公表と給付拒否
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第7章 行政調査・義務履行確保・行政罰 #97/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
名前を出す・水を止める
図:今日の4つの問い
- C市=行政
- 店D=営業停止命令に従わない飲食店
- 事業者E=市税を滞納
- 問い1=店Dの名前を市は公表してよいか・問い2=公表は条例で作れるか・問い3=市税を滞納するEに市の水道局は水を止めてよいか・問い4=自動車の税を払わない人の車はどうなるか
前に見た代執行、強制徴収、直接強制、執行罰は、どれも使える場面が狭く、動かないことも多い手段でした。そこで行政は、別の道に向かいます。ひとつは、名前を出すこと。もうひとつは、サービスを止めることです。どちらも、法律に細かい決まりが無いまま使われがちな手段です。だから使うたびに、根拠はあるのか、その権限をそんな目的に使ってよいのか、が問われます。今日はその線引きを確かめます。手軽だからこそ、歯止めが大事になります。問いは4つです。1つ目、営業停止命令に従わない店Dの名前を、C市は公表してよいのか。2つ目、その公表を、条例で作れるのか。直接強制は、条例では作れませんでした。3つ目、市税を滞納する事業者Eに、市の水道局は、水を止めてよいのか。4つ目、自動車の税を払わない人の車は、どうなるのか。答えは最後に回収します。
公表の2種類
図:公表の3つの型
- ①情報提供を主な目的=危険な製品・食品を知らせて国民を守る
- ②制裁を主な目的=義務違反・勧告不服従への制裁で従わせる圧力
- ③処分や指導を行った事実の公表=広く公衆の目で適式に行われたかを見る/分け方の軸=その公表が何のために置かれているか・名前が出るかではない
まず、公表の分類です。前に、公表は2種類に分けて見ました。ひとつは、危険な食品や製品を知らせ、国民を守る、情報提供として働く公表。もうひとつは、義務違反や勧告に従わない者への制裁として働く、従わせるための公表です。今日は、この2種類に、あとで中間の型を1つ足します。分け方の軸は、その公表が何のために置かれているか、です。名前が出るかどうかでは分けません。見かけは同じでも、置かれた目的が違います。たとえば、掲示板を考えてください。迷子の知らせを貼る掲示は、周りの人に知らせるためのものです。一方、約束を破った人の名札を貼る掲示は、その人に恥をかかせて、約束を守らせるためのものです。貼られるのは同じ名札でも、働きが違います。ここで問いです。食品衛生法69条は、違反者の名称などを公表するよう努める、という規定でした。この公表は、情報提供と制裁の、どちらでしょうか。
規定の目的は、危害の防止ですから、情報提供の側に置きました。ただし、公表される事業者から見ると、名前が出れば客が離れますから、規定を守らせる働きも持ちます。このように、同じ公表が両方の働きをもつことは多く、どちらが主な目的かで、根拠の要否が決まります。なぜ目的で根拠の要否が決まるのかは、次の節で確かめます。もうひとつ、中間の型があります。行政処分や行政指導を行った、その事実そのものを公表する型です。趣旨は、広く公衆の目で、その処分が適式に行われたかをチェックすることにある、と整理する立場があります。分類としては情報提供に近い型、という位置づけです。ただ、処分を受けた事実が公になれば、それだけで事業者の名誉や信用は下がります。侵害的な面が大きいので、扱いには注意が要ります。たとえば、C市の条例が、営業停止命令をしたときは、その旨を公表できる、と定める場合がそうです。処分を受けた事実が公にされると、処分の効果が終わったあとも、名誉や信用の不利益が残ります。それを取消しの利益の問題としてどう扱うかは、別の回で扱います。ここでは、公表がそうした不利益を生む、とだけ押さえます。
図:公表の比較表
- ①情報提供=目的は注意喚起・例は食品の危害の公表・根拠は不要
- ②制裁=目的は勧告・命令に従わせる・例は従わない店の公表・根拠は法律または条例が必要
- ③処分した事実の公表=目的は適式さのチェック・例は営業停止命令をした旨の公表・扱いに注意
表にします。情報提供は、注意喚起が目的で、根拠は要りません。制裁は、従わせるのが目的で、根拠が要ります。処分した事実の公表は、その中間です。情報提供に近い型ですが、名誉や信用を下げる面が大きいので、根拠が要らないと言い切らず、慎重に扱う、という位置づけです。
制裁的公表の根拠と事前手続
図:侵害留保説と公表
- 物差し=国民の権利・自由を侵害するには法律または条例の根拠が要る
- ①情報提供=侵害でなく根拠不要
- ②制裁として働く公表=評価を下げ売上を失わせることを意図して仕組んだもの→侵害→根拠が必要/C市が条例の定め無しに店Dを従わない店として公表→違法
次に、根拠です。物差しは、前に見た侵害留保説でした。国民の権利や自由を侵害するには、法律または条例の根拠が要る、という考え方です。情報提供の公表は、国民を守るために知らせるものですから、侵害に当たらず、根拠は要りません。これに対して、制裁として働く公表は、相手の社会的評価を下げ、売上を失わせることを意図して仕組まれたものです。つまり侵害ですから、法律または条例の根拠が要ります。設例に当てはめます。営業停止命令に従わない店Dについて、C市が、条例の定めが無いまま、従わない店として名前を公表したとします。これは、制裁として働く公表で、根拠がありません。違法です。反対側も置きます。同じ店Dで食中毒が出て、C市が、市民がそこで食べないよう、店の名前と危険を知らせたとします。これは情報提供ですから、条例の定めが無くても、根拠の点では問題になりません。同じ店Dの名前でも、何のための公表かで、結論が分かれます。
行政指導に従わなかったことを理由に不利益に扱ってはいけない、という行政手続法32条2項と、同じ話ですか。重なります。法令の根拠が無いまま、従わなかったから公表する、というのは、32条2項の問題にもなります。では、根拠があれば何でもよいのでしょうか。制裁的公表が慎重に扱われる理由は、2つあります。ひとつは、いったん誤った情報が公になると、元に戻すことが事実上できないこと。もうひとつは、不利益が深刻なことです。たとえば、店Dが実は命令に従って営業をやめていたのに、従わない店と公表されたとします。あとで訂正を出しても、離れた客は戻りません。ですから、公表の前に、相手に意見を述べる機会を与えるべきだ、という要請が働きます。実際の条例も、公表の前に相手に通知し、意見を述べる機会を与える形を取ります。
図:条例の手続の骨格
- C市長→店D:①勧告→②勧告に従わない→③公表予定の通知→④意見陳述の機会→⑤公表
- 誤った公表は取り返しがつかないので事前に意見を述べる機会を置く
流れは、勧告をして、従わない場合に、公表の予定を通知し、意見を述べる機会を与えたうえで、公表する、という順です。なお、行政手続法の不利益処分の手続は、公表が処分ではないため、直接は及ばない、と指摘されます。だから、条例が意見陳述の機会を設ける、という筋です。行政手続法が条例の手続に及ぶかどうかは、別の回で扱います。根拠は、条例に置けば足りるのでしょうか。次の節で確かめます。
条例で制裁的公表を作れるか
図:直前の問い(直接強制と執行罰は条例で作れなかった。理由は何だったか?)
条文を読む前に、前回の確認です。直接強制と執行罰は、条例で作れませんでした。その理由は何でしたか?行政代執行法1条の法律に、条例は含まれないからでした。条文を、全文で読み直します。
条文行政代執行法1条
行政代執行法第1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
図:行政代執行法1条の射程
- 義務履行確保は法律が別に定めたもの以外はこの法律による
- 法律に条例は含まれない→強制執行の直接強制・執行罰は条例で作れない
- 1条が念頭に置くのは強制執行
- 公表は制定時に想定されていない新しい手段→規制は及ばない→条例でも作れると解されている
義務の履行確保は、法律が別に定めたものを除き、この法律による。ここでの法律に条例は含まれない、というのが通説でした。ですから、強制執行にあたる直接強制と執行罰は、条例では作れません。公表も、義務を守らせる手段なら、同じ1条に引っかかりませんか。引っかかりません。1条が念頭に置いているのは、強制執行です。公表は、この法律が作られたときには想定されていなかった、新しい手段です。ですから、この法律の規制は及ばず、条例でも作れると解されています。理由の補強もあります。地方公共団体が、義務の履行を確保する手法を作ることを完全に否定するのは、地方自治を保障した趣旨に反する、という考え方です。注意点があります。これは、最高裁が言ったことではありません。判例ではなく、一般的な理解として、そう解されている、という整理です。
図:条例で作れるか
- 直接強制×=強制執行・1条の法律に条例は含まれない
- 執行罰×=同
- 制裁的公表○=強制執行ではなく想定外
- 即時強制○=義務履行確保ではない
- 即時強制は別の回
対比にします。直接強制と執行罰は、強制執行ですから、条例では作れません。制裁的公表は、強制執行ではなく、想定外ですから、条例で作れます。即時強制も、義務の履行確保ではないので作れると解されますが、その本体は別の回で扱います。店Dに戻ります。C市は、命令に従わない店の名前を公表する仕組みを、条例で作れます。これに対して、職員が店Dの入口を閉めてしまう直接強制を、条例で作ることはできません。同じ店Dを従わせる手段でも、強制執行かどうかで、条例で作れるかが分かれます。もうひとつ、よく見る例があります。市税を滞納する者の氏名を、条例で公表できるとする仕組みです。ただし、税には、地方税法などに定められた、滞納処分の手続が別にあります。たとえば、滞納がまだ督促の段階なのに、氏名を公表するとします。これは、滞納処分の手続の順序を崩さないか。公表が滞納処分の手続とどう整合するかは、問題として指摘されます。前に見た強制徴収の流れのとおり、税は、まず督促をして、それでも払わなければ、財産を差し押さえる滞納処分に進む、という順で、払う機会を残しています。督促の段階で名前を出せば、その順を飛ばして、別の不利益を先に与えることになります。これが、整合が問われる理由だと考えられます。
勧告に従わない者の公表
図:2つの公表
- 義務の不履行への公表=命令に従わない→公表
- 勧告への不服従の公表=任意の指導に従わない→公表=行政指導の実効性確保・義務履行確保ではない
- 32条2項・任意性との緊張
ここで、公表を2つに分けます。命令という義務に従わなかった者の公表と、勧告に従わなかった者の公表です。勧告に従わなかった者の公表は、厳密には、義務履行確保ではありません。勧告は、行政指導で、従う義務が無いからです。これは、行政指導の実効性を確保する手段の問題です。ですから、前の節で見た行政代執行法1条の縛りとは、なおさら関係がありません。問題は、別のところにあります。勧告に従うかどうかは本来自由なのに、従わないと名前が出る。そこに緊張があります。従う義務の無い指導に、従わないことへの不利益を与えるのは、行政手続法32条2項の趣旨や、指導の任意性と、ぶつかります。前に、行政指導の限界を見たとき、公表を、根拠と理由で分けました。今日の冒頭の型は、目的で分けたもので、分ける軸が違います。その整理に戻ります。32条2項が禁じるのは、従わなかったことを理由にした不利益でした。法令が、勧告に従わなければ公表できる、と定めれば、公表は、法令が予定する措置になりますから、32条2項そのものの問題は生じません。ただし、仕組みの適否は別です。違法でない行為への指導に、公表を付ければ、任意性を崩します。違反の是正を求める指導の後に、公表を置くなら、いきなり制裁をしないための、事前の段階として説明できる、と整理されます。違反がある以上、行政は命令などに進むこともできますが、その手前で、まず直す機会を与えている、ということです。
たとえば、C市が、法律上は問題のない深夜営業について、店に夜10時で閉めるよう勧告し、従わなければ公表するとします。これは任意性を崩します。これに対して、店が条例の衛生基準に違反しているときに、まず直すよう勧告し、従わなければ公表する。これなら、違反を正すための事前の段階として説明できます。
公表をどう争うか
図:争い方の地図
公表をされそうな店は、どう争えるでしょうか。問いです。公表を避けたい店は、公表の前に、何を争いますか。地図は、公表の前と後に分かれます。公表の前には、道が2つあります。店Dに当てはめます。C市長から勧告が届き、従わずにいると、公表予定の通知が来ました。名前が出るまでに、店Dが打てる手は何か、という問題です。1つ目は、先行する勧告や命令を争う道です。勧告を処分と見る立場に立てば、取消訴訟を起こし、執行停止も求められます。勧告を処分と見るかは、立場が分かれます。公表という制裁が結びついていることに着目すれば、処分と見られます。他方、公表は世論に訴えて従うよう説得するだけで、勧告への服従を強制するとまでは言えない、と考えれば、処分ではありません。取消訴訟は、処分を取り消してもらう訴えですから、処分でなければ使えません。そこで、勧告が処分でないなら、勧告の違法の確認や、営業を適法に続けられる地位の確認を、当事者訴訟で求めることになります。処分性の判断の枠組みは、別の回で扱います。2つ目は、公表そのものを差し止める道です。公表は、事実行為で、処分ではありません。行政事件訴訟法の差止訴訟は、処分や裁決がされるのを止める訴えですから、公表が処分に当たらないとすると、公表自体は、その対象にならないことになります。そこで、名誉や信用を守るための、民事訴訟による差止め請求や、当事者訴訟が考えられます。
公表をされたあとは、名誉や信用は元に戻りません。そのため、事前の差止めが実際には重要です。ただ、事実行為の差止めは、訴訟の類型が定まりにくい。論文では、公表の前に争うなら、どの訴訟か、と問われやすい形です。公表の後は、国家賠償です。前に見た、貝割れ大根の事件の東京高裁の判決は、情報提供の公表でも、目的、方法、結果が是認できなければ、注意義務に違反する、としました。誤った公表や、方法が不相当な公表なら、国家賠償の問題になります。制裁的公表で誤りがあれば、なおさらです。国家賠償の一般論は、別の回で扱います。先ほどの、店Dが実は従っていたのに、従わない店と公表された場面がそれです。失った客の分の損害は、国家賠償で、お金で償ってもらうことになります。
給付拒否——水を止めて従わせる
図:給付拒否と権限の連結
- 給付拒否=上水道・下水道・電気・ガスなどの提供を止めて義務を守らせる
- 二重の問題=①最低限の生活に必要なサービスを逆手に取る→生存権侵害のおそれ②給付の条件は各法律が定める→止めることが法律に反しないか個別に検討
- 設例=C市の水道局が市税を滞納する事業者Eに「税を払うまで水を止める」と告げる
後半は、給付拒否です。上水道、下水道、電気、ガスなど、行政サービスの提供を止めて、義務を守らせる方式です。効果は絶大です。そのぶん、問題が2つあります。ひとつは、最低限の生活に必要なサービスを逆手に取ることで、生存権の侵害のおそれがあること。もうひとつは、各サービスの提供の条件が、それぞれの法律で定められていて、義務履行確保のために止めることが、その法律に反しないか、個別に検討が要ることです。たとえば、家庭の水が止まれば、料理も入浴もできません。生活そのものが止まります。設例です。C市の水道事業者はC市の水道局です。市税を何年も滞納している事業者Eに、水道局が、税を払うまで水を止める、と告げます。許されるでしょうか。その前に、前に見た最高裁の決定を思い出してください。水道法15条1項の、正当の理由の読み方です。
正当の理由は、水道法の目的、つまり清浄、豊富、低廉な水の供給に照らして読む、という考え方でした。では、水を止める側の規定を読みます。3項です。個別の法律ですから、骨格だけ読みます。
条文水道法15条3項
水道法第15条第3項 水道事業者は、当該水道により給水を受ける者が料金を支払わないとき、正当な理由なしに給水装置の検査を拒んだとき、その他正当な理由があるときは、前項本文の規定にかかわらず、その理由が継続する間、供給規程の定めるところにより、その者に対する給水を停止することができる。
給水を止められる事由は、水道法が書いています。料金を支払わないとき、検査を拒んだとき、その他正当な理由があるとき、です。ここでの正当な理由も、水道法の枠の中で読みます。事業者Eの税の滞納は、水道法とは関係のない事由です。水道法の予定するところではありません。ですから、税の滞納を理由に水を止めることは、できないと解されます。同じ滞納なのに、止められる場合と止められない場合があるのですか。あります。ここが弁別の山場です。水道料金の滞納なら、3項が、料金を支払わないとき、と書いていますから、止められます。市税の滞納は、書いていません。止められません。
図:権限の連結
- A=C市
- B=事業者E
- A→B:市税の納付義務〔地方税法〕
- A→B:水の供給〔水道法〕
- 税の滞納で水を止める=連結で違法と解される
- 水道料金の滞納なら水道法15条3項で○
理由の筋を説明します。各法律は、基本的にそれ自体で完結しています。法治主義でいう法は、個々の法律を指します。税の法律は税を取るために、水道法は水を安全に供給するために、それぞれ権限を与えています。ですから、別の目的で作られた法律を、行政が勝手に結びつけて使うのは、立法者が予想しない事態です。これを、違法な権限の連結と呼びます。前に見た倉庫の鍵の喩え、つまり、鍵を貸す管理人が、鍵を、掃除当番に出させる道具にした話を、税と水に替えれば、水道局の鍵を、税の取立てに回した、ということです。弁別を並べます。税の滞納で水を止めるのは、連結で違法。水道料金の滞納で水を止めるのは、3項で適法。要綱に従わないから給水を拒むのは、連結で違法で、前の最高裁の決定と同じ考え方です。ただし、前の決定は、公序良俗違反を助長する事情がない限り、と留保を付けていました。連結を絶対に許さない、とまでは言い切っていません。たとえば、違法な建築への給水を拒む場面で、この留保の余地が論じられます。ただし、違法な建築なら拒める、と最高裁が判断したわけではありません。
法律が連結を認めた例——車検
図:行政の連結と法律の連結
- 行政が勝手に連結=違法
- 法律が連結を定める=許される
- 例=自動車重量税が納付されていないときは自動車検査証〔車検証〕を交付・返付しない〔道路運送車両法97条の4第1項〕
- 背景=地方税など強制徴収が円滑に機能しない現実
連結は、いつも許されないのでしょうか。法律が自分で連結を定めた例があります。自動車重量税が納付されていないときは、車検証の交付と返付をしない、という道路運送車両法の定めです。たとえば、事業者Eが、営業用の車の自動車重量税を納めないまま、車検を受けようとしても、車検証は交付されません。車検証が無ければ、その車で公道を走れませんから、Eは税を納めることになります。個別の法律ですから、骨格で読みます。
条文道路運送車両法97条の4第1項
道路運送車両法第97条の4第1項 国土交通大臣(第七十四条の四の規定の適用があるときは、協会)は、第六十条第一項、第六十二条第二項(第六十三条第三項及び第六十七条第四項において準用する場合を含む。)又は第七十一条第四項の規定により自動車検査証を交付し、又は返付する場合において、当該自動車検査証の交付又は返付に係る自動車につき課されるべき自動車重量税が納付されていないとき(当該自動車重量税の納付につき、自動車重量税法(昭和四十六年法律第八十九号)第十条の三第一項の規定による委託がされているときを除く。)は、当該自動車検査証の交付又は返付をしないものとする。
税と車検は、本来、別の制度です。ただ、どちらも自動車に関わりますから、税の納付を確保するために、車検を使う連結を、法律で定めました。成果があがっている、と指摘されます。節の前半との対比です。行政が勝手に連結するのは違法。法律が連結を定めるのは許される。これは、法治主義でいう法が、個々の法律を指す、ということの裏返しです。背景には、地方税など、強制徴収が円滑に機能しない現実があります。前に見た、強硬な取立てがためらわれる、人員が足りない、という問題です。政策として合理性が認められる限り、こうした手法を検討してよい、という指摘があります。
今日の地図(保存版)
図:まとめ
- 1=制裁的公表は法律または条例の根拠が要る・情報提供は不要・事前に意見を述べる機会が要請される
- 2=行政代執行法1条は強制執行のこと→公表は条例で作れると解される
- 3=勧告に従わない者の公表は指導の実効性確保
- 4=公表の争い方=前は勧告・命令と差止め・後は国賠
- 5=水を止められるのは水道法の事由だけ・税の滞納で止めるのは違法と解される
- 6=連結は法律が定めるなら可〔車検〕
では、冒頭の4つの問いに戻ります。1つ目、店Dの名前の公表です。制裁として働く公表は、法律または条例の根拠が要ります。根拠無しの公表は違法です。2つ目、条例で作れるか。作れると解されています。行政代執行法1条は強制執行のための規定で、公表は想定の外だからです。3つ目、市税の滞納を理由に、水は止められません。水を止められるのは、水道法が書いた事由だけで、税の滞納を理由にするのは、権限の連結で違法と解されます。水道料金の滞納なら、3項で止められます。4つ目、自動車重量税の未納付では、車検証が交付されません。法律が連結を定めたからです。ここは論文でも論点になりうる部分です。金銭を使う手段を見ます。
参照条文
- 行政代執行法1条
- 水道法15条3項
- 道路運送車両法97条の4第1項