨を類推)
- ②無権代理の追認(116条)=契約の時にさかのぼって有効/ただし書=第三者の権利を害せない
- ③代諾権のない者の代諾縁組の追認(最判昭27・10・3・最判昭39・9・8)=養子が15歳に達した後に追認→はじめから有効/116条ただし書は適用しない
3つを並べます。無効な婚姻の追認は、届出の時にさかのぼって有効です。無権代理の追認は、契約の時にさかのぼって有効で、ただし書があります。代諾縁組の追認は、養子が15歳に達した後にでき、はじめから有効で、ただし書は適用されません。さかのぼる先は、3つとも、はじめの行為の時です。はじめから有効、と言っても、さかのぼって有効、と言っても、同じことです。違うのは、代諾縁組では、追認できるのが15歳に達した養子であることと、116条ただし書が使われないことです。冒頭の答えです。いまのCさんは、20歳なので、追認できます。追認すれば、縁組は、はじめから有効になります。116条ただし書は、適用されません。
ここは、論文で論点になりうる箇所です。
縁組の取消し 取り消せる違反は限られる
図:無効と取消しの対比
- 無効(802条)=限定列挙(縁組意思がない・届出をしない)
- 取り消すまでもなく効力がない
- 取消し(803条)=限定列挙(804〜808条の場合だけ)
- 家庭裁判所への請求で取り消す
- 取り消すまでは有効
- 取消しは将来に向かってのみ効力を生ずる(808条1項)
次は、取消しです。縁組の成立の回で、取消しの中身はあとで見る、と言いました。縁組には、取り消せる違反がある、という話でした。取り消せるのは、条文が取消しを認めた違反だけ、でしたね。その条文が、803条です。
条文民法803条
民法第803条(縁組の取消し) 縁組は、次条から第八百八条までの規定によらなければ、取り消すことができない。
読み解きます。縁組は、804条から808条までの規定によらなければ、取り消せません。取消しの原因は、条文で限られます。無効の802条が、次に掲げる場合に限る、としていたのと、同じ型です。ですから、列挙にない違反は、無効にも、取消しにも、なりません。縁組は、有効のままです。なぜ、ここまで絞るのか。条文に理由は書かれていないので、ここは整理です。縁組届が受理されると、その日から、親子としての暮らしが始まります。どの違反でも後から崩せるとしたら、親子という身分が、いつまでも落ち着きません。だから、取り消せる違反も、請求できる人も、期間も、条文で決めておくのです。
条文を、1つずつ暗記する必要はありません。骨格だけ押さえてください。第一に、違反した条文と、取消しの条文が、対になっていること。第二に、誰が請求できるのか、いつまでか、の2点です。表にします。
図:取消事由の一覧
- 違反した条文→取消しの条文/請求権者/取り消せなくなるとき
- 792条(養親が20歳未満)→804条/養親又はその法定代理人/養親が20歳に達した後6か月経過か追認
- 793条(尊属・年長者)→805条/各当事者又はその親族
- 794条(後見人の無許可縁組)→806条/養子又はその実方の親族/管理の計算が終わった後、養子の追認か6か月
- 796条(配偶者の同意なし)→806条の2/縁組の同意をしていない者/縁組を知った後6か月か追認
- 797条2項(監護者などの同意なし)→806条の3/縁組の同意をしていない者/追認、または養子が15歳に達した後6か月か追認
- 798条(家庭裁判所の許可なし)→807条/養子・その実方の親族・代諾した者/養子が成年に達した後6か月か追認
- 詐欺・強迫→808条1項/747条を準用/発見・脱却後6か月
- ※795条違反・799条の方式欠缺は取消事由にない(有効のまま)
縦に読んでください。792条、養親が20歳未満の縁組は、804条で取り消せます。請求できるのは、養親又はその法定代理人。養親が20歳に達した後6か月が過ぎるか、追認したら、もう取り消せません。この追認は、取り消せることを知ったうえで、有効と認めることです。婚姻の取消しの回で見た追認です。縁組は、取り消すまでは有効なので、追認すると、取消権が消えて、有効なまま確定します。さっきの代諾縁組の追認は、有効でない縁組を、はじめから有効にするものでした。同じ追認という言葉でも、働きが違います。793条、尊属や年長者を養子にした縁組は、805条です。各当事者又はその親族が、請求できます。794条、後見人が許可なく被後見人を養子にした縁組は、806条です。養子又はその実方の親族が、請求できます。796条、配偶者の同意がない縁組は、806条の2です。同意をしていない配偶者が、請求できます。知った後6か月か、追認で、取り消せなくなります。797条2項、監護をすべき父母などの同意がない縁組は、806条の3です。同意をしていない人が請求できます。798条、家庭裁判所の許可がない縁組は、807条です。養子、その実方の親族、代諾した者が請求できます。養子が成年に達した後6か月か、追認で、取り消せなくなります。最後に、詐欺や強迫による縁組は、808条1項です。婚姻の取消しの747条を準用して、取消しを請求できます。発見や脱却の後、6か月で取消権が消えます。婚姻は3か月でしたが、縁組では6か月です。
例を挙げます。19歳のAさんが、Cさんを養子にする縁組届を出して、受理されたとします。792条違反です。この縁組は、無効ではありません。有効です。ただし、Aさん又はその法定代理人が、804条で取消しを請求できます。Aさんが20歳に達した後6か月が過ぎたら、もう取消しはできません。反対に、列挙にない違反を見ます。夫婦の一方、Aさんだけが、未成年のCさんを養子にしました。795条違反です。でも、795条の違反は、取消事由に入っていません。ですから、縁組は有効のままです。また、証人が足りないなど、方式を欠くだけの縁組も、802条2号のただし書により、効力は妨げられません。取消事由でもありません。有効のままです。
取り消せる違反と、取り消せない違反で、結論が分かれるんです。条文の読み方は、そこです。無効も取消しも、列挙にあるものだけです。列挙になければ、窓口で見逃されて受理された縁組は、有効のままなのです。ここも、論文で論点になりうる箇所です。次に、取り消した場合の効力です。808条を見ます。
条文民法808条
民法第808条(婚姻の取消し等の規定の準用) 1 第七百四十七条及び第七百四十八条の規定は、縁組について準用する。この場合において、第七百四十七条第二項中「三箇月」とあるのは、「六箇月」と読み替えるものとする。 2 第七百六十九条及び第八百十六条の規定は、縁組の取消しについて準用する。
1項が、747条と748条を、縁組に準用します。婚姻の取消しの回で見た条文です。748条1項は、こう定めています。婚姻の取消しは、将来に向かってのみその効力を生ずる。これが縁組にも及びます。取り消すまでは、有効です。取り消した時から、養親子関係が終わります。総則の取消しは、さかのぼって無効でした。縁組の取消しがそうならないのは、取り消すまでの間、親子として暮らしてきた事実を、なかったことにはできないからです。たとえば、縁組から3年後に取り消されたとします。縁組の日から、取消しの日までの3年間は、養親子だったという事実は残ります。取消しの時から先だけが、他人に戻ります。748条2項と3項は、取消しの後の返還義務を定めています。ここでは名前だけにします。808条の2項は、816条の復氏を、取消しにも準用します。復氏は、離縁の効果で見ます。769条も準用されますが、立ち入りません。取消しを求めるのは、家庭裁判所への請求で、人事訴訟法2条3号の訴えです。
離縁の道 協議・死後・裁判
図:離縁の道
- 縁組をやめる=離縁(将来に向かって親子関係を終える)
- ①協議離縁(811条)=当事者の協議・届出で成立(812条が739条を準用)
- ②死後離縁(811条6項)=当事者の一方が死亡した後、生存当事者が家庭裁判所の許可を得てする
- ③裁判離縁(814条)=離縁の訴え
- 設例S4=夫婦の養親A・Bと養子C(12歳)
- Cの実の父D・実の母E(離婚している)
縁組をやめる方法に入ります。離縁です。無効や取消しとは、違います。有効に成立した縁組を、将来に向かって終わらせるのが離縁です。道は、3つあります。協議、死後、裁判です。設例を変えます。Aさんと、その妻のBさんは、夫婦で、12歳のCさんを養子にしました。Cさんの実の父は、Dさん、実の母は、Eさんで、2人は離婚しています。AさんとBさんは、離縁したいと考えています。まず、協議離縁です。811条です。
条文民法811条1項・2項
民法第811条1項・2項(協議上の離縁等) 1 縁組の当事者は、その協議で、離縁をすることができる。 2 養子が十五歳未満であるときは、その離縁は、養親と養子の離縁後にその法定代理人となるべき者との協議でこれをする。
1項が、原則です。縁組の当事者は、協議で離縁できます。婚姻の協議離婚と同じ型です。届出で成立します。812条が、739条などを準用しています。なお、812条には、改正法が成立していますが、まだ施行されていません。受理にも審査があります。813条です。離縁の届出は、要件に違反しないと認めた後でなければ、受理できません。ただし、違反して受理されても、離縁は、そのためにその効力を妨げられません。2項が、15歳未満の特則です。縁組のときは、法定代理人が代わって承諾しました。それと対になります。養子が15歳未満なら、離縁の協議は、養親と、養子の離縁後に法定代理人となるべき者との間でします。いまのCさんの法定代理人は、親権者である養親自身です。養親が、自分と協議することはできません。だから、離縁した後にCさんの法定代理人になる人を、相手にするのです。設例のCさんは12歳です。離縁後に法定代理人となるのは、DさんかEさんです。
条文民法811条3項〜5項
民法第811条3項〜5項(協議上の離縁等) 3 前項の場合において、養子の父母が離婚しているときは、その協議で、その双方又は一方を養子の離縁後にその親権者となるべき者と定めなければならない。 4 前項の協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所は、同項の父若しくは母又は養親の請求によって、協議に代わる審判をすることができる。この場合においては、第八百十九条第七項の規定を準用する。 5 第二項の法定代理人となるべき者がないときは、家庭裁判所は、養子の親族その他の利害関係人の請求によって、養子の離縁後にその未成年後見人となるべき者を選任する。
そこで3項です。養子の父母が離婚しているときは、協議で、双方か一方を、離縁後の親権者となるべき者と定めなければなりません。DさんとEさんは離婚しているので、離縁後の親権者を、協議で決めます。父母が離婚するときに、協議で親権者を決めたのと、同じ型です。協議が調わないときは、4項で、家庭裁判所が審判をします。2項の法定代理人となるべき者がいないときは、5項で、未成年後見人となるべき者を選任します。3項から5項は、名前だけ覚えてください。
図:夫婦の養親と死後離縁
- 811条の2=養親が夫婦で、未成年者と離縁するときは、夫婦が共にする(ただし書=一方が意思を表示できないとき)
- 死後離縁(811条6項)=当事者の一方が死亡しても縁組は当然には終わらない→生存当事者が家庭裁判所の許可を得て離縁する
次に、AさんとBさんは夫婦の養親です。811条の2です。
条文民法811条の2
民法第811条の2(夫婦である養親と未成年者との離縁) 養親が夫婦である場合において未成年者と離縁をするには、夫婦が共にしなければならない。ただし、夫婦の一方がその意思を表示することができないときは、この限りでない。
読み解きます。夫婦の養親が、未成年者と離縁するには、夫婦が共にしなければなりません。縁組のときの、夫婦共同の原則に対応します。ですから、Aさんだけが離縁することは、原則としてできません。ただし、夫婦の一方が意思を表示できないときは、この限りではありません。
条文民法811条6項
民法第811条6項(協議上の離縁等) 6 縁組の当事者の一方が死亡した後に生存当事者が離縁をしようとするときは、家庭裁判所の許可を得て、これをすることができる。
次に、死後離縁です。6項です。ここを、押さえてください。死亡しただけでは、縁組は終わりません。たとえば、養親のAさんが亡くなりました。それでも、AさんとCさんの縁組は、当然には終わりません。Cさんが縁組をやめたいなら、家庭裁判所の許可を得て、離縁します。縁組が続くので、Cさんと、Aさんの親やきょうだいとの親族関係も、続いています。離縁すれば、その関係が終わります。そこで、その離縁が身勝手なものでないかを、家庭裁判所が確かめてから許すのです。
図:裁判離縁
- 814条
- 離縁の訴えの原因は3つに限る=①悪意で遺棄された②生死が3年以上明らかでない③縁組を継続し難い重大な事由。裁量棄却(770条2項の準用)=1号・2号だけ。養子が15歳未満=815条。訴えの前に調停。
3つ目は、裁判離縁です。協議がまとまらないとき、訴えで離縁を求めます。814条です。
条文民法814条
民法第814条(裁判上の離縁) 1 縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。 一 他の一方から悪意で遺棄されたとき。 二 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。 三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。 2 第七百七十条第二項の規定は、前項第一号及び第二号に掲げる場合について準用する。
読み解きます。離縁の訴えを起こせるのは、3つの場合に限られます。1号は、他の一方から悪意で遺棄されたとき。2号は、他の一方の生死が3年以上明らかでないとき。3号は、その他縁組を継続し難い重大な事由があるときです。ここで、思い出してください。裁判離婚の原因と、裁判所が離婚の請求を棄却できる場合は、どれでしたか?裁判離婚の原因があっても、裁判所が一切の事情を考慮して、婚姻の継続を相当と認めるときは、請求を棄却できました。770条2項です。確か、1号から3号の事由のときだけでした。814条2項が、770条2項を準用します。ただし、準用されるのは、1号と2号です。つまり、悪意の遺棄と、生死不明のときは、一切の事情を考慮して、縁組の継続を相当と認めるなら、離縁の請求を棄却できます。3号の、縁組を継続し難い重大な事由には、この準用がありません。理由は、裁判離婚の4号に裁量棄却が働かないのと同じで、説明のための整理です。3号は、縁組を続けるのは相当でない、という判断を、要件そのものが含んでいます。重ねて、続けるのが相当かを問うと、二重になるからです。例です。養親が養子を、悪意で遺棄したとします。養子から離縁の訴えが出ました。原因は、1号にあります。それでも、裁判所が、一切の事情を考慮して、縁組を続けるのが相当だと認めれば、請求は棄却されます。3号の事由なら、この棄却の仕組みは、準用されません。補足です。養子が15歳に達しない間は、815条が適用されます。離縁の訴えは、811条で協議をする権利のある人から、又は、その人に対して、起こします。また、離縁の訴えにも、離婚と同じく、まず調停をする、という調停前置があります。調停離縁、審判離縁といった形で終わることもあります。ここは、名前だけです。
離縁の効果 親族関係と復氏
図:離縁の効果
- 設例S4
- 729条=養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と、養親及びその血族との親族関係は終了する。実の父母D・Eとの関係は縁組の間も続いていたので、離縁後も続く。816条1項=縁組前の氏に復する。ただし書=配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁した場合は復氏しない。2項=縁組の日から7年経過後に復氏した者は、離縁の日から3か月以内の届出で、離縁の際の氏(養親の氏)を称することができる。
最後に、離縁の効果です。親族関係と、氏の2つです。
条文民法729条
民法第729条(離縁による親族関係の終了) 養子及びその配偶者並びに養子の直系卑属及びその配偶者と養親及びその血族との親族関係は、離縁によって終了する。
読み解きます。離縁によって、養方との親族関係が終わります。範囲は、養子とその配偶者、養子の直系卑属とその配偶者と、養親とその血族の間です。親族の最初の回で見た、親族関係の終了です。設例では、CさんとAさん、Bさんと、その血族との関係が、終わります。他方、実の父のDさん、実の母のEさんとの関係は、縁組の間も続いていたので、そのまま続きます。離縁の効果は、養方の関係だけを終わらせます。ここでいう養子の直系卑属は、縁組の後に生まれた養子の子などです。縁組の前に生まれた養子の子は、前の回で見たとおり、はじめから養親との親族関係が生じていません。離縁で終わらせる関係が、もともと無いのです。縁組の取消しでも、養方との親族関係は終わります。ただ、根拠になる条文は、729条とは別です。729条が書いているのは、離縁によって終了する、ということだけです。取消しは、離縁ではありません。取消しで、縁組そのものが将来に向かってなくなるので、縁組から生じた親族関係も、一緒に終わるのです。条文は、808条1項が準用する748条1項です。答案で取消しの効果を書くときは、729条ではなく、この条文を挙げてください。次に、氏です。816条です。
条文民法816条
民法第816条(離縁による復氏等) 1 養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。 2 縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。
読み解きます。1項本文。養子は、離縁によって、縁組前の氏に復します。これが復氏です。設例で見ます。Cさんが、AさんとBさんの両方と離縁するなら、縁組前の氏に復します。ただし書です。もし、Cさんが成年に達した後に、Aさんだけと離縁して、Bさんとの縁組が続くなら、復氏しません。Cさんは、まだBさんの養子です。養子は養親の氏を名乗るので、夫婦で同じ氏のBさんの氏を、そのまま名乗り続けるのです。2項です。縁組の日から7年を経過した後に復氏した人は、離縁の日から3か月以内に届け出れば、離縁のときに称していた氏、つまり養親の氏を称し続けられます。離婚のときの婚氏続称と、同じ型です。長く名乗ってきた氏が、離縁で急に変わると、学校や仕事で困ることがあるからです。設例のCさんは、12歳で縁組しました。縁組から7年たたないうちに離縁すれば、この届出はできず、縁組前の氏に戻ります。設例を少し変えて、Cさんが5歳で縁組していて、のちに13歳で離縁するなら、7年がたっています。3か月以内に届け出れば、養親の氏を称し続けられます。整理します。縁組、離縁、取消しを、並べて比べます。
図:縁組・離縁・取消しの対比
- 縁組の日から=養子は養親の嫡出子の身分を取得・養親の氏・養親とその血族との間に親族関係が生じる(809条・810条・727条)
- 離縁=将来に向かって終了・養方との親族関係は終了(729条)・縁組前の氏に復する(816条)
- 取消し=将来に向かってのみ効力を生ずる(808条1項→748条1項)・氏は816条を準用(808条2項)
- 実方との親族関係=縁組の間も離縁後も続く
縁組で生じた関係は、離縁か取消しで、将来に向かって終わります。氏も、復氏です。実の父母との関係は、どの場面でも続きます。
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図:今日のまとめ
- 1=無効(802条)と取消し(803条)
- 代諾権のない者の代諾縁組は、養子が15歳に達した後に追認でき、はじめから有効(116条ただし書は適用しない)
- 取消しは804〜808条に限る・将来効
- 2=離縁の道
- 協議(15歳未満は離縁後の法定代理人となるべき者と・夫婦は共同)・死後(家庭裁判所の許可)・裁判(3つの原因・1号2号だけ裁量棄却)
- 3=離縁の効果
- 729条(養方との親族関係の終了)・816条(復氏)
最後にまとめます。柱は、3本です。1本目。無効と取消しです。無効は、802条の場合に限られます。代諾権のない者がした代諾縁組は、養子が15歳に達した後に追認でき、はじめから有効になります。116条ただし書は、適用されません。取消しは、803条により、804条から808条の場合に限られます。取消しは、将来に向かってのみ効力を生じます。2本目。離縁の道です。協議は、15歳未満なら離縁後の法定代理人となるべき者と、夫婦の養親なら共同でします。死後離縁は、家庭裁判所の許可が要ります。裁判離縁は、3つの原因で、1号と2号に限り、裁量棄却があります。3本目。離縁の効果です。養方との親族関係は終わります。氏は、縁組前の氏に復します。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁したときは、復氏しません。冒頭の答えです。いまのCさんは、15歳に達した後なので、追認できます。追認すれば、縁組は、はじめから有効です。116条ただし書は、適用されません。
問題があったときと、やめるときを、分けて見る、ということですね。次の回は、実の親との関係を断ち切る、特別養子縁組を見ます。
参照条文
- 民法802条
- 民法803条
- 民法808条
- 民法811条1項・2項
- 民法811条3項〜5項
- 民法811条の2
- 民法811条6項
- 民法814条
- 民法729条
- 民法816条