民法ゼロから民法#338

特別養子縁組

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第7章 親族 #338/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

実の親との縁は、縁組で切れるのか

冒頭の設例。A(養親になる夫・33歳)とB(養親になる妻・24歳)は夫婦。C(子・2歳・乳児院で育つ)。D(Cの実の母・27歳・病気で働けず、Cを育てられない)。E(Cの実の兄・5歳・Dのもとで暮らす)。問い=AとBがCを自分たちの子として迎えたとき、CとDの法律上の関係は残るのか。 図:冒頭の設例

  • A(養親になる夫・33歳)とB(養親になる妻・24歳)は夫婦
  • C(子・2歳・乳児院で育つ)
  • D(Cの実の母・27歳・病気で働けず、Cを育てられない)
  • E(Cの実の兄・5歳・Dのもとで暮らす)
  • 問い=AとBがCを自分たちの子として迎えたとき、CとDの法律上の関係は残るのか

今日の問いは、1つです。AさんとBさんの縁組が認められたあと、Cさんと、実の母のDさんとの法律上の関係は、残るのでしょうか。答えは、あとで確かめます。前の回の終わりに予告した、特別養子縁組です。縁組には、2種類ありました。普通養子と、特別養子です。普通養子は、前の3回で見ました。縁組のあとも、養子と実の父母、つまり実方との親子関係は、続くのでした。今日は、その実方との関係が終わる縁組を見ます。

今日の地図。①成立(家庭裁判所の審判)②要件(養親・養子・父母の同意・要保護性)③手続(2段階・試験養育)④効果(実方との親族関係の終了)⑤離縁。核心の1行=特別養子は、家庭裁判所の審判で成立し、実方との親族関係が終わる縁組。 図:今日の地図

  • ①成立(家庭裁判所の審判)②要件(養親・養子・父母の同意・要保護性)③手続(2段階・試験養育)④効果(実方との親族関係の終了)⑤離縁
  • 核心の1行=特別養子は、家庭裁判所の審判で成立し、実方との親族関係が終わる縁組

今日の地図です。5つ進みます。①成立。②要件。③手続。④効果。⑤離縁。核心を、先に1行で言います。特別養子は、家庭裁判所の審判で成立し、実方との親族関係が終わる縁組です。貫く軸は、1本です。実の親子の関係を、法律上なくす縁組だから、当事者の合意では足りません。国、つまり家庭裁判所が、実の親の側と、養親の側の両方を確かめてから成立させます。要件は、すべてこの2方向に分けられます。

成立は届出ではなく審判 817条の2

成立の比較。普通養子=当事者の合意+届出(799条・739条)。特別養子=家庭裁判所の審判(817条の2)。請求できるのは養親となる者。審判の確定後に戸籍の届出をするが、縁組はこの届出で成立するのではない。 図:成立の比較

  • 普通養子=当事者の合意+届出(799条・739条)
  • 特別養子=家庭裁判所の審判(817条の2)
  • 請求できるのは養親となる者
  • 審判の確定後に戸籍の届出をするが、縁組はこの届出で成立するのではない

まず、成立です。817条の2を見ます。

条文民法817条の2

民法第817条の2(特別養子縁組の成立) 1 家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。 2 前項に規定する請求をするには、第七百九十四条又は第七百九十八条の許可を得ることを要しない。

読み解きます。1項です。特別養子縁組を成立させるのは、家庭裁判所です。養親となる者の請求によります。しかも、条文自身が、特別養子縁組を、実方の血族との親族関係が終了する縁組、と定義しています。普通養子は、当事者の合意と届出で成立しました。特別養子は違います。審判で成立します。審判が確定したあと、戸籍の届出をしますが、これは審判の結果を戸籍に反映させる届出です。縁組は、この届出で成立するのではありません。設例でいえば、AさんとBさんが家庭裁判所に請求し、審判で縁組が成立します。役所に届け出るだけでは、特別養子にはなりません。

どうして、裁判所が出てくるんですか。実の親子の関係を断ち切るという、重い効果があるからです。当事者の合意だけで、実の親との関係を消せるとしたら、子どもの利益が守れません。そこで、国が先に要件を審査します。請求できるのは、養親となる者です。2項は、794条と798条の許可を得なくてよい、としています。後見人が被後見人を養子にするときの許可と、未成年者を養子にするときの許可でした。特別養子では、家庭裁判所が、成立の審判の中で自分で判断するので、別に許可は要りません。暗記は、これです。審判で成立。請求は、養親となる者。

養親になれる人 817条の3と817条の4

養親の要件。配偶者のある者(817条の3第1項)・夫婦共同(同条2項本文)・連れ子は単独可(同条2項ただし書)・25歳以上(817条の4本文)・夫婦の一方が25歳未満でも20歳以上ならよい(ただし書)。冒頭の設例=Aは33歳、Bは24歳=ただし書で可。普通養子=20歳以上(792条)・単身でもよい。 図:養親の要件

  • 配偶者のある者(817条の3第1項)・夫婦共同(同条2項本文)・連れ子は単独可(同条2項ただし書)・25歳以上(817条の4本文)・夫婦の一方が25歳未満でも20歳以上ならよい(ただし書)
  • 冒頭の設例=Aは33歳、Bは24歳=ただし書で可
  • 普通養子=20歳以上(792条)・単身でもよい

次は、養親の側の要件です。817条の3と、817条の4です。

条文民法817条の3

民法第817条の3(養親の夫婦共同縁組) 1 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。 2 夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。

読み解きます。1項。養親になれるのは、配偶者のある人だけです。独身では、なれません。2項。夫婦の一方は、他の一方が養親にならないときは、養親になれません。つまり、夫婦は共同で養親になります。ただし書です。夫婦の一方が、他の一方の嫡出である子の養親になる場合は、共同でなくてもかまいません。いわゆる連れ子です。ここは、あとで設例を変えて見ます。

条文民法817条の4

民法第817条の4(養親となる者の年齢) 二十五歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が二十五歳に達していない場合においても、その者が二十歳に達しているときは、この限りでない。

年齢です。原則は、25歳以上です。ただし書で、夫婦の一方が25歳に達していなくても、20歳に達していれば、よいとされます。その場合も、もう一方は25歳以上です。設例で見ます。Aさんは33歳、Bさんは24歳です。Bさんは25歳に達していません。でも、20歳には達しています。ですから、ただし書で、養親になれます。反対に、Bさんが19歳なら、なれません。普通養子と比べます。普通養子は、20歳以上であれば、独身でもなれました。特別養子は、配偶者のある人で、夫婦共同で、25歳以上です。一方は、20歳でも足ります。

どうして、独身ではだめで、年齢も高いんですか。特別養子は、実の親に代わって、ずっと続く家庭を子に用意する縁組だからです。そこで、父と母のそろった夫婦で迎えることにし、親として長く子を育てられるだけの年齢を求めています。これが、養親の側を確かめる、ということです。

養子になれる子の年齢 817条の5

養子の年齢の時間軸。請求の時=15歳に達していない(817条の5第1項前段)/特別養子縁組が成立するまで=18歳に達していない(同項後段)。例外(2項)=15歳に達する前から養親となる者に監護され、請求できなかったやむを得ない事由があるときは、前段の15歳の線は適用しない。18歳の線に例外はない。3項=15歳に達している子は本人の同意が必要。冒頭の設例=Cは2歳で、どちらも満たす。 図:養子の年齢の時間軸

  • 請求の時=15歳に達していない(817条の5第1項前段)/特別養子縁組が成立するまで=18歳に達していない(同項後段)
  • 例外(2項)=15歳に達する前から養親となる者に監護され、請求できなかったやむを得ない事由があるときは、前段の15歳の線は適用しない
  • 18歳の線に例外はない
  • 3項=15歳に達している子は本人の同意が必要
  • 冒頭の設例=Cは2歳で、どちらも満たす

次は、子の側です。まず、年齢です。817条の5です。

条文民法817条の5

民法第817条の5(養子となる者の年齢) 1 第八百十七条の二に規定する請求の時に十五歳に達している者は、養子となることができない。特別養子縁組が成立するまでに十八歳に達した者についても、同様とする。 2 前項前段の規定は、養子となる者が十五歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合において、十五歳に達するまでに第八百十七条の二に規定する請求がされなかったことについてやむを得ない事由があるときは、適用しない。 3 養子となる者が十五歳に達している場合においては、特別養子縁組の成立には、その者の同意がなければならない。

読み解きます。基準になる時が、2つあります。1つ目は、請求の時です。請求の時に15歳に達している人は、養子になれません。2つ目は、成立するまでです。成立するまでに18歳に達した人も、養子になれません。15歳と18歳、どちらが基準なんですか。両方です。請求の時は15歳未満で、成立までは18歳未満です。時間軸で考えると分かりやすくなります。まず請求の時に、15歳の線を見ます。そのあと、成立の審判の時までに、18歳の線を見ます。なぜ15歳なのか。15歳になると、普通養子なら、自分で縁組の承諾ができます。前に見た、15歳未満の代諾の線です。特別養子が主に守るのは、まだ自分では決められない年齢の子です。そして、18歳は成年です。成年に達した人を、親の監護が必要な子として扱う縁組は、成立させません。2項の例外です。15歳に達する前から、養親となる者に引き続き監護されていて、15歳までに請求できなかったことに、やむを得ない事由があるときは、請求の時の15歳の線は、適用されません。ただし、例外が及ぶのは、前段だけです。18歳の線には、例外がありません。18歳は成年です。どんな事情があっても、成年の人を、監護の必要な子として迎える縁組にはしません。3項です。15歳以上の子が養子になるのは、2つの場面です。1つは、2項の例外で、15歳を過ぎてから請求された場合です。もう1つは、14歳で請求して、成立までに15歳になった場合です。15歳になれば、自分で決められる年齢なので、本人の同意が必要になります。これは、あとで見る父母の同意とは別です。

特別養子には、15歳未満の子に代わって法定代理人が承諾する仕組みはありません。実の父母は、817条の6の同意で関わります。設例のCさんは、2歳です。請求の時に15歳未満で、成立までも18歳未満です。どちらも満たします。普通養子には、年齢の上限はありませんでした。ここも違いです。

父母の同意と、同意の撤回 817条の6

父母の同意(817条の6)。原則=養子となる者の父母の同意が必要。例外(ただし書)=父母が意思を表示できない場合/父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合。同意の撤回の制限(家事事件手続法164条の2第5項)=同意は、①出生の日から2か月を経過した後にされ、②調査官の調査を経て書面を提出してされたものか、審問の期日においてされたものなら、同意の日から2週間を経過した後は撤回できない。 図:父母の同意(817条の6)

  • 原則=養子となる者の父母の同意が必要。例外(ただし書)=父母が意思を表示できない場合
  • 父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合。同意の撤回の制限(家事事件手続法164条の2第5項)=同意は、①出生の日から2か月を経過した後にされ、②調査官の調査を経て書面を提出してされたものか、審問の期日においてされたものなら、同意の日から2週間を経過した後は撤回できない。

続いて、実の親の側の要件です。817条の6です。

条文民法817条の6

民法第817条の6(父母の同意) 特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。

読み解きます。本文は、養子となる者の父母の同意が必要、です。実の親の関係が消えるのですから、実の親の同意を求めるのは、当然です。ただし書は、2つの場合に、同意を不要にします。1つ目は、父母が意思を表示できない場合。2つ目は、父母による虐待、悪意の遺棄など、養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合です。設例では、Dさんが同意する場面です。これは本文のとおりです。仮に、Dさんが虐待していた場合は、ただし書で、同意は要りません。ただ、そのときも、子を実の親に任せられない事情、つまり、このあと見る要保護性は、別に必要です。もう1つ、同意の撤回の制限があります。家事事件手続法に、規定があります。同意は、①出生の日から2か月を経過した後にされ、かつ、②家庭裁判所調査官の調査を経て書面でされたか、審問の期日でされたものであれば、同意をした日から2週間を経過した後は、撤回できません。2週間の間は、撤回できます。2か月の線は、出産の直後は、気持ちが大きく揺れる時期だからです。その時期の同意では、撤回を縛りません。家庭裁判所調査官は、家庭の事情を調べる、裁判所の専門の職員です。審問の期日は、裁判官が、本人から直接、話を聞く場です。裁判所が、本人の意思をきちんと確かめた同意だから、あとから撤回できなくなります。設例で見ます。Dさんが、Cさんの出生から2か月を経過した後に、審問の期日で同意しました。その日から2週間がたてば、もう撤回できません。養親となる者が、実の親の気持ちの変化に、長く左右されないようにするためです。

要保護性 817条の7

要保護性(817条の7)。2つの要件=①父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある②子の利益のため特に必要があると認める。同意(817条の6)と要保護性(817条の7)は別々の要件。同意があっても要保護性が無ければ成立しない。同意が不要でも要保護性は要る。 図:要保護性

  • 817条の7
  • 2つの要件=①父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある②子の利益のため特に必要があると認める。同意(817条の6)と要保護性(817条の7)は別々の要件。同意があっても要保護性が無ければ成立しない。同意が不要でも要保護性は要る。

ここで、1つ確認します。Dさんが同意していれば、特別養子縁組は成立するのでしょうか。成立しません。もう1つの要件があります。817条の7です。

条文民法817条の7

民法第817条の7(子の利益のための特別の必要性) 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。

読み解きます。要件は、2つです。1つ目。父母による監護が、著しく困難か不適当であるなど、特別の事情があること。2つ目。子の利益のため、特に必要があると認められること。これが、要保護性です。設例のDさんは、病気で働けず、Cさんを育てられません。Cさんは、乳児院で育っています。1つ目の事情に、あたりうる場合です。虐待されている子や、施設で暮らす子が、あたりやすい場面です。なぜ、同意だけでは足りないのか。実の親子の関係を消すのは、子のためにそれが必要なときだけだからです。大人どうしの合意で、子の親子関係を付け替えさせない、ということです。反対の場合を見ます。仮に、Dさんが元気で、Cさんを十分に育てられるとします。それでも、Dさんが同意し、AさんとBさんも強く望んでいる。この場合は、特別の事情がないので、特別養子縁組は成立しません。整理します。817条の6の同意と、817条の7の要保護性は、別々の要件です。同意があっても、要保護性がなければ成立しません。同意が不要な場合でも、要保護性は必要です。両方、と覚えてください。

2段階の手続と試験養育 817条の8

手続のタイムライン。申立て(特別養子縁組の成立の申立てと特別養子適格の確認の申立てを同時に)→第1段階=特別養子適格の確認の審判(実の親の側=817条の6の同意と817条の7の特別の事情)→試験養育6か月以上(817条の8)→第2段階=特別養子縁組の成立の審判(養親と養子の適合)→確定→戸籍の届出。成立の審判は適格確認の審判と同時にしてよいが、適格確認の審判が確定するまでは確定しない(家事事件手続法164条11項)。18歳に達した日以後は確定しない(13項)。 図:手続のタイムライン

  • 申立て(特別養子縁組の成立の申立てと特別養子適格の確認の申立てを同時に)→第1段階=特別養子適格の確認の審判(実の親の側=817条の6の同意と817条の7の特別の事情)→試験養育6か月以上(817条の8)→第2段階=特別養子縁組の成立の審判(養親と養子の適合)→確定→戸籍の届出
  • 成立の審判は適格確認の審判と同時にしてよいが、適格確認の審判が確定するまでは確定しない(家事事件手続法164条11項)
  • 18歳に達した日以後は確定しない(13項)

次は、手続です。特別養子縁組は、審判が2段階に分かれます。第1段階は、特別養子適格の確認の審判です。ここでは、実の親の側の事情を確かめます。817条の6の同意の要件があること。そして、817条の7の、父母による監護が著しく困難又は不適当であることなど、特別の事情にあたること。以上、この2つです。第2段階は、特別養子縁組の成立の審判です。ここでは、養親と養子の適合を見ます。養親となる者による監護の状況、そして子の利益のため特に必要かどうかなどです。817条の7の要保護性は、2つの段階に分かれて出てきます。前半の、特別の事情は、第1段階で見ます。後半の、子の利益のため特に必要かどうかは、第2段階で見ます。

申立てと時期の制限。申立ては養親となる者が2つ同時に。適格確認は出生の日から2か月を経過する日まで・18歳に達した日以後はできない。児童相談所長は適格の確認だけを申し立てられる(その審判は成立の申立ての日の6か月前以後に確定したものに限る)。成立の審判は適格確認の審判が確定するまで確定しない(11項)・18歳に達した日以後は確定しない(13項)。 図:申立てと時期の制限

  • 申立ては養親となる者が2つ同時に
  • 適格確認は出生の日から2か月を経過する日まで・18歳に達した日以後はできない
  • 児童相談所長は適格の確認だけを申し立てられる(その審判は成立の申立ての日の6か月前以後に確定したものに限る)
  • 成立の審判は適格確認の審判が確定するまで確定しない(11項)・18歳に達した日以後は確定しない(13項)

申立ては、養親となる者が、この2つを同時にします。適格の確認の申立ては、成立の申立てと同時にしなければなりません。どの養親との縁組かが決まらないまま、実の親の側だけを判断することはしない、ということです。申立ては同時でも、確定するのは、第1段階が先です。なお、出生の日から2か月を経過する日までは、適格の確認の審判はできません。同意の撤回で見たのと同じ、2か月の線です。18歳に達した日以後も、できません。児童相談所長も、適格の確認だけを申し立てることができます。児童相談所は、虐待などから子を守るために、都道府県などが置く機関です。ただし、その審判は、成立の申立ての日の6か月前以後に確定したものに限られます。つまり、成立の申立ては、その審判の確定から6か月以内にします。成立の審判は、適格の確認の審判と同時にしてよいとされています。ただし、成立の審判は、適格の確認の審判が確定するまでは、確定しません。そして、養子となるべき者が18歳に達した日以後も、確定しません。817条の5の、成立までに18歳未満、という線を、手続の側から言い直したものです。

手続のタイムライン(設例で並べる)。申立て(同時)→第1段階=適格の確認の審判→試験養育6か月以上(817条の8)→第2段階=成立の審判→確定→戸籍の届出。 図:手続のタイムライン

  • 設例で並べる
  • 申立て(同時)→第1段階=適格の確認の審判→試験養育6か月以上(817条の8)→第2段階=成立の審判→確定→戸籍の届出。

設例で並べます。AさんとBさんが、2つの申立てを同時にします。申立てのあとも、2人はCさんを育てます。その間に、第1段階で、Dさんの同意と、Dさんが病気でCさんを育てられない事情が確かめられ、適格の確認の審判が確定します。6か月以上の育ての様子を見て、第2段階の成立の審判がされ、確定したら戸籍の届出です。どうして、2段階に分けるんですか。実の親の側の事情を、先に確定させるためです。そうしないと、養親となる者は、実の親が同意を撤回するかもしれないという不安の中で、子を育てなければなりません。そのあいだに、試験養育があります。817条の8です。

条文民法817条の8

民法第817条の8(監護の状況) 1 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。 2 前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。

読み解きます。1項。成立させるには、養親となる者が、養子となる者を6か月以上の期間監護した状況を、考慮しなければなりません。2項。この期間は、請求の時から数えます。ただし、請求前の監護の状況が明らかなときは、請求前からの監護も数えられます。設例では、AさんとBさんがCさんを迎えて、6か月以上育てます。その様子を見て、家庭裁判所が、成立の審判をします。暗記は、こうです。申立ては同時。第1段階は、実の親の側。第2段階は、養親と養子の適合。試験養育は、6か月以上で、請求の時から数えます。ただし、請求前の監護が明らかなら、その分も数えます。

効果 実方との親族関係は終わる 817条の9

効果。817条の9=養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する(ただし書=817条の3第2項ただし書の他の一方及びその血族との関係は終わらない)。冒頭の設例=CとD・E・Dの親族との親族関係はすべて終わる。設例を変えて(連れ子)=A(再婚した夫・30歳)、B(妻・28歳)、C(Bの連れ子・3歳)、D(Cの実の父で、Bの前夫)。AがCを特別養子にしても、CとBの関係は続く。終わるのはDおよびその血族との関係だけ。 図:効果

  • 817条の9=養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する(ただし書=817条の3第2項ただし書の他の一方及びその血族との関係は終わらない)
  • 冒頭の設例=CとD・E・Dの親族との親族関係はすべて終わる
  • 設例を変えて(連れ子)=A(再婚した夫・30歳)、B(妻・28歳)、C(Bの連れ子・3歳)、D(Cの実の父で、Bの前夫)
  • AがCを特別養子にしても、CとBの関係は続く
  • 終わるのはDおよびその血族との関係だけ

次は、効果です。冒頭の問いに戻ります。ここで、前回までの内容を1つ思い出してください。普通養子では、縁組のあと、養子と実の父母との親族関係は、どうなるのでしたか?縁組のあとも、続くんでしたよね。実の親の相続人にもなれました。特別養子は、ここが逆になります。817条の9です。

条文民法817条の9

民法第817条の9(実方との親族関係の終了) 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。ただし、第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。

読み解きます。本文です。養子と、実方の父母とその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了します。設例です。AさんとBさんの特別養子縁組が成立すると、CさんとDさん、実の兄のEさん、Dさんの親族との親族関係が、すべて終わります。法律上は、他人になります。これが、冒頭の答えです。血のつながりがあっても、法律上の関係は残りません。そして、養方との関係は、縁組の日から生じます。養親とその血族との間に、血族間と同一の親族関係を生じる、という727条と、養親の嫡出子の身分を取得する、という809条です。特別養子も養子ですから、これらが働きます。実方との関係の相続については、第8章で扱います。ただし書です。817条の3第2項ただし書の、他の一方とその血族との関係は、終わりません。連れ子の場合です。設例を変えます。再婚した夫のAさんは30歳、妻のBさんは28歳です。Bさんには、3歳の連れ子のCさんがいます。Cさんは、Bさんと前夫のDさんの婚姻中に生まれた子です。AさんがCさんを特別養子にしました。Aさんだけが養親になれるのは、さきほどの817条の3第2項ただし書があるからです。このとき、終わるのは、Dさんと、その血族との関係だけです。Cさんと、実の母のBさんとの関係は、終わりません。なお、ただし書のかっこ書きは、特別養子縁組以外の縁組による養子を除いています。仮に、Cさんが、Bさんの普通養子だったとします。このときは、ただし書は使えず、AさんとBさんが、夫婦共同で養親になります。

残るもの=近親婚の制限。民法734条 1 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。 2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

  • 残るもの=近親婚の制限
  • 民法734条 1 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない
  • ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない
  • 2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする

ただし、関係が終わっても、残るものがあります。近親婚の制限です。前に見た、734条2項です。

条文民法734条

民法第734条(近親者間の婚姻の禁止) 1 直系血族又は三親等内の傍系血族の間では、婚姻をすることができない。ただし、養子と養方の傍系血族との間では、この限りでない。 2 第八百十七条の九の規定により親族関係が終了した後も、前項と同様とする。

734条2項は、817条の9の規定により親族関係が終了した後も、1項と同様、としています。つまり、直系血族や3親等内の傍系血族の婚姻の禁止は、特別養子縁組のあとも続きます。設例では、CさんとEさんです。2人は、同じ母の子で、2親等の傍系血族です。特別養子縁組で、親族関係は終わりましたが、結婚はできません。法律上の関係は終わっても、血のつながりそのものは、消えないからです。735条後段も、同じ型です。親族には、姻族も入ります。725条です。ですから、実方との姻族関係も、817条の9で終わります。それでも、直系姻族との婚姻は禁止されたままです。たとえば、縁組のときに、実の母に、Cさんの父ではない夫がいたなら、その人は、Cさんから見て直系姻族です。その人とも、結婚できません。設例のDさんは未婚なので、これは一般の例です。なお、離縁で養親との関係が終わったあとの制限は、736条です。養子の親権者は、養親です。連れ子の設例では、親権者は2人です。養親のAさんと、Aさんの配偶者である、実の母のBさんです。818条3項です。親権の中身は、次の回で扱います。暗記は、こうです。実方との親族関係は終わる。連れ子の実親の側は残る。近親婚の制限は残る。

離縁は原則できない 817条の10と817条の11

離縁の表。817条の10=離縁できるのは、次の両方に該当し、養子の利益のため特に必要があると認めるとき。①養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由がある②実父母が相当の監護をすることができる。請求できる人=養子・実父母・検察官(養親は請求できない)。家庭裁判所が離縁させる。817条の11=離縁の日から、実方との親族関係が復活する。 図:離縁の表

  • 817条の10=離縁できるのは、次の両方に該当し、養子の利益のため特に必要があると認めるとき
  • ①養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由がある②実父母が相当の監護をすることができる
  • 請求できる人=養子・実父母・検察官(養親は請求できない)
  • 家庭裁判所が離縁させる
  • 817条の11=離縁の日から、実方との親族関係が復活する

最後に、離縁です。ここで、もう1つ思い出してください。普通養子の離縁をすると、養方との親族関係は、どうなるのでしたか?729条で、養方との親族関係が終わるんでしたよね。実の親との関係は、縁組の間も続いているので、そのままでした。特別養子は、そもそも離縁が、原則できません。実の親子の関係を断ち切って、子に新しい家庭を与えた縁組だからです。817条の10です。

条文民法817条の10

民法第817条の10 (特別養子縁組の離縁) 1 次の各号のいずれにも該当する場合において、養子の利益のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所は、養子、実父母又は検察官の請求により、特別養子縁組の当事者を離縁させることができる。 一 養親による虐待、悪意の遺棄その他養子の利益を著しく害する事由があること。 二 実父母が相当の監護をすることができること。 2 離縁は、前項の規定による場合のほか、これをすることができない。

読み解きます。2項が、原則です。離縁は、1項の場合のほかは、できません。1項の要件は、2つの号の両方です。1号。養親による虐待、悪意の遺棄など、養子の利益を著しく害する事由があること。2号。実父母が相当の監護をすることができること。そのうえで、養子の利益のため特に必要があると認められると、家庭裁判所が離縁させます。請求できる人は、養子、実父母、検察官です。養親は、含まれません。検察官は、公益の代表として、子を守るために請求できる人として入っています。設例で見ます。数年後、AさんとBさんがCさんを虐待しました。そして、Dさんの病気は治って、生活が安定しました。この場合は、Dさん、Cさん、または検察官の請求で、離縁できる可能性があります。反対に、AさんやBさんが、やめたいと請求しても、認められません。

戻る先が無いまま縁組を解くと、子は行き場を失います。だから、離縁のあとの受け皿として、実の父母の監護が要件にされています。

条文民法817条の11

民法第817条の11 (離縁による実方との親族関係の回復) 養子と実父母及びその血族との間においては、離縁の日から、特別養子縁組によって終了した親族関係と同一の親族関係を生ずる。

読み解きます。離縁の日から、特別養子縁組で終わっていた実方との親族関係と、同一の親族関係が生じます。つまり、復活します。養親との関係は、普通養子と同じく、729条で終わります。普通養子の離縁と並べます。普通養子は、協議や裁判で離縁できて、養方との関係が終わり、実方との関係は、もともと続いています。特別養子は、原則できず、要件を満たしたときだけ、家庭裁判所の審判で離縁し、養方との関係が終わって、実方との関係が復活します。

今日の地図(保存版)

普通養子と特別養子の比較。成立=合意+届出(799条・739条)/家庭裁判所の審判(817条の2)。養親=20歳以上・単身でもよい(792条)・未成年者なら夫婦共同(795条)/配偶者あり・夫婦共同・25歳以上(一方は20歳でも可)。養子=年齢の上限なし/請求時15歳未満・成立まで18歳未満+父母の同意+要保護性。実方との関係=続く/終了(近親婚の制限は残る)。離縁=協議・裁判(811条・814条)/原則不可・審判(817条の10)・実方との関係が復活(817条の11)。 図:普通養子と特別養子の比較

  • 成立=合意+届出(799条・739条)/家庭裁判所の審判(817条の2)
  • 養親=20歳以上・単身でもよい(792条)・未成年者なら夫婦共同(795条)/配偶者あり・夫婦共同・25歳以上(一方は20歳でも可)
  • 養子=年齢の上限なし/請求時15歳未満・成立まで18歳未満+父母の同意+要保護性
  • 実方との関係=続く/終了(近親婚の制限は残る)
  • 離縁=協議・裁判(811条・814条)/原則不可・審判(817条の10)・実方との関係が復活(817条の11)

最後にまとめます。柱は、3本です。1本目。成立と要件です。家庭裁判所の審判で成立します。養親は、配偶者があり、夫婦共同で、25歳以上です。一方は、20歳でもかまいません。養子は、請求の時に15歳未満で、成立までに18歳未満です。そのうえで、父母の同意と、要保護性が、両方必要です。2本目。手続です。申立ては同時です。第1段階は、適格の確認で、実の親の側を見ます。第2段階は、成立の審判で、養親と養子の適合を見ます。試験養育は、6か月以上です。3本目。効果と離縁です。実方との親族関係は終わります。連れ子の実親の側は、残ります。近親婚の制限は、残ります。離縁は原則できず、離縁すると、実方との関係が復活します。冒頭の答えです。AさんとBさんの特別養子縁組が成立すれば、CさんとDさんとの親族関係は終わります。ただし、CさんとEさんの婚姻の制限は、残ります。

これで、養親子のブロックは終わりです。縁組の成立、縁組の効果と離縁、そして特別養子を見ました。

参照条文

  • 民法817条の2
  • 民法817条の3
  • 民法817条の4
  • 民法817条の5
  • 民法817条の6
  • 民法817条の7
  • 民法817条の8
  • 民法817条の9
  • 民法734条
  • 民法817条の10
  • 民法817条の11

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