通常訴訟と特別訴訟の地図——離婚から見る人事訴訟
印刷のコツ
プリンターでは次の設定がおすすめです。
- 用紙:A4 / 向き:縦
- 拡大縮小:「実際のサイズ」(フィット縮小しない)
- 両面印刷:オン、とじ方は「長辺をとじる」(左綴じ)
- モノクロ印刷OK(強調は色でなく太字なので白黒でも読めます)
第0章 序章 民事訴訟手続の全体像 ㉝/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
法廷にいた人たちが動かす、手続そのもの
図:離婚したいのに、相手が応じない
前回は、法廷に集まる人たちを見てきました。裁判官、書記官、弁護士、証人。その人たちが動かす手続そのものには、いくつか型があります。今日は、その型を1枚の地図にします。まず、こんな場面を考えてください。Aは離婚を望んでいますが、配偶者のBが拒否しています。Aは、今日にでも離婚訴訟を起こせるでしょうか。実は、そう単純ではありません。離婚は、夫婦2人だけの話では済まないからです。答えは、この回の後半で確かめましょう。まず、離婚を扱う訴訟がどういう種類の訴訟なのか。そこから見ていきます。
通常訴訟という基本形、特別な訴訟という枝分かれ
図:通常訴訟と、特別な訴訟
これまで見てきた民事訴訟には、実は基本形があります。幅広い事件を処理できる、通常訴訟です。訴えの3類型や管轄の話は、みんな通常訴訟の話でした。ここから外れる訴訟は、大きく2つに分かれます。1つは、事件の中身が特殊で、通常訴訟の前提が成り立たない場合。これを内容面の特別と呼びます。代表が、今日の主役、人事訴訟です。離婚など、夫婦や親子の関係——身分関係を扱う訴訟です。行政訴訟も、ここに入ります。もう1つの外れ方は、扱う裁判所の格や審理の重さが違う場合。これを手続面の特別と呼びます。
代表が、審理を省略・制限する簡易な手続です。中身は、次のステップで見ます。会社訴訟の扱いは、実は見方が割れています。特別訴訟に含める考え方もあれば、通常訴訟と位置づけてよいという見方もあります。両方の見方がある、と押さえてください。そして、会社訴訟にも人事訴訟にも行政訴訟にも、特別な定めがない事項には民事訴訟法が適用されます。
図:今日の地図
ここで、今日の道のりを地図にしておきます。まず、手続面で特別な訴訟——審理を簡易にする手続を押さえます。そのあと、今日の主役、人事訴訟の中身に入ります。通常訴訟と、どこがどう違うのか。続いて、その違いが実際にどう働くかを、離婚の5つの類型で追いかけます。冒頭の問いも、そこで回収します。最後に、序章全体の地図を1枚に畳みます。1つずつ、順番に進みましょう。
手続面で特別な訴訟——簡易な手続
図:簡易・迅速な手続と、通常訴訟に戻る道
民事訴訟には、審理を省略・制限して迅速に進める、略式の手続もあります。考えてみてください。5万円を返してほしいだけの請求に、何ヶ月もかかる審理は見合いません。金額が小さい請求や、争いのない請求には、簡易な手続が向いています。代表的なものが4つあります。1つ目が、少額訴訟。60万円以下の金銭請求に限られる、簡易裁判所だけの手続です。気をつけてほしいのが、ここです。簡易裁判所が扱える事件の上限——事物管轄は140万円でしたね。この140万円と、少額訴訟の60万円は、別の数字です。混同しないでください。
2つ目が、手形・小切手訴訟。手形や小切手の金銭請求に限られる、簡易な手続です。手形・小切手訴訟は、簡易裁判所だけの手続ではありません。地方裁判所でも使えます。3つ目が、支払督促。裁判所書記官が、債権者の言い分だけをもとに、相手に「払いなさい」という書面を出す手続です。裁判官の判断は経ません。これは、簡易裁判所の書記官が担当します。4つ目が、保全命令手続。たとえば、判決が出るまでに相手が財産を隠してしまわないよう、仮に押さえておく手続です。民事保全法という別の法律の領分です。急ぐ手続なので、前の回で見たとおり、簡易な審理で決める仕組みです。
保全命令手続は、簡易裁判所に限った手続ではありません。本案、つまり本体の訴訟を扱う裁判所などが担当します。共通するのは「簡易裁判所」ではなく「審理を省略・制限する」型です。そして、審理を省略しても、それで終わりではありません。審理を削ったまま結論を確定させると、十分に争う機会が失われます。だから、少額訴訟・手形小切手訴訟・支払督促の3つには、通常訴訟に戻る道が必ず残されています。それぞれ異議を申し立てれば、通常訴訟に切り替わります。保全命令手続には、これとは別の不服申立ての仕組みがあります。中身は、それぞれの制度を扱う回で見ましょう。
人事訴訟とは何か——4つの種類
図:人事訴訟の4つの種類
ここから、今日の主役、人事訴訟に入ります。まず、定義を確認します。
条文人事訴訟法2条
人事訴訟法第2条(人事訴訟の定義) この法律において「人事訴訟」とは、次に掲げる訴えその他の身分関係の形成又は存否の確認を目的とする訴え(以下「人事に関する訴え」という。)に係る訴訟をいう。 一 婚姻の無効及び取消しの訴え、離婚の訴え、協議上の離婚の無効及び取消しの訴え並びに婚姻関係の存否の確認の訴え 二 嫡出否認の訴え、認知の訴え、認知の無効及び取消しの訴え、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七百七十三条の規定により父を定めることを目的とする訴え並びに実親子関係の存否の確認の訴え 三 養子縁組の無効及び取消しの訴え、離縁の訴え、協議上の離縁の無効及び取消しの訴え並びに養親子関係の存否の確認の訴え
人事訴訟とは、夫婦や親子など、身分関係そのものが対象の訴訟です。条文は4つの種類に整理できます。1号が婚姻関係訴訟——離婚の訴えなどです。2号が実親子関係訴訟——認知の訴えなど。3号が養親子関係訴訟——養子縁組の無効・取消しの訴えなどです。4つ目は、独立した号ではなく、条文の最初にある「その他の身分関係の…訴え」という言葉です。1号から3号に当てはまらない残りを、まとめて受け止めています。ここから、この人事訴訟が通常訴訟とどこで違うのかを見ていきます。違いは5つあります。まず、一番大きな理由を先に言っておきます。親子・夫婦のつながりが変わると、当事者2人だけでなく、本人以外の家族や第三者にも影響が及ぶ、ということです。
図:通常訴訟との5つの違い
家族や第三者にどう影響するかは、このあと具体例で見ます。その前に、違いを1枚の表にしておきます。管轄、訴訟能力、処分権主義、弁論主義、公開原則の5つです。まずは、具体例から見ていきましょう。
管轄と訴訟能力——身近な家裁に集める、本人の意思を尊重する
図:誰の利害に関わるか
AがBに10万円を貸して、返してもらえない訴えを考えてください。この争いは、AとBの2人だけの話です。決着がついても、影響はAとBの財布の中だけです。一方、AとBが離婚したい場合はどうでしょう。子どもがいれば、戸籍や親権が変わります。将来の相続にも関わりますし、再婚できるかどうかも変わります。この違いが、とくに③処分権主義と④弁論主義の違いの土台になります。まず、①管轄から見ましょう。
条文人事訴訟法4条1項
人事訴訟法第4条第1項(管轄) 人事に関する訴えは、当該訴えに係る身分関係の当事者が普通裁判籍を有する地又はその死亡の時にこれを有した地を管轄する家庭裁判所の管轄に専属する。
通常訴訟なら、複数の裁判所から選べる場面もあります。ですが人事訴訟は違います。身分関係の当事者の住所地を管轄する、家庭裁判所の専属管轄です。当事者の合意で、他の裁判所に変えられない、ということです。身分関係に近い家庭裁判所に、集中させる仕組みです。続いて、②訴訟能力です。
条文人事訴訟法13条1項
人事訴訟法第13条第1項(訴訟能力等) 人事訴訟の訴訟手続における訴訟行為については、民法第五条第一項及び第二項、第九条、第十三条並びに第十七条並びに民事訴訟法第三十一条並びに第三十二条第一項(同法第四十条第四項において準用する場合を含む。)及び第二項の規定は、適用しない。
未成年者や成年被後見人は、通常なら訴訟行為を単独ではできません。ですが人事訴訟では、この制限が適用されません。身分関係については、本人の意思をできる限り尊重する趣旨です。ここで、1つ注意してほしいことがあります。この緩和は「訴訟能力」の話です。「誰が原告・被告になれるか」という当事者適格の話ではありません。訴訟能力は、自分の訴訟行為を単独で有効にできるかという力。当事者適格は、その訴訟の当事者としてふさわしいかという資格です。13条1項が緩めているのは、前者だけです。
図:違い①②のまとめ
ここまでの2つを、表でまとめておきます。次は、③処分権主義に進みます。
違い③——処分権主義が効かない
図:処分権主義の制限
通常訴訟では、当事者どうしの合意で、訴訟を自由に終わらせられます。訴訟上の和解も、被告の請求の認諾も、原告の請求の放棄もできます。判決によらずに終わらせるかを、当事者が決められる。これも、処分権主義の現れの1つです。ところが人事訴訟では、これが原則できません。
条文人事訴訟法19条2項
人事訴訟法第19条第2項(民事訴訟法の規定の適用除外) 人事訴訟における訴訟の目的については、民事訴訟法第二百六十六条から第二百六十七条の二までの規定は、適用しない。
たとえば、結婚がそもそも無効だったかを争う訴えでは、2人が合意しても、それで決着はつきません。理由は、さっきの貸金と離婚の対比を思い出してください。当事者2人が「これでいい」と思っても、子どもや戸籍への影響までは決められません。実は、この原則には例外があります。それは、離婚の5つの類型を見るときに、まとめて明かします。
違い④——弁論主義から、職権探知主義へ
図:職権探知主義
通常訴訟は、弁論主義で進みます。当事者が主張した事実、当事者が出した証拠だけが審理の対象になります。ところが人事訴訟では、これも変わります。
条文人事訴訟法20条
人事訴訟法第20条(職権探知) 人事訴訟においては、裁判所は、当事者が主張しない事実をしん酌し、かつ、職権で証拠調べをすることができる。この場合においては、裁判所は、その事実及び証拠調べの結果について当事者の意見を聴かなければならない。
前の回で、非訟の手続で見た職権探知主義です。弁論主義と対になる考え方です。ただし人事訴訟は、判決で決める訴訟のままです。身分関係は、当事者の主張のうまさで結論が左右されてよいものではありません。裁判所が自ら真実を確かめにいく、という発想です。あわせて、当事者の自白に関する規定など、いくつかの規定も適用されません。人訴19条1項です。裁判所が自分で調べにいく以上、当事者の言い分だけで事実が決まる仕組みとは相性が悪いからです。そして、この職権探知を、実際に支える人たちがいます。前の回で、家庭裁判所の手続にだけ出てくると紹介した2つの役職を、思い出せますか?
家裁調査官と、参与員です。家裁調査官は、子どもや家庭の事情を専門的に調べる職員。参与員は、審理や和解に立ち会って、裁判官に意見を述べる人でした。どちらも、当事者の言い分だけに頼らず、裁判所が事情をつかんで判断するための支えです。中身は前の回で見たとおりなので、今日は位置づけだけ押さえてください。
違い⑤——公開停止、プライバシーのための例外
図:公開停止の3要件
通常訴訟の口頭弁論や尋問は、公開が原則です。傍聴席に座れば、誰でも見られます。人事訴訟では、これにも例外があります。
条文人事訴訟法22条1項
人事訴訟法第22条第1項(当事者尋問等の公開停止) 人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人(以下この項及び次項において「当事者等」という。)又は証人が当該人事訴訟の目的である身分関係の形成又は存否の確認の基礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等又は証人が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成又は存否の確認のための適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。
要件は3つに分けられます。1つ目は、尋問される事項が、自己の私生活上の重大な秘密に関わること。例えば、不貞の詳細を、公開の法廷で読み上げさせられる場面を想像してください。2つ目は、公開の法廷で話すと社会生活に著しい支障が生じることが明らかなこと。しかも、他の証拠だけでは適正な裁判ができないこと。3つ目が、裁判官の全員一致で決めることです。この3つがそろって、初めて尋問を非公開にできます。ここで、間違えやすい点をはっきりさせておきます。公開停止は、あくまで「尋問」についての制度です。判決の言渡しを非公開にできる制度ではありません。
判決の言渡しは、一切の例外なく必ず公開されます。人事訴訟でも、それは変わりません。
離婚の5類型——合意から判決までの一本道
図:離婚の5類型
ここで、冒頭の問いに戻ります。Aは離婚を望んでいて、Bが頑なに拒否している場面でした。Aは、今日にでも離婚訴訟を起こせるか。答えは、起こせません。日本の離婚には、5つの道筋があります。
図:①協議離婚・②調停離婚
まず①協議離婚。夫婦の話し合いだけで成立する離婚で、多くはこれで決着します。話し合いで決まらないとき、まず家庭裁判所に家事調停を申し立てる必要があります。貸金と違って、離婚は子どもの親権や戸籍、相続にまで響く話でした。だから、公開の法廷で白黒をつける前に、まず公開されない話し合いの場で、解決の道を探るんです。
条文家事事件手続法257条
家事事件手続法第257条(調停前置) 第1項 第二百四十四条の規定により調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならない。 第2項 前項の事件について家事調停の申立てをすることなく訴えを提起した場合には、裁判所は、職権で、事件を家事調停に付さなければならない。ただし、裁判所が事件を調停に付することが相当でないと認めるときは、この限りでない。
調停を申し立てずにいきなり訴えても、却下されるわけではありません。裁判所が職権で、事件を調停に回します。ただし、相手の所在が分からないなど、相当でない事情があれば別です。この調停は、前の回で見た、裁判所の中で行うADRでしたね。これが②調停離婚です。調停の中で合意ができ、それを調書に記載したときに成立します。子どもの親権や監護についても、あわせて調停で決められます。調停が成立しないときは、③審判離婚に進むことがあります。
図:③審判離婚——調停に代わる審判
条文家事事件手続法284条1項本文
家事事件手続法第284条(調停に代わる審判) 家庭裁判所は、調停が成立しない場合において相当と認めるときは、当事者双方のために衡平に考慮し、一切の事情を考慮して、職権で、事件の解決のため必要な審判(以下「調停に代わる審判」という。)をすることができる。
主要な点で合意ができているなど、事情があるときに使われます。調停に代わる審判と呼びます。前の回で見た、非訟の一種です。審判の告知を受けた日から2週間以内に、家庭裁判所に異議を申し立てられます。適法な異議があれば、取消しの裁判をしなくても審判は自動的に失効します。
図:④裁判離婚・⑤和解離婚・認諾離婚
②も③もだめなとき、あるいは③に異議があって失効したとき。そこで初めて④裁判離婚に進みます。離婚原因が認められれば、判決で離婚が成立します。前の回で見たとおり、判決には形成力がありましたね。そして、ここで、さっきの処分権主義の例外が出てきます。人事訴訟では、和解や認諾は原則できないのでした。ですが、離婚訴訟に限っては、訴訟の中でも和解・認諾ができます。これが⑤和解離婚・認諾離婚です。
条文人事訴訟法37条1項・46条
人事訴訟法第37条第1項・第46条(和解並びに請求の放棄及び認諾の特則) 第37条1項 離婚の訴えに係る訴訟における和解(これにより離婚がされるものに限る。以下この条において同じ。)並びに請求の放棄及び認諾については、第十九条第二項の規定にかかわらず、民事訴訟法第二百六十六条(第二項中請求の認諾に関する部分を除く。)、第二百六十七条第一項及び第二百六十七条の二の規定を適用する。ただし、請求の認諾については、第三十二条第一項の附帯処分についての裁判又は同条第三項の親権者の指定についての裁判をすることを要しない場合に限る。 第46条 第三十七条(第一項ただし書を除く。)の規定は、離縁の訴えに係る訴訟における和解(これにより離縁がされるものに限る。)並びに請求の放棄及び認諾について準用する。
理由は、離婚が訴訟外の協議離婚でも成立できることとの均衡です。訴訟の外で2人だけの合意で終われるなら、訴訟の中でも扱いを変える理由がありません。反対に、結婚がそもそも無効だったかは、訴訟の外でも、2人の話し合いだけでは決められません。だから、そちらは例外になりません。ただし、認諾すればそれだけで離婚が終わる、とは限りません。認諾で足りるのは、親権者の指定や附帯処分についての裁判が要らない場合だけです。未成年の子どもがいて親権者を決めなければならない場合、認諾はできません。判決で、離婚とあわせて親権者を定めることになります。この点は、このあとの親権者の指定のところで、もう少し詳しく見ていきます。そして、この例外は離婚だけではありません。離縁の訴え——養子縁組を解消する訴えにも、同じ例外があります。
ただし、離縁の訴えには、今の37条1項ただし書は準用されません。離縁の訴えでは、離婚のような附帯処分や親権者の指定の裁判が用意されていないからです。「離婚訴訟だけの例外」と覚えると、離縁の場面で足をすくわれます。「離婚と離縁、2つの訴えの例外」と覚えてください。これで、冒頭の問いに完全に答えられます。離婚は、夫婦2人だけの話では済まない。だから、いきなり訴えるのではなく、まず調停の話し合いから、段階を踏んで進むんです。
附帯処分と親権者の指定
図:附帯処分と親権者の指定
離婚訴訟には、もう1つ押さえておきたい仕組みがあります。未成年の子どもがいる場合の、親権者の指定です。
条文民法819条2項(現行)
民法第819条第2項(裁判上の離婚と親権者) 裁判上の離婚の場合には、裁判所は、父母の双方又は一方を親権者と定める。
離婚訴訟では、当事者から申立てがなくても、裁判所が必ず職権で定めます。未成年の子どもには、親権を持つ人が欠かせません。だから、離婚の判決と一緒に、その場で必ず決めておくんです。現在の条文では、父母の双方、つまり共同親権か、一方、つまり単独親権か。どちらかを裁判所が定めます。法改正で選べるようになりました。共同親権になったときの細かい仕組みは、民法のシリーズで扱います。一方、養育費のような子の監護に関する処分や、財産分与に関する処分は違います。こちらは、当事者の申立てがあって初めて、あわせて審理・判決されます。離婚の訴えにあわせて申し立てるので、これを附帯処分と呼びます。職権で必ず、ではありません。離婚のあとで、別の手続で求めることもできます。
今日の地図(保存版)
図:序章の地図——ここまでの旅
最後に、これまでの回で見てきたことを、1枚の地図に畳んでおきます。もめごとが起きたとき、まず考えるのは、合意で終わらせる道です。当事者どうし、あるいは裁判所を仲立ちにした調停で、話をつける。それでも決着しないとき、次に見るのは、そもそも裁判所が扱える争いかどうかです。扱えるとなったら、対立構造で決める訴訟にするか、裁量的な判断に委ねる非訟にするか。そして今日見たのが、通常訴訟か、内容や手続で特別な訴訟か、という型の分かれ道でした。特別になる一番の理由は、身分関係が、当事者2人だけの話では済まないことでした。だから離婚も、話し合い、調停、ときに審判と段階を踏んで、最後に判決へ進みます。
そして、ここから先は、訴えを起こしてから判決に至るまでの道のりです。実は、みなさんはこの入口——訴えの3つの型や、同じ事件を二重に訴えられない重複訴訟の禁止まで、もう歩いています。この先には、判決がどんな効力を持つか、どう組み立てられるかが続きます。さらにその先には、判決に不服があるときの道——上訴や再審。そして今日見た、審理を省略・制限する簡易な手続も続いています。1つずつ、この地図の続きを埋めていきましょう。
参照条文
- 人事訴訟法2条
- 人事訴訟法4条1項
- 人事訴訟法13条1項
- 人事訴訟法19条2項
- 人事訴訟法20条
- 人事訴訟法22条1項
- 家事事件手続法257条
- 家事事件手続法284条1項本文
- 人事訴訟法37条1項・46条
- 民法819条2項(現行)