民法ゼロから民法#364

特別の寄与と相続分の譲渡

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第8章 相続 #364/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

10年介護した長男の妻は、何を請求できるか

冒頭の設例。A(父・死亡・遺産は預貯金と自宅で合わせて3,840万円)、B(長男・相続人)、C(長男の妹・相続人)、D(長男の妻・相続人ではない・10年間、給料なしでAを介護)。母はすでに亡くなっている。問い=Dは何か請求できるか。 図:冒頭の設例

  • A(父・死亡・遺産は預貯金と自宅で合わせて3,840万円)、B(長男・相続人)、C(長男の妹・相続人)、D(長男の妻・相続人ではない・10年間、給料なしでAを介護)
  • 母はすでに亡くなっている
  • 問い=Dは何か請求できるか

設例です。父が亡くなりました。母は、すでに亡くなっています。相続人は、子である2人、長男と、長男の妹です。長男の妻は、10年間、給料を受け取らずに、夫の父を介護してきました。遺産は、預貯金と自宅を合わせて、3,840万円です。長男の妻は、遺産のうち、何も受け取れないのでしょうか。それとも、何か請求できるのでしょうか。納得のいかなさが、今日の主題です。先に筋だけ言います。遺産を受け取る立場にはなくても、相続人に、お金を請求できる制度があります。特別の寄与といいます。前回、寄与分の説明の最後で、同じ名前の別の制度がある、と予告しました。それが、これです。金額は、道筋を通ったあとで、数字で出します。

地図。相続分の話の締めくくり。①特別の寄与とは何か・要件②請求の手続(協議→家庭裁判所・期間・上限・負担)③寄与分との違い(比較表)④相続分の譲渡⑤無償の相続分の譲渡と特別受益⑥取戻し⑦どの道具で調整するかの選び分け。 図:地図

  • 相続分の話の締めくくり
  • ①特別の寄与とは何か・要件②請求の手続(協議→家庭裁判所・期間・上限・負担)③寄与分との違い(比較表)④相続分の譲渡⑤無償の相続分の譲渡と特別受益⑥取戻し⑦どの道具で調整するかの選び分け

道筋は7つです。1つ目、特別の寄与とは何か、どういう条件で認められるのか。2つ目、請求の手続です。協議と家庭裁判所、期間、上限、そして誰がいくら払うのかを見ます。3つ目、寄与分との違いを、表で整理します。ここまでで、冒頭の設例に答えが出ます。4つ目から後半です。相続分の譲渡といって、自分の相続分を、人に譲る話です。5つ目、無償で譲ったとき、特別受益になるのか。6つ目、ほかの相続人が、それを取り戻せるのか。7つ目、最後に、事例を8つ出します。この事例の調整は、これまでの道具のどれで行うのか、選んでもらいます。今日で、相続分の話は、ひと区切りです。

特別の寄与は、なぜ必要か

制度の背景。寄与分(904条の2)=共同相続人だけ。長男の妻=相続人でない→寄与分を主張できない。妻は夫の父から見て1親等の姻族(親族)。姻族には当然の扶養義務はない。→相続人でない親族の貢献に報いる制度=1050条。 図:制度の背景

  • 寄与分(904条の2)=共同相続人だけ
  • 長男の妻=相続人でない→寄与分を主張できない
  • 妻は夫の父から見て1親等の姻族(親族)
  • 姻族には当然の扶養義務はない
  • →相続人でない親族の貢献に報いる制度=1050条

まず、なぜこの制度が要るのか、です。前回見た寄与分は、共同相続人のための制度でした。長男の妻は、相続人ではありません。ですから、妻自身は、寄与分を主張できません。妻の介護を、夫の寄与分として考える方法は、実務で行われてきました。夫の貢献の中に、妻の働きも含めて考える、というやり方です。ただ、これは、夫が相続人として残っていてこそ使える方法です。夫が、妻より先に亡くなっていれば、夫の寄与分という形は、取れません。妻は、どれだけ尽くしても、何も請求できなくなります。しかも、これは条文に根拠のある方法ではなく、実務の工夫です。そこで、相続人でない親族の貢献に、正面から報いる制度として、1050条が置かれました。民法の相続の部分の改正で、新しくできた制度です。

法律は、そうは考えていません。扶養の義務を思い出してください。877条1項で、互いに扶養する義務を負うのは、直系血族と兄弟姉妹です。長男の妻は、夫の父から見て、1親等の姻族です。姻族は、親族の回で見たとおり、配偶者の血族と、血族の配偶者のことです。姻族には、当然には、扶養の義務がありません。家庭裁判所が、特別の事情があると認めて義務を負わせた場合だけ、877条2項で義務が生じます。ですから、嫁だから面倒を見て当然、という筋は、法律にはありません。無償で尽くしたなら、報いる道が要る。それが、この制度の出発点です。核心の軸を、一言で言います。寄与分は、相続人の中での調整です。特別の寄与は、相続人でない親族から、相続人に向けた、お金の請求です。向きが違う、と押さえてください。

特別の寄与の要件

特別の寄与の要件。①被相続人の親族で、相続人でない者②無償③療養看護その他の労務の提供④特別の寄与(一定の程度を超える貢献)⑤財産の維持または増加。除かれる者=相続人・相続の放棄をした者・欠格・廃除。 図:特別の寄与の要件

  • ①被相続人の親族で、相続人でない者②無償③療養看護その他の労務の提供④特別の寄与(一定の程度を超える貢献)⑤財産の維持または増加
  • 除かれる者=相続人・相続の放棄をした者・欠格・廃除

条文を読みます。1050条です。5項まであります。今日は、全部が大事です。まず1項を読み、要件を整理します。2項から先は、手続のところで読みます。

条文民法1050条

民法 第千五十条(第一項) 1項 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第八百九十一条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。

1項が、請求できる人と、その条件です。ここから、3つの柱に整理します。1つ目は、誰がやったか、です。被相続人の親族であって、相続人でない者。2つ目は、何をしたか、です。無償で、療養看護その他の労務の提供をした。3つ目は、その結果です。財産の維持または増加について、特別の寄与をした。順に見ます。1つ目、主体です。被相続人の親族であることが必要です。親族の範囲は、725条の6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族でした。長男の妻は、夫の父から見て1親等の姻族ですから、親族に入ります。そのうえで、相続人でないことが必要です。かっこ書きが、除かれる人を挙げています。相続人、相続の放棄をした人、891条の欠格にあたる人、廃除で相続権を失った人です。

相続人であれば、そもそも寄与分という道があります。相続人になれない人や、自分から相続人にならない道を選んだ人まで、救う必要は乏しい、と考えられています。放棄は、初めから相続人でなかったことになる、と前に見ました。それでも、この制度の対象からは外れます。もう1つ、大事な点があります。内縁の配偶者は、親族ではありません。法律上の配偶者ではなく、血族でも、姻族でもないからです。何十年連れ添った内縁の妻が、無償で介護をしても、この制度は使えません。内縁には、相続権が類推されない、と前に見たことの、延長にあります。

寄与分との違い(態様と物差し)。態様=寄与分(904条の2)は労務の提供・財産上の給付・療養看護・その他/特別の寄与(1050条)は無償の療養看護その他の労務の提供だけ(金銭の出資・財産上の給付は含まない)。物差し=寄与分は身分関係から通常期待される程度を超える貢献/特別の寄与は一定の程度を超える貢献(報いるのが相当といえるほどの顕著な貢献)。 図:寄与分との違い(態様と物差し)

  • 態様=寄与分(904条の2)は労務の提供・財産上の給付・療養看護・その他
  • 特別の寄与(1050条)は無償の療養看護その他の労務の提供だけ(金銭の出資・財産上の給付は含まない)。物差し=寄与分は身分関係から通常期待される程度を超える貢献
  • 特別の寄与は一定の程度を超える貢献(報いるのが相当といえるほどの顕著な貢献)。

2つ目、態様です。無償で、療養看護その他の労務の提供をしたこと。無償というのは、その貢献に見合う対価を、受け取っていないことです。介護の報酬を、きちんともらっていたなら、対象外です。そして、労務の提供に限られます。療養看護のほか、家業の手伝いのような、体を動かす貢献です。寄与分との違いが、ここに出ます。寄与分は、労務のほかに、財産上の給付も対象でした。事業の資金を出すような場合です。特別の寄与は、労務の提供に限られ、金銭の出資や、財産上の援助は含まれません。労務に絞ったのは、介護や家業の手伝いを無償でした場面では、相続人でないというだけで何も受け取れないのは不公平だ、という声が特に強かったからです。対象を広げすぎると、相続の争いが複雑になって長引く、という心配もありました。お金を出した場合は、貸したのか、あげたのか、という約束の問題として、別に整理することになる、と考えられます。3つ目、特別の寄与です。ここが、寄与分の同じ言葉と、物差しが違う部分です。寄与分の特別の寄与は、被相続人との身分関係から、通常期待される程度を超える貢献でした。夫婦の協力扶助義務や、親族の扶養義務の範囲内は、含まれませんでした。特別寄与者の場合は、そうではなく、一定の程度を超える貢献が必要だ、と解されています。貢献に報いるのが相当といえるほど、顕著な貢献、という趣旨です。

どうして、同じ物差しを使わないのですか。特別寄与者には、扶養の義務を負わない親族が、含まれるからです。さきほどの姻族が、そうです。義務がないのですから、義務の範囲内かどうかで測る物差しが、そのままでは使いにくい。そこで、義務ではなく、貢献そのものが、一定の程度を超えたかを見ます。最後に、因果です。財産の維持または増加が、要ります。たとえば、介護を家族が担ったので、介護サービスの費用を払わずに済んだ。これは、財産が減らずに済んだ、つまり維持された、と見られます。ただ頑張った、では足りません。

設例への当てはめ。D(長男の妻)=夫の父の1親等の姻族(親族)・相続人でない・10年間無給の介護(無償の労務)・介護費用を払わずに済んだ(財産の維持)→特別の寄与が認められうる。成否・額は事案ごとに決まる。 図:設例への当てはめ

  • D(長男の妻)=夫の父の1親等の姻族(親族)・相続人でない・10年間無給の介護(無償の労務)・介護費用を払わずに済んだ(財産の維持)→特別の寄与が認められうる
  • 成否・額は事案ごとに決まる

設例に当てはめます。妻は、夫の父の1親等の姻族で、親族です。相続人ではありません。10年間、給料を受け取らずに介護しました。無償の、労務の提供です。介護の費用を払わずに済んだ、という財産の維持にも結びつきます。10年間の介護なら、特別の寄与が認められうる、といえます。認められうる、と言ったのは、成否も額も、事案ごとに決まるからです。ここで問いです。長男の妻が、介護はまったくせず、父の店の改装費を、自分の貯金から出しました。無償です。これは、特別の寄与になるでしょうか?ならないと思います。お金を出したのは、財産上の給付で、労務の提供ではないからです。条文は、労務の提供と書いています。お金の出資は、この制度の外です。

請求の手続、上限、誰がいくら払うか

請求の流れ。特別寄与者→相続人に請求→協議→(調わない・できない)→家庭裁判所に協議に代わる処分を請求(相続の開始と相続人を知った時から6か月・相続開始から1年)→家庭裁判所が一切の事情を考慮して額を定める→上限=遺産−遺贈→各相続人が法定・指定相続分で負担。 図:請求の流れ

次は、手続です。条文の2項から5項まで、上から順に見ていきます。

条文民法1050条

民法 第千五十条(第二項〜第五項) 2項 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から六箇月を経過したとき、又は相続開始の時から一年を経過したときは、この限りでない。 3項 前項本文の場合には、家庭裁判所は、寄与の時期、方法及び程度、相続財産の額その他一切の事情を考慮して、特別寄与料の額を定める。 4項 特別寄与料の額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額から遺贈の価額を控除した残額を超えることができない。 5項 相続人が数人ある場合には、各相続人は、特別寄与料の額に第九百条から第九百二条までの規定により算定した当該相続人の相続分を乗じた額を負担する。

1つ目、まず協議です。1項は、特別寄与者が、相続人に対して、特別寄与料の支払を請求できる、と言っています。特別寄与料というのは、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭のことです。話し合いで、額が決まれば、それで済みます。2つ目、協議が調わないとき、または、協議ができないときです。2項本文です。特別寄与者は、家庭裁判所に対して、協議に代わる処分を請求できます。協議に代わる処分というのは、話し合いがまとまらないので、家庭裁判所が代わりに額を決める、という手続です。3項で、家庭裁判所は、寄与の時期、方法、程度、相続財産の額、その他一切の事情を考慮して、額を定めます。計算式で出すのではなく、事情を総合して決める、ということです。3つ目、期間です。2項のただし書です。家庭裁判所への請求は、2つの期限のうち、先に来たほうで切れます。1つは、特別寄与者が、相続の開始と相続人を知った時から、6か月です。もう1つは、相続の開始の時から、1年です。

どちらも守る必要があります。先に来たほうで、請求できなくなります。たとえば、父が亡くなったことも相続人も、亡くなってすぐに知ったのなら、実際には、6か月が先に来ます。亡くなったことを、ずっとあとで知ったのなら、知った時から6か月は、まだ先ですが、相続開始から1年が、先に来るかもしれません。注意してほしいのは、切れるのは、家庭裁判所への請求だ、という点です。協議そのものに、期間はありません。ただ、協議に手間取っている間に、家庭裁判所への道が閉じてしまいます。期間をこれほど短く切ったのは、相続人の外から来る請求で、相続の後始末が、いつまでも終わらないのを防ぐためです。そばで介護してきた親族なら、亡くなったことは、たいていすぐに分かります。ですから、特別寄与者は、早く動く必要があります。ここで問いです。長男の妻は、父の死亡と相続人を知ってから、8か月たちました。相続の開始からは、9か月です。家庭裁判所に、協議に代わる処分を請求できるでしょうか?

できないと思います。知った時から6か月を過ぎているからです。開始から1年は、まだ来ていませんが、先に6か月のほうで切れています。どちらか一方でも過ぎれば、請求はできません。4つ目、上限です。4項です。特別寄与料は、被相続人が相続開始の時に有した財産の価額から、遺贈の価額を引いた残りを、超えられません。寄与分の上限と、同じです。たとえば、遺産が3,840万円で、そのうち3,300万円が、第三者への遺贈だったとします。上限は、540万円です。遺言で決めた処分を、特別寄与料で削ってはいけない、という考え方です。

負担の計算(冒頭の設例・数字は仮定)。特別寄与料が720万円と定められたとする。相続人=夫(長男)と妹=法定相続分2分の1ずつ→夫360万円・妹360万円(検算720)。遺言で夫3分の2・妹3分の1と指定されていれば→夫480万円・妹240万円(検算720)。上限の例=遺産3,840−遺贈3,300=540万円。 図:負担の計算

  • 冒頭の設例・数字は仮定
  • 特別寄与料が720万円と定められたとする。相続人=夫(長男)と妹=法定相続分2分の1ずつ→夫360万円・妹360万円(検算720)。遺言で夫3分の2・妹3分の1と指定されていれば→夫480万円・妹240万円(検算720)。上限の例=遺産3,840−遺贈3,300=540万円。

5つ目、誰がいくら払うかです。5項です。相続人が数人いるときは、各相続人は、特別寄与料の額に、900条から902条までの規定で算定した、その相続人の相続分を乗じた額を負担します。設例で計算します。特別寄与料が、720万円と定められたとします。ここは、あくまで仮定です。相続人は、長男と妹の2人で、子が2人ですから、法定相続分は2分の1ずつです。720万円の2分の1で、長男が360万円、妹が360万円です。足すと720万円。検算が合います。もし、父の遺言で、長男が3分の2、妹が3分の1と、指定されていたら、どうなるか。指定相続分に従って、長男が480万円、妹が240万円です。足すと720万円で、これも合います。

具体的相続分ではなく、法定や指定の相続分なのですね。長男が、生前に何かもらっていても、関係ないのですか。関係ありません。条文は、900条から902条までの規定で算定した相続分、と書いています。特別受益や寄与分を反映した、具体的相続分ではありません。900条から902条は、法定相続分と指定相続分の条文でした。相続の借金と同じように、相続分に応じて割り振る、と整理されたからです。具体的相続分のない相続人まで負担するのはおかしい、という意見もありましたが、額には上限があって大きくなりすぎない、として、この形になりました。もう1つ、とても大事な点があります。この請求は、遺産分割の外にあります。特別寄与者は、相続人ではなく、遺産分割の当事者ではありません。相続人に対する、独立した金銭の請求です。寄与分が、遺産分割の中で、具体的相続分に加わる数字だったのとは、ここが違います。

寄与分と特別の寄与を比べる、冒頭の答え

復習の問い。寄与分の「特別の寄与」とは、どんな貢献でしたか? 図:復習の問い。寄与分の「特別の寄与」とは、どんな貢献でしたか?

比べる前に、前回を思い出してください。寄与分が認められる、特別の寄与とは、どんな貢献でしたか?無償で、被相続人との身分関係から通常期待される程度を超える貢献です。夫婦の協力扶助義務や親族の扶養義務の範囲内は、含まれませんでした。では、並べます。

比較表。寄与分(904条の2)/特別の寄与(1050条)。主体=共同相続人/相続人でない親族。態様=事業の労務・財産上の給付・療養看護・その他/無償の療養看護その他の労務の提供だけ。特別の寄与の物差し=身分関係から通常期待される程度を超える/一定の程度を超える貢献。何が決まるか=具体的相続分に加える(遺産分割の中)/相続人への金銭請求(遺産分割の外)。決め方=協議→家庭裁判所(遺産分割の請求があるとき)/協議→家庭裁判所(独立の請求)。期間=10年経過後の遺産分割では主張できない/知った時から6か月・開始から1年。上限=遺産−遺贈/同じ。負担=相続分に織り込む/各相続人が法定・指定相続分で負担。 図:比較表

  • 寄与分(904条の2)/特別の寄与(1050条)
  • 主体=共同相続人/相続人でない親族
  • 態様=事業の労務・財産上の給付・療養看護・その他/無償の療養看護その他の労務の提供だけ
  • 特別の寄与の物差し=身分関係から通常期待される程度を超える/一定の程度を超える貢献
  • 何が決まるか=具体的相続分に加える(遺産分割の中)/相続人への金銭請求(遺産分割の外)
  • 決め方=協議→家庭裁判所(遺産分割の請求があるとき)/協議→家庭裁判所(独立の請求)
  • 期間=10年経過後の遺産分割では主張できない/知った時から6か月・開始から1年
  • 上限=遺産−遺贈/同じ
  • 負担=相続分に織り込む/各相続人が法定・指定相続分で負担

8つの軸で見ます。1行目、主体です。寄与分は共同相続人。特別の寄与は、相続人でない親族です。2行目、態様です。寄与分は、事業の労務、財産上の給付、療養看護、その他の方法。特別の寄与は、無償の、療養看護その他の労務の提供だけです。3行目、特別の寄与の物差しです。寄与分は、身分関係から通常期待される程度を超えること。特別の寄与は、一定の程度を超える貢献です。同じ言葉で、物差しが違います。4行目、何が決まるか、です。寄与分は、具体的相続分に加わります。遺産分割の中の話です。特別の寄与は、相続人に対する金銭の請求で、遺産分割の外の話です。5行目、決め方です。どちらも、まず協議で、調わなければ家庭裁判所です。ただ、寄与分は、遺産分割の請求があるときなどに限られました。特別の寄与は、独立して請求できます。6行目、期間です。寄与分は、相続開始から10年を過ぎた遺産分割では、原則として主張できません。特別の寄与は、知った時から6か月、相続開始から1年で、家庭裁判所への請求ができなくなります。7行目、上限です。どちらも、遺産から遺贈を引いた残りです。8行目、負担です。寄与分は、前回見たとおり、遺産から先に取り分けて、あとで寄与した人に上乗せします。そのぶん、ほかの相続人の取り分が、相続分に応じて減る形です。特別の寄与は、各相続人が、法定相続分や指定相続分に応じて、自分の財産から払います。

同じ名前で、こんなに違うのですね。寄与分が、遺産の取り分の組み替えで、特別の寄与が、外から来る請求書のような感じでしょうか。よい整理です。請求書が、相続人それぞれに回ってくる、というイメージです。では、冒頭の設例に答えます。長男の妻は、遺産そのものを受け取る立場にはありません。ただ、特別の寄与が認められれば、相続人である長男と妹に、特別寄与料を請求できます。仮に、720万円と定められたなら、法定相続分に従って、長男が360万円、妹が360万円を負担します。繰り返しますが、額は、協議か、家庭裁判所の判断で決まります。720万円は、仮定の数字です。

相続分の譲渡とは

相続分の譲渡の板。共同相続人の1人が、遺産の分割前に、自分の相続分を他の者に譲る。移るもの=積極財産と消極財産を包括した、遺産全体に対する割合的な持分(相続人としての地位)。共同相続人に譲ってもよい。譲受人は遺産分割に参加できる。共同相続人が譲り受けると、従前の相続分と合算(最判平13・7・10)。放棄と違い、地位を移す。 図:相続分の譲渡の板

  • 共同相続人の1人が、遺産の分割前に、自分の相続分を他の者に譲る
  • 移るもの=積極財産と消極財産を包括した、遺産全体に対する割合的な持分(相続人としての地位)
  • 共同相続人に譲ってもよい
  • 譲受人は遺産分割に参加できる
  • 共同相続人が譲り受けると、従前の相続分と合算(最判平13・7・10)
  • 放棄と違い、地位を移す

ここから、後半です。相続分の譲渡です。設例を作ります。父が亡くなり、相続人は、母と、長女と、二女の3人です。遺産分割は、まだ終わっていません。母が、自分の相続分を、長女に譲りました。これが、相続分の譲渡です。定義します。相続分の譲渡とは、共同相続人の1人が、遺産の分割の前に、自分の相続分を、他の者に譲り渡すことです。相続分を譲る、というのは、遺産のうちの、預金や土地を譲ることとは違うのですか。違います。ここが大事です。相続分というのは、遺産の中の個々の財産ではなく、遺産全体に対する、割合的な持分のことです。しかも、プラスの財産だけではなく、借金のようなマイナスの財産も含めた、包括的な持分です。ですから、相続分を譲るというのは、相続人としての地位を、丸ごと渡す、ということになります。たとえるなら、共同購入した商品の、持ち分ごと、名義を譲るようなものです。商品だけでなく、支払いの負担の分も、一緒に移ります。条文の位置づけも、押さえます。民法は、相続分の譲渡そのものを、定めてはいません。後で見る905条が、譲渡ができることを前提にして、取戻しの規定を置いています。その905条は、相手方を、第三者と書きます。ただ、905条が決めているのは、第三者に渡ったときの取戻しだけで、譲れる相手を絞る条文ではありません。ですから、共同相続人に対する譲渡も、認められると解されています。効果です。相続分を譲り受けた人は、遺産分割の話し合いに加わり、遺産の管理にも関われます。さきほどの設例なら、長女は、自分の相続分に、母から譲り受けた相続分を加えた、合計の相続分で、遺産分割に加わります。共同相続人が譲り受けると、従前の相続分と合算される、これは最高裁の判例でも、そう扱われています。

放棄は、初めから相続人でなかったことになります。そのぶんが誰にいくかは、法律が決めます。相続分の譲渡は、相続人としての地位が、自分の意思で、特定の人に移ります。誰に渡すかを、自分で選べる、という点が違います。一点だけ送っておきます。譲り受けた人が、遺産分割の当事者として、どう扱われるかの詳しい話は、遺産分割の回で扱います。

無償の相続分の譲渡は特別受益か

復習の問い。みなし相続財産を出すとき、贈与は足しますか、引きますか? 図:復習の問い。みなし相続財産を出すとき、贈与は足しますか、引きますか?

ここで、特別受益の回の計算を思い出してください。特別受益の計算で、みなし相続財産を出すとき、贈与は、足しますか、引きますか?足します。相続開始の時の財産に、贈与の価額を足したものを、みなし相続財産にします。そのあと、各人の取り分から、受けた贈与を引くのでした。では、本題です。相続分を、無償で譲ったとします。これは、903条1項の、贈与にあたるのでしょうか。あたるなら、譲った人の相続のとき、特別受益として、持戻しの計算に入ります。この問いに、最高裁が答えています。まず、判決の事案を見ます。夫が亡くなり、遺産分割が終わらないうちに、妻が、子どもの1人に、自分の相続分を譲って、遺産分割の手続から抜けました。のちに、その妻も亡くなります。すると、別の子が、あの譲渡は贈与であり、自分の遺留分が侵されている、と主張しました。争われたのは、妻のした相続分の譲渡が、妻の相続で、遺留分の計算の基礎に入る贈与にあたるか、という点です。遺留分の計算の話は、遺留分の回で扱います。ここでは、判決が示した、903条1項の贈与にあたるか、という規範を見ます。

判例最判平30・10・19 民集72巻5号900頁

共同相続人間の無償による相続分の譲渡と903条1項の「贈与」 したがって,共同相続人間においてされた無償による相続分の譲渡は,譲渡に係る相続分に含まれる積極財産及び消極財産の価額等を考慮して算定した当該相続分に財産的価値があるとはいえない場合を除き,上記譲渡をした者の相続において,民法903条1項に規定する「贈与」に当たる。

原則は、あたる、です。共同相続人どうしで、無償で相続分を譲ったなら、譲った人の相続のとき、903条1項の贈与として扱われます。例外は、譲渡に係る相続分に、財産的価値があるとはいえない場合です。

判例の理由の流れ。①相続分の譲渡で、積極財産と消極財産を包括した割合的な持分が、譲受人に移る②譲受人は、従前の相続分と譲り受けた相続分を合計した相続分で、遺産分割に加わり、合計に相当する価額の分配を求められる③よって、財産的価値があるとはいえない場合を除き、譲渡人から譲受人へ、経済的利益を合意によって移転するものといえる④遺産分割の遡及効(909条本文)は、この理解の妨げにならない。 図:判例の理由の流れ

決め手は、経済的利益が移るか、です。理由を順番に見ます。1つ目、相続分を譲ると、積極財産と消極財産を包括した、遺産全体に対する割合的な持分が、譲受人に移ります。2つ目、譲り受けた人は、もとの相続分と、譲り受けた相続分を合わせた相続分を持つ人として、遺産分割に加わります。そして、合計に相当する価額の分配を、他の相続人に求められます。3つ目、ですから、相続分に財産的価値があるのなら、無償で譲るというのは、譲った人から譲り受けた人へ、経済的な利益を、合意で移すことです。これは、贈与と同じです。4つ目、遺産分割には、相続開始の時にさかのぼって効力が生じる、という遡及効があります。原審は、遺産分割が確定すれば、譲り受けた人は、被相続人から直接取得したことになるのだから、譲った人からの贈与とはいえない、と判断していました。最高裁は、遡及効があっても、この理解は妨げられない、と述べて、原審を退けています。理由は、それ以上書かれていません。譲り受けた人が、合わせた相続分で分配を受けられるのは、譲渡があったからです。あとで効力がさかのぼっても、譲渡で利益が移ったことは変わらない、と考えられます。

相続分には、マイナスの財産も含まれます。借金のほうが多くて、相続分に値打ちがない場合です。値打ちのないものを渡しても、経済的な利益は、移りません。ですから、贈与にあたらない、ということになります。問いです。債務ばかりで、財産的価値のない相続分を、無償で譲りました。これは、903条1項の贈与にあたるでしょうか?あたらないと思います。経済的利益が、移っていないからです。この判決が答えたのは、共同相続人どうしの、無償の譲渡です。代金をきちんと受け取って譲ったなら、無償ではないので、この判決の外です。では、数字で、特別受益の計算をします。

計算実演。父の遺産=積極財産1,120万円・消極財産260万円→純額860万円。相続人=母・長女・二女。母の相続分1/2=430万円分(仮に430万円と評価)を長女に無償で譲った。のち母が死亡し、母の遺した財産は1,270万円(母の相続人=長女と二女)。①みなし相続財産=1,270+430=1,700万円②一応の相続分=850万円ずつ③控除=長女から430④額=長女420・二女850(合計1,270)⑤率=長女42/127・二女85/127。 図:計算実演

  • 父の遺産=積極財産1,120万円・消極財産260万円→純額860万円
  • 相続人=母・長女・二女
  • 母の相続分1/2=430万円分(仮に430万円と評価)を長女に無償で譲った
  • のち母が死亡し、母の遺した財産は1,270万円(母の相続人=長女と二女)
  • ①みなし相続財産=1,270+430=1,700万円②一応の相続分=850万円ずつ③控除=長女から430④額=長女420・二女850(合計1,270)⑤率=長女42/127・二女85/127

計算します。父が亡くなり、相続人は、母と、長女と、二女です。父の遺産は、プラスの財産が1,120万円、借金が260万円で、差し引き860万円です。母の相続分は2分の1ですから、母の相続分には、430万円分の値打ちがある、と評価します。母は、これを、長女に、無償で譲りました。のちに、母が亡くなります。母の遺した財産は、1,270万円。母の相続人は、長女と二女の2人です。母の相続で、長女への相続分の譲渡は、903条1項の贈与です。みなし相続財産は、1,270万円に、贈与の430万円を足して、1,700万円。一応の相続分は、二人とも2分の1で、850万円ずつです。長女からは、母から受けた贈与の430万円を引きます。すると長女が420万円、二女が850万円です。足すと1,270万円で、母の遺産と一致します。検算が合いました。率は、長女が127分の42、二女が127分の85です。長女は、すでに母から430万円分の相続分を譲り受けているので、母の遺産からは、そのぶん少なく受け取る、という計算です。

取戻権、見知らぬ第三者を締め出す

取戻権の導入。共同相続人の1人が、相続分を第三者に譲ったとき、他の共同相続人はどうできるか。 図:取戻権の導入

最後に、譲った相手が、第三者の場合です。家族でない人が、突然、遺産分割に参加してきたら、どうでしょう。他の相続人は、困ります。そのための条文が、905条です。

条文民法905条

民法 第九百五条(相続分の取戻権) 1項 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。 2項 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。

1項から読みます。共同相続人の1人が、遺産の分割前に、相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額と費用を償還して、その相続分を譲り受けることができます。償還というのは、払った代金と、かかった費用を、お金で返すことです。つまり、買い戻せる、ということです。2項で、この権利は、1か月以内に行使しなければなりません。

取戻権の整理。譲渡の相手が第三者=取戻権あり(価額と費用を償還・1か月以内)。譲渡の相手が共同相続人=取戻権なし。取り戻すと、譲受人は相続分を失う。趣旨=見知らぬ人が遺産分割に入り込むのを防ぐ。 図:取戻権の整理

  • 譲渡の相手が第三者=取戻権あり(価額と費用を償還・1か月以内)
  • 譲渡の相手が共同相続人=取戻権なし
  • 取り戻すと、譲受人は相続分を失う
  • 趣旨=見知らぬ人が遺産分割に入り込むのを防ぐ

整理します。取戻権が生じるのは、第三者に譲ったときです。条文が、第三者と書いているからです。共同相続人に譲ったときは、そもそも身内の間の移動ですから、取戻権はないと解されています。取戻権を行使すると、譲受人は、相続分を失います。趣旨は、遺産分割に、見知らぬ人が入り込むのを防ぐことです。さきほど、譲り受けた人は、遺産分割に参加できると言いました。血縁のない人が参加してくると、話し合いが難しくなります。そこで、家族のほうが、お金を払って、相続分を買い戻せるようにしました。知らない人が家族会議に座ろうとするのを、席ごと買い取って止める、というイメージです。

相続分の調整、どの道具で行うか

5つの道具。法定相続分(900条・遺言がなければ民法の割合)/指定相続分(902条・遺言で割合を定める)/特別受益(903条・相続人の受けた遺贈・生前贈与→引く)/寄与分(904条の2・共同相続人の特別の寄与→加える・遺産分割の中・10年の期限=904条の3)/特別の寄与(1050条・相続人でない親族の無償の労務→相続人に金銭請求・遺産分割の外・6か月と1年)。 図:5つの道具

ここまでで、相続分の話の道具が、そろいました。今から、選んでもらいます。この事例の調整は、どの道具で行うのか。5つの道具を、板にまとめます。法定相続分は、遺言がないときの割合です。指定相続分は、遺言で定めた割合です。特別受益は、相続人が受けた遺贈や生前贈与を、取り分から引きます。寄与分は、共同相続人の特別の寄与を、取り分に加えます。特別の寄与は、相続人でない親族が、相続人にお金を請求します。事例を出します。被相続人は、Xです。相続人は、長男のAと、二女のBです。Xの妻は、すでに亡くなっています。

問題。X(被相続人)、A(長男)、B(二女)。妻は先に死亡。①遺言なし/遺言あり(Aに3分の2、Bに3分の1)②Bは結婚のときXから支度金を贈与された③Aは20年間、給料なしでXの店を手伝った④③の事案で、相続開始から12年たって初めて家庭裁判所に遺産分割を請求した⑤Aの妻Wは7年間無償でXを介護した⑥Xと20年暮らした内縁の妻Yが無償でXを介護した⑦Wは介護せず、Xの店の改装費を自分の貯金から出した⑧別の家族=Zの夫が亡くなり相続人はZ・長女・二女。Zが自分の相続分を長女に無償で譲り、のちにZが死亡した。 図:問題

  • X(被相続人)、A(長男)、B(二女)
  • 妻は先に死亡
  • ①遺言なし/遺言あり(Aに3分の2、Bに3分の1)②Bは結婚のときXから支度金を贈与された③Aは20年間、給料なしでXの店を手伝った④③の事案で、相続開始から12年たって初めて家庭裁判所に遺産分割を請求した⑤Aの妻Wは7年間無償でXを介護した⑥Xと20年暮らした内縁の妻Yが無償でXを介護した⑦Wは介護せず、Xの店の改装費を自分の貯金から出した⑧別の家族=Zの夫が亡くなり相続人はZ・長女・二女
  • Zが自分の相続分を長女に無償で譲り、のちにZが死亡した

事例1です。Xは、遺言を残していません。特別な事情もありません。AとBの割合は、どうなりますか。そして、遺言が、長男に3分の2、二女に3分の1と、定めていたら、どうですか?遺言がなければ、法定相続分です。子が2人ですから、2分の1ずつです。遺言があれば、指定相続分です。3分の2と3分の1になります。900条と、902条です。事例2です。二女のBは、結婚のとき、Xから、支度金を贈与されていました。特別受益です。婚姻のための贈与ですから、903条1項にあたります。持戻しの計算で、Bの取り分から、その贈与の価額を引きます。事例3です。長男のAは、20年間、給料をもらわずに、Xの店を手伝いました。

寄与分です。Aは共同相続人で、無償で、通常期待される程度を超える貢献をしています。協議で決め、調わなければ、家庭裁判所が、遺産分割の請求があるときに定めます。事例4です。事例3の事案で、相続開始から12年たって、初めて家庭裁判所に、遺産分割を請求しました。ただし、10年を経過する前に、家庭裁判所へ遺産分割の請求をしていたなら、例外でした。この事例は、12年たって初めて請求したので、例外にはあたらず、寄与分による調整は使えません。事例5です。Aの妻のWは、7年間、無償で、Xの介護をしました。特別の寄与です。Wは、Xの親族で、相続人でありません。AとBに、特別寄与料を請求できます。協議、家庭裁判所の順で、期間は、知った時から6か月と、相続開始から1年です。負担は、法定相続分か指定相続分で、決まります。事例6です。Xと20年暮らした、内縁の妻のYが、無償で、Xを介護しました。

特別の寄与は、請求できません。Yは、親族ではないからです。内縁の妻は、法律上の配偶者でも、血族でも、姻族でもありません。寄与分も、相続人でないので、使えません。事例7です。Aの妻のWは、介護はせず、Xの店の改装費を、自分の貯金から出しました。店の改装費を出すことは、寄与分なら財産上の給付として数えられますが、特別の寄与からは外れます。最後の、事例8です。別の家族です。Zの夫が亡くなり、相続人は、Zと、長女と、二女です。Zは、自分の相続分を、長女に無償で譲りました。のちに、Zが亡くなりました。相続分の譲渡という形でも、中身は、遺産の取り分が、ただで子に移ることなので、Zの相続では、生前の贈与と同じに扱われます。8問を、板に並べます。

答え。①900条(法定相続分2分の1ずつ)/902条(遺言があれば指定相続分3分の2・3分の1)②特別受益(903条1項・婚姻のための贈与)③寄与分(904条の2)④原則として寄与分も特別受益も主張できない(904条の3・法定または指定相続分で分ける)⑤特別の寄与(1050条)⑥特別の寄与は不可(内縁の妻は親族でない)・寄与分も不可⑦特別の寄与にならない(労務の提供に限る)⑧特別受益(903条1項の贈与・相続分の譲渡)。 図:答え

見分けるときの順序を、言います。まず、相続人かどうか、です。相続人なら、遺言があるか、割合を直す事情があるか、を見ます。贈与や遺贈を受けていれば、特別受益。貢献していれば、寄与分です。相続人でなければ、親族かどうかを見て、親族で、労務を提供していれば、特別の寄与です。相続人でなく、親族でもなければ、この中に、道具はありません。

今日の地図(保存版)

まとめ。①特別の寄与=親族で相続人でない者・無償・労務・特別の寄与(一定の程度を超える)・財産の維持または増加②手続=協議→家庭裁判所(知った時から6か月・開始から1年)・上限=遺産−遺贈・負担=法定または指定相続分③寄与分との違い(遺産分割の中か外か)④相続分の譲渡=積極・消極を含む割合的持分の移転・譲受人は遺産分割に参加⑤無償の譲渡は原則903条1項の贈与(財産的価値がなければ例外)⑥取戻権=第三者への譲渡・価額と費用の償還・1か月以内。冒頭の答え=特別寄与料720万円(仮定)→夫360万円・妹360万円。 図:まとめ

  • ①特別の寄与=親族で相続人でない者・無償・労務・特別の寄与(一定の程度を超える)・財産の維持または増加②手続=協議→家庭裁判所(知った時から6か月・開始から1年)・上限=遺産−遺贈・負担=法定または指定相続分③寄与分との違い(遺産分割の中か外か)④相続分の譲渡=積極・消極を含む割合的持分の移転・譲受人は遺産分割に参加⑤無償の譲渡は原則903条1項の贈与(財産的価値がなければ例外)⑥取戻権=第三者への譲渡・価額と費用の償還・1か月以内
  • 冒頭の答え=特別寄与料720万円(仮定)→夫360万円・妹360万円

まとめます。まず、冒頭の答えです。長男の妻は、遺産は受け取れません。ただ、特別の寄与が認められれば、長男と妹に、特別寄与料を請求できます。仮に720万円と定められたなら、長男が360万円、妹が360万円を負担します。額は、協議か家庭裁判所の判断で決まります。数字は仮定です。6つ確認します。1つ、特別寄与者は、被相続人の親族で、相続人でない人です。無償で、労務の提供をした人に限ります。内縁の配偶者は、親族ではありません。金銭の出資も、対象外です。2つ、手続は、協議、調わなければ家庭裁判所です。家庭裁判所への請求は、知った時から6か月、開始から1年で、できなくなります。3つ、上限は、遺産から遺贈を引いた残りです。各相続人は、法定相続分か指定相続分で負担します。続けます。4つ、寄与分と特別の寄与は、同じ名前で、別の制度です。寄与分は共同相続人で、遺産分割の中。特別の寄与は相続人でない親族で、遺産分割の外です。5つ、相続分の譲渡は、積極財産と消極財産を含む割合的な持分、つまり相続人の地位を、移すことです。共同相続人間の無償の譲渡は、財産的価値があるとはいえない場合を除き、903条1項の贈与です。6つ、第三者への譲渡には、価額と費用を償還して、1か月以内に取り戻せる取戻権があります。今日で、相続分の話は、そろいました。法定相続分、指定相続分、特別受益、寄与分、特別の寄与。事例を見たら、まず、誰が、何をしたかを見て、道具を選んでください。ところで、相続人が複数いるとき、遺産は、分割するまでの間、誰のものなのでしょうか。次は、そこを見ます。

参照条文

  • 民法1050条
  • 民法905条

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