民法ゼロから民法#345

未成年後見人の権限と監督

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第7章 親族 #345/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

後見人は、子の預金で自分の家を買えるのか

冒頭の設例。B(子・9歳)の両親A・Dは亡くなった。C(Aの弟・Bの叔父)は家庭裁判所に選ばれてBの未成年後見人になった。Bには保険金の預金と自宅が残っている。Cが「Bの預金で、自分の家を買いたい」と言い出した。問い=後見人は、子の財産を、どこまで自由にできるのか。 図:冒頭の設例

  • B(子・9歳)の両親A・Dは亡くなった
  • C(Aの弟・Bの叔父)は家庭裁判所に選ばれてBの未成年後見人になった
  • Bには保険金の預金と自宅が残っている
  • Cが「Bの預金で、自分の家を買いたい」と言い出した
  • 問い=後見人は、子の財産を、どこまで自由にできるのか

設例です。Bさんは9歳です。両親のAさんとDさんは、亡くなりました。前編で見たとおり、叔父のCさんが、家庭裁判所に選ばれて、Bさんの未成年後見人になりました。Bさんには、保険金の預金と、自宅が残っています。ある日、Cさんが言い出しました。「Bさんの預金で、自分の家を買いたい」と、今日の問いです。後見人は、子の財産を、どこまで自由にできるのでしょうか。任された、という感覚が、今日いちばん危ない落とし穴です。答えは、最後に確かめます。自分なりの見立てを、頭に置いて進んでください。前編の結論を、一言で受けます。未成年後見は、親権を行う者がいなくなれば、当然に始まります。後見人は、遺言の指定か、家庭裁判所の選任で就きます。欠格事由のある人は、なれません。子の世話は、親権者と同じ立場で行います。ここまでが前編です。前編のたとえで言えば、空いていた席に、Cさんが座りました。今日は、座った人が、子の財産をどう扱うのか、という話です。

今日の地図。①財産の調査と、管理と代表②利益相反③注意義務と親権代行④後見人を見張る未成年後見監督人⑤親権者との比較表。核心の1行=後見人は、子のために財産を預かる。自分の物のように使ってはいけない。 図:今日の地図

  • ①財産の調査と、管理と代表②利益相反③注意義務と親権代行④後見人を見張る未成年後見監督人⑤親権者との比較表
  • 核心の1行=後見人は、子のために財産を預かる
  • 自分の物のように使ってはいけない

今日の地図です。5つ進みます。1つ目、財産の調査と、管理と代表。2つ目、利益相反。3つ目、注意義務と、親権代行。4つ目、後見人を見張る、未成年後見監督人。5つ目、親権者との比較表です。核心を、先に1行で言います。後見人は、子のために、財産を預かります。自分の物のように、使ってはいけません。この1行が、今日の5つの項目すべてに通じます。

財産管理の入口 調査と目録・管理と代表 853条・859条

就任後の流れ。選任 → 遅滞なく財産の調査に着手 → 1か月以内に調査を終えて目録を作る(家庭裁判所は期間を伸ばせる)→ 管理と代表(859条)。目録ができるまでは、急迫の必要がある行為だけ(854条)。 図:就任後の流れ

  • 選任 → 遅滞なく財産の調査に着手 → 1か月以内に調査を終えて目録を作る(家庭裁判所は期間を伸ばせる)→ 管理と代表(859条)
  • 目録ができるまでは、急迫の必要がある行為だけ(854条)

地図の1つ目、財産の調査と、管理と代表です。まず、前に見た話を思い出してください。未成年者の法定代理人になるのは、親権者と、あとだれでしたか?未成年後見人です。親権者か未成年後見人か、どちらかでした。その未成年後見人の側の、代理の中身が、今日です。順番に見ます。Cさんが後見人に就いて、最初にやることは何でしょうか。管理ではありません。調査です。

853条と854条。853条1項=後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、一箇月以内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない。ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる。2項=財産の調査及びその目録の作成は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければ、その効力を生じない。854条=後見人は、財産の目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。 図:853条と854条

  • 853条1項=後見人は、遅滞なく被後見人の財産の調査に着手し、一箇月以内に、その調査を終わり、かつ、その目録を作成しなければならない
  • ただし、この期間は、家庭裁判所において伸長することができる
  • 2項=財産の調査及びその目録の作成は、後見監督人があるときは、その立会いをもってしなければ、その効力を生じない
  • 854条=後見人は、財産の目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為のみをする権限を有する
  • ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない

853条です。後見人は、遅滞なく、被後見人の財産の調査に着手します。そして、1か月以内に調査を終えて、財産の目録を作ります。この期間は、家庭裁判所が伸ばせます。目録には、もう1つ決まりがあります。後見監督人がいるときは、その立会いがなければ、調査も目録も、効力を生じません。監督人は、あとで詳しく見ます。店を引き継ぐ人を、考えてください。引き継いだ日に、まず棚卸しをします。何がいくらあるのか、確かめないまま営業を始めると、あとで在庫が減ったとき、自分の責任なのか、元からなかったのか、分からなくなります。後見も同じです。預かった財産の範囲を、最初に確定します。そうしないと、あとで管理の責任を測れません。後見人にとっても、子にとっても、必要な手順です。目録ができるまでの間は、854条が制限をかけます。後見人は、目録の作成を終わるまでは、急迫の必要がある行為だけをする権限を持ちます。ただし、この制限は、善意の第三者には対抗できません。たとえば、Bさんの家の屋根が壊れて、雨漏りがしているときです。目録を待たずに、すぐ直す必要があります。そういう、待てない行為だけができます。また、目録の前だと知らずに取引した相手には、この制限を持ち出せません。調査と目録が終われば、本格的な管理が始まります。その根拠が、859条です。条文を読みます。

条文民法859条

民法第859条(財産の管理及び代表) 1 後見人は、被後見人の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為について被後見人を代表する。 2 第八百二十四条ただし書の規定は、前項の場合について準用する。

859条の骨組み。管理=財産を守る・使う・手を入れる(親権者の824条と同じ型)/代表=財産に関する法律行為について被後見人を代表(婚姻などの身分行為は対象外)/2項=824条ただし書の準用(子の行為を目的とする債務は本人の同意が要る)/861条2項=後見の事務に必要な費用は被後見人の財産から(叔父の自分の家の代金は×)。 図:859条の骨組み

1項を、骨組みに分けます。後見人は、被後見人の財産を管理します。そして、その財産に関する法律行為について、被後見人を代表します。代表とは、本人に代わって契約などをして、その効果を本人のものにすることです。つまり、法定代理人です。管理とは、財産を守り、使い、手を入れることでした。預金を安全に保つこと。子に必要な支払いをすること。子の家の傷んだところを直すこと。親権者の824条と、同じ型の条文です。前に見た条文なので、結論だけ思い出してください。代表の範囲は、財産に関する法律行為です。婚姻などの身分行為は、代表の対象ではありません。これも、親権の回で見たとおりです。2項です。824条ただし書を、準用しています。子の行為を目的とする債務を生ずべき場合には、本人の同意が要る、という規定です。親権者と同じ制限が、後見人にも、そのままかかります。ここまでの条文を、1行にまとめます。管理も代表も、子のために行います。費用の面にも、この線が出ています。861条2項です。後見人が後見の事務を行うために必要な費用は、被後見人の財産の中から支払います。たとえば、家庭裁判所への報告に行く交通費や、必要な書類の取得費です。叔父のCさんが立て替えたなら、Bさんの財産から払えます。

それなら、叔父の家を買う代金も、後見の費用として払えませんか。払えません。861条2項が認めるのは、後見の事務を行うために必要な費用です。叔父の自分の家は、子のための費用ではありません。この点には、あとで戻ります。なお、この859条は、成年後見でも使う、共通の条文です。成年後見人の話は、別の回で見ます。今日は、未成年後見の場面です。問いです。後見人は、子のどんな行為について、子を代表するのでしょうか?子の財産に関する法律行為です。

後見人と子の利益相反 860条・826条の準用

入口②の設例。C(後見人)が、B(子)の自宅を自分に売ってもらう。売主=B(Bを代表するのはC)、買主=C。同じ人が売る側と買う側の両方に座る形。→ 利益が相反する行為。 図:入口②の設例

  • C(後見人)が、B(子)の自宅を自分に売ってもらう
  • 売主=B(Bを代表するのはC)、買主=C
  • 同じ人が売る側と買う側の両方に座る形
  • → 利益が相反する行為

地図の2つ目、利益相反です。始める前に、思い出してください。親権者と子の利益がぶつかる行為のとき、判断を引き受けるのは、だれでしたか?家庭裁判所が選ぶ、特別代理人です。では、後見人の場合は、どうなるのでしょうか。新しい場面で考えます。叔父のCさんが、Bさんの自宅を、自分に売ってもらいたいと言い出しました。売主は、Bさんです。ただし、Bさんは9歳ですから、Bさんを代表して売るのは、後見人のCさんです。買主は、Cさん自身です。整理します。売る側を代表するのが、Cさん。買う側も、Cさん。1人の人が、売主の席と、買主の席の、両方に座っています。これが、利益が相反する形です。

動機は、関係ありません。判断は、行為の外形で行います。形として、同じCさんが、売り手と買い手を兼ねています。安く買いたたく余地が、形の上でできてしまいます。だから、中身がどうであれ、この形そのものを、塞いでおきます。その条文が、860条です。前に、後見の場合は826条を準用する、という結論だけ見ました。今日が、その本体です。

条文民法860条

民法第860条(利益相反行為) 第八百二十六条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。

後見の制度を見直す改正法は、すでに成立していて、まだ施行されていません。今日は、現行の条文で説明します。施行後は、860条が準用の相手にするのは、未成年後見人になります。ただし、今日の結論、つまり、監督人がいなければ特別代理人、いれば監督人、という扱いは、そのまま変わりません。骨組みに分けます。860条は、826条を、後見人に準用します。826条の中身は、再掲しません。結論だけ言います。後見人と被後見人の利益が相反する行為については、特別代理人の選任を、家庭裁判所に請求します。利益が相反するかどうかは、外形説で判断します。動機や意図ではなく、行為の外形で決める、という前に見た結論です。Cさんが、相場より高く買うつもりでも、売主の側と買主の側に、同じCさんがいる外形は、変わりません。したがって、設例の売買は、利益相反行為にあたります。前に見た判例の事案は、ちょうど、後見人が被後見人を代理した、相続放棄の事案でした。後見の場面で、この外形説が使われています。設例では、家庭裁判所に、特別代理人の選任を請求します。選ばれた特別代理人が、Bさんを代表して、この売買に応じるかどうかを判断します。Cさんは、Bさんの側には立てません。

860条の分岐。後見人と被後見人の利益が相反する行為 → 後見監督人がない=家庭裁判所が選ぶ特別代理人が被後見人を代表(826条の準用)/後見監督人がある=準用しない。後見監督人が被後見人を代表(851条4号)。 図:860条の分岐

  • 後見人と被後見人の利益が相反する行為 → 後見監督人がない=家庭裁判所が選ぶ特別代理人が被後見人を代表(826条の準用)/後見監督人がある=準用しない
  • 後見監督人が被後見人を代表(851条4号)

次は、ただし書です。後見監督人がある場合は、この限りでない。つまり、監督人がいれば、826条は準用しません。特別代理人は、立てません。監督人がいれば、どうして特別代理人が要らないのですか。監督人は、後見人とは別の立場に立つ人だからです。後見人の仕事を見張るために選ばれる人なので、CさんとBさんの利益が対立する場面でも、Bさんの側に立って判断できます。そこで、監督人がいれば、監督人がBさんを代表します。851条4号に、監督人の職務として書かれています。あとで読みます。分岐を整理します。監督人がいなければ、特別代理人。監督人がいれば、監督人です。違反すると、どうなるでしょうか。Cさんが、特別代理人も監督人も通さずに、自分でBさんを代理して売買をしたとします。この場合、Cさんの行為は、代理権のない人がした行為と同じ扱い、つまり無権代理と同じ扱いです。826条は、代理の回で見た108条の考え方を、後見人と子の場面で具体化した規定だからです。効果も108条2項と同じで、代理権を有しない者がした行為とみなされます。Bさんが追認しないかぎり、Bさんには効力が生じません。もう1つあります。子が自分で行為をして、後見人が同意を与えた場合です。未成年者が法律行為をするには、法定代理人の同意が必要で、反すれば取り消すことができます。ところが、利益が相反する行為についての同意は、無効です。有効な同意がない行為として、子の行為は、5条2項により取り消せます。

ここで、入口を切り分けます。冒頭の、Cさんが預金で自分の家を買いたいという話は、860条の問題ではありません。860条が働くのは、子と取引する形のときです。預金の使い込みは、次の項目で扱います。問いです。後見人が、自分で子を代理して、子の土地を自分に売りました。監督人はいません。どうすればよかったでしょうか?家庭裁判所に、特別代理人の選任を請求するべきでした。監督人がいれば、その監督人が、子を代表します。

善管注意義務と親権代行 869条・867条

注意義務の比較板。親権者(827条)=自己のためにするのと同一の注意(軽い)/後見人(869条・644条)=善良な管理者の注意(重い)。644条=受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う。前に見た板で名前だけ載せた後見人の行を、親権者と並べる。善管注意=その立場の人に通常求められる標準的な注意。 図:注意義務の比較板

  • 親権者(827条)=自己のためにするのと同一の注意(軽い)/後見人(869条・644条)=善良な管理者の注意(重い)
  • 644条=受任者は、委任の本旨に従い、善良な管理者の注意をもって、委任事務を処理する義務を負う
  • 前に見た板で名前だけ載せた後見人の行を、親権者と並べる
  • 善管注意=その立場の人に通常求められる標準的な注意

地図の3つ目、後見人の注意義務と、親権代行です。まず、思い出してください。委任の受任者は、報酬がなくても、善管注意義務を負うのでしょうか?負います。無償でも、軽くなりません。善管注意とは、その立場の人に通常求められる、標準的な注意のことでした。親権の回で、親権者の注意義務を見ました。827条は、自己のためにするのと同一の注意です。そのとき、後見人は善管注意の側と言って、続きを後回しにしていました。その続きが、今日です。前に見た板では、後見人は、善管注意の側に、名前だけ載っていました。今日の板は、親権者と並べて、その中身を見ます。条文を読みます。

条文民法869条

民法第869条(委任及び親権の規定の準用) 第六百四十四条及び第八百三十条の規定は、後見について準用する。

骨組みに分けます。869条は、644条と830条を、後見に準用しています。644条は、受任者の善管注意義務です。委任と同じ善管注意が、後見人にも及びます。無償でも軽くならない点も、委任と同じです。830条は、第三者が無償で子に与えた財産の管理についての規定でした。これも、後見に準用されます。ここは、結論の一言だけにします。第三者が無償で子に与えた財産について、その第三者が、親権者に管理させない意思を表示したときは、その財産は、親権者の管理に属しません。後見人の場合も、この考え方が及びます。板で比べます。親権者の827条は、自己のためにするのと同一の注意です。後見人の869条は、644条の善管注意です。後見人のほうが、重い注意を負います。

条文の作りと、立場の違いで説明できます。まず条文です。869条は、委任の受任者の規定を、そのまま後見に準用しています。後見人は、他人の財産を預かる受任者に近い扱いを受けるのです。次に立場です。親権者は、自分の子の財産を、親として管理します。自分の子のために、自分のことのように気をつける。それが、自己のためにするのと同一の注意です。一方、後見人は、家庭裁判所に選ばれて、他人の子の財産を預かります。選ばれた以上、その立場の人に求められる標準的な注意を、払わなければなりません。問いです。親権者の注意と、後見人の注意。重いのは、どちらでしょうか?

後見人です。善管注意だからです。

入口①の整理。注意の程度の問題=定期預金の書替えを忘れて利息が減った→善管注意の物差しで測る。流用=預金を払い戻して自分の家の購入代金にした→子のための管理ではない(注意の程度を論じる前の問題)。流用の帰結=損害賠償責任/846条=不正な行為があれば家庭裁判所が解任/刑事責任(横領罪など)は別の領域。 図:入口①の整理

  • 注意の程度の問題=定期預金の書替えを忘れて利息が減った→善管注意の物差しで測る
  • 流用=預金を払い戻して自分の家の購入代金にした→子のための管理ではない(注意の程度を論じる前の問題)
  • 流用の帰結=損害賠償責任/846条=不正な行為があれば家庭裁判所が解任/刑事責任(横領罪など)は別の領域

冒頭の設例に戻ります。Cさんが、Bさんの預金で、自分の家を買いたいと言いました。これは、注意が足りたか足りないか、という話ではありません。そもそも、子のための管理ではありません。善管注意を論じる前の問題です。2つの場面を、並べます。1つ目。Cさんが、Bさんの定期預金の書替えを忘れて、利息が少し減りました。これは、注意の程度の問題です。後見人は善管注意ですから、親権者より厳しい物差しで測られます。2つ目。Cさんが、預金を払い戻して、自分の家の購入代金にしました。これは、物差しを当てる以前に、子のための管理ではないので、許されません。注意の程度の話と、流用の話は、混ぜないでください。親権の回でも、同じことを言いました。

流用してしまったら、Cさんは、どうなるのですか。3つあります。まず、Bさんに生じた損害を、賠償する責任を負いえます。次に、846条です。後見人に不正な行為があるときは、家庭裁判所が、後見人を解任できます。前編の欠格事由で、家庭裁判所で免ぜられた人はなれない、と見ました。その免ぜられる入口の1つが、この846条です。最後に、刑事責任です。横領罪などが問題になりますが、これは別の領域です。名前だけ、押さえてください。次に、親権代行です。867条1項は、未成年後見人が、未成年被後見人に代わって親権を行う、という条文でした。親が未成年のとき、後見人が親権を代わりに行う場面で、前に見ました。条文は、再掲しません。

親権代行の図。C(後見人)、B(未成年被後見人・17歳で子が生まれた)、Bの子。親権者=B。親権を行うのは後見人C(867条)。親権者と、親権を行使する人は別。 図:親権代行の図

  • C(後見人)、B(未成年被後見人・17歳で子が生まれた)、Bの子
  • 親権者=B
  • 親権を行うのは後見人C(867条)
  • 親権者と、親権を行使する人は別

設例を、伸ばします。Bさんが成長して、17歳で、子が生まれたとします。Bさんは、その子の親権者です。ところが、Bさん自身が、未成年被後見人で、親権を行える立場にありません。そこで、後見人のCさんが、Bさんに代わって、その子の親権を行います。親権者は、Bさんのままです。ただし、親権を行うのは、Cさんです。前に見た、親権者と、行使する人は別、という二層の構造です。833条との違いも、整理します。833条は、未成年の親の親権者が、代わりに孫の親権を行う場面でした。867条は、未成年の親に、後見人がついている場面です。だれが代わりに行うか、の違いです。代行するときも、後見人の事務についての規定が準用されます。2項です。存在だけ、押さえてください。問いです。未成年被後見人に子がいるとき、その子の親権を行うのは、だれでしょうか?

未成年後見人です。867条で、代わって親権を行います。

後見人を見張る 未成年後見監督人 848条〜851条

未成年後見監督人の板。848条=未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる。849条=家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる。850条=後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない(852条で847条の欠格事由も後見監督人に準用)。851条=職務は、一 後見人の事務を監督すること。二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること。三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること。 図:未成年後見監督人の板

  • 848条=未成年後見人を指定することができる者は、遺言で、未成年後見監督人を指定することができる
  • 849条=家庭裁判所は、必要があると認めるときは、被後見人、その親族若しくは後見人の請求により又は職権で、後見監督人を選任することができる
  • 850条=後見人の配偶者、直系血族及び兄弟姉妹は、後見監督人となることができない(852条で847条の欠格事由も後見監督人に準用)
  • 851条=職務は、一 後見人の事務を監督すること
  • 二 後見人が欠けた場合に、遅滞なくその選任を家庭裁判所に請求すること
  • 三 急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること
  • 四 後見人又はその代表する者と被後見人との利益が相反する行為について被後見人を代表すること

地図の4つ目、後見人を見張る人です。ここまで、後見人には、いろいろな制限があると見ました。では、それが守られているか、だれが確かめるのでしょうか。家庭裁判所も、確かめます。863条です。後見監督人または家庭裁判所は、いつでも、後見人に、事務の報告や財産の目録の提出を求めて、財産の状況を調査できます。ただ、日々の事務を見るには、専門に見張る役がいたほうがいい。それが、未成年後見監督人です。先に、大事な点を言います。未成年後見監督人は、必ず置かれるものでは、ありません。必要があるときに、置かれます。順に、条文を見ます。まず、848条の指定です。未成年後見人を指定できる人は、遺言で、未成年後見監督人も指定できます。後見人を指定する遺言に、見張る役も添えておける、という形です。次に、849条の選任です。指定がないときなどに、家庭裁判所が、必要があると認めるときに、選任します。請求できるのは、被後見人、その親族、後見人です。請求がなくても、家庭裁判所が職権で選べます。ポイントは、必要があると認めるとき、です。必ず置く、とは書かれていません。

請求できる人に、後見人自身も入ります。条文に、後見人の請求と書かれています。自分の仕事を、見張る役とともに進めたいときの、道です。850条の欠格です。後見人の配偶者、直系血族、兄弟姉妹は、監督人になれません。理由は、実効性です。監督される側に近い人が見張っても、きちんと見張れないおそれがあるからです。

設例S6。C(後見人)、B(被後見人)、Cの妻・Cの姉=監督人になれない(850条)、F(弁護士)=850条には当たらない(847条の欠格にも当たらなければ監督人になれる)。852条=847条(後見人の欠格事由)を後見監督人に準用。 図:設例S6

  • C(後見人)、B(被後見人)、Cの妻・Cの姉=監督人になれない(850条)、F(弁護士)=850条には当たらない(847条の欠格にも当たらなければ監督人になれる)
  • 852条=847条(後見人の欠格事由)を後見監督人に準用

設例で確かめます。後見人は、Cさんです。Cさんの妻は、配偶者なので、監督人になれません。Cさんの姉は、兄弟姉妹なので、やはりなれません。弁護士のFさんは、850条の列挙には当たりません。847条の欠格事由にも当たらなければ、なれます。条文に挙がっているのは、配偶者、直系血族、兄弟姉妹だけです。叔父やいとこは、挙がっていません。ですから、この850条では、欠格に当たりません。ただし、847条の欠格事由に当たらないかは、別に確かめます。前編の847条は、後見人の欠格でした。今日の850条は、監督人だけに加わる欠格の追加です。そして、852条が、847条を後見監督人にも準用しています。つまり、監督人には、847条の欠格と、850条の欠格の両方がかかります。851条の職務です。4つあります。1号。後見人の事務を監督すること。2号。後見人が欠けた場合に、遅滞なく、その選任を家庭裁判所に請求すること。3号。急迫の事情がある場合に、必要な処分をすること。4号。後見人またはその代表する者と、被後見人との利益が相反する行為について、被後見人を代表すること。4号が、先ほどの860条ただし書の理由です。監督人がいれば、利益が相反する行為でも、監督人が子を代表します。だから、特別代理人は要りません。853条2項の立会いも、監督人の仕事の例です。財産の調査と目録に、立ち会います。後見人の最初の手順から、見張る役が入るのです。

なお、監督人は、成年後見にもある制度です。同じ仕組みが、成年の人にもあります。問いです。後見監督人がある場合、後見人と子の利益が相反する行為で、子を代表するのは、だれでしょうか?後見監督人です。851条4号で、860条のただし書とつながっています。

親権者と未成年後見人の比較表

比較表。列=親権者/未成年後見人/成年後見(予告枠・空欄)。行=だれがなるか:親権者=法律上当然/未成年後見人=遺言の指定か家庭裁判所の選任。身上監護:親権者=820条から823条/後見人=857条で同一。財産の管理と代表:824条/859条。利益相反:826条(特別代理人)/860条(826条を準用・監督人があれば監督人)。注意義務:827条(自己のためにするのと同一の注意)/869条+644条(善管注意)。見張る人:親権者=監督人の制度はない/後見人=未成年後見監督人と家庭裁判所。714条:どちらも法定の監督義務者。 図:比較表。列=親権者/未成年後見人/成年後見(予告枠・空欄)。行=だれがなるか:親権者=法律上当然/未成年後見人=遺言の指定か家庭裁判所の選任。身上監護:親権者=820条から823条/後見人=857条で同一。財産の管理と代表:824条/859条。利益相反:826条(特別代理人)/860条(826条を準用・監督人があれば監督人)。注意義務:827条(自己のためにするのと同一の注意)/869条+644条(善管注意)。見張る人:親権者=監督人の制度はない/後見人=未成年後見監督人と家庭裁判所。714条:どちらも法定の監督義務者。

地図の5つ目、比較表です。親権者と、未成年後見人を、項目ごとに並べます。右端の成年後見の列は、今は空欄です。別の回で、この表に書き足します。1行目、だれがなるか。親権者は、法律上当然に、親権を行います。未成年後見人は、遺言の指定か、家庭裁判所の選任で就きます。前編の結論です。2行目、身上監護。親権者は、820条から823条です。未成年後見人は、857条で、親権者と同一の権利義務を持ちます。ただし、親権を行う者が管理権を有しないときは、前編で見た868条により、後見人は財産に関する権限だけを持ちます。この例外を除けば、ここは、大筋で同じです。3行目、財産の管理と代表。親権者は、824条。未成年後見人は、859条です。どちらも、子のために管理して、子を代表します。ここも、同じ型です。4行目、利益相反。親権者は、826条で、特別代理人です。未成年後見人は、860条で、826条を準用します。ただし、監督人がいれば、監督人が代表します。5行目、注意義務。親権者は、827条で、自己のためにするのと同一の注意です。未成年後見人は、869条と644条で、善管注意です。ここが、違いの1つ目です。6行目、見張る人。親権者には、監督人の制度がありません。親権を行う人に問題があれば、親権喪失などの審判で、制限されます。親権喪失とは、虐待などで親権の行使が著しく不適当であることにより子の利益を著しく害するとき、家庭裁判所が、親権の全部を失わせる審判です。未成年後見人には、未成年後見監督人と、家庭裁判所がいます。ここが、違いの2つ目です。

7行目、714条の監督義務者。714条は、責任能力のない人、たとえば幼い子が他人に損害を与えたとき、その子を監督する法定の義務を負う人が、代わりに賠償する責任を負う、という条文です。親権者も、未成年後見人も、その法定の監督義務者にあたります。前編の結論です。同じ項目は、子のための権限です。違う項目は、責任の重さと、見張りの有無です。問いです。親権者と後見人で、いちばん違う項目はどれでしょうか?注意義務と、見張る人です。軽い注意と重い注意、監督人がいるかどうか、の違いです。

今日の地図(保存版)

4本柱+冒頭の答え。①財産の調査と目録(853条)→管理と代表(859条)=子のための管理②利益相反=特別代理人(860条+826条・外形説)・監督人があれば監督人③善管注意(869条+644条)=親権者の827条より重い/親権代行(867条)④未成年後見監督人(指定848・選任849・欠格850・職務851)。冒頭の答え=子の預金で自分の家を買うことは許されない。子の自宅を自分に売ってもらうなら、利益相反。

  • 4本柱+冒頭の答え
  • ①財産の調査と目録(853条)→管理と代表(859条)=子のための管理②利益相反=特別代理人(860条+826条・外形説)・監督人があれば監督人③善管注意(869条+644条)=親権者の827条より重い/親権代行(867条)④未成年後見監督人(指定848・選任849・欠格850・職務851)
  • 冒頭の答え=子の預金で自分の家を買うことは許されない
  • 子の自宅を自分に売ってもらうなら、利益相反

最後にまとめます。柱は、4本です。1本目。財産の調査と目録、そして管理と代表です。就任したら、遅滞なく財産の調査に着手して、1か月以内に目録を作ります。そのうえで、859条により、後見人は子の財産を管理して、子を代表します。管理も代表も、子のために行います。2本目。利益相反です。後見人と子の利益が相反する行為は、860条が826条を準用して、特別代理人を立てます。判断は、外形説です。ただし、監督人がいれば、特別代理人は立てず、監督人が子を代表します。3本目。注意義務と親権代行です。後見人は、869条と644条により、善管注意を負います。親権者の827条より、重い注意です。そして、未成年被後見人に子がいるときは、867条により、後見人が親権を代わりに行います。4本目。未成年後見監督人です。遺言で指定する848条。家庭裁判所が必要に応じて選ぶ849条。配偶者、直系血族、兄弟姉妹はなれない850条。職務を定める851条です。必ず置かれるものではありません。

冒頭の問いに戻ります。叔父のCさんは、Bさんの預金で、自分の家を買えるのか。答えは、買えません。後見人の管理は、子のためのものです。自分の家は、子のための管理ではありません。一方、Bさんの自宅を、Cさんが自分に売ってもらうなら、それは別の問題です。利益相反行為にあたります。監督人がいなければ、特別代理人を立てます。監督人がいれば、監督人がBさんを代表します。ここは、論文で論点になりうる箇所です。流用と、利益相反を、混ぜないでください。子と取引する形かどうか。注意の程度の問題かどうか。この2つで、書き分けます。

参照条文

  • 民法859条
  • 民法860条
  • 民法869条

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