民法ゼロから民法#341

共同親権の行使方法

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第7章 親族 #341/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

子の進学先で、離婚した父母の意見が割れたら

冒頭の設例。A(父)、B(母)、C(子・13歳・中学生)。AとBは離婚し、協議で双方を親権者と定めた。Cの進学先でAとBの意見が割れた。さらに、Cの名義で新しい預金口座を開きたい。問い=この2つは、二人で決めるのか、一人で決めてよいのか。 図:冒頭の設例

  • A(父)、B(母)、C(子・13歳・中学生)
  • AとBは離婚し、協議で双方を親権者と定めた
  • Cの進学先でAとBの意見が割れた
  • さらに、Cの名義で新しい預金口座を開きたい
  • 問い=この2つは、二人で決めるのか、一人で決めてよいのか

前の回の設例を、一言で受け直します。祖父が、10歳の孫に、預金を贈りました。孫の母が、そのお金で、自分の車を買いました。答えは、許されない、でした。管理は子のためで、流用した分は、成年に達したときの管理の計算で、返す責任を負います。前の回では、親権の中身を、2本柱に分けました。1本目は、監護と教育をあわせた、身上監護です。2本目は、財産の管理と、代表です。代表とは、子に代わって、契約などの法律行為をすることです。今日は、親権者が二人いるとき、この2本柱を、どう行使するかを見ます。今日の設例は、別の家族です。父がAさん、母がBさん、子がCさんです。

前の回の孫の親権者は、母だけでしたよね。今日は、違うのですか。違います。AさんとBさんは、離婚しました。協議で、双方を親権者と定めました。つまり、双方が親権者です。子のCさんは、13歳の中学生です。今日の問いは、2つです。Cさんの進学先で、AさんとBさんの意見が割れました。さらに、Cさんの名義で、新しい預金口座を開きたい。この2つは、二人で決めるのでしょうか。それとも、一人で決めてよいのでしょうか。親権者が二人いても、大事なことは二人で決めるのが筋です。ただ、毎日の細かなことまで合意を待つと、子の世話が回りません。この線引きが、今日の中心です。答えは、最後に確かめます。自分なりの見立てを、頭に置いたまま進みましょう。

今日の地図。①共同行使の原則(824条の2 第1項本文)②単独でできる場面と日常の行為(第1項ただし書・第2項)③協議が調わないとき(第3項・家庭裁判所)④共同の名義でした行為(825条)⑤監護者の権限(824条の3)⑥冒頭の問いの答え。核心の1行=双方が親権者なら、共同が原則。例外は、単独でできる場面と日常の行為。割れたら家庭裁判所。 図:今日の地図

  • ①共同行使の原則(824条の2 第1項本文)②単独でできる場面と日常の行為(第1項ただし書・第2項)③協議が調わないとき(第3項・家庭裁判所)④共同の名義でした行為(825条)⑤監護者の権限(824条の3)⑥冒頭の問いの答え
  • 核心の1行=双方が親権者なら、共同が原則
  • 例外は、単独でできる場面と日常の行為
  • 割れたら家庭裁判所

今日の地図です。6つ進みます。①共同行使の原則。②単独でできる場面と、日常の行為。③協議が調わないとき。④共同の名義でした行為。⑤監護者の権限。⑥冒頭の問いの答えです。核心を、先に1行で言います。双方が親権者なら、共同が原則です。例外は、単独でできる場面と、日常の行為です。意見が割れたら、家庭裁判所が出てきます。貫く軸は、1本です。親権は、子のために行う。だから、二人の意思をそろえるのが原則で、子のために動けないと困る場面だけが、単独です。この軸で、条文を読みます。

双方が親権者のときの行使方法 共同親権の行使方法・824条の2 第1項・第2項

設例。A(父)とB(母)は離婚し、協議で双方を親権者と定めた。C(子・13歳・中学生)。双方が親権者=共同して行うのが原則(824条の2 第1項本文)。単独でできる場面=第1項ただし書の3つ+第2項の日常の行為。 図:設例

  • A(父)とB(母)は離婚し、協議で双方を親権者と定めた
  • C(子・13歳・中学生)
  • 双方が親権者=共同して行うのが原則(824条の2 第1項本文)
  • 単独でできる場面=第1項ただし書の3つ+第2項の日常の行為

地図の①と②、共同の原則と、単独でできる場面です。冒頭で立てた設例を、もう一度整理します。父のAさんと、母のBさんが離婚して、協議で双方を親権者と定めました。子のCさんは、13歳の中学生です。あらためて、問いを立てます。進学先を決めるとき、Aさんは、Bさんに相談せずに決めてよいのか。習い事を1つ増やすときは、いちいち2人の合意が要るのか。その前に、親権者の決まり方の回を、思い出してください。双方が親権者のとき、一方が亡くなったら、誰が親権を行うのでしたか?残る一方が、1人で行うのでした。824条の2 第1項のただし書でした。824条の2の、第1項のただし書です。前の回で見た、824条のただし書とは、別の条文です。親権者の決まり方の回の途中で、次に見ると言っていた共同行使が、この話です。今日は、その中身を、全部見ます。では、なぜ共同が原則なのでしょうか。双方が親権者なら、2人とも、子の利益に責任を負っています。一方だけで決めると、もう一方が子のために考える場がなくなります。だから、2人の意思をそろえて行うのが原則です。

条文民法824条の2第1項・第2項

民法第824条の2(親権の行使方法等)第1項・第2項 1 親権は、父母が共同して行う。ただし、次に掲げるときは、その一方が行う。 一 その一方のみが親権者であるとき。 二 他の一方が親権を行うことができないとき。 三 子の利益のため急迫の事情があるとき。 2 父母は、その双方が親権者であるときであっても、前項本文の規定にかかわらず、監護及び教育に関する日常の行為に係る親権の行使を単独ですることができる。

共同の原則。824条の2 第1項本文=親権は父母が共同して行う。共同=共同の意思に基づくこと(双方の名義は不要・一方の名義でも他方が同意していればよい・同意は黙示でもよい)。この原則は代理だけでなく5条の同意にも及ぶ。必要なのは2人の署名ではなく、意思の一致。 図:共同の原則

  • 824条の2 第1項本文=親権は父母が共同して行う
  • 共同=共同の意思に基づくこと(双方の名義は不要・一方の名義でも他方が同意していればよい・同意は黙示でもよい)
  • この原則は代理だけでなく5条の同意にも及ぶ
  • 必要なのは2人の署名ではなく、意思の一致

1項本文です。親権は、父母が共同して行います。これが原則です。共同して行うとは、共同の意思に基づいて行う、という意味です。父母の双方の名義で行う必要はありません。一方の名義だけで行っても、他方が同意していれば、共同の意思があります。その同意は、黙示でも構いません。この原則は、代理だけでなく、5条の同意にも及びます。5条の同意とは、未成年の子が自分で契約するときに、親権者が与える同意です。子の契約に同意するときも、共同の意思で行います。書面に二人の名前を並べる必要はありません。必要なのは、共同の意思です。形ではなく、2人の意思が一致していることが要点です。次に、ただし書です。単独で行える場面は、3つあります。1つ目、一方のみが親権者であるとき。2つ目、他の一方が親権を行うことができないとき。この2つは、親権者の決まり方の回で見たとおりです。前の回の預金の設例は、1つ目に当たります。孫の親権者は、母だけだったからです。

単独でできる場面。1項ただし書3号=子の利益のため急迫の事情があるとき(協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に行使できず子の利益を害するおそれ・例=暴力や虐待を避ける避難/急ぐ医療行為/入学手続の期限が迫る)。2項=監護及び教育に関する日常の行為(例=食事や服装・習い事を1つ増やす・短期間の観光旅行・通常のワクチン接種)。日常の行為でない例=転居・進学先の決定・心身に重大な影響を与える医療行為。 図:単独でできる場面

  • 1項ただし書3号=子の利益のため急迫の事情があるとき(協議や家庭裁判所の手続を経ていては適時に行使できず子の利益を害するおそれ・例=暴力や虐待を避ける避難/急ぐ医療行為/入学手続の期限が迫る)
  • 2項=監護及び教育に関する日常の行為(例=食事や服装・習い事を1つ増やす・短期間の観光旅行・通常のワクチン接種)
  • 日常の行為でない例=転居・進学先の決定・心身に重大な影響を与える医療行為

3つ目が、新しい場面です。子の利益のため急迫の事情があるときです。急迫の事情とは、父母の協議や家庭裁判所の手続を経ていては、適時に親権を行使できず、子の利益を害するおそれがある場合です。例を挙げます。暴力や虐待を避けるために、子を連れて避難する場合。急いで医療行為を受けさせないと危ない場合。入学手続の期限が迫っている場合です。いずれも、ゆっくり協議をしている時間がありません。設例で見ます。Cさんが合格した学校の入学手続の期限が、2日後に迫っています。Aさんとは連絡が取れず、協議ができません。個別の事情によりますが、この場合は、Bさんが単独で手続できると考えられます。1項ただし書の3号です。2号ではありません。2号は、親権者の決まり方の回で見た、長い入院で意思を表示できないような場面です。Aさんは、親権を行えない状態にあるのではなく、いま連絡が取れないだけです。急ぐ理由は手続の期限なので、3号です。もう1つの単独の場面が、2項の、日常の行為です。双方が親権者でも、監護及び教育に関する日常の行為は、父母のどちらも、1人でできます。毎日の食事や服装まで、二人の合意を待っていては、子の世話が止まってしまいます。毎日の細かなことまで合意が要るのでは大変だ、という冒頭の心配には、こう答えられます。だから、日常の行為は、1人でできるのです。たとえば、食事や服装のこと、習い事を1つ増やすこと、短期間の観光目的の旅行、通常のワクチン接種などです。高校生の放課後のアルバイトの許可も、日常の行為の例とされています。前の回で、アルバイトには、823条の親権者の許可が要る、と見ました。高校生の放課後のアルバイトなら、その許可は日常の行為で、どちらの親権者も、1人で出せます。

これに当たらない例は、転居、進路に影響する進学先の決定、心身に重大な影響を与える医療行為です。進学先は、Cさんの人生の方向を左右します。ですから、AさんとBさんが、共同で決めます。ここで、前の回の預金の話とつながる問いです。この設例の、子のCさんの名義で、新しい預金口座を開くのは、日常の行為でしょうか?日常の行為には当たりません。2項が単独を認めるのは、監護及び教育に関する日常の行為です。財産の管理は、親権の2本柱のもう1本で、監護及び教育には入りません。前の回の言い方なら、貯金箱の番人の仕事です。ですから、Cさんの名義で預金口座を開くのは、原則どおり、AさんとBさんが共同で行います。

事例×結論の表。①習い事を1つ増やす=日常の行為→単独(824条の2 第2項)②進学先・転居=日常の行為ではない→共同(第1項本文)③入学手続の期限が2日後で、連絡が取れず協議できない=急迫の事情→単独(第1項ただし書3号)④Cの名義で預金口座を開く=財産の管理は日常の行為ではない→共同。 図:事例×結論の表

表で整理します。習い事を増やす。これは日常の行為で、単独でできます。進学先や転居。日常の行為ではないので、共同です。入学手続が迫って協議できない。急迫の事情なので、単独です。預金口座の開設。財産の管理なので、共同です。誤答は、2つあります。日常の行為だから、預金の管理も1人でできる。そして、共同とは、2人の署名が要る。どちらも違います。ここも、論文で論点になりうる箇所です。単独でできる根拠を、1項ただし書の何号か、あるいは2項かまで、特定して書けるようにしてください。

協議が調わないとき 家庭裁判所の審判・824条の2 第3項

審判の図。進学先で父Aと母Bの意見が割れる(協議が調わない)→父又は母の請求→家庭裁判所が、子の利益のため必要があると認めるとき、一方が単独でする旨を定める(824条の2 第3項)。審判の対象から外れるもの=第1項ただし書・第2項で単独でできる事項。 図:審判の図

  • 進学先で父Aと母Bの意見が割れる(協議が調わない)→父又は母の請求→家庭裁判所が、子の利益のため必要があると認めるとき、一方が単独でする旨を定める(824条の2 第3項)
  • 審判の対象から外れるもの=第1項ただし書・第2項で単独でできる事項

設例を続けます。Cさんの進学先について、AさんとBさんの意見が割れました。Aさんは公立を、Bさんは私立を望んでいます。協議が調いません。進学先の決定は、日常の行為でも、急迫の事情でもありません。どう決めるのでしょうか。3項です。

条文民法824条の2第3項

民法第824条の2(親権の行使方法等)第3項 3 特定の事項に係る親権の行使(第一項ただし書又は前項の規定により父母の一方が単独で行うことができるものを除く。)について、父母間に協議が調わない場合であって、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めることができる。

読み解きます。特定の事項について、父母の間に協議が調わない場合で、子の利益のため必要があると認めるときは、家庭裁判所は、父又は母の請求により、その事項の親権の行使を、父母の一方が単独でできる旨を定めることができます。設例なら、Bさんの請求で、家庭裁判所が、進学先の決定はBさんが単独でする、と定める形です。家庭裁判所が進学先そのものを決めるのではなく、どちらが単独で決めてよいかを定めるのです。なぜでしょうか。親権を行うのは、父母です。家庭裁判所が、親に代わって子を育てるわけではありません。だから、子の利益のために、この事項をどちらの親に任せるのがよいかを判断するのです。

カッコ書きは、審判の対象から外すものです。1項ただし書や2項で、すでに単独でできる事項は、審判の対象になりません。単独でできるのに、審判を求める必要がないからです。ですから、日常の行為で意見が割れても、3項の審判を請求する場面ではありません。縁組の承諾についても、この審判は使えます。ただし、797条4項が、子の利益のため特に必要と認めるときに限る、と絞っています。養子縁組の回で見たとおりです。よくある誤答は、協議が調わなければ、親権の行使は全部家庭裁判所が決める、というものです。違います。特定の事項について、父母の一方が単独でする旨を定めるのです。

共同の名義でした行為 825条と表見代理

設例。A(父)とB(母)は婚姻中で双方が親権者。C(子・14歳)は祖父から贈られた古い絵画を持つ。AはBが反対しているのに、A・B共同の名義で、Cに代わって絵画を古物商Xに売った。①Xが反対を知らなかった(善意)→825条で効力を妨げられない②Xが反対を知っていた(悪意)→825条の保護を受けない③Aだけの名義→825条の問題ではない。 図:設例

  • A(父)とB(母)は婚姻中で双方が親権者
  • C(子・14歳)は祖父から贈られた古い絵画を持つ
  • AはBが反対しているのに、A・B共同の名義で、Cに代わって絵画を古物商Xに売った
  • ①Xが反対を知らなかった(善意)→825条で効力を妨げられない②Xが反対を知っていた(悪意)→825条の保護を受けない③Aだけの名義→825条の問題ではない

共同の意思がないのに、共同の名義で契約が結ばれたとき、取引の相手方はどうなるのでしょうか。その前に、表見代理の回を思い出してください。110条の表見代理が成り立つには、相手方に何が必要でしたか?何らかの代理権があって、その範囲を超えた行為について、代理権があると信じる正当な理由があることでした。そのうえで、設例を立てます。今度は、離婚していない夫婦です。父のAさんと、母のBさんは、婚姻中で、双方が親権者です。14歳の子のCさんは、祖父から贈られた古い絵画を持っています。Aさんは、Bさんが反対しているのに、AさんとBさん共同の名義で、Cさんに代わって、その絵画を古物商のXさんに売りました。Bさんは反対していますから、共同の意思はありません。それでも、Xさんの目には、共同の名義の契約に見えます。825条です。

条文民法825条

民法第825条(父母の一方が共同の名義でした行為の効力) 父母が共同して親権を行う場合において、父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をし又は子がこれをすることに同意したときは、その行為は、他の一方の意思に反したときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りでない。

読み解きます。父母の一方が、共同の名義で、子に代わって法律行為をしたとき、または子の法律行為に同意したときは、他の一方の意思に反していても、そのために効力を妨げられません。ただし、相手方が悪意であったときは、この限りではありません。悪意とは、知っていることです。設例で2つに分けます。Xさんが、Bさんの反対を知らなかったなら、売買は有効です。Xさんが、Bさんの反対を知っていたなら、825条の保護は受けられません。効力が妨げられます。そのときは、共同の意思を欠いた行為として、無権代理の扱いになります。825条の性格は、一種の表見代理です。共同の名義という外観を信頼した相手方を守る規定です。110条と比べます。110条は、相手方に、正当な理由を求めます。825条の条文が除いているのは、相手方が悪意のときだけです。知らなかったことに過失があっても守られるかどうかは、条文には書かれていません。注意点は、825条は、共同の名義の場合に限る、ということです。Aさんが、Aさんだけの名義で売った場合は、825条の問題ではありません。Bさんの同意があれば、共同の意思があるので有効です。同意がなければ、無権代理です。相手方の保護は、110条などの、表見代理で考えます。

いつでも無効、ではありません。共同の名義なら、他方の意思に反していても、効力は妨げられません。条文が除くのは、相手方が悪意のときです。なお、親と子の利益がぶつかる行為の扱いは、別の回で見ます。

監護者の権限 824条の3

設例。A(父)とB(母)は離婚し、協議で双方を親権者と定め、子の監護をすべき者としてBを定めた(766条)。C(子・13歳)。Bは監護及び教育・居所の指定及び変更・営業の許可と取消し・制限を単独でできる(824条の3 第1項後段)。Aは妨げてはならない(第2項)。範囲は820条〜823条の事項だけ。Cの名義で預金口座を開く=財産の管理→A・Bが共同。 図:設例

  • A(父)とB(母)は離婚し、協議で双方を親権者と定め、子の監護をすべき者としてBを定めた(766条)
  • C(子・13歳)
  • Bは監護及び教育・居所の指定及び変更・営業の許可と取消し・制限を単独でできる(824条の3 第1項後段)
  • Aは妨げてはならない(第2項)
  • 範囲は820条〜823条の事項だけ
  • Cの名義で預金口座を開く=財産の管理→A・Bが共同

最後に、監護者の権限です。離婚の回で、子の監護をすべき者は、監護と教育、居所の指定などを単独でできる、と言いました。その条文が、824条の3です。設例を立てます。父のAさんと、母のBさんが離婚しました。協議で、双方を親権者と定めたうえで、子の監護をすべき者、つまり、子を手元で世話して育てる人として、Bさんを定めました。766条です。子のCさんは、13歳です。条文の前に、思い出してください。監護者を定める前の、さきほどの設例で、Cさんの進学先の決定は、共同でしたか、単独でしたか?日常の行為ではないので、共同でした。ところが、監護者を定めると、事情が変わります。

条文民法824条の3

民法第824条の3(監護者の権利義務) 1 第七百六十六条(第七百四十九条、第七百七十一条及び第七百八十八条において準用する場合を含む。)の規定により定められた子の監護をすべき者は、第八百二十条から第八百二十三条までに規定する事項について、親権を行う者と同一の権利義務を有する。この場合において、子の監護をすべき者は、単独で、子の監護及び教育、居所の指定及び変更並びに営業の許可、その許可の取消し及びその制限をすることができる。 2 前項の場合には、親権を行う者(子の監護をすべき者を除く。)は、子の監護をすべき者が同項後段の規定による行為をすることを妨げてはならない。

1項前段です。監護をすべき者は、820条から823条までの事項について、親権者と同一の権利義務を有します。後段です。そのうえで、監護と教育、居所の指定と変更、営業の許可、その取消しと制限を、単独でできます。前段は、監護者が扱える範囲を決めています。後段は、その範囲のうち、これらの事柄を、もう一方の親権者と相談しなくても、1人で決められることを、はっきりさせています。後段の営業の許可と、その取消しと制限は、前の回で見た、823条の、子が働くことへの許可の話です。2項です。監護者でない親権者は、監護者がこれらの行為をすることを、妨げてはなりません。設例では、Bさんは、Cさんの進学先も、居所の変更も、単独で決められます。進学先を決めるのは、子の教育のことなので、監護及び教育に入るからです。Aさんは、これを妨げてはなりません。なぜ、ここまで任せるのでしょうか。監護者は、子を手元で世話して育てる人です。教育や住む場所を決めるたびに、もう一方の合意を待っていては、毎日の世話が回りません。範囲は、820条から823条の事項だけです。824条の財産の管理と代表は、含まれません。離婚の回で見た766条4項が、監護の範囲の外では、父母の権利義務は変わらない、と定めているからです。財産の管理と代表は、2本柱のもう1本で、監護の範囲の外にあります。ですから、Cさんの名義で預金口座を開くのは、Bさんの単独ではできません。監護者のBさんも、親権者として、Aさんと共同で行います。

日常の行為との違いも、押さえておきます。日常の行為は、どちらの親権者も、日常の範囲でだけ、単独でできます。監護者の権限は、日常に限りません。進学先のような大きな事柄も、居所の変更も、単独でできます。その代わり、範囲は、身上監護の820条から823条までです。監護者でも、財産の管理は、1人ではできません。監護者の権限は、身上監護の範囲に限られます。財産の管理と代表は、共同が原則です。

今日の地図(保存版)

3本柱+冒頭の答え。①共同行使=共同が原則(共同の意思・名義は問わない)・単独でできる3つの場面(一方のみが親権者/他方が行えない/急迫の事情)と日常の行為(824条の2 第1項・第2項)②協議が調わないとき=家庭裁判所が特定の事項について一方が単独でする旨を定める(第3項)/共同の名義でした行為は他方の意思に反しても効力を妨げられない・相手方が悪意なら別(825条)③監護者=820条〜823条を単独で・財産の管理と代表は含まない(824条の3)。冒頭の答え=進学先は共同(割れたら家庭裁判所)・預金口座の開設も共同。

  • 3本柱+冒頭の答え
  • ①共同行使=共同が原則(共同の意思・名義は問わない)・単独でできる3つの場面(一方のみが親権者/他方が行えない/急迫の事情)と日常の行為(824条の2 第1項・第2項)②協議が調わないとき=家庭裁判所が特定の事項について一方が単独でする旨を定める(第3項)/共同の名義でした行為は他方の意思に反しても効力を妨げられない・相手方が悪意なら別(825条)③監護者=820条〜823条を単独で・財産の管理と代表は含まない(824条の3)
  • 冒頭の答え=進学先は共同(割れたら家庭裁判所)・預金口座の開設も共同

最後にまとめます。柱は、3本です。1本目。共同行使です。双方が親権者なら、共同が原則で、共同とは共同の意思のことです。名義は問いません。単独でできるのは、一方のみが親権者、他方が行えない、急迫の事情の3つの場面と、日常の行為です。2本目。協議が調わないときです。特定の事項について、家庭裁判所が、父または母の請求により、一方が単独でする旨を定めます。日常の行為と急迫の事情は、対象になりません。共同の名義でした行為は、他方の意思に反していても、効力を妨げられません。ただし、相手方が悪意なら別です。3本目。監護者です。820条から823条までの事項を、単独でできます。財産の管理と代表は、含まれません。冒頭の問いに戻ります。Cさんの進学先は、日常の行為ではないので、AさんとBさんが共同で決めるのが原則です。意見が割れて協議が調わなければ、家庭裁判所が、請求により、どちらかが単独で決めてよいと定めます。Cさんの名義で預金口座を開くのも、財産の管理で、日常の行為ではないので、共同が原則です。

共同が原則で、動けないときだけ単独、という筋が見えました。口座の開設は、日常の行為ではない、というのが意外でした。親権は、子のために行う。この軸を忘れなければ、条文の細かな違いも、整理できます。

参照条文

  • 民法824条の2第1項・第2項
  • 民法824条の2第3項
  • 民法825条
  • 民法824条の3

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