公文書偽造等罪155条
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第17章 社会的法益|公共の平穏・取引の安全・風俗 ⑬/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。
日付だけのCと、写真まで替えたD
図:問い・二つの設例
前回の終わりに約束したとおり、今日は公文書偽造の155条を見ます。有印と無印の違いも、ここで見ます。設例を二つ出します。一つ目です。市営駐車場の本物の許可証があります。市長名義で、公印も押してあります。Cは、この許可証の有効期限の日付だけを書き換えました。Dは、同じ許可証の氏名欄と写真欄を、別人のものに貼り替えました。二つ目です。市の窓口に、課長の決裁を待たずに、一定の手順で証明書を出すことが許されている係員がいます。この係員が、決められた受付印の手順だけを飛ばして、内容の正しい証明書を作りました。受付の手伝いにとどまる臨時職員も、同じことをしました。
155条には、その分け方の軸があります。軸は一本です。その書類を、役所が作ったことにしてよいか、です。順に見ていきます。
公文書とは何か、公図画とは
図:公文書と公図画
まず、公文書とは何かです。公文書は、公務所または公務員が、その名義で、権限の範囲内で作るべき文書です。覚えるのは、名義人が役所である、というイメージだけで足ります。前々回に見たとおり、文書の名義人は、その文書を読んだ人が、誰が作った文書だと受け取るか、という人でしたね。免許証がよい例です。免許証には、持ち主の名前と顔写真が載っています。でも、誰が作った文書として読まれるかといえば、公安委員会です。文面に私人の名前があっても、名義人が役所なら、公文書です。これも前々回に見たとおり、公文書は、作る側から決まります。使われ方から決まる公用文書とは、別の分け方です。条文に出てくる、公務所と公務員の意味は、7条にあります。
条文刑法7条
刑法7条(公務員・公務所の定義) この法律において「公務員」とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する議員、委員その他の職員をいう。 この法律において「公務所」とは、官公庁その他公務員が職務を行う所をいう。
公務員は、国や地方公共団体の職員のほか、法令で公務に従事する議員や委員も含みます。公務所は、役所のことです。市役所も、法務局も、公務所です。次に、公図画です。図画は、意思や観念を、絵や図のような形で表したものです。文字で表す文書に対して、図で表すものが図画です。公図画は、名義人が役所である図画のことです。例は、法務局の土地の図面です。土地の境界を示す、昔の、あざという地区ごとの地図が、書き換えられた事件がありました。最高裁は、その地図を、法務局の出張所の署名がある、公図画と認めています。町内会が作った地図は、公図画ですか。違います。町内会は役所ではありません。名義人が私人なので、私図画です。市が作った案内図なら、公図画です。同じ地図でも、誰の名義で作られたかで分かれます。
図:今日の道筋
今日の道筋です。まず155条の全体と、刑の差。次に有印の意味。そのあと、偽造と変造の分かれ目と、係員が作った場合を見ます。最後に、無印と、現行の条文に加わった2号、行使の目的を確認して、冒頭の二つの設例に答えを出します。
155条の骨格と刑の差
図:155条1項・読み方
条文です。1項から見ます。
条文刑法155条1項
刑法155条1項(有印公文書偽造等) 行使の目的で、次の各号に掲げるいずれかの行為をした者は、一年以上十年以下の拘禁刑に処する。 一 公務所若しくは公務員の印章若しくは署名(以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において「印章等」という。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書若しくは図画(以下この章において「文書等」という。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき文書等を偽造する行為 二 公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等(印章等として表示されることとなる電磁的記録をいう。以下この章、第百六十五条及び第百六十七条において同じ。)を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等(文書等として表示されて行使されることとなる電磁的記録をいう。以下この章において同じ。)を偽造し、又は偽造した公務所若しくは公務員の電磁的記録印章等を使用して公務所若しくは公務員の作成すべき電磁的記録文書等を偽造する行為
長い条文なので、柱だけ取り出します。1項は、公務所や公務員の印章か署名を使って、公務所や公務員が作るべき文書や図画を偽造する罪です。印章や署名がある文書の偽造なので、有印公文書偽造です。括弧の中で、言葉が定義されています。印章か署名をまとめて、印章等。文書か図画をまとめて、文書等です。この二つの略称は、この章の最後まで出てきます。2号は、電子データ版です。あとで読みます。今は、1号の紙の文書の場合だけを見てください。刑は、1年以上10年以下の拘禁刑です。かなり重い刑です。
条文刑法155条2項・3項
刑法155条2項・3項(有印公文書変造・無印公文書偽造等) 公務所若しくは公務員が押印し若しくは署名した文書等又は公務所若しくは公務員が電磁的記録印章等を使用して作成した電磁的記録文書等を変造した者も、前項と同様とする。 前二項に規定するもののほか、公務所若しくは公務員の作成すべき文書等若しくは電磁的記録文書等を偽造し、又は公務所若しくは公務員が作成した文書等若しくは電磁的記録文書等を変造した者は、三年以下の拘禁刑又は二十万円以下の罰金に処する。
2項は、押印し、または署名した文書を変造した者です。刑は、前項と同様で、かなり重く、1年以上10年以下の拘禁刑です。3項は、前二項に規定するもののほか、と始まります。1項と2項に当たらないものの、残り全部を拾う受け皿です。刑は、3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金で、ぐっと軽くなります。
図:有印・無印と偽造・変造の4マス
表にします。縦が有印と無印、横が偽造と変造です。有印の偽造が1項、有印の変造が2項で、どちらも1年以上10年以下。無印は、偽造も変造も3項で、3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金です。前回、約束した、有印と無印の刑の差は、これです。どうして、ハンコがあるだけで、そんなに刑が重くなるんですか。印章や署名があると、いかにも、役所が確かに作った公文書に見えるからです。社会は、それを信用して取引や手続を進めます。信用されやすい形を偽るほど、被害が大きくなるので、刑が重くなります。公文書全体の信頼を守る罪なので、信頼しやすい形ほど重く罰する、という筋です。例えば、市長名義で、公印のある許可証を偽造すれば、重い罪です。公印も署名もなく、様式だけが市の文書らしい案内文を偽造した場合は、3項で、軽く罰されます。
有印の意味
図:有印とは
有印の意味です。有印とは、公務所や公務員の、印章または署名を使っていることです。印章と署名は、どちらか一方で足ります。印鑑が押してなければ、無印ですか。違います。署名には、記名も含まれます。記名は、手書きでなく、印刷などで氏名を書いたものです。たとえば、ハンコも手書きの署名もないけれど、印刷された市長の氏名が入っている通知書は、有印です。ここは、条文の字面を読んだだけでは出てこない点です。判例以来の読み方なので、覚えてください。決め手は、役所が確かに作ったように見せる力です。手書きでも印刷でも、氏名が入っていれば、同じだけ信用されるからです。その結果、実際には、無印の公文書は、きわめて少なくなります。試験でも、3項は薄い扱いです。前回見たとおり、写しは、原本が有印なら有印です。冒頭の設例のCとDが手を加えた許可証は、市長名義で公印もありました。有印の公文書です。1項の1号には、前段と後段があります。前段は、真正な、つまり本物の印章や署名を使って偽造する場合です。後段は、偽造した印章や署名を使って偽造する場合です。
公務所や公務員の印章そのものを偽造する罪は、別にあります。だから、後段は、文書を作る段階の話です。偽の印章を使って、文書を偽造した行為を、この条文が処罰します。印章の偽造の罪との関係は、別の回で見ます。
偽造と変造の分かれ目
図:偽造と変造の定義
ここで復習です。前々回の内容を思い出してください。偽造とは、何をすることでしたか?名義人と作成者の人格の同一性を偽ることです。名義人でない人が、名義人の名前で文書を作ることでした。有形偽造のことで、権限なく他人名義の文書を作る、と言い換えられます。では、変造です。変造は、権限なく、すでにある真正な文書の、非本質的部分に、変更を加えて、新しい証明力を生じさせることです。決め手は、変えたあとのものが、元の文書と同じものと言えるか、です。変えても、同じ文書が残っていると言えるなら、変造です。変えたせいで、元の文書とは別の新しい文書になったと言えるなら、役所の名で新しい文書を作ったことになります。その新しい文書を作ったのは、手を加えた本人です。名義人は役所なのに、作成者は別人です。名義人と作成者の人格の同一性を偽ったことになるので、偽造です。たとえば、通帳の受入れの日付だけを書き換えるのは、変造だとされています。通帳は、誰の、どの口座の通帳か、という中心が変わらないからです。判例を見ます。他人の写真を運転免許証に貼り替え、さらに生年月日の数字も改めた事件です。判例は、決定の本筋とは別に、ついでに触れる形で、次のように述べています。
判例最決昭35・1・12 刑集14巻1号9頁
免許証の写真と生年月日の貼替 特定人に交付された自動車運転免許証に貼付しある写真及びその人の生年月日の記載は、当該免許証の内容にして重要事項に属するのであるから、右写真をほしいままに剥ぎとり、その特定人と異なる他人の写真を貼り代え、生年月日欄の数字を改ざんし、全く別個の新たな免許証としたるときは、公文書偽造罪が成立すると解すべきである。
読みどころは、重要事項を変えて、全く別個の新たな免許証にしたら偽造、の一点です。免許証は、この人が、この顔で、この生年月日の人だと証明する文書です。写真と生年月日は、その中心です。中心を差し替えれば、元の免許証は消えて、別の人の免許証が出来上がります。冒頭の設例に当てます。Cは、許可証の有効期限の日付だけを書き換えました。誰に、何を許す許可証かは、変わっていません。元の許可証が、そのまま残っています。これは、変造です。
図:設例Cと設例D
Dは、氏名欄と写真欄を、別人のものに替えました。誰の許可証かという中心が替わり、元の許可証とは別の、市長名義の許可証が出来上がっています。偽造です。どちらも有印なので、Cは2項、Dは1項。刑は、同じ1年以上10年以下の拘禁刑です。刑を分ける区別ではありません。罪名と、条文の項を正確に当てるための区別です。答案では、当てはめで、本質的部分を変えたかを必ず論じます。変造の例として、先ほどの、あざごとの地図の事件も、2項の例です。
係員が作った公文書は偽造か
図:名義人・代決者・補助者
次は、冒頭の二つ目の設例です。役所の公文書の名義人は、市長のような、一番上の人です。でも、実際に一枚一枚作るのは、市長ではありません。市長から授権、つまり権限を任されて、市長の決裁を待たずに、自分の判断で公文書を作る権限のある人がいます。これが代決者です。たとえば、市民課長です。代決者が作った公文書は、偽造ではありません。名義人である市長の意思を、権限に基づいて表示した人だからです。前々回の意思説、つまり、作成者とは、文書に意思を表示した者、または表示させた者だ、という考え方で見ると、その意思を表示させたのは市長なので、作成者は市長で、名義人と作成者がズレていません。さらに、その下で実務を支える、補助的公務員、つまり係員がいます。ここで問題が出ます。係員に、公文書を作る権限はあるのでしょうか。
図:三つの立場・補助者の権限
古い判例は、係員に権限を認めませんでした。作成権限があるのは、名義人と代決者だけ、という立場です。ところが、これでは、窓口で、毎日大量に証明書を作っている職員が、全員、偽造をしていることになってしまいます。逆に、補助者に無条件で権限を認める立場もあります。でも、それでは、内容が違っても、権限があると言えてしまいます。そこで、最高裁は、条件付きで認める道を採りました。
図:判例の事案
事案はこうです。市の市民課の係長が、自宅の新築資金を借りるために印鑑証明書が必要になりました。そこで、申請書も出さず、手数料も払わず、自分で証明書を作りました。市民課員は、慣行上、証明書を作る事務をとれました。通常は、課長が翌日に事後決裁をする扱いでした。内容も正確でした。ただし、この係長の分は、申請書が無いので、決裁もされていません。しかも、1通だけは、別の出張所が扱う市民の分でした。
図:補助者の規範
判旨は、二つの層に分かれます。一つ目は、補助者にも作成権限があるか、という規範。二つ目は、申請書と手数料の手続違反をどう見るか、というあてはめです。まず、規範です。
判例最判昭51・5・6 刑集30巻4号591頁
補助者の作成権限 公文書偽造罪における偽造とは、公文書の作成名義人以外の者が、権限なしに、その名義を用いて公文書を作成することを意味する。そして、右の作成権限は、作成名義人の決裁を待たずに自らの判断で公文書を作成することが一般的に許されている代決者ばかりでなく、一定の手続を経由するなどの特定の条件のもとにおいて公文書を作成することが許されている補助者も、その内容の正確性を確保することなど、その者への授権を基礎づける一定の基本的な条件に従う限度において、これを有しているものということができる。
読みどころは、補助者にも、基本的な条件に従う限度で、作成権限がある、の一点です。決め手は、条件の中身が、内容の正確性を確保することにある点です。役所の公文書が信用されるのは、書いてあることが正しいからです。正しさを支える条件を守っている限り、役所が任せた範囲の作成と言えます。
図:手続違反のあてはめ
次に、あてはめです。
判例最判昭51・5・6 刑集30巻4号591頁
手続違反の扱い 確かに、被告人が、申請書を提出せず、手数料の納付もせずに、これを作成取得した点に、手続の違反があるが、申請書の提出は、主として印鑑証明書の内容の正確性を担保するために要求されているものと解されるので、その正確性に問題のない本件においてこれを重視するのは相当でなく、また、手数料の納付も、市の収入を確保するためのものであつて、被告人の作成権限を制約する基本的な条件とみるのは妥当でない。
読みどころは、手続の違反でも、内容の正確性とかかわらないなら、基本的な条件の違反にならない、の一点です。申請書は、内容の正しさを守る手順ですが、内容が正確なら重く見ません。手数料は、市の収入のためで、証明書の中身とは関係ありません。違反は、内部の規律の問題にとどまり、偽造にはなりません。手順の違反が、いつも偽造にならない、という意味ではありません。たとえば、申請者が本人かどうかの確認のように、内容の正確さを支える手順を飛ばしたのなら、基本的な条件に反するかが問題になります。内容の正確性とかかわるかで、線を引くのがポイントです。先ほどの、出張所の分の1通は、判決も、権限のないことが明らかだと別に置きました。権限の範囲の外だからです。権限の範囲内での手順違反と、範囲そのものの外とは、別です。判例には、批判があります。権限があるかは、名義の問題です。内容が正しいかは、前々回に見た、権限のある人が内容の嘘の文書を作る、虚偽作成の問題です。内容が正確かどうかで権限を決めるのは、この二つを区別する刑法の建前に反する、というものです。無条件に認める立場は、この理由に立っています。ただ、試験では、判例の立場で書けば足ります。補助者の作成権限は、論文で論点になりうる所です。
図:設例の答え・係員と臨時職員
冒頭の二つ目の設例に答えます。係員は、課長の決裁を待たずに、一定の手順で作ることが許されている補助者です。受付印は、いつ申請を受け付けたかを記録するための手順で、証明書に書く中身の正しさを確かめるものではありません。だから、受付印の手順は、内容の正確性とかかわりません。内容も正しいので、基本的な条件の範囲内で、作成権限があり、偽造ではありません。市長が任せた範囲で作っているので、意思説で見ても、意思を表示させたのは市長で、作成者は市長です。内容が正確なら、虚偽作成にもならず、罪になりません。臨時職員は、受付の手伝いにとどまり、事前の決裁なしには作れない立場です。作成を許された補助者でさえないので、権限がありません。名義人は市長で、作ったのは臨時職員ですから、偽造です。内容が不正確な場合の扱いは、判例の事案の外にあるので、ここでは踏み込みません。二人を分けたのは、冒頭の軸です。その証明書を、役所が作ったことにしてよいか。役所が任せた範囲の中なら本物で、外なら偽造です。
無印の公文書偽造
図:3項・無印
3項の無印です。先ほど見た3項は、1項と2項に当たらないものを拾う受け皿です。有印でない公文書の、偽造と変造です。例は、ハンコも署名もないけれど、様式や内容から、市の文書だと分かる案内文書です。公務所が作るべき文書であることが前提です。そこに、市長の氏名などが印刷されていれば、記名があるので有印になり、1項や2項です。押さえるのは三点です。3項は残り全部の受け皿であること、刑が軽いこと、実際には無印は少なく試験でも出にくいことです。
令和7年の改正で足された2号
図:1号と2号の対比
先ほど読み飛ばした2号です。令和7年の改正で、155条に足されました。1号は紙の文書、2号は電子データ版で、構造が並んでいます。2号は、公務所や公務員の、電磁的記録印章等を使って、電磁的記録文書等を偽造する行為です。電磁的記録印章等とは、印章等として表示されることとなる電磁的記録です。電子の印鑑のようなものです。電磁的記録文書等とは、文書等として表示されて行使されることとなる電磁的記録です。画面に表示して、紙の文書と同じように使うデータです。前回、電磁的記録そのものは、文書でないと聞きました。文書の定義が広がったんですか。違います。広がっていません。文書は、目で見て読める形で表されていることが必要でした。データそのものは、その要件を満たさないので、文書ではありません。ところが、スマホの画面に表示して、紙と同じように使われる証明書が増えました。なりすまして作っても、罰せない場合があったのです。そこで、文書の定義には手を付けずに、文書と同じ働きをする電磁的記録を、別の客体として足しました。2項の変造にも、3項の無印にも、同じ客体が加わっています。偽造の考え方は、紙の文書と同じです。名義人は役所で、作成者との人格の同一性を偽れば、偽造です。設例で当てます。Gは、市がオンラインで出す電子の証明書について、市の名義の電子データと、電子印鑑を、無断で作りました。スマホの画面に表示して、本物として使うつもりです。市の電磁的記録印章等を使って、電磁的記録文書等を偽造したので、1項2号です。刑は、1号と同じ、1年以上10年以下の拘禁刑です。
なお、詔書の偽造を定めた154条は、この改正の対象ではなく、条文は文書のままです。行使や虚偽作成の側に電磁的記録の客体が加わった点は、別の回で扱います。
行使の目的
図:行使の目的
最後に、155条1項の冒頭にあった、行使の目的です。155条は、目的がなければ成立しない目的犯です。行使とは、偽造した文書を、真正な文書として使うことです。文書の内容を、他人に認識させるか、認識できる状態に置くことです。たとえば、偽造した許可証を、駐車場の係員に見せるつもりなら、目的があります。使う目的があれば、作った時点で成立します。逆に、観客に偽物と分かる形で作る、舞台の小道具の許可証なら、本物として使う目的がないので、成立しません。使った場合の罪は、別の回で見ます。
整理と、冒頭の答え
図:今日の整理
まとめます。公文書は、名義人が役所の文書です。有印は、印章か署名を使うことで、記名も含みます。有印の偽造と変造は、1年以上10年以下の拘禁刑、無印は、3年以下の拘禁刑または20万円以下の罰金です。偽造と変造の分かれ目は、本質的部分を変えて、新しい文書を作ったかです。補助者は、内容の正確性など、授権の基本的な条件に従う限度で、作成権限があります。権限の範囲外は、権限がありません。現行の条文は、電子データの2号も並べています。行使の目的が必要な目的犯です。冒頭の答えです。Cは日付だけを変えたので、非本質的部分の変更で、変造です。Dは氏名と写真を替えて新しい許可証を作ったので、偽造です。刑は、どちらも同じです。係員は、基本的な条件の範囲内で作成権限があるので、偽造ではありません。臨時職員は、作成権限がないので、偽造です。決め手は、役所が、その人に任せていた範囲かどうかです。
図:判断の順序・公文書版
判断の順序を、図にまとめます。文書か、偽造か、虚偽作成か、という順序は、これまでと同じです。公文書の偽造では、そこに、有印かどうかと、新しい文書を作ったかどうかを足して、条文の項を決めます。偽造にあたらない場合は、虚偽作成かどうかを考えます。
参照条文
- 刑法7条
- 刑法155条1項
- 刑法155条2項・3項