民法ゼロから民法#351

過去の扶養料と求償

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第7章 親族 #351/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

5年間立て替えた生活費を、きょうだいに請求できるのか

冒頭の設例。C(母・78歳)は年金だけでは暮らせない。A(長女・50歳)が母を引き取って5年間面倒を見た。B(長男・48歳)は母と不仲で一円も出していない。A→B「これまでの分を」。D(家庭裁判所)。問い=長女は長男に、これまでの分を請求できるか。 図:冒頭の設例

  • C(母・78歳)は年金だけでは暮らせない
  • A(長女・50歳)が母を引き取って5年間面倒を見た
  • B(長男・48歳)は母と不仲で一円も出していない
  • A→B「これまでの分を」
  • D(家庭裁判所)
  • 問い=長女は長男に、これまでの分を請求できるか

設例です。母は78歳。年金だけでは、暮らしていけません。長女は50歳。母を自分の家に引き取って、5年間、面倒を見てきました。長男は48歳。母と不仲で、この5年間、一円も出していません。問いです。長女は長男に、これまでの分を請求できるのでしょうか。自分の意思で引き取った人が負担を抱えるのか、何もしない人が負担を免れるのか。この2つの感覚のぶつかり合いが、そのまま論点です。答えは、今日の前半で出します。先に言っておくと、請求できます。ただし、いくら払うのかは、地方裁判所の判決で決まるわけではありません。前回の道具を、短く思い出します。母と長男は、直系血族です。ですから877条1項で、長男にも扶養の義務があります。不仲でも、消えません。母に対する義務は、生活扶助義務、つまり自分の生活に余力がある範囲の義務でした。額や方法は、まず協議で、整わなければ家庭裁判所が決めます。それが878条と879条です。そして、扶養を受ける権利そのものは、処分も代位もできません。881条です。

今日の地図。①過去の扶養料と求償(冒頭の答え)②第7章の地図の引き直し③節目の弁別(4問)④改正法の一言・第8章への橋。 図:今日の地図

今日の地図です。1つ目は、過去の扶養料と、扶養義務者どうしの求償です。2つ目は、第7章の最終回ですから、親族の義務と権限の地図を引き直します。3つ目は、節目の弁別です。親子、親権、後見、扶養を混ぜた事例で、4つの問いに答えます。4つ目は、改正法の一言と、次の章への橋です。用語を先に1つ。求償とは、先に自分が立て替えて支払った分を、本来負担すべき他の人に、請求することです。

夫婦間の過去の婚姻費用と、親族間の過去の扶養料

過去に遡る分担。夫婦間=婚姻費用の分担は、審判のときから過去に遡って定められる。審判は非訟事件の裁判(費用負担義務の存否を終局的に確定するものではない)。親族間の過去の扶養料=遡って請求できるとする見解がある。 図:過去に遡る分担

  • 夫婦間=婚姻費用の分担は、審判のときから過去に遡って定められる
  • 審判は非訟事件の裁判(費用負担義務の存否を終局的に確定するものではない)
  • 親族間の過去の扶養料=遡って請求できるとする見解がある

1つ目の論点です。扶養は、これから先のお金です。では、すでに過ぎた期間の分は、どう扱われるのでしょうか。まず、条文の分かりやすい夫婦から見ます。夫婦は、760条で婚姻費用を分担します。夫婦の財産の回で見た条文です。別居して、片方が長いあいだ生活費をもらえなかった。その過去の分を、あとから決めてもらえるのか、という問題です。

判例最大決昭40・6・30 民集19巻4号1114頁

過去に遡る婚姻費用の分担 家庭裁判所が婚姻費用の分担額を決定するに当り、過去に遡つて、その額を形成決定することが許されない理由はなく、所論の如く将来に対する婚姻費用の分担のみを命じ得るに過ぎないと解すべき何らの根拠はない。

読み解きます。この決定が述べたことは、2つです。1つ目は、過去の分も決められること。2つ目は、この手続がどういう性質のものか、です。まず1つ目です。家庭裁判所が、婚姻費用の分担額を決めるとき、過去に遡って額を形成決定する、つまり、裁判所が額という中身を決めてしまうことを、してはいけない理由はない、と言っています。将来の分だけしか命じられない、という考え方には、根拠がない、とも言っています。ですから、審判のときより前の分も、家庭裁判所は、分担額として決められます。婚姻費用の分担は、収入や資産、暮らしぶりなどの事情を見て、はじめて額が決まる性質のものです。条文は「分担」としか書いていません。ですから、過ぎた期間についても、その事情を見て、いくらが妥当だったのかを裁判所が形づくる、というのがこの決定の考え方です。2つ目です。この審判は、非訟事件、つまり、裁判所が当事者の事情を見て柔軟に決める手続で、公開の法廷ではなく、非公開で行われます。そこで、払う義務まで非公開の手続で決めてしまうと、公開の法廷で裁判を受ける権利を奪うのではないか、という疑問が出ます。決定の答えはこうです。この審判は、費用を負担する義務が、そもそも存在するのかどうかを、最終的に確定させるものではありません。たとえば、夫が、そもそも払う義務は無いと争うなら、その点は、別に訴えを起こして、公開の法廷で決着させる道が残っています。だから、額を審判で決めても、裁判を受ける権利を奪うことにはならない、というのがこの決定の考え方です。夫婦の同居の審判で見たのと、同じ考え方です。

では、夫婦ではなく、親族の間ではどうでしょうか。夫婦の義務は、生活保持義務、つまり、自分の生活を切り下げてでも、相手に、自分と同程度の生活をさせる義務でした。これに対して、母に対する長男の義務は、生活扶助義務、つまり、自分の生活に余力がある範囲の義務です。親族間でも、過去の分を請求できるとする見解があります。ただ、どこまで遡れるのか、つまり、いつの分からを請求できるのかには、この回では立ち入りません。ここまでは、扶養を受ける本人、つまり母の側から見た、過去の分の話でした。冒頭の長女の請求は、立て替えた人が、ほかの義務者に向ける請求です。次は、そちらを見ます。

扶養義務者どうしの求償

旅行の割り勘のたとえ。幹事が宿代を先に全額払った。他の参加者の分担分が、それで消えるわけではない→幹事は、他の参加者に自分以外の分を請求できる。扶養義務者が数人いて、一人が現に扶養した→他の義務者に求償できる。 図:旅行の割り勘のたとえ

  • 幹事が宿代を先に全額払った
  • 他の参加者の分担分が、それで消えるわけではない→幹事は、他の参加者に自分以外の分を請求できる
  • 扶養義務者が数人いて、一人が現に扶養した→他の義務者に求償できる

2つ目、扶養義務者どうしの求償です。たとえ話から入ります。5人で旅行に行き、幹事が、宿代を先に全額払いました。幹事が払ったからといって、他の4人の分担分が、消えるわけではありません。幹事は、他の人に、それぞれの分を請求できます。扶養も同じ型です。母に対して、扶養の義務を負う人が複数いる。そのうちの一人が、現実に母を扶養した。この場合、扶養した人は、他の義務者に求償できる、と解されています。頼まれてもいないのに引き取った場合でも、ほかの義務者に負担を求められるのか。そこが、設例の核心です。実際の判例も、母と長男が不仲だった事案で、長女が母を引き取って扶養したところ、長女から長男への扶養料の請求を認めています。設例に引き直すと、長男と母が不仲で、長女が自分から引き取ったとしても、長女ひとりの負担にはならない、ということです。

求償を認めた判例の位置づけ。事案=母と長男が不仲/長女が母を引き取って扶養。判例=長女から長男への扶養料の請求(分担)を認めた。趣旨=親身になった人だけが損をしないように。 図:求償を認めた判例の位置づけ

  • 事案=母と長男が不仲/長女が母を引き取って扶養
  • 判例=長女から長男への扶養料の請求(分担)を認めた
  • 趣旨=親身になった人だけが損をしないように

なぜ、そう考えるのでしょうか。理由は、親身になって世話をした人だけが、損をしないようにするためです。長男の義務は、877条1項で、はじめから生じています。長女が引き取ったことで、その義務が消えるわけではありません。引き取った事実が、義務者の一人の自己負担を、決めてしまうことはないのです。この判例は、求償できるかどうかを答えたものです。それぞれがいくら負担するかの決め方は、次の論点です。

求償の金額は誰が決めるのか 878条・879条

求償の金額は誰が決めるか。878条=扶養義務者が数人いるときの順序/879条=扶養の程度・方法。どちらも、協議が整わなければ家庭裁判所が定める 図:求償の金額は誰が決めるか

  • 878条=扶養義務者が数人いるときの順序/879条=扶養の程度・方法
  • どちらも、協議が整わなければ家庭裁判所が定める

3つ目、求償の金額を、誰が、どうやって決めるのかです。ここで、前回の条文に戻ります。金額の決め方の根拠は、この2つの条文です。

条文民法878条

民法第878条(扶養の順位) 扶養をする義務のある者が数人ある場合において、扶養をすべき者の順序について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、家庭裁判所が、これを定める。扶養を受ける権利のある者が数人ある場合において、扶養義務者の資力がその全員を扶養するのに足りないときの扶養を受けるべき者の順序についても、同様とする。

条文民法879条

民法第879条(扶養の程度又は方法) 扶養の程度又は方法について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、扶養権利者の需要、扶養義務者の資力その他一切の事情を考慮して、家庭裁判所が、これを定める。

878条は、義務者が数人いるとき、誰が先に扶養するか、という順序の話です。879条は、扶養の程度と方法、つまり、いくらを、どうやってという話です。どちらも、協議が調わないとき、または協議ができないときは、家庭裁判所が定めます。879条は、定めるときに見るものとして、母の需要、義務者の資力、その他一切の事情を挙げています。なぜ求償の金額が、この879条の話になるのでしょうか。長男がいくら負担するかは、母への扶養を、義務者のあいだでどれだけずつ受け持つか、という話です。それは、扶養の程度と方法の中身そのものです。だから、879条で決まります。設例に当てはめます。長男がいくら負担するのかは、長男の資力と、長女が実際にどれだけ負担してきたか、そして、母がどれだけ必要だったかを見て決まります。きっちり半分、と機械的に決まるものではありません。

手続の流れ。長女が母を扶養(立て替え)→長男と協議→整わない→家庭裁判所が審判で分担額を定める。考慮=母の需要・長男の資力・長女の負担・その他一切の事情。 図:手続の流れ

  • 長女が母を扶養(立て替え)→長男と協議→整わない→家庭裁判所が審判で分担額を定める
  • 考慮=母の需要・長男の資力・長女の負担・その他一切の事情

手続の流れは、板のとおりです。まず、長女と長男が話し合います。整わなければ、家庭裁判所の審判で、分担額が定まります。過去の扶養料を求償する場合でも、分担額の決め方は同じです。問いです。長女が長男に、半額を払えと、地方裁判所に訴えました。判決で、金額が決まるでしょうか?決まらない、と思います。878条と879条で、家庭裁判所が審判で定めることになっているからです。決め手は、金額が、需要や資力などの事情を見て定める性質のものだからです。通常の裁判所の判決は、権利があるか無いかを判断するのに向いています。金額の幅を、事情を見て調整するのは、家庭裁判所の審判の役目です。

長女の請求は、母の請求権の代位ではない 881条

長女の請求の性質。母の扶養請求権を代わりに行使するのか、長女自身が立て替えた分を請求するのか。881条=扶養を受ける権利は処分できない 図:長女の請求の性質

  • 母の扶養請求権を代わりに行使するのか、長女自身が立て替えた分を請求するのか
  • 881条=扶養を受ける権利は処分できない

4つ目、長女の請求の性質です。始める前に、思い出してください。債権者代位権で、扶養を受ける権利は、代位できる権利でしたか?代位できません。一身専属権だからです。本人に代わって使えない権利でした。

2つの請求の区別。長女の求償=長女自身が立て替えた分の請求(母の権利とは別)/母の扶養請求権を長女が代わりに行使=881条・423条1項ただし書により許されない。 図:2つの請求の区別

長女の求償は、母の権利の代位とは、別の請求です。母の扶養請求権を、長女が代わりに行使するなら、それは代位で、許されません。しかし、長女が求めているのは、長女自身が立て替えた分です。自分が払ったお金を、本来負担すべき人に請求するのですから、長女自身の請求です。母の権利に乗っているのではなく、長女が自分で持っている請求権です。ですから、代位の禁止には、当たりません。冒頭の答えを、まとめて言います。長女は、長男に求償できます。引き取ったというだけで、長女が一人で負担することにはなりません。長男がいくら負担するかは、協議で決め、整わなければ家庭裁判所が審判で定めます。母と長男が不仲でも、長男の義務は消えません。

3つの判断の役割分担。①夫婦の過去の婚姻費用=遡って分担を定められる(最大決昭40)②扶養義務者間=求償できる(判例)③手続=家庭裁判所の審判で分担額を定める(878条・879条)。 図:3つの判断の役割分担

3つの判断を、役割分担で整理します。夫婦の過去の婚姻費用は、遡って定められる。扶養義務者どうしは、求償できる。そして、その額は、家庭裁判所の審判で決まる。この3つが、今日の前半の答えです。論文でも、扶養は論点になりえます。ここでは、この3つの判断の役割を、短答の知識として押さえてください。

今日の地図(保存版)

親族の義務と権限の地図。夫婦=752条・760条(生活保持)/親→未成年の子=817条の12・820条〜824条(扶養・監護教育・財産の管理と代表)・834条〜835条(制限)/後見人→本人=857条〜859条・858条(身上配慮)・849条〜851条(監督)/親族間=877条(生活扶助)。縦軸=家庭裁判所が関わる場面:決める(扶養の程度・順序・親権者)/選ぶ(後見人・特別代理人)/制限する(親権喪失・停止)/許可する(居住用不動産の処分・解除)。 図:親族の義務と権限の地図

  • 夫婦=752条・760条(生活保持)/親→未成年の子=817条の12・820条〜824条(扶養・監護教育・財産の管理と代表)・834条〜835条(制限)/後見人→本人=857条〜859条・858条(身上配慮)・849条〜851条(監督)/親族間=877条(生活扶助)
  • 縦軸=家庭裁判所が関わる場面:決める(扶養の程度・順序・親権者)/選ぶ(後見人・特別代理人)/制限する(親権喪失・停止)/許可する(居住用不動産の処分・解除)

ここで、第7章の最終回として、地図を引き直します。この章で学んだのは、親族の間で、誰が誰に、どんな義務や権限を持つのか、ということでした。夫婦は、752条と760条で、互いに助け合い、生活費を分担します。親は、未成年の子に対して、扶養、監護と教育、そして財産の管理と代表という、義務と権限を持ちます。そして、その権限を使いすぎたときの制限が、834条から835条です。後見人は、本人に対して、財産の管理と代表、そして身上への配慮の義務を持ち、それを裁判所が監督します。親族どうしは、877条で、余力の範囲で助け合います。縦軸を見ます。家庭裁判所が関わる場面です。決める、選ぶ、制限する、許可する。扶養の程度や順序、親権者は、家庭裁判所が決めます。後見人や特別代理人は、家庭裁判所が選びます。親権の喪失や停止は、家庭裁判所が制限します。居住用不動産の処分などは、家庭裁判所が許可します。たとえば、成年後見人が、本人の住んでいた家を売るには、家庭裁判所の許可が要ります。859条の3です。この章を通す一言は、こうです。家庭の中の義務と権限は、当事者の意思だけでなく、最後に、家庭裁判所が調整する。なぜでしょうか。家族の中には、子や、判断する力が衰えた本人のように、自分では身を守りにくい人がいます。当事者の話し合いだけに任せると、その人が置き去りになりかねません。また、扶養の額のように、事情を見て幅の中で決めるものは、さきほど見たとおり、権利があるか無いかを判断する判決には向きません。今日の求償の金額が、審判で決まる理由も、この型の中に入っています。

節目の弁別 4つの問い

弁別の設例。A(元夫・父・再婚・親権者ではない)、B(母・親権者)、C(子・10歳・Bと暮らす)、D(家庭裁判所)、E(Aの母・80歳・年金暮らし・認知症)。前半の設例とは別の事例。 図:弁別の設例

  • A(元夫・父・再婚・親権者ではない)、B(母・親権者)、C(子・10歳・Bと暮らす)、D(家庭裁判所)、E(Aの母・80歳・年金暮らし・認知症)
  • 前半の設例とは別の事例

節目の弁別です。この章で学んだ制度を、混ぜて出します。どの条文、どの制度が当たるのかを、選んでください。設例を置きます。ここからは、前半の長女や長男とは、別の家族です。Aさんと、Bさんは離婚しました。親権者は、母のBさんです。子のCさんは10歳で、Bさんと暮らしています。Aさんは再婚しました。Aさんの母のEさんは80歳で、年金だけで暮らしていて、認知症です。この家族で、4つの場面を見ます。各問は、問いを聞いたら、20秒ほど止まって考えてください。

問1の選択肢。(ア) 親権者Bが、自分の事業の借入れのため、Cの代理人としてC名義の土地に抵当権を設定。(イ) Bが、友人Gから不動産の売却を任された任意代理人として、その不動産を自分で買った。選ぶ=826条か108条か。 図:問1の選択肢

  • (ア) 親権者Bが、自分の事業の借入れのため、Cの代理人としてC名義の土地に抵当権を設定
  • (イ) Bが、友人Gから不動産の売却を任された任意代理人として、その不動産を自分で買った
  • 選ぶ=826条か108条か

問1です。826条か、108条か。(ア)として、親権者のBさんが、自分の事業の資金を借りました。その債務のために、Cさんの代理人として、Cさんの土地に抵当権を設定しました。(イ)として、同じBさんが、友人のGさんから、不動産の売却を任された任意代理人でした。Bさんは、その不動産を、自分で買いました。それぞれ、826条と108条のどちらでしょうか。

条文民法826条

民法第826条(利益相反行為) 1 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。 2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。

答えです。(ア)は826条です。親権者のBさんが借りた債務のために、子の土地を担保に出す行為は、親と子の利益が相反する行為にあたります。利益が相反するかどうかは、親の意図ではなく、行為の外形で判断します。これが外形説でした。このときは、Bさんは、Cさんのために特別代理人を選任することを、家庭裁判所に請求しなければなりません。(イ)は108条1項です。任意代理人が、本人との間で契約を結ぶ自己契約は、代理権を有しない者がした行為とみなされます。ただし、本人のGさんがあらかじめ許諾していれば、例外です。見分けるキーは、誰を代理しているのかです。親権者が子を代理する場面は826条で、判断を引き受ける人は家庭裁判所が選ぶ特別代理人です。任意代理の場面は108条で、判断は本人の許諾にかかっています。

問2の選択肢。(ア) Bが、Cの預金を繰り返し引き出して遊興費に使った(世話・教育は適切)。(イ) Bが重い病気で入院し世話ができない(2年以内に回復の見込み)。(ウ) Bが、Cに激しい虐待を続け、改善の見込みもない。選ぶ=親権喪失・親権停止・管理権喪失。 図:問2の選択肢

  • (ア) Bが、Cの預金を繰り返し引き出して遊興費に使った(世話・教育は適切)
  • (イ) Bが重い病気で入院し世話ができない(2年以内に回復の見込み)
  • (ウ) Bが、Cに激しい虐待を続け、改善の見込みもない
  • 選ぶ=親権喪失・親権停止・管理権喪失

問2です。親権喪失、親権停止、管理権喪失のどれでしょうか。(ア)として、Bさんが、Cさんの預金を、繰り返し引き出して、遊興費に使いました。ただし、子の世話や教育は、適切におこなっています。(イ)として、Bさんが重い病気で入院して、世話ができません。ただ、2年以内に回復する見込みがあります。(ウ)として、Bさんが、Cさんに激しい虐待を続けていて、改善の見込みもありません。答えです。(ア)は、管理権喪失です。835条です。問題があるのは、財産の管理だけで、世話や教育は適切だからです。財産の管理の部分だけを、取り上げます。(イ)は、親権停止です。834条の2です。2年を超えない範囲で、期間を定めて、親権を停止します。ここで、親権喪失ではない理由も言えます。親権喪失の834条には、2年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、審判できない、というただし書があるからです。回復の見込みが近いなら、期間を区切る停止のほうが、子の利益に合います。(ウ)は、親権喪失です。834条です。虐待が続き、改善の見込みもない。親権の行使が著しく困難または不適当で、子の利益を著しく害する場面です。見分けるキーは、まず、親権の何が問題か。財産の管理だけか、親権の全部か。全部が問題なら、次は、問題の大きさと、回復の見込みの2つで分けます。著しいか。2年以内に回復するか。

問3の選択肢。(ア) 親権者でないAが、子C(10歳)に負う扶養。(イ) Aが、年金暮らしの母Eに負う扶養。(ウ) Aの再婚相手Hが、病気のAに負う扶養。選ぶ=生活保持義務か生活扶助義務か。 図:問3の選択肢

  • (ア) 親権者でないAが、子C(10歳)に負う扶養
  • (イ) Aが、年金暮らしの母Eに負う扶養
  • (ウ) Aの再婚相手Hが、病気のAに負う扶養
  • 選ぶ=生活保持義務か生活扶助義務か

問3です。生活保持義務か、生活扶助義務か。(ア)として、親権者ではないAさんが、10歳のCさんに対して負う扶養。(イ)として、Aさんが、年金暮らしの母のEさんに対して負う扶養。(ウ)として、Aさんの再婚相手のHさんが、病気のAさんに対して負う扶養です。答えです。(ア)は、生活保持義務です。817条の12第1項は、父母が子を、自己と同程度の生活を維持できるよう扶養しなければならない、と定めています。親権者でなくなっても、親であることは変わらないので、未成熟の子に対するこの保持義務は、続きます。(イ)は、生活扶助義務です。877条1項に基づく、老いた親と子の関係です。Aさんの生活に余力がある範囲で支えればよい義務です。(ウ)は、生活保持義務です。夫婦だからです。752条と760条です。見分けるキーは、夫婦、または親から未成熟の子か、それ以外か、です。前者なら保持、後者なら扶助です。

問4の選択肢。Cが責任無能力の年齢で他人にけがをさせた→親権者B/Bが亡くなり未成年後見人K/認知症のEが他人にけがをさせた→Eの成年後見人A。選ぶ=714条の法定の監督義務者に当たるか。 図:問4の選択肢

  • Cが責任無能力の年齢で他人にけがをさせた→親権者B/Bが亡くなり未成年後見人K/認知症のEが他人にけがをさせた→Eの成年後見人A
  • 選ぶ=714条の法定の監督義務者に当たるか

問4です。714条の、法定の監督義務者にあたるのは、誰でしょうか。場面が3つあります。1つ目、Cさんが、責任能力のない年齢で、自転車に乗っていて、他人にけがをさせた。親権者のBさんは、当たるでしょうか。2つ目、Bさんが亡くなって、未成年後見人のKさんがついていた場合、Kさんは当たるでしょうか。3つ目、認知症のEさんが、他人にけがをさせた場合、Eさんの成年後見人のAさんは、当たるでしょうか。順に答えます。1つ目、親権者のBさんは、当たります。820条で、子の監護と教育をする義務があるからです。2つ目、未成年後見人のKさんも、当たります。857条が、未成年後見人に、親権者と同一の権利義務を認めているからです。3つ目、成年後見人のAさんは、成年後見人であるという地位だけでは、法定の監督義務者にあたりません。858条の身上配慮義務は、法律行為をするときの配慮の義務であって、本人の行動そのものを監督する義務までは、求めていないからです。ただし、同居して介護しているような実態があれば、監督義務者に準ずべき者、つまり、法定の義務は無くても監督を引き受けたとみるべき事情がある人として、別の枠で責任が問題になる余地は残ります。見分けるキーは、身上の面倒が、監護そのものか、法律行為の場面での配慮か、です。

4つの見分け軸。①誰が誰を代理するか(親権者が子を代理=826条/任意代理=108条)②問題の大きさ×回復の見込み(財産管理だけ=管理権喪失/2年以内に回復=親権停止/著しく害し回復の見込みなし=親権喪失)③夫婦・親から未成熟の子か、それ以外か(保持か扶助か)④監護そのものか、法律行為の配慮か(714条の監督義務者)。 図:4つの見分け軸

4つの問いを、見分けの軸で整理します。1つ目の軸は、誰が誰を代理するかです。親権者が子を代理するなら826条、任意代理なら108条です。2つ目の軸は、問題の大きさと、回復の見込みです。財産の管理だけなら管理権喪失、2年以内に回復するなら親権停止、著しく害して改善の見込みもないなら親権喪失です。3つ目の軸は、夫婦と、親から未成熟の子か、それ以外かです。前者は保持、後者は扶助です。4つ目の軸は、監護そのものか、法律行為の場面での配慮かです。前者は714条の監督義務者に当たり、後者は、地位だけでは当たりません。混ざっていても、問いを軸に分けていけば、どの条文なのかは、選べます。

改正法の一言・次の章への橋・まとめ

改正法の一言。令和8年に、成年後見制度を見直す民法等の改正法が成立しているが、まだ施行されていない。問4の成年後見人の話は現行法の整理。試験は施行までは現行法。 図:改正法の一言

  • 令和8年に、成年後見制度を見直す民法等の改正法が成立しているが、まだ施行されていない
  • 問4の成年後見人の話は現行法の整理
  • 試験は施行までは現行法

改正法について、一言だけ触れます。令和8年に、成年後見制度を見直す民法等の改正法が成立しました。ただし、まだ施行されていません。問4の成年後見人の話は、現行法の整理です。試験は、施行されるまでは、現行法で答えます。最後に、次の章への橋です。扶養の義務の範囲を超えて、親の世話や家業を支えてきた人は、親が亡くなったあと、報われるのでしょうか。扶養や療養看護で報いる仕組みは、次の章、相続で出てきます。今日、通常の扶養の範囲を押さえたことが、その前提になります。

まとめ。冒頭の答え=長女は長男に求償できる。金額は協議、整わなければ家庭裁判所の審判。過去の婚姻費用は遡って定められる。長女の請求は代位ではなく長女自身の請求。節目の4つの見分け軸。 図:まとめ

  • 冒頭の答え=長女は長男に求償できる
  • 金額は協議、整わなければ家庭裁判所の審判
  • 過去の婚姻費用は遡って定められる
  • 長女の請求は代位ではなく長女自身の請求
  • 節目の4つの見分け軸

まとめます。冒頭の問いの答えは、こうです。長女は、長男に、これまでの分を求償できます。引き取ったというだけで、長女が一人で負担することにはなりません。長男の負担額は、協議で決め、整わなければ家庭裁判所が審判で定めます。3つの判断も、もう一度確認します。夫婦の過去の婚姻費用は、遡って定められます。扶養義務者どうしは、求償できます。その額は、家庭裁判所の審判で決まります。長女の請求は、母の請求権の代位ではなく、長女自身の請求です。節目の4問は、誰が誰を代理するか、問題の大きさと回復の見込み、夫婦・親から未成熟の子か、それ以外か、監護か法律行為の配慮か、の4つの見分けで選ぶのでしたね。第7章は、これで終わりです。親族の義務と権限は、最後に家庭裁判所が調整する。この型を持って、次の章に進みます。

参照条文

  • 民法878条
  • 民法879条
  • 民法826条

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