会社法ゼロから会社法#25

株式会社の機関とは何か・役員と役員等

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第3章 機関 ㉕/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

決める人・動く人・見張る人

導入の場面(友人3人で創業した食品会社が成長し上場・株主は数万人/社長「毎週みんなに集まってもらって経営を決めるのは無理だ」/問い=①誰が決めるか②誰が会社の名前で契約するか③その人が勝手なことをしないよう誰が見張るか/答え=①大事なことは株主総会・日々の経営は取締役と取締役会②会社の名で動くのは代表取締役③見張るのは取締役会自身・監査役・会計監査人・取締役会の中の委員会/この役割分担を会社法は「機関」と呼ぶ) 図:導入の場面

  • 友人3人で創業した食品会社が成長し上場・株主は数万人
  • 社長「毎週みんなに集まってもらって経営を決めるのは無理だ」
  • 問い=①誰が決めるか②誰が会社の名前で契約するか③その人が勝手なことをしないよう誰が見張るか
  • 答え=①大事なことは株主総会・日々の経営は取締役と取締役会②会社の名で動くのは代表取締役③見張るのは取締役会自身・監査役・会計監査人・取締役会の中の委員会
  • この役割分担を会社法は「機関」と呼ぶ

友人3人で始めた食品会社が、大きく育って上場しました。株主は数万人です。社長は、株主の皆さんに毎週集まってもらって経営を決めるのは無理だ、と言います。では、誰が決めるのか。誰が、会社の名前で仕入先と契約するのか。そして、その人が勝手なことをしないよう、誰が見張るのか。先に答えを言います。大事なことは、株主の会議である株主総会が決めます。日々の経営は、取締役と取締役会に任せます。会社の名前で契約するのは、代表取締役です。見張るのは、取締役会自身と、監査役や会計監査人、あるいは取締役会の中に置く委員会です。会社法はこの役割分担を、機関と呼んで定めています。

任された人が、株主の利益から外れて、自分の都合で動く危険があります。この回の一本の筋は、会社は自分では決められないから、決める人、動く人、見張る人に分けた、という流れです。この筋で、機関の全体の地図を作ります。第3章はこの地図の上に、一つずつ乗っていきます。

会社は自分では決められない——機関とは何か

機関の名前の一覧(株主総会・取締役・取締役会・代表取締役・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会・指名委員会等・執行役/分ける理由=効率〔大勢の株主がいちいち決めず専門家に任せる〕と適正〔任された人を見張る〕の両立/会社法第二編第四章) 図:機関の名前の一覧

  • 株主総会・取締役・取締役会・代表取締役・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会・指名委員会等・執行役
  • 分ける理由=効率〔大勢の株主がいちいち決めず専門家に任せる〕と適正〔任された人を見張る〕の両立
  • 会社法第二編第四章

株式会社は、法人です。法人は、自分では考えることも、動くこともできません。そこで、会社の意思を決め、会社の名前で動き、それを見張る人や会議体を、会社法が用意しています。これが機関です。会社法の第二編第四章に、定められています。機関という言葉は、第1章で、機関の分化として一度見ました。この回は、その中身を一つずつ広げます。画面は、機関に数えられるものの名前の一覧です。今は数えなくて構いません。大事なのは、なぜこんなに種類があるのか、です。理由は二つあります。一つ目は、効率です。株主が大勢いて、全員がいちいち決めていたら、会社は動けません。だから、経営の専門家に任せます。二つ目は、適正です。任された人が、株主の利益から外れないよう、見張る必要があります。この二つを両立させるのが、機関の設計の考え方です。

前に見た、所有と経営の分離が、土台になっています。株式会社では、お金を出す株主と、経営する人が分かれます。大きな会社ほど、株主は経営に関わりません。すると、経営者が株主の利益より自分の利益を優先する危険が出ます。だから、見張り役が要るのです。ここで、前の回の復習です。所有と経営の分離とは、株式会社でどんな人が経営することを許す仕組みだったでしょうか?株主じゃない専門家でも、経営できる、でした。株主でない専門家が、取締役などとして経営できます。だから、任せる効率と、見張る適正の両方が、必要になるわけです。一言、補足します。機関の定義を細かく論じても、実益はあまりありません。ある地位が機関に当たるかどうかで、効果は変わらないからです。機関かどうかより、その人が何をするかを覚えてください。なお、臨時に置かれる検査役という役もあります。使用人、つまり従業員は機関ではなく、日常の業務を担う人です。

必ず置く2つと、選んで置くもの

必置と任意(必ず置く=株主総会・取締役〔1人以上〕/定款で置くと定めて置く=取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会・指名委員会等/なぜ選べる=規模・公開性・人材で望ましい分業が違う/枠がある=置かなければならない場合・同時に置けない組合せがある) 図:必置と任意

  • 必ず置く=株主総会・取締役〔1人以上〕
  • 定款で置くと定めて置く=取締役会・会計参与・監査役・監査役会・会計監査人・監査等委員会・指名委員会等
  • なぜ選べる=規模・公開性・人材で望ましい分業が違う
  • 枠がある=置かなければならない場合・同時に置けない組合せがある

すべての株式会社に必要なのは、株主総会と取締役の二つだけです。取締役を置く義務は326条1項、株主総会の権限は295条1項に書かれています。それ以外の機関は、定款で置くと定めて、初めて置かれます。条文を見ます。

条文会社法326条

会社法第326条(第1項・第2項) 1 株式会社には、一人又は二人以上の取締役を置かなければならない。 2 株式会社は、定款の定めによって、取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、監査等委員会又は指名委員会等を置くことができる。

1項は、置かなければならない、という書き方です。2項は、置くことができる、という書き方です。この書き分けが、必ず置くものと、選んで置くものの境目です。ここで問いです。ある株式会社を設立するとき、定款に何も書かなくても、必ず存在しなければならない機関は何と何でしょうか?株主総会と、取締役、です。取締役会や監査役は、置くと決めなければ、ありません。会社によって、ちょうどよい分業が違うからです。株主が3人の会社に、監査役会まで置かせるのは重すぎます。逆に、株主が数万人の会社で、取締役が1人では軽すぎます。そこで、効率と適正の両方に配慮しながら、どこまで置くかは、定款自治に任せています。定款自治は、前に見ました。ただし、枠があります。たとえば、冒頭のような上場した会社は、普通、公開会社です。前に見たとおり、公開会社は取締役会を置かなければなりません。327条1項1号です。会社によっては、一定の機関を置くことが義務づけられ、同時に置けない組合せもあります。どの組合せが許されるかは、別の回で扱います。この回では、選べるけれど枠がある、と覚えておいてください。短答では、必ず置くと、定款で置ける、を取り違えないことが大切です。

決める・動く——株主総会・取締役・取締役会・代表取締役

伝統型の会社の関係図(「決める」「動く」「見張る」の3つの帯/A=株主総会=決める・Aは取締役・監査役・会計監査人を「選ぶ」/B=取締役会=決める・見張る・Bは代表取締役を「選ぶ・見張る」/C=代表取締役=動く/D=監査役=見張る・Bを外から「見張る」/E=会計監査人=見張る・計算書類を「見張る」) 図:伝統型の会社の関係図

  • 「決める」「動く」「見張る」の3つの帯
  • A=株主総会=決める・Aは取締役・監査役・会計監査人を「選ぶ」
  • B=取締役会=決める・見張る・Bは代表取締役を「選ぶ・見張る」
  • C=代表取締役=動く
  • D=監査役=見張る・Bを外から「見張る」
  • E=会計監査人=見張る・計算書類を「見張る」

食品会社を、画面の関係図で見ます。取締役会を置く会社を念頭に説明します。置かない会社は、最後に一言触れます。株主総会は、議決権を持つ株主の会議です。会社の役員と会計監査人を選び、329条1項、会社の重要な事項を決めます。ただし会議ですから、自分では業務を執行できません。取締役会を置く会社では、総会が決議できる事項は、法律と定款に定めた事項に限られます。295条2項です。取締役会という経営の会議を置いた会社では、日々の経営の判断はそちらに任せ、総会は、役員の選任や定款の変更のような、基本的な事項に絞ります。最初に見た、専門家に任せる効率の考え方です。詳しくは、後の回で見ます。取締役は、総会が選びます。取締役会を置く会社では、取締役は3人以上です。331条5項です。取締役会は、全取締役で組織します。その職務を、条文で見ます。

条文会社法362条2項

会社法第362条第2項 2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。  一 取締役会設置会社の業務執行の決定  二 取締役の職務の執行の監督  三 代表取締役の選定及び解職

取締役会の職務は三つです。業務執行の決定、取締役の職務の執行の監督、代表取締役の選定と解職です。決めて、見張り、会社の名前で動く人を選ぶ。これが取締役会です。決めることと、動くことの違いを、食品会社で見ます。工場を売る、と決めるのが、業務執行の決定で、取締役会が決めます。買い手と売買契約を実際に結ぶのが、業務の執行で、代表取締役が会社の名前で結びます。

取締役会が決めること・任せられること(食品会社の例/取締役会に残る=重要な財産の処分〔たとえば工場の売却〕・多額の借財・支配人その他の重要な使用人の選任と解任/個々の取締役に任せられる=日常的で重要でない決定〔たとえば文房具の購入〕/なぜ=重要事項を一人に任せきりにすると他の取締役の監督が届かない/362条4項) 図:取締役会が決めること・任せられること

  • 食品会社の例
  • 取締役会に残る=重要な財産の処分〔たとえば工場の売却〕・多額の借財・支配人その他の重要な使用人の選任と解任
  • 個々の取締役に任せられる=日常的で重要でない決定〔たとえば文房具の購入〕
  • なぜ=重要事項を一人に任せきりにすると他の取締役の監督が届かない
  • 362条4項

決めるのは、全部取締役会ですか。細かいことまで毎回、全員で集まるんですか。そこは、重さで分かれます。支配人は、前に見た、本店や支店の事業について、包括的な代理権を持つ使用人です。362条4項は、重要な業務執行の決定を、取締役に委任できないと定めています。例は、重要な財産の処分、多額の借財、支配人その他の重要な使用人の選任と解任です。逆に、日常的で重要でない決定は、個々の取締役に任せられます。なぜ、重要なことは任せられないのか。重要な事項を一人に任せきりにすると、他の取締役の監督の目が届かなくなるからです。取締役会に残るのは、大事な決定と、監督です。

取締役と代表取締役のちがい(食品会社の例/取締役全員=取締役会の一員として決議に加わり互いを監督/代表取締役=取締役会が取締役の中から選定・会社の名前で仕入先と契約する権限〔349条4項〕/工場担当の取締役=取締役会の一員だが代表取締役に選ばれていなければ会社を代表しない/業務を執行するのは代表取締役と選定された業務執行取締役〔363条1項〕) 図:取締役と代表取締役のちがい

  • 食品会社の例
  • 取締役全員=取締役会の一員として決議に加わり互いを監督
  • 代表取締役=取締役会が取締役の中から選定・会社の名前で仕入先と契約する権限〔349条4項〕
  • 工場担当の取締役=取締役会の一員だが代表取締役に選ばれていなければ会社を代表しない
  • 業務を執行するのは代表取締役と選定された業務執行取締役〔363条1項〕

会社の名前で動く人が、代表取締役です。取締役会が、取締役の中から必ず選定します。362条2項3号と3項です。代表取締役は、会社の業務に関する一切の裁判上、裁判外の行為をする権限を持ちます。349条4項です。会社の名前で契約するのは、この人です。業務を執行するのは、代表取締役と、取締役会が選定した業務を執行する取締役です。363条1項です。取締役って、会社の経営をする人、じゃないんですか。そこが、よくある誤解です。取締役会を置く会社では、取締役は取締役会の一員として、決議に加わり、互いを監督します。業務を執行して、会社を代表するのは、選定された代表取締役などだけです。会社の名前で契約できる人を絞っておけば、仕入先は誰と結べばよいか分かりますし、取締役会も、その人を見張れば足ります。取締役であることと、業務を執行することは、別です。冒頭の社長は、普通は代表取締役です。取締役と社長は、別の概念です。ここで問いです。取締役会を置く会社で、会社の名前で契約する権限を持つのは、取締役全員でしょうか?

代表取締役だけ、です。取締役全員ではありません。冒頭の食品会社で言えば、社長である代表取締役が仕入先と結ぶ契約は、会社の契約になります。一方、工場を担当している取締役は、取締役会の一員ではあっても、代表取締役に選ばれていなければ、会社を代表する権限はありません。一言、補足します。仕入れや販売といった実際の日常業務は、使用人が担うのが普通です。会社法に規定がない執行役員のような役職は、任意の役職で、機関ではありません。取締役会を置かない会社は、全く別の型です。取締役が決めて執行し、348条、各自が会社を代表し、349条1項と2項、総会は何でも決められます。295条1項です。株主が少数で、経営に近い会社向けの型です。詳しくは、後の回で見ます。ここまでで、決めるのは総会と取締役会、会社の名前で動くのは代表取締役、とそろいました。残るのは、見張る人です。

見張る人(外から)——会計参与・監査役・監査役会・会計監査人

機関ごとの資格・人数・選ぶ人(動かす側=取締役・取締役会・会計参与/見張る側=監査役・監査役会・会計監査人/会計参与=取締役と共同して計算書類を作る〔374条1項〕・資格は公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人〔333条1項〕/監査役=取締役の職務の執行を監査〔381条1項〕・取締役を兼ねられない〔335条2項〕/監査役会=3人以上・半数以上が社外監査役〔335条3項〕・常勤の監査役を選定〔390条3項〕/会計監査人=計算書類を監査〔396条1項〕・資格は公認会計士・監査法人〔337条1項〕/いずれも総会が選ぶ〔329条1項〕) 図:機関ごとの資格・人数・選ぶ人

  • 動かす側=取締役・取締役会・会計参与
  • 見張る側=監査役・監査役会・会計監査人
  • 会計参与=取締役と共同して計算書類を作る〔374条1項〕・資格は公認会計士・監査法人・税理士・税理士法人〔333条1項〕
  • 監査役=取締役の職務の執行を監査〔381条1項〕・取締役を兼ねられない〔335条2項〕
  • 監査役会=3人以上・半数以上が社外監査役〔335条3項〕・常勤の監査役を選定〔390条3項〕
  • 会計監査人=計算書類を監査〔396条1項〕・資格は公認会計士・監査法人〔337条1項〕
  • いずれも総会が選ぶ〔329条1項〕

見張る側を整理します。軸は、動かす側と、見張る側です。取締役、取締役会、会計参与が動かす側、監査役、監査役会、会計監査人が見張る側です。会計参与は、見張り役ではありません。取締役と共同して、計算書類を作る側です。374条1項です。資格は、公認会計士、監査法人、税理士、税理士法人です。333条1項です。中小企業の計算書類の適正を高めるための、任意の機関です。監査役は、取締役の職務の執行を監査します。381条1項です。業務が適法に行われているかを見る業務監査と、会計監査の、両方です。会計参与を置く会社では、会計参与の職務の執行も監査します。

監査役は、取締役が兼ねてもいいんですか。違います。監査役は、取締役を兼ねられません。335条2項です。自分で決めたことを、自分で監査したら、見張りになりません。だから、取締役会の外から見る立場に置かれます。食品会社で、社長が、知り合いの会社から相場より高い値段で原材料を買い続けていたとします。それを調べ、必要なら、その行為をやめるよう取締役に請求する役が、監査役です。監査役が取締役として、その仕入れに賛成していたら、自分の賛成を自分で調べることになります。監査の範囲には例外があります。公開会社でなく、監査役会も会計監査人も置かない会社は、定款で、監査役の監査の範囲を会計だけに限れます。389条1項です。例外があることだけ、覚えてください。監査役会は、全監査役で組織します。390条1項です。監査役は3人以上で、そのうち半数以上は、社外監査役です。335条3項です。社外とは、前に社外取締役で見たとおり、経営陣から距離を置いて、外の目で見張る人のことです。ただし、社外監査役の要件は、社外取締役とは別に定められています。2条16号です。さらに、監査役の中から、常勤の監査役を選定します。390条3項です。会計監査人は、計算書類などを監査する、会計の専門の外部監査です。396条1項です。資格は、公認会計士か監査法人です。337条1項です。会計監査人の選任と解任の議案は、独立性を保つため、監査役、または監査役会が決めます。344条です。食品会社なら、売れ残った在庫を、決算で実際より高く数えていないかを、外の公認会計士が数字で確かめる、という役回りです。

監査役も、会計参与も、会計監査人も、総会が選びます。329条1項です。

見張りの別の型——監査等委員会と指名委員会等

中から見張る型の関係図(外に総会〔A〕・総会は取締役会を選ぶ/取締役会の「枠」の中に、監査等委員会設置会社=監査等委員である取締役〔B〕/指名委員会等設置会社=指名・監査・報酬の3委員会〔C〕と、取締役会が選任する執行役〔D〕/取締役会は執行役を「選ぶ・任せる」・監査委員会など委員会は執行役を「見張る」) 図:中から見張る型の関係図

  • 外に総会〔A〕・総会は取締役会を選ぶ
  • 取締役会の「枠」の中に、監査等委員会設置会社=監査等委員である取締役〔B〕
  • 指名委員会等設置会社=指名・監査・報酬の3委員会〔C〕と、取締役会が選任する執行役〔D〕
  • 取締役会は執行役を「選ぶ・任せる」・監査委員会など委員会は執行役を「見張る」

ここまでは、監査役が、取締役の外から見張る型でした。伝統的な形です。監査役は取締役ではないので、取締役会の議決には加わりません。もう二つ、型があります。見張る人を、取締役会の中に置く型です。一つ目は、監査等委員会設置会社です。2014年の改正で、新しくできました。年は暗記不要です。取締役会を置き、監査役は置きません。総会で、監査等委員である取締役を、ほかの取締役と区別して選びます。329条2項です。監査等委員は、3人以上で、過半数が社外取締役です。331条6項です。監査等委員会は、取締役の職務の執行を監査し、会計監査人の選任や解任の議案の内容を決めます。399条の2です。

監査等委員は、取締役です。399条の2第2項です。だから、取締役会で議決権を持つ見張り役になります。ここが、監査役との一番の違いです。議決権があれば、たとえば社長である代表取締役を解職する決議に、賛成の一票を投じられます。監査役も取締役会に出て意見は言えますが、票は持ちません。意見を言うだけでなく、票で経営陣の選び直しに加われる。これが、中から見張る意味です。二つ目は、指名委員会等設置会社です。2002年の改正で、委員会等設置会社として導入され、2014年に今の名前になりました。これも年は暗記不要です。取締役会の中に、指名委員会、監査委員会、報酬委員会の、三つの委員会を置きます。各委員会は、委員が3人以上で、過半数が社外取締役です。400条1項と3項です。委員は、取締役の中から、取締役会が選びます。400条2項です。三つの委員会の仕事は、それぞれ違います。指名委員会は、総会に出す取締役の選任と解任の議案の内容を決めます。監査委員会は、執行役、つまりこの型で業務を執行する人などの職務の執行を監査します。報酬委員会は、執行役などの個人別の報酬の内容を決めます。404条です。

指名委員会等設置会社で業務を動かすのは、執行役です。取締役会が選任します。402条2項です。執行役は、取締役会から任された範囲で、業務執行の決定をして、業務を執行します。418条です。取締役は、原則として業務を執行できません。415条です。取締役会の主な仕事は、基本方針の決定と、執行役などの職務の監督です。416条1項です。監督と執行を、はっきり分ける型です。食品会社がこの型を選ぶと、社長は執行役として仕入れや販売を進めます。取締役会はその社長を選び、報酬委員会が報酬を決め、監査委員会が見張る側に回ります。

見張りの3つの型の比較表(外から見る型=監査役〔取締役でない〕・取締役会の議決権なし・業務を執行するのは代表取締役ら/中から見る型・中間=監査等委員会〔監査等委員は取締役・3人以上・過半数社外〕・取締役会で議決権あり・業務を執行するのは代表取締役ら/中から見る型・分離=指名委員会等〔各委員会3人以上・過半数社外・委員は取締役〕・業務を執行するのは執行役/どれが優れているかではなく選べる) 図:見張りの3つの型の比較表

  • 外から見る型=監査役〔取締役でない〕・取締役会の議決権なし・業務を執行するのは代表取締役ら
  • 中から見る型・中間=監査等委員会〔監査等委員は取締役・3人以上・過半数社外〕・取締役会で議決権あり・業務を執行するのは代表取締役ら
  • 中から見る型・分離=指名委員会等〔各委員会3人以上・過半数社外・委員は取締役〕・業務を執行するのは執行役
  • どれが優れているかではなく選べる

三つの型を並べます。監査役の型は、見張る人が取締役ではなく、取締役会の議決権はありません。監査等委員会の型は、見張る人が取締役で、議決権があります。指名委員会等の型は、見張る人が取締役で、さらに、業務を執行するのが執行役に分かれます。優劣ではなく、選べることに意味があります。指名委員会等は、取締役の候補と報酬まで、社外取締役が中心の委員会に任せます。経営陣が抵抗を感じやすく、採用する会社は少数です。監査等委員会は、そこまで縛らない中間の形です。運用の詳細は、後の回で見ます。短答の型を三つ。監査役は取締役を兼ねられない。監査等委員は取締役。指名委員会等で業務を執行するのは執行役。この三つです。どの型をどの会社が選べるかは、別の回で扱います。

「役員」と「役員等」はなぜずれるのか

役員・役員等・総会が選ぶ人の比較表(取締役〔役員○・役員等○・総会が選ぶ○〕/会計参与〔○・○・○〕/監査役〔○・○・○〕/執行役〔役員×・役員等○・総会が選ぶ×=取締役会が選ぶ〕/会計監査人〔役員×・役員等○・総会が選ぶ○〕/ずれる2つ=執行役と会計監査人) 図:役員・役員等・総会が選ぶ人の比較表

  • 取締役〔役員○・役員等○・総会が選ぶ○〕
  • 会計参与〔○・○・○〕
  • 監査役〔○・○・○〕
  • 執行役〔役員×・役員等○・総会が選ぶ×=取締役会が選ぶ〕
  • 会計監査人〔役員×・役員等○・総会が選ぶ○〕
  • ずれる2つ=執行役と会計監査人

最後に、法律が人をまとめて呼ぶ、二つの言葉を見ます。役員と、役員等です。まず、役員の条文です。

条文会社法329条1項

会社法第329条第1項 役員(取締役、会計参与及び監査役をいう。以下この節、第三百七十一条第四項及び第三百九十四条第三項において同じ。)及び会計監査人は、株主総会の決議によって選任する。

役員は、取締役、会計参与、監査役です。そして、この条文は、役員と会計監査人を、総会の決議で選任する、という条文です。次に、役員等の条文です。

条文会社法423条1項

会社法第423条第1項 取締役、会計参与、監査役、執行役又は会計監査人(以下この章において「役員等」という。)は、その任務を怠ったときは、株式会社に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

役員等は、取締役、会計参与、監査役、執行役、会計監査人です。役員より、執行役と会計監査人の二つが多いのです。ここで問いです。会計監査人は、役員でしょうか、役員等でしょうか。それとも、両方でしょうか?会計監査人は、役員ではなく、役員等です。執行役も同じです。会計参与は、役員であり、役員等でもあります。どうして、同じ人をまとめる言葉なのに、ずれるんですか。二つの条文は、人を集める基準が違うからです。329条1項は、総会が選ぶ人を並べた条文です。その中で、括弧の中の取締役、会計参与、監査役の三つにだけ、役員という呼び名を付けています。会計監査人は、総会が選びますが、括弧の外に、別に書かれています。だから、役員ではありません。別にした理由は、条文には書かれていません。外部の公認会計士や監査法人が、計算書類だけを監査する、という立場の違いによるもの、と考えておけば足ります。執行役は、そもそも総会ではなく、取締役会が選びます。402条2項です。だから、329条1項に名前が無く、役員にも入りません。一方、423条1項は、任務を怠ったら会社に賠償する人を並べた条文です。会社の仕事を任された人は、全員入ります。執行役は業務を執行しますし、会計監査人は、計算書類の信頼を預かっています。さっきの在庫の例で、会計監査人が水増しを見逃し、会社が損害を受けたとします。会計監査人は役員ではありませんが、役員等なので、423条1項の責任を負う側に入ります。

答案では、範囲を取り違えないことが大切です。役員の責任、と書くと、範囲が狭くなります。423条の責任は、役員等の責任です。役員等の範囲は、後の責任の回でも使います。会社に対する責任は423条、第三者に対する責任は429条1項、株主代表訴訟、つまり、会社が責任を追及しないときに株主が会社に代わって起こす訴えの対象は、847条です。範囲をここで確定しておけば、誰が責任を負うかで迷いません。

一本の筋でもう一度

この回のまとめ(会社は自分で決められない→機関で分業〔決める=総会・取締役会/動く=代表取締役ら・執行役/見張る=監査役・会計監査人・委員会〕→必ず置くのは総会と取締役・あとは定款で選ぶが枠がある→見張りの3つの型〔監査役/監査等委員会/指名委員会等〕→役員=取締役・会計参与・監査役/役員等=役員+執行役+会計監査人) 図:この回のまとめ

  • 会社は自分で決められない→機関で分業〔決める=総会・取締役会/動く=代表取締役ら・執行役/見張る=監査役・会計監査人・委員会〕→必ず置くのは総会と取締役・あとは定款で選ぶが枠がある→見張りの3つの型〔監査役/監査等委員会/指名委員会等〕→役員=取締役・会計参与・監査役
  • 役員等=役員+執行役+会計監査人

まとめです。一本の筋は、会社は自分で決められないから、機関に分けた、でした。大事なことは総会と取締役会が決め、会社の名前で動くのは代表取締役などです。見張るのは、外から見る監査役と会計監査人、または、取締役会の中の委員会です。分ける目的は、任せる効率と、見張る適正の両立でした。必ず置くのは、総会と取締役だけです。ほかは、定款で選びますが、組合せには枠があります。見張りの型は三つ。監査役は取締役でなく、監査等委員は取締役で、指名委員会等では、執行役が業務を執行します。役員は、取締役、会計参与、監査役です。役員は、総会が選ぶ人のうち、条文が取締役、会計参与、監査役の三つに付けた呼び名です。役員等は、任務を怠れば会社に賠償する人の並べ方で、これに執行役と会計監査人が加わります。並べる基準が違うから、ずれます。短答では、必置機関、326条2項、各機関の資格と人数、役員と役員等の範囲が問われます。論文ではこの回単独では出ませんが、総会決議の瑕疵、取締役会決議を欠く行為、任務懈怠責任の、誰が、どの権限で、を問う前提になる地図です。

参照条文

  • 会社法326条
  • 会社法362条2項
  • 会社法329条1項
  • 会社法423条1項

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