騒乱罪と多衆不解散罪
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第17章 社会的法益|公共の平穏・取引の安全・風俗 ①/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
無人の車を倒す集団と、最後尾の人
図:二つの問い・倒された車と最後尾の人
前回で、第16章の財産に対する罪は終わりました。ここまでの罪は、被害を受ける人が、特定の誰かでした。物を盗まれた持ち主、預けた人、差押えをした債権者です。今日から第17章です。被害を受けるのが、特定の誰かではなく、社会そのものになります。問いを二つ出します。一つ目。何百人もの集団が、人にはいっさい触れずに、路上に止めてあった無人の車を、次々に横転させました。車の持ち主それぞれの器物損壊とは別に、もっと重い罪が成り立つ余地はあるでしょうか。二つ目。その集団の最後尾で、何もせず、一緒に歩いていただけの人がいます。この人も、同じ罪に問われることがあるでしょうか。問われるなら、首謀者と同じ扱いでしょうか。
どちらも、直感とずれます。ヒントだけ出します。この罪が守っているのは、被害を受けた個人ではありません。社会の平穏そのものです。守るものが変わると、条文の作りが、まるごと変わります。今日は、この1本の筋で通します。
個人から社会へ——第17章の地図
図:第17章の地図・個人から社会へ
第17章の地図です。第16章までは、生命、身体、自由、財産と、被害を受けるのは特定の個人か、特定の組織でした。第17章からは、被害を受けるのが、社会、つまり公衆そのものです。同じ暴行という言葉でも、守る対象が変わると、条文の作りが変わります。社会的法益は、大きく3つの層に分かれます。1つ目は、公共の平穏と安全に対する罪で、今日の騒乱、そのあとの放火、往来を妨害する罪です。2つ目は、取引の安全に対する罪で、文書、通貨、有価証券などの偽造です。3つ目は、風俗に対する罪で、わいせつ、賭博、礼拝所と墳墓です。各層は、それぞれの回で扱います。試験で特に出やすいのは、放火と文書の偽造です。騒乱罪は軽く、短答で問われる程度です。ただ、社会的法益とは何か、をつかむ入口として、ちょうどよい罪です。たとえは、町内の空気です。町内の空気は、誰か一人の持ち物ではありません。でも、大勢が騒げば、一気に悪くなります。誰か一人の被害ではなく、みんなの空気が被害を受ける。これが、社会的法益のイメージです。
公共危険罪という考え方
図:抽象的危険犯と具体的危険犯
次に、公共危険罪という考え方です。その前に、1問です。犯罪の分類の回を思い出してください。条文に「公共の危険」という言葉が入っている危険犯は、具体的危険犯と抽象的危険犯の、どちらでしたか?具体的危険犯です。条文が公共の危険の発生を要件にしているものでした。言葉がなくて、行為だけで成立するものが、抽象的危険犯です。文言の有無で判定します。罪の重さでは決まりません。この区別を、今日の条文に当てます。考え方は、こうです。個人の生命や身体や財産に、分けて還元できない、社会に向けた危険があります。こういう危険を守る罪は、実際に被害が出るのを待っていられません。被害が出たときには、もう手遅れだからです。たとえば、住宅街で火をつければ、燃え広がって誰の家や体が被害を受けるかは、火をつけた時点では決まっていません。だから、危険な状態を作った段階で処罰する、危険犯の形になりやすい。これが、公共危険罪という考え方です。ただし、範囲に注意してください。放火のように、不特定または多数の人の生命、身体、財産への危険を守る罪が、公共危険罪の本来の姿です。騒乱罪が守るのは、人の命や財産の安全というより、社会の平穏です。第17章の中で、平穏を守る側と、安全を守る側に分かれる、と覚えてください。騒乱罪は、平穏の側です。では、なぜ平穏を守る罪が、危険犯の形になるのでしょうか。犯罪の分類の回で見たとおり、守るものが現実に侵害されたことを要件にするのが侵害犯、侵害の危険で足りるのが危険犯でした。平穏は、いったん乱れると、回復が難しいものです。そのため、乱れるのを待たずに処罰する形をとっている、と説明されます。守るものは平穏、処罰する時点は危険の段階、と分けて持ってください。そして、この後に読む106条には、「公共の危険」という文言がありません。だから、抽象的危険犯です。実際に平穏が害されたことも、害される具体的な危険が生じたことも、要件ではありません。対比として、110条1項は、「公共の危険」を要件にしているので、具体的危険犯です。これは、放火の回で見ます。
106条 騒乱罪——条文と保護法益
図:騒乱罪の骨組み
106条を読みます。
条文刑法106条
刑法106条(騒乱) 多衆で集合して暴行又は脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する。 一 首謀者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。 二 他人を指揮し、又は他人に率先して勢いを助けた者は、六月以上七年以下の拘禁刑に処する。 三 付和随行した者は、十万円以下の罰金に処する。
多衆で集合して、暴行または脅迫をした者は、騒乱の罪とし、次の区別に従って処断する、です。一号が首謀者で、1年以上10年以下の拘禁刑。次の二号が、他人を指揮し、または他人に率先して勢いを助けた者で、6か月以上7年以下の拘禁刑。三号が、付和随行した者で、10万円以下の罰金です。付和随行は、流れに引かれてついていくこと、と今は持っておいてください。条文の形は、二段です。前半が、罪の成立する場面で、「多衆で集合して暴行または脅迫をした」。後半が、参加の度合いによる、3段の処断です。まず前半を、要素ごとに読みます。守っているものは、公共の平穏です。判例は、公共の平和、静謐、と言います。静謐は、静かで穏やかなこと、という意味です。個人の誰かではなく、社会の平穏を守る。そして、実際に平穏が害されたことは要りません。条文にあるのは、多衆で集合して暴行または脅迫をした、という行為だけです。平穏が害された、という結果は書いてありません。この後の判例は、多衆を、一地方の平穏を「害するに足る」規模の集団、と定義します。害するに足る、は、現実に害されたという意味ではありません。そうなりうる規模と性質がある、という意味です。
多衆と集合
図:多衆と集合
最初の要素は、多衆です。その前に、1問です。建物の前で、数人が口論になって、殴り合いになりました。これは騒乱罪になるでしょうか。ならないなら、何が足りないのでしょうか?足りないのは、規模です。その足りなさを、判例は、こう言い直します。
判例最判昭35・12・8 刑集14巻13号1818頁
騒乱罪の成立要件——多衆と集団の暴行 騒擾罪は、多衆が集合して暴行又は脅迫をなすによつて成立するが、その暴行又は脅迫は、集合した多衆の共同意思に出たものであり、いわば、集団そのものの暴行又は脅迫と認められる場合であることを要し、その多衆であるためには一地方における公共の平和、静謐を害するに足る暴行、脅迫をなすに適当な多人数であることを要する
事案の骨組みです。警察署の前に集まった群集が、警察官と衝突しました。その後、署の中に代表が入って交渉し、多衆が署を不法に占拠するなどした事件です。旧条文の言葉で、騒擾罪と書いてありますが、今の106条の騒乱罪と同じ罪です。読みどころは、全部で二つです。まず一つ目は、多衆の定義です。一地方における公共の平和、静謐を害するに足る暴行、脅迫をなすに適当な多人数です。ただの複数人ではありません。一地方の平穏を害しうる、規模の集団です。建物の前で数人が殴り合ったのは、この規模に届きません。暴行があっても、多衆ではないので、騒乱罪にはなりません。二つ目は、この罪の作りです。多衆が、最初から要件に入っています。1人だけでは成り立たない条文です。共犯の回で見た、必要的共犯のうちの集団犯です。条文そのものが、最初から多数人の集団の行為を前提にしている型でした。だから、集団の中の人は、共犯の60条以下を使わず、この条文の3段で処罰します。集合は、多人数が、時と場所を同じくして集まることです。組織された団体である必要も、事前の計画も要りません。たまたま集まった人たちでも、集まりは集まりです。
行為——暴行は物でもよい
図:暴行の4分類・最広義
次は、行為です。その前に、1問です。暴行罪の回を思い出してください。暴行の4分類で、いちばん広いのはどれで、その代表条文は何でしたか?最広義の暴行です。およそ不法な有形力の行使で、物に対するものも含みます。代表は、騒乱罪でした。今日は、その中身を回収します。騒乱罪の暴行は、最広義です。人に向けた力に限らず、物に向けた有形力の行使でも足ります。冒頭の一つ目の車を、次々に倒す行為も、これにあたります。暴行罪の暴行は、人の身体に向けた力でした。なぜ、物に向けたものでもよいのですか。1問です。守っているのが、人の身体ではなく、社会の平穏だとします。それなら、物に向けた暴行でも足りるのは、なぜでしょうか?
平穏が乱れるのは、人が殴られたときだけではないからでしょうか。何百人もの人が、車を次々に倒していく町では、人に触れていなくても、平穏が破られています。守るものが社会の平穏なら、その平穏は、物に向けた力でも害されます。だから、対人性すら要りません。判例も、こう言っています。
判例最判昭35・12・8 刑集14巻13号1818頁
騒乱罪における暴行の範囲 騒擾罪における暴行なる観念は、広義のものであつて、物に対する有形力の行使をも含むものと解するを相当とし、従つて、原判決が建物の不法占拠又は不法侵入を騒擾罪における暴行に当るものとした判断を是認する。また、騒擾罪の成立要素である暴行、脅迫は、他の罪名に触れない程度のものであるをもつて足りるから、その暴行、脅迫が他の罪名に触れる場合には、その行為は一面騒擾罪を成立せしめると同時に他の罪名にも触れる旨の大審院判例(大正三年二月二四日大審院判決、同判決録二〇輯一九五頁以下、大正一一年一二月一一日同院判決、同判例集一巻七四一頁以下参照)を支持するから、原判決が本件騒擾の点と建造物侵入の点とを一個の行為で二個の罪名にふれる場合として刑法五四条一項前段一〇条を適用したのは正当であると認める
判例の言葉は「広義」ですが、物に対する力まで含むので、暴行の4分類では最広義にあたります。建物の不法占拠や不法侵入も、暴行にあたるとされています。脅迫は、広義の脅迫です。強要罪の回で分けた脅迫の3段階の、いちばん広い段です。強要罪自身の脅迫は、一つ下の狭義でした。広義の脅迫は、誰に、どんな害を加えると告げるかを問わず、相手に恐怖心を起こさせる告知であれば足ります。答案での書き方です。暴行や脅迫の大きさは、別の要件として独立させず、多衆の定義の中で見ます。つまり、暴行や脅迫をするのに適当な多人数かどうか、という形です。そのうえで、集団そのものの暴行かどうかを見ます。多衆は、一地方の平穏を害するに足る規模の集団でした。暴行は、その集合した多衆の共同意思に出た、集団そのものの暴行である必要があります。
集団の中の全員が、現実に暴行しなければ、ならないのですか。違います。全員が暴行する必要はありません。このあとの、共同意思のところで確認します。
共同意思
図:集団と共同意思・無人の車
三つ目の要素は、共同意思です。主観の面です。集合した多衆の共同意思に出た、集団そのものの暴行でなければなりません。冒頭の二つ目の最後尾の人は、ここに関わります。判例の言葉を、まず読みます。
判例最判昭35・12・8 刑集14巻13号1818頁
共同意思の内容 騒擾罪は、群集による集団犯罪であるから、その暴行又は脅迫は集合した多衆の共同意思に出たもの、いわば集団そのものの暴行又は脅迫と認められる場合であることを要するが、その多衆のすべての者が現実に暴行脅迫を行うことは必要でなく、群衆の集団として暴行脅迫を加えるという認識のあることが必要なのである。この共同意思は、多衆の合同力を恃んで自ら暴行又は脅迫をなす意思ないしは多衆をしてこれをなさしめる意思と、かかる暴行又は脅迫に同意を表し、その合同力に加わる意思とに分たれ、集合した多衆が前者の意思を有する者と後者の意思を有する者とで構成されているときは、その多衆の共同意思があるものとなるのである。共同意思は、共謀ないし通謀と同意義でなく、すなわち、多衆全部間における意思の連絡ないし相互認識の交換までは必ずしもこれを必要とするものではない。事前の謀議、計画、一定の目的があることは必要でないし、また、当初からこの共同意思のあることは必要でなく、平穏に合法的に集合した群集が、中途から、かかる共同意思を生じた場合においても本罪の成立を妨げない
まず、全員が暴行する必要はありません。多衆のすべての者が、現実に暴行脅迫を行うことは必要でなく、集団として暴行脅迫を加えるという認識があれば足ります。次に、共同意思の2つの型です。前者は、多衆の合同力を恃んで、つまり大勢の力をあてにして、自分で暴行をする意思や、多衆にさせる意思です。後者は、そうした暴行に同意して、合同力に加わる意思です。多衆が、この両方の者で構成されていれば、多衆の共同意思があります。さらに、共同意思は、共謀と同じではありません。全員の間で、連絡を取り合ったり、互いに分かっていたりする必要はありません。事前の謀議も、計画も、一定の目的も要りません。当初から持っている必要もなく、平穏に集まった群集が、途中で共同意思を生じてもかまいません。
判例最判昭35・12・8 刑集14巻13号1818頁
共同意思の程度 元来騒擾罪の成立に必要な共同意思とは、多衆集合の結果惹起せられることのあり得べき多衆の合同力による暴行脅迫の事態の発生を予見しながら、あえて、騒擾行為に加担する意思があれば足りるのであつて、必ずしも確定的に具体的な個々の暴行脅迫の認識を要するものではない
中身は、予見しながら、あえて加担する意思です。集団の合同力による暴行や脅迫の事態が起こりうると予見して、それでも加わる。予見の対象は、暴行や脅迫の事態のほうで、個々の暴行の具体的な認識までは要りません。冒頭の二つ目に戻ります。最後尾を、何もせず歩いていた人です。次の二つの場合に分けます。一つは、たまたま同じ道を歩いていただけで、集団が何をしているのか知らなかった人です。共同意思がないので、騒乱罪は成立しません。もう一つは、集団が車を倒していく状況を知りながら、その勢いに加わって、一緒に歩き続けた人です。集団の暴行の事態を予見して、あえて加わっているので、共同意思があります。何もしていなくても、付和随行として、騒乱罪の対象になりえます。
歩いているだけの行為が、罰せられるのではありません。多衆の一員として、集団の暴行に加わる意思で、その場にいる。その参加が、合同力になっています。共同意思の有無が、分かれ目です。ここは、論文で論点になりうるところです。
3類型の刑の階段
図:3類型の刑の階段
次は、刑の階段です。その前に、1問です。最後尾で歩いていた人は、首謀者と、同じ刑になるでしょうか? 3段の階段を、予想してみてください。階段は、こうです。首謀者は、まず1年以上10年以下の拘禁刑。指揮または率先助勢は、6か月以上7年以下の拘禁刑。付和随行は、10万円以下の罰金です。暗記は、首謀者だけが1年から始まる、付和随行だけが罰金、この2点で固定します。この3つは、別々の罪ではありません。同じ騒乱罪の中の、役割の重さの区別です。どの類型でも、多衆の一員として、共同意思をもって加わっていることが前提です。呼び分けは、行進にたとえます。中心になって騒ぎを言い出し、段取りを組み、集団を暴行や脅迫に向かわせた人が、首謀者です。行進で言えば、旗を振って、行き先を決める人です。他人に指図して動かす人が、指揮です。集団の中から抜きんでて、暴行や脅迫の勢いを高める人が、率先助勢です。現場でなく、事前の働きかけでもかまいません。他人の行動に引かれて、ついていくだけの人が、付和随行です。流れでついていく人です。先ほどの事件でも、署の中で交渉に当たって脅迫などをした者は、指揮や率先助勢とされました。署の前に残って群集と行動を共にした者たちは、率先助勢か付和随行とされました。これは事案の紹介です。線引きの物差しにはしないでください。冒頭の二つ目の答えです。最後尾を、状況を知りながら歩いていた人は、共同意思があれば、付和随行です。10万円以下の罰金で、首謀者とは、同じ扱いになりません。参加の度合いで、刑が3段に分かれる。守るものが社会の平穏なので、誰にどれだけ被害を与えたか、では測れません。平穏を乱すのは、集団の合同力です。その力を生み出し、向きを決めた人ほど、平穏を乱した責任が重い。だから、集団への関わり方の重さで、刑を分けるのです。
他罪との関係
図:吸収と観念的競合
他の罪との関係です。判例の原則は、騒乱罪の暴行と脅迫は、他の罪名に触れない程度のものであれば足りる、というものでした。そのうえで、その暴行や脅迫が、他の罪名にも触れるなら、一つの行為で二つの罪名に触れる場合になります。刑法54条1項前段の、観念的競合です。先ほどの事件では、建造物侵入との観念的競合が、正当とされました。整理します。暴行罪や脅迫罪は、騒乱罪に吸収されます。騒乱罪が、その暴行や脅迫を、最初から構成要件の中に含んでいるからです。独立には成立しません。一方、建造物侵入のように、別の罪名に触れる行為は、別に成立して、騒乱罪と観念的競合になります。建造物損壊や公務執行妨害も、同じ理屈です。集団が建物の壁を壊せば建造物損壊、取り締まる警察官に殴りかかれば公務執行妨害が、それぞれ騒乱罪と観念的競合になりうる、という形で押さえてください。冒頭の一つ目の答えです。無人の車を次々に横転させた集団は、物に対する有形力の行使、つまり最広義の暴行を、多衆の共同意思に基づいて、おこなっています。集団そのものの暴行です。だから、106条の騒乱罪が成り立ちます。車の持ち主それぞれの器物損壊も、騒乱罪とは別に成立しうる、観念的競合です。人に触れていなくても、社会の平穏が害される。これが、守るものが平穏だ、ということです。
107条 多衆不解散罪
図:107条の要件
最後に、107条です。試験での重要度は低いので、短く見ます。その前に、1問です。条文が最初から、「しないこと」を罰の対象にしている型を、何といいましたか?真正不作為犯です。不作為犯の回で条文を読んだ107条が、その実例でした。
条文刑法107条
刑法107条(多衆不解散) 暴行又は脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を三回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は三年以下の拘禁刑に処し、その他の者は十万円以下の罰金に処する。
暴行または脅迫をするため多衆が集合した場合において、権限のある公務員から解散の命令を3回以上受けたにもかかわらず、なお解散しなかったときは、首謀者は3年以下の拘禁刑、それ以外の者は、10万円以下の罰金です。要件は、次の3点です。暴行や脅迫をするために、多衆が集合したこと。権限のある公務員から、解散の命令を3回以上受けたこと。それでも解散しなかったこと。3回以上、を押さえてください。106条との位置関係です。106条は、暴行や脅迫をした場合でした。107条は、まだ暴行や脅迫に至っていなくても、解散命令を3回以上無視した段階で処罰します。騒乱に至る手前を、捕まえる規定です。騒乱罪の予備的な段階を処罰するものと、説明されます。すでに暴行や脅迫をしているなら、106条の問題です。実行行為は、解散しないという不作為です。真正不作為犯の実例で、論点はありません。
今日の地図(保存版)
図:騒乱の罪の一覧
まとめます。冒頭の二つの答えです。一つ目。無人の車を次々に横転させた集団には、騒乱罪が成立します。物に向けた有形力も最広義の暴行で、集団そのものの暴行だからです。二つ目。最後尾を、状況を知りながら歩いていた人も、共同意思があれば、付和随行として罰金の対象です。首謀者とは、刑が違います。守るものが変わると、何が変わるのか。ここでは3点です。一つ目は、多衆です。社会の平穏を害するには、一定の規模が要るので、1人では成り立ちません。二つ目は、最広義の暴行です。物に向けても、平穏は害されるので、物に対する力でも足ります。そして三つ目は、抽象的危険犯です。実際に平穏が乱れるのを待たず、乱しうる集団の行為で成立します。106条は、多衆と、暴行または脅迫と、共同意思です。刑は、順に1年以上10年以下、6か月以上7年以下、10万円以下の罰金の3段です。107条は、解散命令を3回以上無視する、真正不作為犯です。首謀者が3年以下、それ以外の者は、10万円以下の罰金です。第17章の地図に戻ります。個人的法益から、社会的法益へ。騒乱は、その入口で、公共の平穏の側でした。なお、治安を乱す目的などで爆発物を使うことを罰する、爆発物取締罰則という別の法律にも、同種の規定があります。国の統治の仕組みを壊す目的の暴動を罰する、内乱罪との違いは、国家的法益の回で扱います。
参照条文
- 刑法106条
- 刑法107条