機関設計のルール
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第3章 機関 ㉖/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
小さな会社が育つと、足す機関が決まっている
図:成長の道筋
- 友人3人のパン工房の会社=株式は全部譲渡制限付き・取締役2人だけ・適法
- 段階1=資本金が5億円以上になって大会社になる→会計監査人を足す・監査役も要る
- 段階2=上場を目指して譲渡制限を外し公開会社になる→取締役会を足す
- 公開会社かつ大会社なら監査役会・監査等委員会・指名委員会等のどれかを選ぶ
- 足す機関を決めているのが326条〜328条
友人3人で始めたパン工房の会社があります。株式は全部、譲渡制限付きです。取締役は2人だけで、監査役も取締役会もありません。これで、適法です。この会社が育ちます。まず、資本金が5億円に達しました。何を足さなければならないでしょうか。さらに、上場を目指して、譲渡制限を外しました。今度は、何を足さなければならないでしょうか。先に答えを言います。資本金が5億円以上になって大会社になると、会計監査人を置かなければなりません。会計監査人を置くと、監査役も要ります。さらに、譲渡制限を外して公開会社になると、取締役会が要ります。公開会社で、しかも大会社なら、監査役会、監査等委員会、指名委員会等の、三つのどれかを選ぶことになります。会社法は、この足さなければならない機関を、326条から328条で決めています。ただし、この回の中身は、組合せの表の丸暗記ではありません。会社の成長に合わせて、足す機関が決まっていく一本の筋があります。この筋で通して、ある会社の機関設計が適法かどうかを、自分で判定できるようになるのが目標です。
理由が分かれば、表は自分で組み立て直せます。そして、枠を決める物差しは、二つだけです。公開会社かどうか、大会社かどうか。この二つから、ルールが次々につながっていきます。
枠を決める物差しは二つだけ
図:二つの物差し
- 公開会社か=株主が入れ替わり多数になる→株主が自分で経営を見張れない→経営の見張りの問題
- 大会社か=資本金5億円以上または負債の部の合計200億円以上〔最終事業年度の貸借対照表〕→計算が複雑・債権者などの利害関係者が多い→会計の見張りの問題
- すべての株式会社に共通=必ず置く=株主総会と取締役〔取締役は326条1項〕・それ以外の機関は定款で選ぶ〔326条2項〕
前の回の復習です。株式会社が必ず置く機関は、何と何だったでしょうか?株主総会と、取締役でした。取締役は一人以上、326条1項です。それ以外の機関は、326条2項で、定款に定めれば置けるのでした。つまり、機関は選べます。ただし枠があり、その枠を決める物差しが、公開会社かどうかと、大会社かどうかの二つです。置ける機関の役割は、前の回で見ました。監査役は取締役の外から見張る人、会計監査人は会計の専門家による外部監査です。取締役会の中に見張りを置くのが、監査等委員会と指名委員会等の二つの型で、まとめて委員会型と言います。二つの物差しの定義も、前に見ました。公開会社は、2条5号で、発行する全部または一部の株式について、譲渡制限を設けていない株式会社です。ひっかけがあります。一部の株式にでも譲渡制限が無ければ、公開会社です。全部の株式に譲渡制限が付いている会社だけが、公開会社でない会社です。大会社は、2条6号で、最終事業年度の貸借対照表で、資本金が5億円以上、または負債の部の合計が200億円以上の会社です。
どうして、この二つが物差しなんですか。見張りが必要になる理由が、それぞれ違うからです。公開会社では、株式が自由に売買されるので、株主が入れ替わり、数も多くなります。株主は、継続して経営に関わることも、自分で取締役を見張ることも、できなくなります。つまり、経営の見張りの問題です。大会社は、規模が大きいので、計算が複雑になります。取引先や債権者のような、利害関係者も多くなります。会社の数字が正しいかどうかを、多くの人が頼りにします。つまり、会計の見張りの問題です。この二つの事情が、ルールの背骨になります。公開会社の問題には、取締役会や監査役などで対応します。大会社の問題には、会計監査人で対応します。この対応を、条文で一つずつ確かめます。
取締役会が要る会社
図:取締役会が要る会社
- 327条1項=①公開会社②監査役会設置会社③監査等委員会設置会社④指名委員会等設置会社
- 理由=①株主が見張れない→運営と監督を取締役会に委ねる②監査役が3人以上〔335条3項〕なのに取締役1人では見張る側が多すぎる③④取締役会の中の委員会が見張りの要・委員は取締役(指名委員会等の委員は取締役会が選定〔400条2項〕・監査等委員は総会がほかの取締役と区別して選任〔329条2項〕)
- 大会社だけでは取締役会の理由にならない
最初のルールは、取締役会です。条文を見ます。
条文会社法327条1項
会社法第327条第1項 1 次に掲げる株式会社は、取締役会を置かなければならない。 一 公開会社 二 監査役会設置会社 三 監査等委員会設置会社 四 指名委員会等設置会社
設置会社とは、その機関を置いている会社のことです。四つの場合があり、理由は三種類に分かれます。一つ目は、公開会社です。株主が入れ替わって多数になり、経営を見張れません。そこで、会社の運営と監督を、取締役会という会議体に委ねる形にします。前の回で見たとおり、取締役会では、取締役が互いを見張り、代表取締役を選び直すこともできます。逆に、株主が自分で経営に関わりたいなら、公開会社でない会社が向いています。二つ目は、監査役会設置会社です。監査役会を置くと、監査役は3人以上になります。335条3項です。取締役が1人しかいないのに、見張る監査役が3人以上いる形は、バランスが悪すぎます。簡単な経営組織に、重い監査の仕組みだけを置く必要は、ありません。三つ目は、監査等委員会と指名委員会等の、二つの委員会型です。どちらも、見張りの要は、取締役会の中の委員会で、委員は取締役です。指名委員会等では、取締役会が、取締役の中から委員を選びます。監査等委員会では、株主総会が、監査等委員である取締役を、ほかの取締役と、区別して選びます。329条2項です。監査等委員は3人以上、過半数が社外取締役です。331条6項です。取締役会の中に委員会を置く型ですから、取締役会が前提になります。
大会社になったら、取締役会も要るんじゃないんですか。要りません。ここが大切なところです。取締役会が要る理由は、公開会社であることと、監査役会や委員会型を選ぶことです。大会社であることは、理由に入っていません。譲渡制限付きの大会社なら、取締役だけの会社でも、取締役会は要りません。取締役会を置くかどうかは、次のルールにつながります。前の回で見たとおり、取締役会の無い会社の総会は、会社のことを何でも決められます。ところが、取締役会を置いた会社では、総会が決められる事項が、法律と定款に定めた事項に絞られます。295条2項です。経営の判断が、取締役会に集まります。すると、その取締役会を見張る人が、必要になります。
監査役が要る会社と、要らなくなる例外
図:監査役が要る会社
- 327条2項本文=取締役会設置会社は監査役が要る〔委員会型を除く〕
- 327条3項=会計監査人設置会社は監査役が要る〔委員会型を除く〕
- 理由=総会の権限が絞られ取締役会に権限が集まる→見張りが要る
- 会計監査人の選任・解任の議案の内容と報酬への同意に監査役が関わる〔344条1項・399条1項〕→経営者から会計監査人の独立を守る窓口
監査役の条文です。2項と3項を読みます。
条文会社法327条2項・3項
会社法第327条第2項・第3項 2 取締役会設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。ただし、公開会社でない会計参与設置会社については、この限りでない。 3 会計監査人設置会社(監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役を置かなければならない。
まず2項の本文です。取締役会を置く会社は、監査役を置かなければなりません。括弧の中は、委員会型を除く、という意味です。委員会型には、委員会という見張りがあるからです。理由は、先ほどの流れです。取締役会を置く会社では、総会の権限が絞られ、会社の運営と管理が、取締役会に集中します。取締役が権限を濫用しても、株主総会が直接止められない部分が増えます。そのため、取締役の外から見張る人が、必要になります。次に3項です。会計監査人を置く会社も、監査役を置かなければなりません。会計監査人設置会社とは、会計監査人を置いている会社のことです。理由は、会計監査人の独立性を守るためです。会計監査人の選任、解任、不再任の議案の内容は、監査役が決めます。監査役が2人以上なら過半数で決め、監査役会があれば監査役会が決めます。344条です。報酬を取締役が決めるときは、監査役の同意が要ります。399条1項です。会計監査人は、経営者の数字を点検する立場です。その人事と報酬を経営者だけが握れば、癒着や、点検した側への報復が起きます。そこで、監査役が、経営者との間に立つ窓口になります。ここで問いです。譲渡制限付きの大会社が、取締役だけに会計監査人を足した形で、足りるでしょうか?
大会社だから、会計監査人は要りますよね。でも、監査役は、足りない気がします。会計監査人を置くと、3項で、監査役が要ります。取締役会を置いていなくても同じです。直すなら、取締役に、監査役と会計監査人を足した形になります。
図:監査役が要らなくなる例外
- 327条2項ただし書=公開会社でない会計参与設置会社は監査役を置かなくてよい
- ただし会計監査人を置くなら327条3項で監査役が要る
- 389条1項=公開会社でない会社は定款で監査役の監査を会計に限定できる〔監査役会設置会社・会計監査人設置会社を除く〕
- だから会計の専門家が計算書類作りに入るなら監査役の強制は過剰
さて、2項には、ただし書があります。公開会社でない会計参与設置会社は、監査役を置かなくてよい、という例外です。会計参与設置会社とは、会計参与を置いている会社です。会計参与は、前の回で見たとおり、見張り役ではなく、取締役と一緒に計算書類を作る、会計の専門家です。この例外を理解するには、次の条文が必要です。
条文会社法389条1項
会社法第389条第1項 1 公開会社でない株式会社(監査役会設置会社及び会計監査人設置会社を除く。)は、第三百八十一条第一項の規定にかかわらず、その監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨を定款で定めることができる。
前の回では、この例外があることだけを見ました。公開会社でない会社は、定款で、監査役の監査の範囲を会計に限れます。理由は二つ考えられます。非公開会社では、株主が会社の業務に通じていて、自分で取締役を見張れる面があります。また、広い権限を持つ監査役は、小さな会社では人材が得にくい、という事情もあります。ただし、監査役会設置会社と、会計監査人設置会社は、限定できません。括弧の中のとおりです。本格的な監査の体制を取るなら、監査役の範囲は絞れません。この限定ができるので、2項のただし書の理由が見えてきます。非公開会社なら、監査役の仕事を会計だけにできます。その会計には、会計参与が、作る段階から入ります。数字を後から点検する人を置く代わりに、専門家が作りに加わって、誤りを入口で防ぐ、という発想です。そこにさらに監査役を強制するのは、重ねすぎです。だから、免除されます。
その例外は、どの会社でも使えるんですか。使えません。条件が二つあります。一つ目は、公開会社でないことです。公開会社は、株主が見張れないので、ただし書は使えません。二つ目は、会計監査人を置かないことです。会計監査人を置くと3項が働き、会計参与がいても、監査役が要ります。条文を読むときの注意を一つ。2条9号の監査役設置会社には、監査の範囲を会計に限定した会社は含まれません。限定した会社は、監査役を置いていても、監査役設置会社ではない、という扱いです。
会計監査人が要る会社
図:会計監査人が要る会社
- 328条2項=公開会社でない大会社は会計監査人が要る
- 328条1項=公開大会社〔委員会型を除く〕は監査役会と会計監査人が要る
- 327条5項=委員会型は大会社でなくても会計監査人が要る
- 理由=大会社は計算が複雑・利害関係者が多い・費用を負担できる
- 委員会型は業務執行者に広い権限を委ねるので専門的な会計監査が前提
大会社の問題は、会計の見張りでした。条文は328条です。
条文会社法328条
会社法第328条 1 大会社(公開会社でないもの、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く。)は、監査役会及び会計監査人を置かなければならない。 2 公開会社でない大会社は、会計監査人を置かなければならない。
1項は、括弧の中を読むと分かります。大会社から、公開会社でないものと、委員会型を除いています。つまり、公開会社である大会社で、委員会型でないものです。その場合は、監査役会と会計監査人を置きます。取締役会は、公開会社として、327条1項で既に要ります。監査役会まで要るのは、公開会社の経営の見張りと、大会社の規模が重なるからです。監査役会は、前の回で見たとおり、3人以上で半数以上が社外の監査役が、常勤の監査役も置いて、組織として見張る仕組みです。一人の監査役では、株主が見張れない大きな会社の経営を、見張りきれません。2項は、公開会社でない大会社です。会計監査人を置くだけで足ります。取締役会や監査役会までは、求められていません。ただし、会計監査人を置けば3項が働くので、監査役は結局要ります。理由は、大会社の問題そのものです。計算が複雑で、利害関係者が多いので、職業的な専門家に会計を点検させます。また、大会社なら、その費用を負担する力もあります。
大会社じゃない会社に、会計監査人が要ることはないんですか。あります。委員会型の会社です。327条5項で、監査等委員会設置会社と指名委員会等設置会社は、大会社でなくても、会計監査人を置かなければなりません。条文は、次の節で読みます。理由は、業務を執行する取締役や執行役に、広い権限を任せる型だからです。広く任せるなら、会計の点検は、専門家の会計監査人が前提になります。つまり、会計監査人が要る会社は、大会社と委員会型の、二系統です。
委員会型の会社だけのルール
図:置くと要る・置いてはならない
- A=公開会社の条件
- B=取締役会
- C=監査役
- D=会計監査人
- E=委員会型の会社
- AからB=公開会社は取締役会が要る
- BからC=取締役会設置会社は監査役が要る・ただし書の例外あり
- DからC=会計監査人設置会社は監査役が要る
- EからB=委員会型は取締役会が要る
- EからD=委員会型は会計監査人が要る
- EとC=委員会型は監査役を置いてはならない
- ここまでの連鎖を一枚に
ここまでの連鎖を、画面の図にまとめました。公開会社なら取締役会、取締役会なら監査役、会計監査人でも監査役、という流れです。ここに、委員会型だけの禁止ルールが加わります。条文の4項から6項です。
条文会社法327条4項〜6項
会社法第327条第4項〜第6項 4 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、監査役を置いてはならない。 5 監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社は、会計監査人を置かなければならない。 6 指名委員会等設置会社は、監査等委員会を置いてはならない。
4項は、委員会型は監査役を置いてはならない、という禁止です。理由は、機能の重複です。委員会型には、監査等委員会や監査委員会という見張りが、既にあります。そこに監査役も置くと、同じ仕事を二人が持ち、責任の所在がぼやけます。5項は、先ほどの会計監査人の必置です。6項は、指名委員会等設置会社は、監査等委員会を置いてはならない、という禁止です。理由は、基本構造の違いです。前の回で見たとおり、監査等委員会は、一つの委員会が監査を担い、業務は代表取締役らが動かす型です。指名委員会等は、三つの委員会に分けたうえで、業務を執行役に任せる型です。見張りの組み立て方が違うので、重ねると、どちらの委員会が監査するのかがぶつかります。だから、同時には選べません。
三つに分けると整理できます。置かなければならないは、必ず置く義務です。置いてはならないは、置くと違法になる禁止です。置かなくてもよいは、置くかどうかが自由、という状態です。短答では、この三つの言い方の区別が、そのまま問われます。たとえば、取締役会設置会社が会計参与を置くのは自由です。置かなくてもよいに当たります。一方、指名委員会等設置会社が監査役を置くのは禁止です。
公開大会社の三択と、選べる組合せの全体
図:成長で狭まる選択肢の4マス表
- 行=公開会社か
- 列=大会社か。会計参与は別
- 非公開×非大会社=一番自由・取締役だけでよい・取締役会を置くなら監査役か〔会計参与で代替可〕か委員会型・会計監査人は任意〔置けば監査役か委員会型〕
- 非公開×大会社=会計監査人が要る・監査役か委員会型〔委員会型なら取締役会も〕・取締役会は任意
- 公開×非大会社=取締役会が要る・監査役か監査役会か委員会型・会計参与の代替は効かない
- 公開×大会社=取締役会と会計監査人が要る・監査役会、監査等委員会、指名委員会等の三つのどれか
- 右下へ成長するほど選べる範囲が狭まる
ここまでのルールを、画面の4マスの表に並べます。縦は公開会社かどうか、横は大会社かどうかです。パン工房の会社の成長の道筋で、見ていきます。左上は、譲渡制限付きで大会社でもない、最初の姿です。一番自由です。取締役だけでも構いません。取締役会を置くなら、監査役か、委員会型が要ります。非公開なので、監査役の代わりに会計参与を置く例外も使えます。会計監査人は任意ですが、置くなら、委員会型を選ばない限り、監査役が要ります。資本金が5億円以上になると、右うえの、譲渡制限付きの大会社になります。会計監査人が要り、その結果、委員会型を選ばない限り、監査役も要ります。ただし、取締役会は任意のままです。取締役に、監査役と会計監査人を足した形が、最小の形です。次に、大会社にならないまま、譲渡制限を外した場合です。左下の、公開会社です。取締役会が要ります。取締役会があるので、監査役か、監査役会か、委員会型のどれかも要ります。会計参与を置いても、監査役は免除されません。最後に、公開会社で大会社の、右下です。取締役会と会計監査人が要ります。そのうえで、監査役会、監査等委員会、指名委員会等の、三つのどれかです。監査役を一人だけ置く形は、ここでは認められません。なお、会計参与は、どのマスでも任意です。326条2項で、置くかどうかは自由です。会計参与が意味を持つのは、非公開の取締役会設置会社が、監査役の代わりに置く場面だけです。
理由は、見張りの必要が増えるからです。公開会社になると株主が見張れなくなります。大会社になると利害関係者が増えます。両方がそろう公開大会社は、見張りの必要が最も大きいので、会社法は、三つの本格的な型に絞ります。
この会社の機関設計は適法か——判定の手順
図:判定の手順
- ①公開会社か=2条5号
- ②大会社か=2条6号
- ③取締役会を置くか、置かされるか=327条1項
- ④監査役か委員会型か〔非公開なら会計参与で監査役を免除〕=327条2項〜4項・6項
- ⑤会計監査人は要るか=328条・327条5項/当てはめ例=非公開で取締役会と会計参与→適法/公開で取締役会と会計参与だけ→違法/非公開で取締役会と会計参与と会計監査人→違法/公開大会社で監査役一人と会計監査人→違法/公開で非大会社の取締役会と監査役→適法
最後に、判定の手順です。五つの問いを、順に当てます。第一に、公開会社かどうか。第二に、大会社かどうか。第三に、取締役会を置くか、置かされるか。第四に、監査役か、委員会型か。非公開なら、会計参与で監査役を免除できるか。第五に、会計監査人は要るか。この順に、条文に当てます。一つ目の例です。譲渡制限付きで、大会社ではない会社が、取締役会と会計参与だけを置いています。適法でしょうか。取締役会があるので、監査役が要るはずですが、会計参与がいます。ただし書で、大丈夫でしょうか。適法です。公開会社でない会計参与設置会社なので、327条2項のただし書で、監査役は免除されます。会計監査人は置いていないので、3項も働きません。二つ目の例です。今度は公開会社で、同じく、取締役会と会計参与だけを置いています。適法でしょうか?
ただし書は、非公開会社だけだから、違法ですか。違法です。公開会社には、ただし書が使えないので、監査役が要ります。三つ目の例です。譲渡制限付きで大会社ではない会社が、取締役会と会計参与に、会計監査人まで足しました。会計監査人を置くと、327条3項が働きます。ただし書は効かず、監査役が要るので、違法です。四つ目の例です。公開会社で大会社の会社が、取締役会と、監査役一人と、会計監査人を置いています。会計監査人はありますが、328条1項で、監査役会か委員会型が要ります。監査役一人では、違法です。一方、同じ形でも、大会社でない公開会社が、取締役会と監査役一人を置くなら、適法です。328条1項は、大会社にだけかかるからです。五つ目の例です。譲渡制限付きの大会社が、監査役の範囲を会計に限定して、会計監査人も置きました。389条1項の括弧書きで、会計監査人設置会社は限定できません。違法です。最後に、委員会型です。指名委員会等設置会社が、監査役も置くなら、327条4項で違法です。委員会型が会計監査人を置かないなら、5項で違法です。監査役会を置くなら取締役会が要り、取締役会を置く会社では取締役が3人以上要ります。前の回で見た331条5項です。取締役が1人では取締役会を置けないので、327条1項2号で違法です。
成長の道筋でもう一度
図:この回のまとめ
- 物差し二つ=公開会社か・大会社か
- 公開会社→取締役会
- 取締役会設置会社・会計監査人設置会社→監査役〔例外=非公開で会計参与、ただし会計監査人があれば不可〕
- 大会社・委員会型→会計監査人
- 委員会型→監査役は置けない・指名委員会等→監査等委員会は置けない
- 公開大会社→監査役会・監査等委員会・指名委員会等の三択
- 判定は五つの問いの順
まとめです。一本の筋は、会社が育つほど、見張りの必要が増える、でした。物差しは二つです。公開会社は、株主が経営を見張れない問題で、取締役会などで対応します。大会社は、計算が複雑で利害関係者が多い問題で、会計監査人で対応します。取締役会設置会社と、会計監査人設置会社には、監査役が要ります。例外は、非公開の会計参与設置会社だけで、会計監査人を置くなら、例外は効きません。委員会型は、監査役を置けず、会計監査人が要ります。公開大会社は、監査役会、監査等委員会、指名委員会等の三択です。論文では、この回の内容が単独で出ることは、ほとんどありません。ただ、どの論点でも、まず、その会社の機関設計を確定する習慣が、答案の前提になります。取締役会を置く会社かどうかで、総会の権限が変わります。監査役を置く会社かどうかで、責任を追及する窓口が変わります。短答では、327条と328条の組合せ問題が頻出です。置かなければならない、置いてはならない、置かなくてもよい、の区別を、五つの問いの順に当てて判定してください。
参照条文
- 会社法327条1項
- 会社法327条2項・3項
- 会社法389条1項
- 会社法328条
- 会社法327条4項〜6項