共同訴訟の意義と要件(38条)
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第4章 複雑訴訟 #76/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
交差点の事故で、3人がけがをした
図:冒頭事案の関係図
- 被害者A・B・Cの3人が加害者Dに損害賠償を請求
- 同じ交差点の同じ事故
- 3人まとめて1つの訴訟にできるか、3つに分けるしかないのか、という問い
こんな場面を考えます。ある交差点で事故が起きて、AさんとBさんとCさんの3人がけがをしました。加害者はDさん1人です。3人とも、Dさんに損害賠償を求めたい。ここで問題です。3人まとめて、1つの訴訟でDさんを訴えることはできるでしょうか。できます。ただし、できるというだけで、強制ではありません。3人が別々に訴えても構いません。そして、どんな組み合わせでもまとめられるわけではありません。その線引きが今日の話です。ここまでの第4章は、請求が増える場面でした。原告が請求を足す併合、訴えの変更、そして被告の反訴です。今日からは、人が増える場面に入ります。訴えを起こす時点から当事者が複数いる形、共同訴訟が、その最初の入口です。持ち帰ってほしいことは4つです。1つめ、共同訴訟とは何で、なぜ認めるのか。2つめ、通常の共同訴訟と必要的共同訴訟の分かれ目は、全員に同じ結論を出さなければならないかどうかだということ。3つめ、38条が認める3つの入口を、具体例で仕分けること。4つめ、その入口の濃さが、管轄の扱いの差になって返ってくることです。
共同訴訟とは何か——人を併合する
図:共同訴訟の定義板
- 1つの訴訟手続の中に数人の原告または数人の被告
- 同じ側に立つ複数の当事者=共同訴訟人
- 請求を併合=客観的併合=訴えの客観的併合
- 当事者を併合=主観的併合=訴えの主観的併合
- 利点=審理の重複を避ける・判断の矛盾を防ぐ
共同訴訟とは、1つの訴訟手続の中に、数人の原告、または数人の被告が関わる訴訟の形です。同じ側に立つ複数の当事者を、共同訴訟人といいます。冒頭の例なら、A・B・Cの3人が共同原告で、この3人がそれぞれ共同訴訟人です。何を束ねるかが違います。同じ当事者どうしで複数の請求を束ねるのが、訴えの客観的併合でした。共同訴訟は、当事者そのものを束ねます。だから、訴えの主観的併合とも呼びます。土地管轄の回で、7条のただし書の説明に、この主観的併合という言葉が出てきました。共同訴訟を認めるのは、利点がふたつあるからです。1つは、共通の争点の審理を重複させずに済むことです。冒頭の例なら、信号がどうだったか、Dさんに過失があったか、という審理が1回で済みます。もう1つは、判断が食い違うのを防げることです。3つの訴訟に分けると、同じ事故なのに、Aさんの訴訟ではDさんの過失が認められ、Bさんの訴訟では認められない、ということが起こりえます。この利点があるので、現行法は共同訴訟をかなり緩やかに認めています。ただ、どこまで束ねられるかという条件に入る前に、共同訴訟の型の分かれ目を見ておきます。
通常か必要的か——分かれ目は合一確定の要請
図:共同訴訟の類型の分岐板
- 合一確定の要請 なし=通常共同訴訟=審理は併合・同一期日
- 各共同訴訟人は独立で自由に訴訟追行
- あり=必要的共同訴訟=訴訟資料も手続の進行も統一
- 当事者の自由はかなり制約
- 必要的の下位=固有必要的・類似必要的
共同訴訟は、大きく2つに分かれます。分かれ目は、合一確定が要請されているかどうかです。共同訴訟人の全員に対して、同じ内容の結論しか出せない、ということです。バラバラの判断が許されないという意味です。合一確定の要請がないのが、通常共同訴訟です。審理は併合されて、同じ期日が指定されるなど、足並みは揃います。でも各共同訴訟人は独立で、他の人に制約されず、それぞれ自由に訴訟を進められます。合一確定の要請があるのが、必要的共同訴訟です。こちらは、審理を併合するだけでは足りません。訴訟の資料も統一され、手続の進行も統一されます。だから、当事者が自由に訴訟を進める余地は、かなり制約されます。
当事者適格の回で、全員が揃わないと訴訟を起こせない形に、名前だけ触れました。それが固有必要的共同訴訟です。必要的共同訴訟の一種で、全員が共同して訴え、または訴えられなければ、当事者適格を欠く形です。例は、客観的併合の回で見た遺産確認の訴えです。ある土地が遺産かどうかは、相続人ごとに違う答えになっては困ります。だから相続人全員が当事者になる必要があり、1人が抜けていたので不適法とされました。もう1種類が、類似必要的共同訴訟です。各自が単独でも訴えられる立場にあるのですが、いったん共同訴訟になったら、合一に確定しなければならない形です。例は、株主総会の決議の取消しの訴えです。株主は1人でも起こせます。でも、決議を取り消す判決の効力は、訴えなかった株主も含めて全員に及びます。だから、2人の株主が一緒に訴えたのに、1人との関係では取り消し、もう1人との関係では取り消さない、という判断は出せません。この2つの判断基準は、別の回でじっくり扱います。今日は、名前と、通常か必要的かの分かれ目が合一確定の要請だという一点だけを持ち帰ってください。冒頭の交差点の3人は、必要的ではありません。3人とも単独で訴えられる点は、株主の例と同じです。違うのは、3人の損害賠償請求権が別々の権利で、1人の判決の効力が他の人には及ばず、1人の結論が他の人の結論を法的に縛る関係にないことです。合一確定の要請がないので、通常共同訴訟です。
通常共同訴訟とは——たまたま1つの手続に束ねられた請求
図:通常共同訴訟の意義板
- それぞれ別々に訴えられる請求がたまたま1つの手続に併合
- 同一期日→同一の事実・原因についての判断の統一が事実上期待される
- しかし併合を維持する必要はない→弁論の分離(152条1項)で切り離せる
- =制度として保証された統一ではない
通常共同訴訟を、もう少し正確に言います。本来は個別に訴えを起こせるはずの複数人の請求を、たまたま同じ手続に載せて一緒に審理するのが、通常共同訴訟です。冒頭の3人は、各自が別々にDさんを訴えることもできました。それがたまたま、1つの手続に束ねられているだけです。判断が揃うことは、事実上期待されます。同じ裁判官が、同じ日に、同じ事故の話を聞くからです。ただ、それは事実上の期待にとどまります。判断が揃うのが事実上の期待にとどまるのは、通常共同訴訟が、もともと別々に訴えられる請求を束ねただけで、併合の形を最後まで保つ必要がないからです。裁判所は、必要があれば、途中で3人分を切り離せます。これが弁論の分離です。併合して進めていた審理を、別々の手続に分けることです。訴訟指揮権の回で見た152条1項が根拠です。
条文民事訴訟法152条1項
民事訴訟法152条(口頭弁論の併合等)第1項 裁判所は、口頭弁論の制限、分離若しくは併合を命じ、又はその命令を取り消すことができる。
分離できるということは、判断が制度として必ず揃うわけではない、ということです。Aさんの証拠は十分でもBさんの証拠が乏しければ、AさんはDさんの過失が認められ、Bさんは認められないという結果もありえます。ここが、合一確定の要請がある必要的共同訴訟との違いです。必要的なら、切り離してバラバラに判断することは許されません。
併合の要件——136条と38条の3つの入口
図:併合の二重要件の板
- 通常共同訴訟=原告複数×被告複数でも請求の束を1つの手続で判断=客観的併合も同時に起きる
- 要件1=136条 同種の訴訟手続
- 要件2=38条 請求の間に一定の共通性・関連性
- 趣旨=関係の薄い他人どうしの争いに付き合わされる被告側の負担を防ぐ
では、どんな組み合わせなら、ひとつの手続に束ねられるのか。要件を見ます。通常共同訴訟は、原告が複数、被告が複数という組み合わせでも、請求ごとの束を1つの手続で判断してもらう仕組みです。つまり、請求の併合、客観的併合も同時に起きています。だから、まず136条の要件が要ります。
条文民事訴訟法136条
民事訴訟法136条(請求の併合) 数個の請求は、同種の訴訟手続による場合に限り、一の訴えですることができる。
審理のルールが違う手続どうしは、1つにまとめて審理しようがありません。たとえば手形訴訟や少額訴訟は、普通の訴訟と審理の仕組みが違うので、一緒にはできません。客観的併合の回で見た併合の要件のうち、同種の訴訟手続の要件です。もう1つの管轄の要件は、人が増えると形が変わるので、最後に7条で見ます。そのうえで、もう1つの要件があります。複数の当事者の請求を、1つの手続に束ねてよい、という合理性です。何でも束ねられるわけではありません。束ねられると、相手方は、自分と無関係な他人どうしの訴訟に巻き込まれます。たとえばAさんとBさんが、それぞれ別々の話で、Cさんを訴えるとします。Cさんは、Aさんの話にもBさんの話にも付き合うことになります。それを防ぐために、請求どうしに一定の共通性、関連性が要ります。それを定めたのが38条です。
条文民事訴訟法38条
民事訴訟法38条(共同訴訟の要件) 訴訟の目的である権利又は義務が数人について共通であるとき、又は同一の事実上及び法律上の原因に基づくときは、その数人は、共同訴訟人として訴え、又は訴えられることができる。訴訟の目的である権利又は義務が同種であって事実上及び法律上同種の原因に基づくときも、同様とする。
図:38条の3つの入口の板
- 濃い順に3行/(a)前段=訴訟物が共通=例:隣地の所有権確認 A→B・C/(b)前段=事実上及び法律上の原因が同一=例:交差点事故 A・B・C→D
- 主債務者Bと保証人C/(c)後段=同種の原因=例:別々の賃貸借契約の賃料 A→B・C/関連の濃さ 濃→薄
入口は3つです。前段に2つ、後段に1つ。濃い順に見ます。1つめ。前段の、権利又は義務が数人について共通であるとき。訴訟物、つまり審判の対象の権利関係が、内容として同じ場合です。例を作ります。Aさんが、隣の土地との境をめぐって、この土地は自分のものだと主張します。同じ土地を自分のものだと主張するBさんとCさんを共同被告にして、所有権の確認を求める。審判の対象は、同じ土地の所有権です。これが訴訟物の共通です。2つめ。同じく前段の、同一の事実上及び法律上の原因に基づくとき。審判の対象の権利関係は別々でも、それを基礎づける要件事実の重要な部分が共通している場合です。冒頭の交差点事故がこれです。被害者3人の損害賠償請求権は、別々の権利です。でも、Dさんの運転の過失という、請求の原因の中心が同じです。もう1つの例です。債権者のAさんが、主債務者のBさんと、保証人のCさんを、共同被告にして訴える。保証債務は、主債務があることを前提にします。だから、主債務の成立という要件事実の重要な部分が、両方の請求に共通しています。保証や連帯債務の中身は、民法で扱います。3つめが、後段です。権利又は義務が同種であって、事実上及び法律上同種の原因に基づくとき。上の2つより、関連性はかなり薄くなります。例を作ります。大家のAさんが、別々の賃貸借契約を結んだ借主のBさんとCさんに、同時に賃料を請求する。契約は別々ですが、賃料の請求という同じ種類の権利が、同じ種類の原因、賃貸借契約に基づいています。これが同種です。
限界があります。発生原因が、事実上も法律上も同種でなければなりません。たとえば、Aさんが、Bさんによる名誉毀損と、Cさんによる交通事故を、1つの訴えでまとめて請求したとします。どちらも不法行為の損害賠償ですが、原因になった不法行為の類型が違います。これは同種になりません。共同訴訟は成立しません。整理します。前段は、共通と同一の2つの入口。後段は、同種の1つの入口。この3つのどれかに当たり、かつ136条を満たすことが、通常共同訴訟の併合の要件です。38条だけ見て終わらないでください。ここで1問です。大家のAさんが、別々の契約を結んだ借主のBさんとCさんに、賃料を請求します。これは、38条の前段と後段のどちらの入口でしょうか?
後段です。契約は別々で、同種の原因だから。
入口の濃さは管轄に返ってくる——7条ただし書
図:7条の受けの板
- 本文=1つの請求に管轄があれば他の請求もまとめて提起できる
- 理由=被告は1つの請求にはどのみち応じる→一か所で片づく便利さを優先
- ただし書=数人からの又は数人に対する訴えは38条前段に定める場合に限る
最後に、この3つの入口の差が、管轄でどう効いてくるかを見ます。その前に、以前の土地管轄の回の確認です。7条の本文は、複数の請求のうち1つの請求に管轄があるとき、何を認める規定だったでしょうか? また、数人が絡む訴えでは、ただし書がどこまでに限ると言っていたでしょうか?本文は、他の請求もまとめて、その裁判所に訴えを起こせる、でした。ただし書は、38条前段に定める場合に限る、だったと思います。本文は、1つの請求に管轄があれば、他の請求に管轄がなくても、まとめてその裁判所に訴えられる、という規定でした。被告は、1つの請求についてはどのみち応訴します。だから、一か所で片づく便利さのほうを優先したわけです。今日の主役は、ただし書です。
条文民事訴訟法7条ただし書
民事訴訟法7条(併合請求における管轄)ただし書 ただし、数人からの又は数人に対する訴えについては、第三十八条前段に定める場合に限る。
数人が絡む訴え、つまり主観的併合では、1つの請求の管轄を借りて、管轄のない他の請求までその裁判所でまとめて扱えるのは、38条前段の場合だけです。後段の、同種の原因の共同訴訟では、借りられません。前段と後段では、請求どうしの関連の濃さが違います。前段は、訴訟物が共通だったり、原因が同一だったりします。同じ事実を争うので、被告が巻き込まれる不利益は小さい。後段は、契約が別々で、請求どうしに具体的なつながりがありません。それなのに管轄のない遠方の裁判所で受けて立たせると、被告の負担が重すぎます。まとめて片づく便利さと比べても、そこまでは認められない、という判断です。
図:管轄の流れ図
- AがBの住所地の裁判所にB・C分をまとめて提訴
- 38条は前段か後段か
- 前段=7条ただし書を満たす→まとめて審理できる
- 後段=C分はこの裁判所に管轄なし→弁論の分離(152条1項)→管轄裁判所へ移送(16条1項)→Cの管轄裁判所で審理
具体例で流れを見ます。他に管轄の原因がない場面で考えてください。大家のAさんが、離れた地域に住む借主のBさんとCさんに、賃料を請求します。AさんはBさんの住所地の裁判所に、Cさんの分もまとめて訴えました。賃料の請求は、別々の契約どうしの同種、つまり後段です。この裁判所には、Cさんに対する請求の管轄がありません。7条ただし書のせいで、Bさんの請求の管轄を借りることもできません。訴えが却下されるわけではありません。裁判所は、Cさんの分の弁論を分離して、Cさんの管轄裁判所へ移送します。根拠は16条1項です。
条文民事訴訟法16条1項
民事訴訟法16条(管轄違いの場合の取扱い)第1項 裁判所は、訴訟の全部又は一部がその管轄に属しないと認めるときは、申立てにより又は職権で、これを管轄裁判所に移送する。
訴訟の一部が管轄に属しないときも、移送されます。分離という手段で、Cさんの分だけを切り出して送るのです。分離して移送するこの組み合わせは、客観的併合の回で、併合の要件が欠けたときの扱いとして見たものと同じです。同じ設例で、BさんとCさんが、主債務者と保証人だったらどうでしょう。これは前段、原因の同一です。7条ただし書を満たすので、Bさんの請求の管轄を借りて、Cさんの分もBさんの住所地の裁判所に訴えられます。まとめて審理できます。交差点の3人の請求も、原因の同一で、前段です。管轄も借りられます。入口が濃いほど、管轄までまとめて1つの裁判所に集められる。これが、入口の濃さが管轄に返ってくる、ということです。
今日の地図(保存版)
図:総括の板
- (1)共同訴訟=当事者の併合=訴えの主観的併合
- (2)通常か必要的か=合一確定の要請
- (3)通常共同訴訟の併合要件=136条+38条(前段2つ・後段1つ)
- (4)後段だけは7条ただし書で管轄を借りられない→弁論の分離→移送(16条1項)
今日の話をまとめます。共同訴訟は、当事者を束ねる形で、訴えの主観的併合です。利点は、審理の重複を避けることと、判断の矛盾を防ぐことでした。通常か必要的かの分かれ目は、合一確定の要請があるかどうかです。通常共同訴訟は、たまたま束ねられた請求で、各自が独立です。判断の統一は事実上の期待にとどまります。弁論の分離で切り離せるからです。通常共同訴訟の併合には、136条と38条の両方が要ります。38条の入口は、前段の訴訟物の共通と原因の同一、後段の同種の原因の3つです。後段の同種には限界があります。原因の類型が違えば同種になりません。そして、通常共同訴訟は、できるというだけで、強制ではありません。入口の濃さは、管轄に返ってきます。前段なら7条で管轄を借りられますが、後段は借りられません。借りられないときは、弁論を分離して、管轄のある裁判所に移送します。この管轄の使い方は、論文でも問題設定に使う知識です。今日は、束ねることができるかを見ました。次は、束ねられた3人のうち、1人だけが不利な事実を認めたら、残る2人はどうなるのか、という審理の中身に入ります。
参照条文
- 民事訴訟法152条1項
- 民事訴訟法136条
- 民事訴訟法38条
- 民事訴訟法7条ただし書
- 民事訴訟法16条1項