民法ゼロから民法#343

親権喪失・親権停止・管理権喪失

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第7章 親族 #343/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

手術を拒む親の判断を、止められるか

冒頭の設例。A(親・Bの親権者)、B(子・8歳・命に関わる手術が必要)、C(病院・医師)。Cは急いで手術をしたい。Aは宗教上の理由で、手術への同意を拒み続けている。問い=親の判断を、このまま通すしかないのか。親権をいったん止めることはできるか。 図:冒頭の設例

  • A(親・Bの親権者)、B(子・8歳・命に関わる手術が必要)、C(病院・医師)
  • Cは急いで手術をしたい
  • Aは宗教上の理由で、手術への同意を拒み続けている
  • 問い=親の判断を、このまま通すしかないのか
  • 親権をいったん止めることはできるか

設例です。8歳のBさんに、命に関わる手術が必要になりました。病院のCさんは、急いで手術をしたい。ところが、親のAさんが、宗教上の理由で、手術への同意を拒み続けています。Aさんは、Bさんの親権者です。子の治療を受けさせるかどうかは、ふつう親権者が決めます。今日の問いは、親の判断を、このまま通すしかないのか。親権をいったん止めることはできるか、です。親権は親のものだから、親の判断に従うしかないのか。子の命がかかる場面でも、それで済ませてよいのか。この問いが、今日の出発点です。答えは最後に確かめます。自分なりの見立てを、頭に置いて進んでください。前の回までを、一言で受け直します。親権は、親のための権利ではなく、子の利益のために、子の世話と財産の管理をする権限でした。ですから、親権が子の利益に反して使われているなら、国が手を入れる余地があります。その手段が、今日の3つの審判です。

今日の地図。①3つの制度の全体像②親権喪失③親権停止④管理権喪失⑤だれが申し立てられるか⑥審判を受けた後の親権の行方⑦3制度の比較⑧審判の取消し⑨辞任と回復。核心の1行=親権を止める道具は3つある。何を、どれだけの間、どれだけ重い要件で奪うかで区別する。 図:今日の地図

  • ①3つの制度の全体像②親権喪失③親権停止④管理権喪失⑤だれが申し立てられるか⑥審判を受けた後の親権の行方⑦3制度の比較⑧審判の取消し⑨辞任と回復
  • 核心の1行=親権を止める道具は3つある
  • 何を、どれだけの間、どれだけ重い要件で奪うかで区別する

今日の地図です。9つ進みます。①3つの制度の全体像。②親権喪失。③親権停止。④管理権喪失。⑤申立てができる人。⑥審判を受けたあと、親権がどこへ行くか。⑦3つの制度の比較。⑧審判の取消し。⑨親が自分から手放す、辞任と回復です。核心を、先に1行で言います。親権を止める道具は、3つあります。何を、どれだけの間、どれだけ重い要件で奪うかで、区別します。親権の中身は、子の世話と、子の財産の管理の、2つでした。名前は似ていますが、この2つのうちのどれを奪うかから並べれば、混ざりません。

親権を制限する3つの制度の全体像

親権の中身と3制度の守備範囲。親権の中身=①身上監護(子の世話・教育)②財産の管理と代表(子の財産を管理し、子に代わって法律行為をする)。親権喪失(834条)=①②の両方を失う・期間の定めなし。親権停止(834条の2)=①②の両方を、期間を定めて一時的に止める。管理権喪失(835条)=②だけを失う・①は残る。いずれも家庭裁判所の審判。 図:親権の中身と3制度の守備範囲

  • 親権の中身=①身上監護(子の世話・教育)②財産の管理と代表(子の財産を管理し、子に代わって法律行為をする)
  • 親権喪失(834条)=①②の両方を失う・期間の定めなし
  • 親権停止(834条の2)=①②の両方を、期間を定めて一時的に止める
  • 管理権喪失(835条)=②だけを失う・①は残る
  • いずれも家庭裁判所の審判

地図の①、全体像です。その前に、思い出してください。権利の濫用の回で、権利の濫用の効果は3段あると見ました。その3つ目、権利そのものを剥奪することができるのは、どういうときだけだったでしょうか?834条のような、はっきりした条文があるときだけでした。親が子を虐待したときに、家庭裁判所が親権を奪える、という例を挙げていました。あの回で名前だけ出した834条が、今日の中心の条文です。濫用だから取り上げられる、と一般化するのではありません。明文があるからこそ、奪えるのです。次に、親権の中身を確かめます。親権の中身は、2つでした。1つ目は、子の世話や教育をする身上監護です。2つ目は、子の財産を管理して、子に代わって法律行為をする、財産の管理と代表です。3つの審判は、この2つのうちのどれを奪うかで分かれます。たとえで言います。親権は、2つの鍵を束ねた鍵束です。1つは、子の暮らしの鍵。もう1つは、子の財布の鍵です。親権喪失は、鍵束ごと取り上げて、期限を決めずに返しません。親権停止は、鍵束を、期限をつけて預かります。管理権喪失は、財布の鍵だけを預かります。暮らしの鍵は、親の手に残ります。3つの名前を、条文で確かめます。親権喪失は834条、親権停止は834条の2、管理権喪失は835条です。いずれも、家庭裁判所が審判という形で決めます。審判とは、家庭裁判所が、申立てを受けて、結論を示す手続のことです。

もう1つ、押さえておくことがあります。虐待は、そもそも親権の外枠を超えています。外枠とは、親権で許される範囲のことです。親権者が子の人格を尊重し、体罰などをしてはならないことは、821条に定められています。外枠を超えた行為があり、それが子の利益を損なうときに、3つの審判が働きます。親が自分から親権を手放す辞任は、これらとは別の制度です。最後の9つ目で扱います。3つの使い分けは、問題の大きさと、回復の見込みで決まります。子の暮らしにも財産にも深刻な害があり、改善の見込みが乏しいなら、親権喪失です。回復の見込みがあるなら、親権停止です。問題が財産の管理だけなら、管理権喪失です。順に条文を読んでいきます。

親権喪失 834条

親権喪失の要件の構造。要件=(虐待・悪意の遺棄=例)その他、親権の行使が「著しく」困難又は不適当であることにより、子の利益を「著しく」害するとき。ただし書=2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは審判できない。効果=親権の全部(身上監護も財産の管理も)を失う・期間の定めなし。例=A(親)が子Bを長期間放置し、食事も与えない・改善の見込みがない。 図:親権喪失の要件の構造

  • 要件=(虐待・悪意の遺棄=例)その他、親権の行使が「著しく」困難又は不適当であることにより、子の利益を「著しく」害するとき
  • ただし書=2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは審判できない
  • 効果=親権の全部(身上監護も財産の管理も)を失う・期間の定めなし
  • 例=A(親)が子Bを長期間放置し、食事も与えない・改善の見込みがない

地図の②、親権喪失です。先に条文を読みます。

条文民法834条

民法第834条(親権喪失の審判) 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

長い条文ですから、骨組みに分けます。まず効果です。親権喪失の審判を受けると、その親は、親権の全部を失います。子の世話も、財産の管理も、です。そして、期間の定めはありません。次に要件です。条文は、虐待または悪意の遺棄があるとき、その他、と続けます。虐待と悪意の遺棄は、そのあとに続く状態、つまり親権の行使が著しく困難または不適当で、子の利益を著しく害する状態の、典型的な場面として挙がっています。核心は、その後ろです。親権の行使が、著しく困難または不適当であり、そのために、子の利益を著しく害する。この状態が要件の本体です。虐待があれば自動的に親権喪失になる、という仕組みではありません。悪意の遺棄とは、わざと、つまり知りながら、子を見捨てて、世話をしないことです。たとえば、親が長いあいだ子を放置して、食事も与えない。この例では、子の利益を著しく害すると言えそうです。要件には、著しく、という語が、全部で2か所あります。

著しく、の付かない程度では、親権喪失にはなりません。その程度で足りるのは、あとで見る親権停止です。喪失は、子から親権者を丸ごと奪う、重い手段です。ですから、著しく、が2か所必要になります。次に、ただし書です。2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、親権喪失の審判をすることができません。たとえば、親が重い病気で、子の世話ができない状態にあり、2年以内に回復する見込みが立っているとします。この場合は、親権喪失は認められません。親権喪失ではなく、期間を区切る親権停止で対応する、という整理になります。対比です。同じ状況でも、親の状態に回復の見込みがまったく立たないなら、ただし書は働かず、親権喪失の対象になりえます。境目は、原因が2年以内に消える見込みがあるかどうかです。問いです。親による虐待があれば、必ず親権喪失の審判になるでしょうか?

なりません。虐待は例の1つです。それによって親権の行使が著しく困難または不適当になり、子の利益が著しく害されているか。そして、2年以内に原因が消える見込みがないか。この2点で決まります。試験では、著しく、の有無がそのまま問われます。親権喪失を、困難または不適当で子の利益を害するだけで認める、という文章は誤りです。

親権停止 834条の2

親権停止。1項=親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき(「著しく」なし)。2項=家庭裁判所が審判のときに、原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間・子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲で、親権を停止する期間を定める。「2年」の意味の違い=喪失(834条ただし書)は審判できない条件/停止(834条の2第2項)は期間の上限。養子縁組の代諾(797条2項後段)=親権を停止されている父母の同意が要る。 図:親権停止

  • 1項=親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき(「著しく」なし)
  • 2項=家庭裁判所が審判のときに、原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間・子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、2年を超えない範囲で、親権を停止する期間を定める
  • 「2年」の意味の違い=喪失(834条ただし書)は審判できない条件/停止(834条の2第2項)は期間の上限
  • 養子縁組の代諾(797条2項後段)=親権を停止されている父母の同意が要る

地図の③、親権停止です。冒頭の設例に、いちばん近い制度です。条文を読みます。

条文民法834条の2

民法第834条の2(親権停止の審判) 1 父又は母による親権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権停止の審判をすることができる。 2 家庭裁判所は、親権停止の審判をするときは、その原因が消滅するまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を考慮して、二年を超えない範囲内で、親権を停止する期間を定める。

1項から見ます。要件は、親権の行使が困難または不適当であることにより、子の利益を害するとき、です。親権喪失と見比べてください。ここには、著しく、がありません。要件が軽いのです。効果は、親権の全部を、一時的に止めることです。子の世話も財産の管理も止まります。ただし、期間が終われば、親権は再び動き出します。2項は、期間の定め方です。家庭裁判所は、審判のときに、停止する期間を定めます。決め方は、原因が消えるまでに要すると見込まれる期間、子の心身の状態と生活の状況、その他一切の事情を考えて、2年を超えない範囲内で定める、というものです。

意味が違います。親権喪失のただし書では、2年以内に原因が消える見込みがあるときは、審判ができない、という条件です。親権停止では、2年は、停止する期間の上限です。数字は同じでも、前者は審判の可否、後者は期間の長さを決める枠です。期間が終われば、停止は自然に終わります。審判を取り消してもらう必要はありません。終わりをあらかじめ決めておけることが、この制度の特徴です。ここで、冒頭の設例に戻ります。手術への同意を拒み続ける親について、一時的に止める制度が、この親権停止です。親権の行使が不適当で、子の利益を害するといえるなら、停止の対象になりえます。喪失ではなく停止が合うのは、問題が、この手術に同意するかどうかという、いま目の前の判断に限られているからです。手術が済めば、親権を止めておく理由はなくなります。期限を決めずに鍵束ごと奪う喪失では、重すぎます。だから、期間を区切って止める停止が合うのです。個別の事案で認められるかどうかは、家庭裁判所が事情を見て判断します。止めたあと、だれが手術に同意するかは、地図の⑥で確かめます。親権停止中の親が、なお残す役割もあります。未成年者の養子縁組の回で読んだ、797条2項の後段です。15歳未満の子が養子になるときは、子の法定代理人が、子に代わって縁組を承諾します。その承諾には、親権を停止されている父母の同意も要ります。親権停止中の親も、期間が終われば親権が戻るため、同意が要るとされています。

問いです。親権停止の期間は、だれが、いつ、どのように決めるでしょうか?家庭裁判所が、審判のときに、原因が消えるまでの見込みなどを考えて、2年を超えない範囲で決めます。

管理権喪失 835条

設例S2。A(親・Bの親権者)、B(子・10歳)、D(亡き祖父)。DがBに預金を遺贈した。Aがそのお金を自分の遊興に使い込んでいる。Aは、Bの世話は毎日きちんとしている。→ Bの財産の管理だけが不適当。管理権喪失で足りる(親権まで止める必要はない)。管理権=子の財産を管理する権限(代表を含む)。身上監護は残る。要件=管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき(「著しく」なし)。期間の定めは条文にない。 図:設例S2

  • A(親・Bの親権者)、B(子・10歳)、D(亡き祖父)
  • DがBに預金を遺贈した
  • Aがそのお金を自分の遊興に使い込んでいる
  • Aは、Bの世話は毎日きちんとしている
  • → Bの財産の管理だけが不適当
  • 管理権喪失で足りる(親権まで止める必要はない)
  • 管理権=子の財産を管理する権限(代表を含む)
  • 身上監護は残る
  • 要件=管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するとき(「著しく」なし)
  • 期間の定めは条文にない

地図の④、管理権喪失です。その前に、思い出してください。親権に含まれる身上監護と財産管理は、それぞれ何をする権限でしたか?身上監護は、子の世話や教育をすることです。財産管理は、子の財産を管理して、子の代わりに法律行為をすることです。親権の内容の回で、親権者が管理する権限を、家庭裁判所の審判で失った場合を、例に挙げました。そのときは、詳しくは別の回で、と言っていました。その制度が、835条です。条文を読みます。

条文民法835条

民法第835条(管理権喪失の審判) 父又は母による管理権の行使が困難又は不適当であることにより子の利益を害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、管理権喪失の審判をすることができる。

効果は、子の財産を管理する権限、これを管理権と呼びますが、その管理権だけを失うことです。子の世話や教育は、親の手に残ります。財産の管理に含まれる、子に代わって法律行為をする代表も、失います。要件は、管理権の行使が、困難または不適当であることにより、子の利益を害するとき、です。ここにも、著しく、はありません。親権停止と同じ軽さです。また、条文に、期間の定めはありません。親権停止の、2年という上限のような枠は、ここにはないのです。例で確かめます。亡くなった祖父のDさんが、孫のBさんに、預金を遺贈しました。10歳のBさんの親権者のAさんが、そのお金を、自分の遊興に使い込んでいます。ただし、Aさんは、Bさんの世話は、毎日きちんとしています。

親が子の財産を使い込むのは悪いですが、世話はしているなら、親権ごと取り上げるのはやりすぎではありませんか。そこを区別するのが、この制度です。問題は、財産の管理だけです。子の暮らしに支障はありません。ですから、財布の鍵だけを預かる、管理権喪失で足ります。親権まで止める必要はない、という判断になります。管理権を失った親が一方のみの親権者であるとき、財産に関することについてだけ、未成年後見人が立ちます。868条に、そう定められています。結論だけ押さえてください。未成年後見の中身は、別の回で見ます。問いです。親が子の預金を使い込んでいるが、子の世話は問題ない。どの制度が合うでしょうか?

管理権喪失です。

だれが申し立てられるか 子自身も

申立権者の板。834条・834条の2・835条の請求権者は同じ=子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官。さらに児童相談所長。児童福祉法33条の7「児童の親権者に係る民法第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項、第八百三十五条又は第八百三十六条の規定による親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判の請求又はこれらの審判の取消しの請求は、これらの規定に定める者のほか、児童相談所長も、これを行うことができる。」→ 取消しの請求にも児童相談所長が入る。 図:申立権者の板

  • 834条・834条の2・835条の請求権者は同じ=子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官
  • さらに児童相談所長
  • 児童福祉法33条の7「児童の親権者に係る民法第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項、第八百三十五条又は第八百三十六条の規定による親権喪失、親権停止若しくは管理権喪失の審判の請求又はこれらの審判の取消しの請求は、これらの規定に定める者のほか、児童相談所長も、これを行うことができる。」→ 取消しの請求にも児童相談所長が入る

地図の⑤、申立てができる人です。3つの審判は、家庭裁判所が職権で始めるものではありません。請求を受けて行います。その請求ができる人は、3つとも同じです。条文にあった列挙を、まとめます。子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人、そして検察官です。この5者です。注目してほしいのは、先頭の、子です。子自身も、申し立てられます。親に害されている子が、自分で、家庭裁判所に請求できるのです。条文は、子、と書いています。もう1つ加わる人がいます。児童相談所長です。児童福祉法33条の7が、民法の列挙に加えて、児童相談所長も請求できる、と定めています。板に全文を出しています。この条文には、見落としやすい点があります。請求できるのは、3つの審判の請求だけではありません。これらの審判の取消しの請求にも、児童相談所長が入ります。冒頭の設例に当てはめます。病院のCさんは、請求者の列挙に入っていません。ですから、Cさんが自分で請求することはできません。Bさんの親族や、児童相談所長などに働きかけて、請求してもらうことになります。問いです。子自身は、親権停止の審判を請求できるでしょうか?

条文に、子、とあるので、できます。

審判の効果と、親権の行方 親子関係は続く

設例S3。双方が親権者のとき=A(父)、E(母)、B(子・8歳)。Aが親権停止の審判を受けると、Eが親権を行う。一方のみが親権者のとき=A(母・Bの親権者はAだけ)、B(子)。Aが親権喪失の審判を受けると、親権を行う人がいなくなる→ 未成年後見が開始(838条1号)。838条「後見は、次に掲げる場合に開始する。一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。」A(親)は遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない(841条)。親子関係は続く(相続は残る)。 図:設例S3

  • 双方が親権者のとき=A(父)、E(母)、B(子・8歳)
  • Aが親権停止の審判を受けると、Eが親権を行う
  • 一方のみが親権者のとき=A(母・Bの親権者はAだけ)、B(子)
  • Aが親権喪失の審判を受けると、親権を行う人がいなくなる→ 未成年後見が開始(838条1号)
  • 838条「後見は、次に掲げる場合に開始する。一 未成年者に対して親権を行う者がないとき、又は親権を行う者が管理権を有しないとき。」A(親)は遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない(841条)
  • 親子関係は続く(相続は残る)

地図の⑥、審判を受けたあと、親権はどこへ行くか、です。その前に、思い出してください。双方が親権者のとき、親権は原則として、だれが、どのように行うのでしたか?共同して行うのが原則でした。ただ、一方が行うことができないときは、他方が行う、という例外もありました。審判の効果は、親の状況で分かれます。まず、双方が親権者の場合です。冒頭の設例に戻します。Bさんには、父のAさんのほかに、母のEさんがいて、2人とも8歳のBさんの親権者だとします。手術を拒む父のAさんが、親権停止の審判を受けました。この場合、Aさんは、停止の間、親権を行うことができません。すると、共同行使の例外が働きます。残るEさんが、単独で親権を行います。手術への同意も、Eさんがひとりでできます。次に、一方のみが親権者の場合です。ここからは、別の家族で考えます。母のAさんだけが、Bさんの親権者です。Aさんが、親権喪失の審判を受けました。他に、親権を行える人がいません。そこで、未成年後見が始まります。838条の1号が、未成年者に対して親権を行う者がないとき、後見が開始する、と定めています。板に、その本文を出しています。このとき、Aさんには義務が生じます。841条です。親権喪失などの審判があって、未成年後見人を選任する必要が生じたときは、その父または母は、遅滞なく、未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければなりません。

親権を失った親にも、子が無防備にならないよう、次の担い手を急いで立てる義務が残ります。ここで、混同しやすい点を1つ確かめます。親権喪失の審判を受けても、親子でなくなるわけではありません。親子関係そのものは、続きます。審判が取り上げるのは、親権という鍵束であって、親と子という関係そのものではないからです。親子関係が続くので、相続は残ります。子は、被相続人である親の相続人になります。887条1項です。逆に、子が亡くなって、その子に子がいなければ、親は、直系尊属として、相続人になりえます。889条1項1号です。扶養する義務も残ります。相続人でなくなるのは、欠格や廃除という、相続の側の制度に当たるときです。たとえば欠格は、被相続人を故意に死なせて刑に処せられた人を、相続人から外します。親権の審判は、これとは別です。親権を失っても、それだけで相続人でなくなることはありません。親権停止の期間が終われば、停止された親の親権は、再び動き出します。双方が親権者の場合、期間が終われば、また共同して行う原則に戻ります。問いです。親権喪失の審判を受けた親が亡くなりました。子は、その親の相続人になれるでしょうか?

親子関係は続くので、なれます。

3制度の比較 奪うもの・期間・要件の重さ

3制度の比較表。親権喪失(834条)=奪うもの:親権の全部/要件:著しく困難又は不適当+著しく害する(虐待・悪意の遺棄は例)/期間:定めなし・ただし書=2年以内に原因が消滅する見込みがあれば審判できない。親権停止(834条の2)=奪うもの:親権の全部/要件:困難又は不適当+害する/期間:家庭裁判所が2年を超えない範囲で定める。管理権喪失(835条)=奪うもの:財産管理権だけ(身上監護は残る)/要件:管理権の行使が困難又は不適当+害する/期間:定めなし。申立て=3制度とも同じ(子・親族・未成年後見人・未成年後見監督人・検察官+児童相談所長)。取消し=3制度とも836条(本人又はその親族+児童相談所長)。 図:3制度の比較表

  • 親権喪失(834条)=奪うもの:親権の全部/要件:著しく困難又は不適当+著しく害する(虐待・悪意の遺棄は例)/期間:定めなし・ただし書=2年以内に原因が消滅する見込みがあれば審判できない
  • 親権停止(834条の2)=奪うもの:親権の全部/要件:困難又は不適当+害する/期間:家庭裁判所が2年を超えない範囲で定める
  • 管理権喪失(835条)=奪うもの:財産管理権だけ(身上監護は残る)/要件:管理権の行使が困難又は不適当+害する/期間:定めなし
  • 申立て=3制度とも同じ(子・親族・未成年後見人・未成年後見監督人・検察官+児童相談所長)
  • 取消し=3制度とも836条(本人又はその親族+児童相談所長)

地図の⑦、3制度の比較です。表の前に、問いです。2年という数字が出てくる条文が、2つありました。意味は同じでしょうか?同じではありません。喪失のただし書では、審判できない条件です。停止の2項では、期間の上限でした。では、表を読みます。区別の軸は、3つです。何を奪うか。どれだけの間か。要件の重さはどうか。親権喪失です。奪うものは、親権の全部です。要件は、著しく困難または不適当で、子の利益を著しく害すること。期間の定めはありませんが、ただし書で、2年以内に原因が消える見込みがあれば、審判できません。親権停止です。奪うものは、親権の全部ですが、一時的です。要件は、困難または不適当で、子の利益を害すること。著しく、はありません。期間は、家庭裁判所が、2年を超えない範囲で定めます。管理権喪失です。奪うものは、財産の管理権だけです。身上監護は残ります。要件は、管理権の行使が困難または不適当で、子の利益を害すること。著しく、はありません。期間の定めはありません。なぜ、3段階に分けたのでしょうか。親権を制限するのは、子の利益を守るのに必要な限度に、とどめるべきだからです。軽い手段で足りる場面で、重い手段を使わないよう、選べる道を用意しました。場合分けにすると、こうなります。親の病気などで、一時的に親権を任せられないなら、親権停止。子の財産を使い込むだけで、世話には問題がないなら、管理権喪失。虐待が続き、改善の見込みがないなら、親権喪失です。

申立てができる人は、3つとも同じです。取消しも、3つとも、836条で共通です。それは、次に読みます。試験での見分け方をまとめます。著しく、が付くのは、親権喪失だけです。管理権喪失は、財産の管理だけを奪います。期間を定めるのは、親権停止だけです。この3点を、押さえてください。

審判の取消し 836条

取消しの請求権者の対比。申立て(834条・834条の2・835条)=子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官(+児童相談所長)。取消し(836条)=本人又はその親族(+児童相談所長)。対象=3制度とも、原因が消滅したとき。取り消されると、親権(又は管理権)は元に戻る。取消し=家庭裁判所が取り消す/回復(837条2項)=親が許可を得て取り戻す。 図:取消しの請求権者の対比

  • 申立て(834条・834条の2・835条)=子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官(+児童相談所長)
  • 取消し(836条)=本人又はその親族(+児童相談所長)
  • 対象=3制度とも、原因が消滅したとき
  • 取り消されると、親権(又は管理権)は元に戻る
  • 取消し=家庭裁判所が取り消す/回復(837条2項)=親が許可を得て取り戻す

地図の⑧、審判の取消しです。条文を読みます。

条文民法836条

民法第836条(親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判の取消し) 第八百三十四条本文、第八百三十四条の二第一項又は前条に規定する原因が消滅したときは、家庭裁判所は、本人又はその親族の請求によって、それぞれ親権喪失、親権停止又は管理権喪失の審判を取り消すことができる。

対象は、3つの審判すべてです。親権喪失、親権停止、管理権喪失のどれも、その原因が消滅したときは、取り消すことができます。請求できる人は、本人またはその親族です。本人とは、審判を受けた親です。その親族も、請求できます。取消しは、原因が消えたので、親権を親に戻す請求ですから、審判を受けた親の側から求める形になっています。検察官は、取消しの請求権者には入っていません。例外が、児童相談所長です。先ほどの33条の7が、取消しの請求にも、児童相談所長を加えています。取り消されると、停止されていた親権や、失っていた管理権は、元に戻ります。親権停止との関係も確かめます。親権停止は、期間が終われば自然に終わりますから、取消しは、期間の途中で原因が消えたときの手当てになります。たとえば、治療に同意しない状態が解消されたような場合です。取消しと、次に見る辞任の回復は、混同しやすい制度です。どちらも、親権が親に戻ります。違いは、何から戻るかです。取消しは、家庭裁判所が審判で奪ったものを、その審判を取り消して戻します。回復は、親が自分から辞任して手放したものを、許可を得て取り戻します。奪われたものか、自分で手放したものか、を頭に置いてください。問いです。親権停止中の親が立ち直りました。だれが、何を請求できるでしょうか?

本人か、その親族が、停止の審判の取消しを請求できます。

親権・管理権の辞任と回復 837条

辞任と回復。辞任(1項)=親権を行う父又は母が、やむを得ない事由があるとき、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞する。回復(2項)=その事由が消滅したとき、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復する。例=A(母・Bの親権者)、B(子・6歳)、F(祖母)。Aに長期の入院が必要になった。取消しとの違い=取消し(836条)は家庭裁判所が審判を取り消す・請求は本人又は親族/辞任・回復(837条)は親が許可を得る。 図:辞任と回復

  • 辞任(1項)=親権を行う父又は母が、やむを得ない事由があるとき、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞する
  • 回復(2項)=その事由が消滅したとき、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復する
  • 例=A(母・Bの親権者)、B(子・6歳)、F(祖母)
  • Aに長期の入院が必要になった
  • 取消しとの違い=取消し(836条)は家庭裁判所が審判を取り消す・請求は本人又は親族/辞任・回復(837条)は親が許可を得る

地図の⑨、辞任と回復です。ここまでは、国が親から親権を奪う話でした。今度は、親が自分から手放す話です。条文を読みます。

条文民法837条

民法第837条(親権又は管理権の辞任及び回復) 1 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。 2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。

1項は、辞任です。親権を行う父または母が、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権、または管理権を辞することができます。親権全部を辞することも、管理権だけを辞することもできます。2項は、回復です。辞任の事由が消滅したときは、家庭裁判所の許可を得て、親権や管理権を回復できます。親が辞めたいと言えば、辞められるわけではないのですか。辞められません。許可が要ります。親権は、子の利益のために負う責任だからです。親の一存で手放したり、取り戻したりすれば、子の生活が不安定になります。そこで、どちらも、家庭裁判所の許可を要件にしています。例を1つだけ挙げます。6歳のBさんの親権者である母のAさんに、長期の入院が必要になりました。この事情は、やむを得ない事由の例になりえます。認められるかどうかは、家庭裁判所が、個別の事情を見て判断します。入院が終わり、事由が消えれば、Aさんは、許可を得て、親権を回復できます。一方のみが親権者のAさんが辞任すると、親権を行える親がいなくなります。この場合も、841条により、遅滞なく未成年後見人の選任を請求しなければなりません。審判を受けた場合と同じです。取消しとの違いを、整理します。取消しは、国が奪った審判を、家庭裁判所が取り消すものです。請求するのは、本人またはその親族です。辞任と回復は、親が自分から、家庭裁判所の許可を得て行うものです。奪われたものを戻すのか、自分で手放したものを取り戻すのか、が違います。

問いです。親が、やむを得ない事由があるので親権を辞したい。家庭裁判所の許可は要るでしょうか?要ります。許可を得て、辞することができます。

今日の地図(保存版)

4本柱+冒頭の答え。①3制度の区別=喪失(834条)は全部・期間の定めなし・「著しく」/停止(834条の2)は全部・2年を超えない範囲・「著しく」不要/管理権喪失(835条)は財産管理だけ・「著しく」不要②申立て=子自身も・児童相談所長も。取消し(836条)=本人又はその親族③効果=双方が親権者なら残る一方が行う/一方のみなら未成年後見(838条1号・841条)/親子関係は続く④辞任・回復(837条)=やむを得ない事由+家庭裁判所の許可。冒頭の答え=一時的に止める制度が親権停止(834条の2)。

  • 4本柱+冒頭の答え
  • ①3制度の区別=喪失(834条)は全部・期間の定めなし・「著しく」/停止(834条の2)は全部・2年を超えない範囲・「著しく」不要/管理権喪失(835条)は財産管理だけ・「著しく」不要②申立て=子自身も・児童相談所長も
  • 取消し(836条)=本人又はその親族③効果=双方が親権者なら残る一方が行う/一方のみなら未成年後見(838条1号・841条)/親子関係は続く④辞任・回復(837条)=やむを得ない事由+家庭裁判所の許可
  • 冒頭の答え=一時的に止める制度が親権停止(834条の2)

最後にまとめます。柱は、4本です。1本目。3つの制度の区別です。奪うもの、期間、要件の重さで見分けます。親権喪失は、親権の全部を、期間の定めなく奪います。著しく、が2か所必要で、2年以内に原因が消える見込みがあれば、審判できません。親権停止は、親権の全部を、2年を超えない範囲で定めた期間だけ止めます。著しく、は要りません。管理権喪失は、財産の管理だけを奪い、身上監護は残ります。2本目。請求できる人です。申立ては、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人、検察官です。子自身も申し立てられます。児童相談所長も請求できます。取消しは、本人またはその親族が請求し、児童相談所長も請求できます。3本目。審判の効果です。双方が親権者なら、残る一方が親権を行います。一方のみが親権者なら、未成年後見が始まり、その親は、遅滞なく選任を請求します。親子関係は続くので、相続は残ります。4本目。辞任と回復です。やむを得ない事由があるとき、家庭裁判所の許可を得て、辞任できます。事由が消えれば、許可を得て、回復できます。

冒頭の問いに戻ります。手術への同意を拒み続ける親の判断を、このまま通すしかないのか。答えは、通すしかない、わけではありません。一時的に止める制度が、親権停止です。親権の行使が不適当で、子の利益を害するときに、家庭裁判所が、2年を超えない範囲で期間を定めて、親権を止めます。止めたあと、手術に同意するのは、もう一方の親も親権者ならその親です。Aさんだけが親権者なら、選ばれた未成年後見人です。ここは、論文で論点になりうる箇所です。事案に応じて、親権喪失、親権停止、管理権喪失のどれを請求すべきかを選ぶ。選ぶ基準は、奪うもの、期間、要件の重さです。この3点で、頭に置いてください。

参照条文

  • 民法834条
  • 民法834条の2
  • 民法835条
  • 民法836条
  • 民法837条

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