民法ゼロから民法#358

包括承継と一身専属の権利義務

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第8章 相続 #358/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

アパートも別荘も墓も、長男は受け継ぐのか

冒頭の設例。A(父・先日死亡)、B(長男・唯一の相続人)、C(別荘の貸主・Aの友人・無償で貸していた)、D(アパートの大家)、先祖代々の墓。Aは、Dから借りたアパートに住み、Cから無償で別荘を借り、墓を守っていた。問い=この3つを、Bは当然に受け継ぐのか。 図:冒頭の設例

  • A(父・先日死亡)、B(長男・唯一の相続人)、C(別荘の貸主・Aの友人・無償で貸していた)、D(アパートの大家)、先祖代々の墓
  • Aは、Dから借りたアパートに住み、Cから無償で別荘を借り、墓を守っていた
  • 問い=この3つを、Bは当然に受け継ぐのか

設例です。父Aが亡くなりました。Aは、大家Dから借りたアパートに住んでいました。友人Cからは、無償で別荘を借りていました。さらに、先祖代々の墓も守っていました。相続人は、長男Bだけです。何が相続され、何が相続されないのか。今日の問いは、そこです。答えは、道筋を通ったあとで出します。その前に、前回までの結論を3つだけ、思い出します。1つ目、相続人は、被相続人の財産に属した一切の権利義務を、当然に承継します。2つ目、ただし、その人だけに結びついた一身専属のものは除かれる、と一言だけ触れました。今日は、その中身を見ます。3つ目、相続を放棄すれば、初めから相続人でなかったことになり、その子も代襲相続しません。なお、今日いう相続財産とは、相続の対象になる財産のことです。何が対象になり、何が対象にならないのかを、整理します。

今日の地図(前編)。①原則=包括承継(896条本文)②例外1=一身専属は承継しない(896条ただし書)③例外2=祭祀財産と遺骨は祭祀主宰者へ(897条)。 図:今日の地図

  • 前編
  • ①原則=包括承継(896条本文)②例外1=一身専属は承継しない(896条ただし書)③例外2=祭祀財産と遺骨は祭祀主宰者へ(897条)。

今日の道筋です。まず、原則を確認します。相続は、被相続人の権利も義務も、まとめて引き継ぎます。次に、1つ目の例外として、一身専属の権利義務は引き継がれません。そこでは、帰属上の一身専属と行使上の一身専属という、2つの物差しも整理します。最後に、2つ目の例外として、墓などの祭祀財産と遺骨は、相続人ではなく、祭祀を主宰する人が承継します。この3つで、冒頭の設例に答えます。

原則 権利も義務も、まとめて承継する 896条本文

包括承継の例・5つ。①占有=相続される②無権代理人の責任(117条)=損害賠償責任は相続/履行責任は金銭債務・不特定物の給付なら相続/本人が無権代理人を相続した場合、本人自身の特定物の給付義務は引き継がない(有力説)③即死でも逸失利益の賠償請求権は相続される④慰謝料請求権は意思表示なしに当然に相続される(最大判昭42・11・1)⑤賃借権(契約上の地位)・保証債務も承継。 図:包括承継の例・5つ

原則から確認します。896条を全文で読みます。

条文民法896条

民法第896条(相続の一般的効力) 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

本文は、相続人が、相続開始の時点から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する、と定めています。ポイントは、権利義務という言い方です。権利だけでなく、義務も引き継ぎます。預金や不動産のような積極財産も、借金や保証債務のような消極財産も、区別なく移ります。このように、個々の財産を選ばず、まとめて引き継ぐことを、包括承継といいます。喩えるなら、故人の荷物を、中身を選ばずに、箱ごと受け取る形です。借金という重い荷物も、その箱に入っています。前回まで見た放棄や限定承認は、この箱の受け取り方を調整する手段でした。

契約の当事者としての立場も、一緒に移るのですか。移ります。契約上の地位も、権利義務の束として承継されます。板に、これまでの財産法で見てきた、相続される例を5つ並べました。結論だけ、一言ずつ思い出します。1つ目、占有です。Aが土地を占有していたなら、Bはその占有を引き継ぎます。占有も相続の対象になると、判例が認めています。2つ目、無権代理人の責任です。117条の責任のうち、損害賠償責任は、そのまま相続されます。履行責任は、金銭債務や、不特定物の給付なら相続されます。ただし、本人が無権代理人を相続した場合、特定物、たとえば本人自身の土地を引き渡す義務までは引き継がない、という見解が有力です。無権代理と相続の回で見たとおり、相手方は、もともと、他人の土地を手に入れられる立場にありませんでした。たまたま相続が起きたことで手に入れられるようになるのは、相手方を有利にしすぎるからです。ここは有力説なので、断定せずに覚えてください。3つ目、被害者が即死した場合です。即死でも、生きていれば得られたはずの収入、つまり逸失利益についての賠償請求権は、相続されます。生命侵害の回で見たとおり、受傷と死亡のあいだに、頭の中では時間の間隔があると考え、受傷の瞬間に請求権が生まれる、と組み立てるからです。数日後に亡くなれば相続されるのに、即死だと何も受け継げないのでは、釣り合いません。4つ目、慰謝料請求権です。慰謝料は、被害者が請求の意思を表示しなくても、当然に相続されます。傷つけられた心は本人だけのものでも、そこから生まれる請求権は、お金の請求権にすぎないからです。

5つ目、賃借権です。賃貸借の借主が亡くなっても、賃貸借は終わらず、賃借権は相続人が引き継ぎます。622条が、使用貸借の借主の死亡による終了を定めた597条3項を、準用していないからです。保証債務も、同じく承継されます。ですから、設例のアパートの賃借権は、Bが当然に引き継ぐことになります。大家Dとの賃貸借は、Aの死亡では終わりません。ただし、全部が移るわけではありません。896条には、ただし書があります。ここから、例外に入ります。なお、相続人が複数いるときは、承継した財産は、ひとまず相続人全員の共有になります。898条です。

例外1 一身専属は承継しない 896条ただし書

一身専属の仕分け。左=条文が明文で承継しないとしたもの4つ(111条1項1号 代理権/597条3項 使用借権/653条1号 委任契約上の地位/679条1号 組合員の地位)。右=解釈上・判例上、一身専属とされるもの(雇用契約上の労働者の地位/扶養の権利・義務/親権/債務者に特有の技能に基づく非代替的な債務/身元保証人の地位/公営住宅の使用権〔判例〕)。 図:一身専属の仕分け

  • 左=条文が明文で承継しないとしたもの4つ(111条1項1号 代理権/597条3項 使用借権/653条1号 委任契約上の地位/679条1号 組合員の地位)
  • 右=解釈上・判例上、一身専属とされるもの(雇用契約上の労働者の地位/扶養の権利・義務/親権/債務者に特有の技能に基づく非代替的な債務/身元保証人の地位/公営住宅の使用権〔判例〕)

896条ただし書は、被相続人の一身に専属したものは承継しない、と定めています。一身専属とは、その人でなければ意味がない権利義務のことです。その人との信頼関係や、資格、身分に結びついているため、他の人に移すと、中身が変わってしまいます。板の左は、条文が、死亡で終わると明文で定めているものです。4つあります。1つ目、代理権です。111条1項1号は、本人の死亡によって代理権が消滅する、と定めています。代理は、本人と代理人の結びつきが土台です。ですから、相続人の代理人に自動的に切り替わることはありません。2つ目、使用借権です。597条3項は、使用貸借は借主の死亡によって終了する、と定めています。貸主は、借主その人を信頼して、無償で貸しているからです。3つ目、委任契約上の地位です。653条1号は、委任は、委任者または受任者の死亡によって終了する、と定めています。委任は、その人を信頼して頼む契約です。死亡すれば、信頼した当事者そのものが、いなくなるからです。4つ目、組合員の地位です。679条1号は、組合員は死亡によって脱退する、と定めています。死亡は脱退の原因で、相続人が組合員になるわけではありません。

右側の6つは、条文が直接定めているわけではありません。これらは、解釈や判例で、一身専属とされるものです。そこは区別してください。順に見ます。雇用契約上の労働者の地位は、労務を他人に代えられないことから、一身専属とされます。625条2項が、労働者は、使用者の承諾なしに、自分の代わりに第三者を働かせることはできない、と定めているのが手がかりです。扶養の権利義務も、一身専属です。親権も、人の身分に結びついた権利義務なので、親権者が亡くなっても、相続人に承継されません。次に、請負で芸術作品を完成させる債務のように、債務者に特有の技能に基づく、非代替的な債務も、一身専属です。さらに、身元保証人の地位は、特別の事情がない限り、相続されません。人的な信頼関係に基づくからです。ただし、通常の保証債務は、相続されるのでした。個人根保証契約では、465条の4第1項3号により、保証人が亡くなると元本が確定します。それまでに生じた債務だけが、相続人に移ります。最後に、公営住宅の使用権です。判例は、入居者が亡くなっても、相続人は、使用権を当然には承継しないとしています。公営住宅は、法律が、入居できる人の資格や選び方を定めている制度です。民間の賃借権が相続されるのと、対照的です。

地位とすでに発生した債権。受任者の地位=相続されない/事務を終えて発生した報酬債権100万円=相続される。扶養を受ける権利そのもの=相続されない/協議や審判で額が決まり支払期が来た扶養料=相続される。 図:地位とすでに発生した債権

  • 受任者の地位=相続されない/事務を終えて発生した報酬債権100万円=相続される
  • 扶養を受ける権利そのもの=相続されない/協議や審判で額が決まり支払期が来た扶養料=相続される

ここで、大事な線引きがあります。一身専属で相続されないのは、権利や義務の源泉となる、地位です。すでに発生した具体的な権利や義務は、原則どおり、相続されます。例で見ます。受任者のAが、委任の事務を終えて、委任者に対して、100万円の報酬債権を取得していたとします。そのあとでAが亡くなりました。受任者の地位は、653条1号により、Aの死亡で終わります。しかし、すでに発生した100万円の報酬債権は、金銭債権として、Bに相続されます。扶養も、同じ型です。扶養を受ける権利そのものは、相続されません。ただし、協議や審判で額が決まり、支払期が来た扶養料は、金銭債権として、相続されます。入場券にたとえるなら、券は本人のところで終わります。でも、その券を使って、すでに手に入れたお土産は、手元に残る、ということです。

冒頭の設例の対比。民間の賃借権=相続される(622条は597条3項を準用しない)/使用借権=借主の死亡で終了(597条3項)/公営住宅の使用権=相続されない(判例・最判平2・10・18 民集44巻7号1021頁)。 図:冒頭の設例の対比

設例の別荘と、アパートの対比を、板にまとめました。アパートの賃借権は相続されます。別荘の使用借権は、借主の死亡で終わります。公営住宅の使用権は、判例上、相続されません。ここで問いです。別荘の貸主のCが亡くなったら、使用貸借は終わるでしょうか。借主のAが亡くなったら、どうでしょうか?貸主が亡くなっても、借主は借り続けられると思います。借主が亡くなったときは、終わると思います。597条3項は、借主の死亡を終了原因と定めていて、貸主の死亡は挙げていません。貸主の死亡では終わらず、借主の死亡で終わります。設例では、Aの死亡で使用貸借が終わるので、Bは、別荘を使い続ける権利を、引き継げません。

帰属上の一身専属と行使上の一身専属

帰属上と行使上の2つの物差し。扶養を受ける権利そのもの=帰属上(相続されるか・896条ただし書)は一身専属で相続されない(881条は処分も禁止)/行使上(代位できるか・423条1項ただし書)も一身専属で代位できない。慰謝料請求権=帰属上は一身専属でなく当然に相続(最大判昭42・11・1 民集21巻9号2249頁)/行使上は金額が確定するまで一身専属(最判昭58・10・6 民集37巻8号1041頁)、被害者の死亡で承継された場合は代位できる。遺留分侵害額請求権=帰属上は一身専属でなく承継人にも認められる/行使上は一身専属(権利行使の確定的な意思の表明など特段の事情がない限り代位できない)。 図:帰属上と行使上の2つの物差し

  • 扶養を受ける権利そのもの=帰属上(相続されるか・896条ただし書)は一身専属で相続されない(881条は処分も禁止)/行使上(代位できるか・423条1項ただし書)も一身専属で代位できない
  • 慰謝料請求権=帰属上は一身専属でなく当然に相続(最大判昭42・11・1 民集21巻9号2249頁)/行使上は金額が確定するまで一身専属(最判昭58・10・6 民集37巻8号1041頁)、被害者の死亡で承継された場合は代位できる
  • 遺留分侵害額請求権=帰属上は一身専属でなく承継人にも認められる/行使上は一身専属(権利行使の確定的な意思の表明など特段の事情がない限り代位できない)

一身専属という言葉は、前の回でも出てきました。債権者代位権の回です。思い出してください。債権者代位権で、一身専属の権利について、何ができないのが決め手でしたか?債権者が、債務者に代わって行使することが、できません。423条1項ただし書により、一身専属の権利は、代位して行使できません。その回で見たとおり、行使するかどうかを、本人の意思だけに委ねるべき権利だからです。これを、行使上の一身専属といいます。一方、今日の896条ただし書の、相続で承継されるかという観点が、帰属上の一身専属です。こちらは、その人でなければ意味がないかどうかで決まります。この2つは、別の物差しです。相続されるかと、代位できるかは、別々に判断します。承継される権利でも、行使上は一身専属で、代位できない、ということが成り立ちます。板の表で、3つの権利を当てはめます。1つ目、扶養を受ける権利そのものです。帰属上は一身専属で、相続されません。881条は、この権利の処分も禁止しています。行使上も一身専属で、代位できません。両方の物差しで、一身専属になります。ただし、先ほどの線引きどおり、額が決まり支払期が来た扶養料は、金銭債権として相続されます。2つ目、慰謝料請求権です。帰属上は、一身専属ではありません。先ほど見たとおり、請求権そのものはお金の請求権なので、請求の意思を表示しなくても、当然に相続されます。行使上は、金額が確定するまでは一身専属で、代位できません。ただし、被害者の死亡で相続人が承継した場合は、代位できます。金額が決まったり、相続されたりすれば、受け取るかどうかを本人の判断に委ねる理由が、無くなるからです。

3つ目、遺留分侵害額請求権です。帰属上は、一身専属ではなく、承継人にも認められます。行使上は、一身専属です。権利行使の確定的な意思を表明したなど、特段の事情がない限り、代位できません。侵された取り分を取り戻すかどうかを、権利者自身の判断に委ねる権利だからです。ここで問いです。代位できない権利は、相続もされない、と言えるでしょうか?慰謝料請求権は、金額が確定するまで代位できませんが、相続はされるので、言えないと思います。言えません。遺留分侵害額請求権も、代位はできませんが、相続されます。代位できるかは行使上、相続されるかは帰属上で、判断の物差しが別だからです。この区別は、短答でも論文でも、論点になりうるところです。

例外2 祭祀財産と遺骨は祭祀主宰者が承継する 897条

墓は誰が承継するか。系譜(家系図など)・祭具(仏具・位牌など)・墳墓(墓地・墓石)の所有権と、遺骨は、相続財産に入らず、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する(897条)。遺骨は判例(最判平元・7・18 家月41巻10号128頁)。 図:墓は誰が承継するか

  • 系譜(家系図など)・祭具(仏具・位牌など)・墳墓(墓地・墓石)の所有権と、遺骨は、相続財産に入らず、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する(897条)
  • 遺骨は判例(最判平元・7・18 家月41巻10号128頁)

冒頭の設例の、残る1つ、墓です。お墓を守り、法事などで祖先をまつることを、祭祀といいます。ここで使う条文は897条です。全文で読みます。

条文民法897条

民法第897条(祭祀に関する権利の承継) 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。 2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

系譜とは、家系を記した記録のことです。祭具は、仏具や位牌のような、祭祀に使う道具です。墳墓は、墓地や墓石です。これらの所有権は、前条、つまり896条の規定にかかわらず、祖先の祭祀を主宰すべき者が承継します。相続財産に入って、相続人が引き継ぐのではありません。戦前は、墓などは、家督相続といって、家を継ぐ一人が当然に受け継ぐものだったとされています。戦後、その仕組みはなくなりましたが、祖先の祭祀は同じ氏の人に継いでほしいという人々の感情があったため、相続とは別の基準で承継させる、この規定が置かれたとされています。また、遺骨は、897条の列挙には入っていません。ただ、判例は、遺骨を、相続人が分け合う財産としては扱いませんでした。墓などと同じ決め方、つまり慣習に従って祭祀を主宰する者に帰属するとしています。なお、遺骨は、897条が挙げる墳墓に納められるものです。ここでも、相続とは別の基準で決まる、という軸は同じです。

条文は、祖先の祭祀を主宰すべき者と書くだけで、相続人であることを要件にしていません。祭祀財産は、相続とは別の基準で承継されます。したがって、遺産分割の対象にもなりません。

897条の決まり方(優先順)。①被相続人の指定があれば、その者(1項ただし書)②指定がなければ、慣習に従う者(1項本文)③慣習が明らかでなければ、家庭裁判所が定める(2項)。 図:897条の決まり方

  • 優先順
  • ①被相続人の指定があれば、その者(1項ただし書)②指定がなければ、慣習に従う者(1項本文)③慣習が明らかでなければ、家庭裁判所が定める(2項)。

誰が主宰者になるのかは、優先順位で決まります。板の流れです。まず、被相続人の指定があれば、その人です。次に、指定がなければ、慣習に従う人です。最後に、慣習も明らかでなければ、家庭裁判所が定めます。条文の並びは、本文が慣習で、ただし書が指定です。ただし書は、指定に従う人があるときは、その人が承継する、と本文の例外を定めています。だから、指定があれば、慣習より先に効きます。問いです。指定も慣習も分からないとき、祭祀主宰者は、誰が決めるでしょうか?家庭裁判所が決めると思います。897条2項です。設例の墓も、Bが相続人だから当然に受け継ぐ、のではありません。Aの指定があればその人、なければ慣習、それも分からなければ家庭裁判所が決めます。Bが選ばれたときに、Bが承継します。もう1つ、財産分与の回で、相続の章で見ると言った話です。婚姻で氏を改めた人が、祭祀財産を承継したあとで、協議上の離婚をしたときは、769条により、当事者その他の関係人の協議で、承継する人を定めます。協議が調わないときなどは、家庭裁判所が定めます。さらに、夫婦の一方が死亡して元の氏に戻る場合にも、751条2項により、769条が準用されます。ただし、897条は、承継する人に同じ氏であることを求めていません。ですから、元の氏に戻ったからといって、当然に権利を失うのではなく、協議で、調わなければ家庭裁判所で、定め直すことになります。

今日の地図(保存版)

前編の答え。アパートの賃借権=相続される(896条本文・622条は597条3項を準用しない)/別荘の使用借権=借主Aの死亡で終了(597条3項)/墓=相続財産ではなく祭祀主宰者が承継(897条)。 図:前編の答え

まとめます。冒頭の設例の答えです。アパートの賃借権は、相続されます。別荘の使用借権は、借主Aの死亡で終わります。墓は、相続財産ではなく、祭祀を主宰する人が承継します。道筋は3本です。1つ目、原則は包括承継です。権利も義務も、契約上の地位も、まとめて引き継ぎます。2つ目、例外の1つ目は、一身専属です。その人でなければ意味がない地位は、承継されません。ただし、すでに発生した具体的な債権は、相続されます。また、帰属上と行使上は、別の物差しです。3つ目、例外の2つ目は、祭祀財産と遺骨です。指定、慣習、家庭裁判所の順に、祭祀主宰者が決まります。

相続の対象にならないものは、これで全部ですか。まだあります。次は、相続財産には入らず、受け取る人自身の権利になるものを見ます。

参照条文

  • 民法896条
  • 民法897条

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