遺産分割の効力と担保責任
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第8章 相続 #370/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
もらった土地が、実は足りなかったら
図:冒頭の設例
- 父(死亡)→相続人は長男・長女・次女
- 遺産は実家の土地3,000万円のみ
- 分割=長女が土地を取得/長女→長男へ代償金1,500万円/長女→次女へ代償金500万円
- 後日、土地の一部が隣地と判明=実際の価値2,400万円
前回の終わりに、問いを残しました。遺産分割でもらった土地に、欠陥があったら、どうなるのでしょうか。今日は、その答えを見ます。設例です。父が亡くなり、相続人は、長男、長女、次女の3人です。遺産は、実家の土地だけで、評価は3,000万円でした。遺産分割で、長女がその土地を取得しました。そのかわり、長女は、前回の代償分割の形で、長男に1,500万円、次女に500万円の代償金を支払う約束をしました。ところが後日、その土地の一部が、実は隣の土地の一部だったと分かりました。実際の値打ちは、2,400万円しかありません。長女は、他の相続人に、何か言えるでしょうか。
長女さんは、3,000万円の土地だと思って、代償金を約束したのですよね。600万円分、損をしたことになります。でも、分割はもう終わっていますし、長女さんの自己責任ではないのですか。そこが、今日の入口です。答えは、道筋を通ったあとで言います。
図:地図
今日の道筋は、3つです。1つ目、遺産分割は、いつの時点から効力を持つのか。2つ目、分割でもらった物に欠陥があったときの責任、これが冒頭の答えです。3つ目、遺産分割を、一定の期間、禁止する仕組みです。これで、遺産分割のまとまりが、いったん閉じます。
遺産分割は、さかのぼる
図:909条の板
- 遺産分割=相続開始の時にさかのぼって効力を生ずる(本文)
- ただし、第三者の権利を害することはできない(ただし書)
1つ目です。物権の回で、結論まで見た条文です。思い出すために、全文を読みます。
条文民法909条
民法 第九百九条(遺産の分割の効力) 遺産の分割は、相続開始の時にさかのぼってその効力を生ずる。ただし、第三者の権利を害することはできない。
本文は、さかのぼる、です。たとえば、長女が分割で実家を取得したとします。すると、実家は、父が亡くなった時から、長女の物だった、ということになります。遺産共有の間の、みんなで持っているという暫定の状態が、さかのぼって消えるわけです。この考え方を、宣言主義といいます。名前は、覚えなくても大丈夫です。さかのぼる、だけ押さえてください。割を食うのは、分割の前に、取引をした人です。さかのぼる、を貫くと、その人の足元がすくわれてしまいます。たとえば、遺産共有の間に、長男が、実家の自分の持分を、買主に売って、登記まで済ませたとします。そのあと、分割で、実家は長女の物になりました。さかのぼると、実家は、最初から長女の物ですから、長男は、売る権利のない持分を売ったことになってしまいます。買主は、持分を失うのでしょうか。
図:遡及効の3点セット
失いません。そのために、ただし書があります。第三者の権利は害せない。第三者との関係では、さかのぼる、のほうが曲げられます。決め手は、買主が、遺産共有の状態を前提に、持分を信じて取引したことです。その信頼を、あとからの分割で、壊さないためです。ただし書の第三者は、相続が始まってから、分割が済むまでの間に、共同相続人の持分を取得した人、つまり、分割前の第三者です。ここで、境目を見ます。分割が終わったあとで、長男の持分を買った人は、このただし書の第三者ではありません。分割後は、実家は長女の単独の物と決まっているからです。分割後の第三者は、物権の回で見たとおり、二重に譲ったのと同じ形になります。長男から長女に移った持分については、長女と買主のうち、先に登記を備えたほうが勝ちます。もう2点、足します。どちらも、通説の整理です。1つ目、保護される第三者は、善意でも悪意でも構いません。分割の話が出ていると知っていても、保護されます。分割の前は、長男は、本当に自分の持分を持っていますから、それを買うのは、正当な取引だからです。2つ目、保護されるには、対抗要件が要ります。不動産なら、登記です。遡及効を曲げてまで守られる以上、自分の権利を、登記で外から見える形にしておくことが、求められるわけです。先ほどの買主は、登記まで済ませていたので、長女に対して、持分を主張できます。一言、対比です。相続放棄にも、さかのぼる効果がありました。でも、放棄には、第三者を保護する規定がなく、さかのぼる効果が絶対的に働きます。分割は、第三者に配慮して、制限される。ここが違います。
問いです。分割の前に、長男の持分を買って、登記も済ませた買主がいます。あとから、分割で長女の物になったと言われて、買主は、持分を失いますか。失いません。ただし書で、分割前の第三者として守られます。
分割でもらった物に欠陥があったら
図:復習の問い
- 売主の担保責任=契約不適合責任
- 買主が求められる救済は、いくつありましたか?
ここで、前に見たことを思い出してください。売買で、引き渡された物が契約の内容に適合しないとき、買主が求められる救済は、いくつありましたか?4つです。追完請求、代金減額請求、損害賠償、そして解除でした。これが、今日の道具になります。冒頭の答えに入ります。まず、なぜ担保責任かです。遺産分割は、共同相続人が、取り分を調整しあう点で、売買に似ています。割り勘の飲み会で、誰かが買ってきた鍋の具が傷んでいたら、その損は、買ってきた人だけでなく、みんなで分けますよね。それと同じで、もらった人だけが損を抱えるのは、不公平です。そこで、他の共同相続人が、売主と同じように、損を分担します。
図:911条の板
条文民法911条
民法 第九百十一条(共同相続人間の担保責任) 各共同相続人は、他の共同相続人に対して、売主と同じく、その相続分に応じて担保の責任を負う。
売主と同じく、とは、売主の担保責任、つまり契約不適合責任の規律が、使われる、ということです。565条は、権利が契約の内容に適合しない場合にも、562条から564条を準用する、という条文でした。565条は、権利の一部が他人に属する場合も含みます。冒頭の設例が、まさにそれです。土地の一部が、隣地の物だったのですから、権利の一部が、他人の物でした。

- 売主と同じく=契約不適合責任の救済
- 追完請求(562条)/代金減額請求(563条)/損害賠償(564条・415条)/解除(564条・541条以下)=×(遺産分割は解除できない)
- 冒頭の設例の使い方=代償金が未払なら減額/支払済みなら損害賠償
4つの救済のうち、使えるものを見ます。追完請求は、たとえば数量が足りないとき、足りない分を求める、という形になりえます。ただ、冒頭の設例のように、土地の一部が他人の物だったときは、足りない分の土地を、あとから用意するのは難しいので、実際に使うのは、代金減額と損害賠償です。代金減額は、ここでは、代償金の減額です。長女が、まだ代償金を払っていないなら、その分を減らしてもらう、という形です。すでに払ってしまったなら、損害賠償として、払い戻しに当たる分を請求します。そして、解除は使えません。遺産分割は、債務不履行があっても、解除できませんでした。協議の回で見た、最高裁の結論です。担保責任を理由にしても、分割を解除して、分け直すことはできない、と整理されます。一度まとまった分割を、あとから覆すと、それを前提に動いた関係が崩れて、法的な安定が損なわれるからです。飲み会で言えば、鍋の具が傷んでいても、食べ終えた飲み会を、やり直しはしない、ということです。ですから、救済は、減額と損害賠償で、金額を調整する形になります。
各人がいくら負担するのか、つまり、911条の「相続分に応じて」の読み方が、いちばんつまずきやすい点です。相続分とは、法定相続分のことだ、と思いがちです。でも、有力な整理では、そうは読みません。欠陥がなかったら、各人の手元に残っていたはずの財産の、評価額の割合、と読みます。
図:担保責任の数字
- 不足=3,000−2,400=600万円
- 不適合がなければ各人の取得額=長女1,000(3,000−1,500−500)/長男1,500/次女500=2:3:1
- 負担=長女200/長男300/次女100
- 法定相続分(各3分の1)なら各200
設例の数字で、確かめます。不足は、3,000万円引く2,400万円で、600万円です。次に、不適合がなかったとしたら、各人が取得したはずの額です。長女は、土地3,000万円から、代償金の1,500万円と500万円を引いて、1,000万円です。長男は、代償金で1,500万円です。次女は、500万円です。合計は3,000万円です。割合は、1,000対1,500対500、つまり、2対3対1です。600万円を、この割合で分けます。長女は、6分の2で200万円、長男は、6分の3で300万円、次女は、6分の1で100万円です。足すと、600万円です。長女は、自分の分の200万円は、自分で負担します。ですから、他の2人に求められるのは、長男の300万円と、次女の100万円、合計400万円です。冒頭の答えは、これです。実際の使い方です。長男への代償金1,500万円が、まだ未払なら、うち300万円の減額を請求できます。すでに払ってしまったなら、300万円の損害賠償を請求します。次女への代償金500万円も、同じ形で、100万円分です。
600万円を人数で頭割りにすると、各人200万円になります。そうすると、長女の負担は同じ200万円ですが、長男も次女も200万円で、数字がずれます。もらった額が多かった長男が、少ない負担で済み、少なかった次女が、多く負担することになってしまいます。担保責任は、分割の結果としての取り分を、もとの公平な形に戻す仕組みですから、取り分の割合で分担する、というのが、この読み方の決め手です。問いです。法定相続分の3分の1ずつで割ると、設例で、長女はいくら負担しますか。それと、取得額の割合で割った場合の負担額は。
ここは、論文でも論点になりうるところです。
資力の担保と、遺言による排除
図:復習の問い。債権の売主は、債務者の資力まで、当然には担保しますか?
ここで、前に見たことを思い出してください。売買で、債権を売った売主は、債務者の資力まで、当然には担保しますか?当然には担保しません。売主が資力を担保した場合は別でした。では、遺産分割では、どうなるのでしょうか。ここでも、さっきの公平の考え方が効きます。回収できない債権をもらった人だけが、損を抱えるのは、不公平です。
図:912条の板
- 1項=他の共同相続人が分割で受けた債権について、分割の時における債務者の資力を担保
- 2項=弁済期未到来の債権・停止条件付債権は、弁済をすべき時における資力を担保
条文民法912条
民法 第九百十二条(遺産の分割によって受けた債権についての担保責任) 1 各共同相続人は、その相続分に応じ、他の共同相続人が遺産の分割によって受けた債権について、その分割の時における債務者の資力を担保する。 2 弁済期に至らない債権及び停止条件付きの債権については、各共同相続人は、弁済をすべき時における債務者の資力を担保する。
設例を少し変えます。遺産に、父の貸付金の債権600万円もあって、次女が、分割でそれを取得したとします。ところが、債務者が破産して、回収できませんでした。売買なら、売主は、特約がなければ責任を負いません。でも、遺産分割では、他の共同相続人が、法律上、当然に、相続分に応じて負担します。2項は、まだ期限が来ていない債権などの場合で、資力を見る時点を、弁済をすべき時に、ずらしています。期限が来るまでは、債務者に払ってもらえません。分割の時にお金があっても、払う時に無ければ、回収できないからです。
図:913条の板
- 担保責任を負う者の中に償還できない者がいるとき、その部分は、求償者と資力のある者が、相続分に応じて分担
- ただし、求償者に過失があれば、分担の請求はできない
- 例=長男が無資力で300万円を負担できない→長女200・次女100
条文民法913条
民法 第九百十三条(資力のない共同相続人がある場合の担保責任の分担) 担保の責任を負う共同相続人中に償還をする資力のない者があるときは、その償還することができない部分は、求償者及び他の資力のある者が、それぞれその相続分に応じて分担する。ただし、求償者に過失があるときは、他の共同相続人に対して分担を請求することができない。
913条は、負担する人が、お金を持っていない場合です。言葉を砕きます。償還とは、担保責任として払うことです。求償者とは、他の相続人に負担を求める側、つまり、冒頭の設例なら、長女です。設例で長男が無資力で300万円を負担できないとします。その300万円は、求償者の長女と、資力のある次女とで、分担します。取れない分を、長女1人にかぶらせるのも、次女1人に回すのも、不公平です。ですから、損を受けた長女も、相続人の1人として、資力のある人どうしで分け合います。連帯債務の回で見た、444条と同じ形です。割合は、冒頭の2対1、つまり、取得額の割合です。300万円の3分の2で、長女が200万円、3分の1で、次女が100万円です。足すと、300万円です。
求償者に過失があるときは、どうなるのですか。ただし書です。たとえば、長女が、長男への請求を長く放っておいた間に、長男が無資力になった、というような場合です。早く請求していれば、長男から取れたはずの分です。それを、落ち度のない次女に回すのは、筋が違います。ですから、このときは、長女は、他の相続人に、分担を請求できず、取れない分は、自分でかぶります。
図:914条の板
- 前三条(911〜913条)の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない
- 対比=572条は当事者の特約/914条は被相続人の遺言
条文民法914条
民法 第九百十四条(遺言による担保責任の定め) 前三条の規定は、被相続人が遺言で別段の意思を表示したときは、適用しない。
最後に、914条です。たとえば、父が、遺言で、分割のあとに欠陥があっても、相続人どうしで責任を問わない、と書いていたとします。このときは、911条から913条は、適用されません。遺産は、もともと父の財産ですから、後始末の分け方も、父の意思が優先する、というわけです。売買の担保責任には、担保責任を負わない旨の特約がありました。572条です。あちらは、当事者の特約です。こちらは、被相続人の遺言、という違いです。
図:911〜914条の一覧
- 911条=物・権利の不適合→売主と同じく相続分に応じて担保
- 912条=債権→分割の時(または弁済すべき時)の債務者の資力を担保
- 913条=無資力者の分→求償者と資力のある者が相続分で分担(求償者に過失→不可)
- 914条=遺言で別段の意思→適用しない
4つを、並べます。911条は、物や権利の不適合で、売主と同じく、相続分に応じて担保します。912条は、債権で、債務者の資力を担保します。913条は、無資力者の分を、求償者と資力のある者が、相続分に応じて分担します。914条は、遺言で、これらを適用しないと定められるものです。相続分は、913条でも、911条と同じ読み方です。
遺産分割の禁止、5年と10年
図:復習の問い
ここで、前に見たことを思い出してください。前回の、258条の2です。相続開始から10年を過ぎると、相続人以外の者と共有している遺産の持分は、どうなりましたか?共有物分割でも、分けられるようになります。異議の申出があれば別でした。10年は、今日も出てきます。ただし、また別の規定です。3つ目の道筋、遺産分割の禁止です。そもそも、なぜ、分割を禁止するのでしょうか。たとえば、亡くなった父の子かどうかを争っている人がいて、その結論が出る前に分けたら、やり直しになりかねません。あるいは、事業に使っている財産を、当面そのまま使いたい、という場合もあります。急いで分けると不都合なときに、一定の期間、分割を止める仕組みがあります。907条1項は、禁止された場合を除いて、いつでも、協議で分割できる、と定めていました。禁止の間は、協議でも分けられません。
図:908条の板
- 1項〜5項
- 遺言=相続開始から5年を超えない期間。契約=5年以内・全部または一部・終期は相続開始から10年まで・更新可(5年以内・終期10年まで)。審判=特別の事由・5年以内・終期10年・更新可。
長い条文ですので、禁止の主体で、3つに割って読みます。
条文民法908条1項・2項・3項
民法 第九百八条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)第1項・第2項・第3項 1 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。 2 共同相続人は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割をしない旨の契約をすることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。 3 前項の契約は、五年以内の期間を定めて更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。
1つ目、遺言による禁止です。1項です。被相続人が、遺言で、相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、分割を禁じます。この項の前半には、遺言で分割の方法を定める話も書かれていますが、それは、遺言の回で見ます。2つ目、契約による禁止です。2項と3項です。共同相続人が、5年以内の期間を定めて、遺産の全部、または一部について、分割をしない、と契約します。ただし、期間の終期は、相続開始の時から10年を超えられません。そして、5年以内の期間を定めて、更新できます。更新したあとの終期も、相続開始から10年までです。
条文民法908条4項・5項
民法 第九百八条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)第4項・第5項 4 前条第二項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。 5 家庭裁判所は、五年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。
3つ目、審判による禁止です。4項と5項です。協議が調わない、または協議ができないときで、特別の事由があるときは、家庭裁判所が、5年以内の期間を定めて、分割を禁じられます。終期は、相続開始から10年までです。更新も、5年以内で、終期は10年までです。たとえば、親子関係の有無を争う訴えの結論を待つべき場合が、特別の事由に当たります。
図:3つの禁止の比較表。列=誰が/期間/更新/終期の天井。遺言(1項)=被相続人/相続開始から5年を超えない/(定めなし)/5年。契約(2・3項)=共同相続人/5年以内/5年以内で更新可/相続開始から10年。審判(4・5項)=家庭裁判所(特別の事由)/5年以内/5年以内で更新可/相続開始から10年。
3つを、表にします。遺言は、相続開始の時から数えて、5年までです。更新の定めは、ありません。遺言をした父は、もう亡くなっていますから、期限が来たときに、決め直すことができないのです。契約と審判は、5年以内の期間を定めて、更新できます。決め直せるのは、生きている相続人どうしと、家庭裁判所です。ただし、更新を重ねても、天井は、相続開始から10年です。禁止は、急いで分けると困るときだけの、仮の仕組みです。いつまでも分けないままだと、遺産は、みんなで持っている暫定の状態のまま残り続けます。だから、天井を置いています。10という数字は、決めの問題として覚えてください。
契約による禁止は、更新を重ねると、どこまで延ばせるのか。例で確かめます。契約で5年禁止して、更新し、相続開始から8年目に終期が来たとします。ここから、さらに更新するなら終期は10年までですから、足せるのは、2年分です。8年と2年で、10年です。5年は定められません。
図:3つの「10年」の弁別板
- 904条の3=10年を過ぎると具体的相続分(特別受益・寄与分)を使わない
- 258条の2=10年を過ぎると相続人以外と共有する遺産の持分も共有物分割で分けられる
- 908条=契約・審判による分割禁止の終期は相続開始から10年まで
ここで、3つの10年を、整理します。いずれも、相続開始の時から数えますが、別の規定です。904条の3は、10年を過ぎると、具体的相続分、つまり、特別受益と寄与分を使わない。258条の2は、10年を過ぎると、相続人以外の者と共有している遺産の持分も、共有物分割で分けられる。そして、908条は、契約や審判による分割禁止の、終期の天井が、相続開始から10年、です。問いです。共同相続人どうしの契約で、相続開始から8年たったときに、さらに5年の禁止を定められますか。定められません。終期は、相続開始から10年までなので、定められるのは、2年分です。
今日の地図(保存版)
図:冒頭の答え
- 土地2,400万円・不足600万円
- 長女は、長男に300万円・次女に100万円を求められる(自分の分200万円は自己負担)
- 代償金が未払なら減額/支払済みなら損害賠償/解除は不可
まず、冒頭の答えです。長女は、長男に300万円、次女に100万円を、求められます。自分の分の200万円は、自分で負担します。代償金が未払なら、その分の減額、支払済みなら、損害賠償を請求します。解除は、できません。
図:まとめ
5つ確認します。1つ、遺産分割は、相続開始の時にさかのぼります。ただし、分割前に現れた第三者は、善意でも悪意でも、対抗要件があれば、守られます。2つ、分割でもらった物に欠陥があれば、他の共同相続人は、売主と同じく、相続分に応じて担保責任を負います。相続分は、不適合がなければ各人が取得したはずの価額の割合です。続けます。3つ、債権については、債務者の資力も担保します。資力のない人の分は、残りの人が、相続分に応じて分担します。遺言で、別段の意思があれば、適用されません。4つ、分割の禁止は、遺言が5年まで、契約と審判は、5年以内で更新でき、終期は、相続開始から10年までです。5つ、904条の3、258条の2、908条、この3つの10年は、別の規定です。次の問いです。遺産分割で家をもらった長男が、登記をしないうちに、弟が自分の持分を売ったら、どうなるのでしょうか。次は、相続と対抗要件を見ます。
参照条文
- 民法909条
- 民法911条
- 民法912条
- 民法913条
- 民法914条
- 民法908条1項・2項・3項
- 民法908条4項・5項