刑法ゼロから刑法#169

汽車転覆等罪と往来危険による転覆

印刷用PDFを開く

第17章 社会的法益|公共の平穏・取引の安全・風俗 ⑩/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

壊したCと、死なせたB

問い・二つの「転覆」の話 図:問い・二つの「転覆」の話

前回は、往来を妨害する罪の下の2段、道をふさぐ124条と、事故のおそれを生じさせる125条まででした。今日は階段の上に進みます。設例を二つ出します。Cは、乗客がおおぜい乗った電車が駅に停まっているあいだに、運転台の制御機器と、車輪を支える足回りの台車を、工具で叩き壊しました。電車は一歩も動けなくなりました。乗客に怪我はなく、電車はひっくり返ってもいません。もう一つ。前回、線路に大きな石を置いたBの話をしました。もし、あの電車が止まらずに石に乗り上げ、脱線して横転し、線路脇の道を歩いていた人が巻き込まれて亡くなったら。Bは、電車を転覆させるつもりまではなく、人が死ぬとも思っていませんでした。

決め手は、条文が要求している結果が、前回の二つの罪とは、型が違うことです。理由を、順に見ていきます。

今日の道筋 図:今日の道筋

道筋です。まず、階段の上の2段の地図。次に、人がいる乗り物を転覆や破壊する罪と、そこで人が死亡したとき。そのあと、往来の危険から転覆まで進んだ場合。さらに過失の場合。最後に、往来の罪の外にある、その他の罪と、危険犯の総まとめをして、CとBの答えを出します。

階段の上2段

危険の階段・上2段 図:危険の階段・上2段

前回の階段を呼び戻します。往来を妨害する罪は、124条、125条、126条、127条の4段で、上に行くほど、客体が絞られ、結果が重くなり、刑が重くなります。通れなくなる、事故のおそれが生じる、実際に転覆する、という順でした。今日は、その上の2段、126条と127条です。ここで1問です。前回の124条と125条は、条文のどの言葉が目印で、どちらの型でしたか?往来の妨害を生じさせた、往来の危険を生じさせた、という言葉です。その状態が生じたことを、条文が要件にしているので、具体的危険犯でした。ところが、上の段では、この言葉が条文から消えます。126条には、妨害を生じさせた、危険を生じさせた、という言葉がありません。代わりに、転覆させ、又は破壊した、という行為そのものが書いてあります。人がいる乗り物を転覆させ、壊せば、その行為の中に、危険がすでに含まれているからです。つまり、転覆や破壊をすれば、それで既遂です。条文に危険の語がないので、抽象的危険犯です。抽象的危険犯は、危険が生じたかどうかを、個別には問いません。答案で、危険の発生を論じる必要があるかどうかが、型で分かれるのです。放火の108条と同じ見分け方です。

型を決めるのは、罪の重さではなく、条文の語です。喩えるなら、下の2段は、ドアに鍵をかけて、中の人が出られなくなった状態を書く罪です。上の2段は、ドアそのものを壊した罪です。壊した時点で罪になり、中の人が実際に出られなかったかは問いません。刑の数字です。125条は、2年以上の有期拘禁刑で、上限は20年でした。126条1項2項は、無期または3年以上の拘禁刑で、下限も上限も上がります。

汽車転覆等罪

126条1項2項・条文 図:126条1項2項・条文

条文です。

条文刑法126条1項・2項

刑法126条1項・2項(汽車転覆等) 現に人がいる汽車又は電車を転覆させ、又は破壊した者は、無期又は三年以上の拘禁刑に処する。 現に人がいる艦船を転覆させ、沈没させ、又は破壊した者も、前項と同様とする。

趣旨は、現に人がいる乗り物は、転覆や破壊をされれば、中の人の生命や身体に直結する、という点です。だから、危険が生じたかを待たず、行為で既遂にします。読む順は、客体と行為と型、この三つです。客体は、現に人がいる汽車、電車、艦船です。現に人がいるとは、犯人以外の人が、その中にいることです。人のいない電車は、この条文の客体ではありません。

転覆・破壊・沈没の意味 図:転覆・破壊・沈没の意味

行為です。転覆は、転倒、横転、転落のことです。レールから外れただけの、単なる脱線は、含まれないというのが通説です。艦船の沈没は、船体の主要な部分が水中に沈むことです。完全に沈みきる必要はありませんが、座礁は含まれません。そして、破壊です。ここに判例があります。事案です。被告人が仕掛けた爆発物が、乗客のいる電車の中で爆発しました。車両の屋根や天井の鉄板、座席、網棚、窓ガラスなどが壊れ、破片が床いっぱいに散らばって、乗客を乗せたまま安全に走り続けることができない状態になりました。判旨です。

判例最判昭46・4・22 刑集25巻3号530頁

汽車・電車の破壊の意義 刑法一二六条一項にいう汽車または電車の破壊とは、汽車または電車の実質を害して、その交通機関としての機能の全部または一部を失わせる程度の損壊をいうものと解するのが相当である。

読みどころは、交通機関としての機能を失わせる程度か、の一点です。実質を害して、とは、表面に傷をつけるだけでなく、乗り物の中身そのものを損なう、という意味です。決め手は、乗り物としての役目が損なわれたかどうかです。この罪が守るのは、乗り物に乗る人の安全です。走れない、安全に運べない、というところまで壊れて、はじめて破壊です。窓ガラスだけを割った場合は、電車はそのまま走れるので、破壊には当たらず、器物損壊罪にとどまります。窓ガラスを割るのと、制御機器を壊すのとで、そんなに違うのですか。違います。窓ガラスが割れても、電車は走れます。制御機器や台車を壊せば、電車は動けません。境目は、機能に関わる損壊かどうかです。型は、先ほどの抽象的危険犯です。転覆や破壊の行為があれば既遂で、往来の危険が生じたことも、現実に事故が起きたことも、要りません。前回の2罪との違いは、ここです。未遂は、128条で罰します。条文です。

条文刑法128条

刑法128条(未遂罪) 第百二十四条第一項、第百二十五条並びに第百二十六条第一項及び第二項の罪の未遂は、罰する。

罰するのは、124条1項、125条、126条1項と2項です。たとえば、工具を持って運転台に入り込み、叩き壊そうとしたところを取り押さえられた場合は、破壊の結果まで至っていないので、126条1項の未遂です。

冒頭のC・あてはめ 図:冒頭のC・あてはめ

冒頭のCに当てます。Cが壊したのは、乗客が乗った電車の、運転台の制御機器と台車です。電車は一歩も動けなくなりました。実質を害して、機能を失わせる程度の損壊で、破壊です。駅に停まっていて、乗客がおおぜいいたので、現に人がいる電車です。126条1項が成立します。転覆していなくても、怪我人がいなくても、既遂です。刑は、無期または3年以上の拘禁刑で、前回の125条より、下限も上限も重くなります。126条は、転覆や破壊を、故意でする罪です。この点は、あとで127条と比べます。

汽車転覆等致死罪

126条3項・読み方 図:126条3項・読み方

次は、転覆や破壊で、人が死亡した場合です。条文です。

条文刑法126条3項

刑法126条3項(汽車転覆等致死) 前二項の罪を犯し、よって人を死亡させた者は、死刑又は無期拘禁刑に処する。

構造は、結果的加重犯です。基本の犯罪は、汽車転覆等罪。よって、が目印で、死亡の認識や認容は要りません。加重結果は、致死だけです。致傷は、含まれません。刑は、死刑または無期拘禁刑です。死亡の原因です。この罪は、1項や2項が既遂、つまり転覆や破壊に至った結果として、人が死亡した場合に成立します。未遂にとどまる場合は成立しません。転覆や破壊の行為そのものから死亡が生じた場合は含まれないと解されています。たとえば、制御機器と台車を壊して止まれなくなった電車が、車止めに突っ込み、乗客が亡くなった場合は、壊れた電車が死亡の原因なので、3項です。これに対して、制御機器を叩き壊している最中に、振り上げた工具が、そばにいた乗務員に誤って当たって亡くなった場合は、死亡の原因は、壊れた電車ではなく、壊す作業そのものです。この立場では、3項ではなく、126条1項の罪と、過失致死罪で考えます。前回の124条2項でも、道を掘り崩す作業そのもので崩れた土砂による死亡は、2項から外しました。同じ整理です。ただし、124条2項と違い、3項は致死だけで、刑も傷害の罪と比べず、死刑または無期拘禁刑と決まっています。問題は、死亡した人の範囲です。乗客や乗員が含まれるのは当然です。では、駅のホームにいた人や、沿線の住民のような、車外の人は含まれるでしょうか。

車外の人を含むかどうかが、対立点です。否定説は、基本犯の汽車転覆等罪が、乗り物の利用者や乗員への危険を要件にしているので、死亡した人も車内の人に限る、と考えます。判例と有力説は、含まれる、とします。転覆や破壊で、車外の人が死ぬことも、十分に予想されるからです。次に見る判例は、127条の事件ですが、この点にも答えています。

判例最大判昭30・6・22 刑集9巻8号1189頁

126条3項の人の範囲 なお一二六条三項にいう人とは、必ずしも同条一項二項の車中船中に現在した人に限定すべきにあらず、いやしくも汽車又は電車の顛覆若しくは破壊に因つて死に致された人をすべて包含するの法意と解するを相当とする。

判決文は、旧い言い回しです。顛覆は、今の条文の転覆と同じ意味です。読みどころは、車中に現在した人に限らず、転覆や破壊で死んだ人をすべて含む、の一点です。決め手は、致死の原因が、転覆や破壊に結びついているか、です。人がどこにいたかではありません。殺人罪との関係です。殺意をもって電車を転覆させ、よって人を死亡させた場合は、この罪の刑が、殺人罪の199条、死刑又は無期若しくは5年以上の拘禁刑より重いので、この罪1つで処理する見解が有力です。ただし、殺人が未遂にとどまる場合、つまり、転覆はしたが誰も死んでいない場合は、3項の出番がありません。1項の汽車転覆等罪と、殺人未遂罪の観念的競合になります。観念的競合は、一つの行為で、二つ以上の罪名に触れるとき、重いほうの刑で処理する考え方でした。128条には、3項が挙がっていません。3項に未遂はありません。

往来危険による汽車転覆等罪

127条・読み方 図:127条・読み方

ここで1問です。結果的加重犯の重い結果は、行為者に認識や認容が必要でしたか?必要ありません。基本の犯罪をする故意があれば足りました。この前提で、127条を見ます。

条文刑法127条

刑法127条(往来危険による汽車転覆等) 第百二十五条の罪を犯し、よって汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、又は艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者も、前条の例による。

構造は、往来危険罪、125条の結果的加重犯です。前回の125条は、往来の危険を生じさせたところで止まっていました。そこから一歩進んで、実際に転覆や破壊などが生じた場合です。刑は、前条の例による、つまり126条の例です。126条との違いを整理します。126条は、転覆や破壊を、故意でする罪です。127条は、125条の罪、往来の危険を生じさせる行為から、結果として転覆等が生じた罪です。現に人がいる乗り物を転覆させる故意があれば126条の領分、危険にさらすつもりまでなら127条の領分、と押さえてください。ここから論点が二つあります。一つ目。126条の客体は、現に人がいる乗り物でした。127条は、126条の例によるので、人が現在していることが要るでしょうか。判例は、要らない、とします。理由は、127条の出発点が125条の罪だからです。前回見たとおり、125条は、無人の電車を暴走させる場合も含んでいました。125条の条文には、126条のような、現に人がいる、という言葉がないからです。127条の文言にも、人の現在の要件はありません。階段では127条を一番上に置きましたが、客体の絞りは、この段で外れます。この段を重くしているのは、客体ではなく、転覆という結果です。必要説は、126条の例によるのだから、客体の要件も同じだ、と考えます。ただし、判決は、一般論として現在性を述べてはいません。事案の処理から、不要の立場と整理されています。

二つ目。人が死亡した場合です。125条の罪を犯し、よって転覆等が生じ、さらに人が死亡した。127条の、前条の例によるの、前条は、126条の1項2項だけか、3項も含むのか。判例と通説は、3項も含む、とします。理由は二つ。127条は、前条第1項第2項の例による、とは書かず、前条の例による、と書いていて、3項を除外していないこと。そして、125条の行為は、その性質上、転覆や破壊だけでなく、人の死亡という結果を生じさせる危険も含むこと。否定説は、127条は人を死亡させた場合を規定していない、と考えます。判例の事案です。電車区の構内で、人のいない電車を発進させ、運転者のいないまま暴走させました。電車は、駅の車止めに衝突して脱線、破壊し、付近にいた人たちが死亡しました。判旨です。

判例最大判昭30・6・22 刑集9巻8号1189頁

127条と126条3項の関係 一二七条は、一二五条の罪を犯し因て汽車電車の顛覆又は破壊の結果を発生せしめた場合、一二六条の例によつて処断すべきことを規定している。この法意は、右の結果の発生した場合に一二六条一項二項の例によつて処断すべしとするものであるばかりでなく、汽車電車の顛覆又は破壊によつて致死の結果を生じた場合には、また三項の例によつて処断すべきを定めたものと解するを相当とする。

読みどころは、致死の結果が生じた場合は、3項の例によって処断する、の一点です。決め手は、127条が、前条の例による、と書いていることです。暴走させた電車自体が壊れた場合でも、127条の電車に当たるとされました。

127条の判定フロー 図:127条の判定フロー

道筋を、図にします。125条の罪を犯し、そこから転覆や破壊などが生じたら、126条1項2項の例です。さらに人が死亡したら、3項の例です。人の現在性は要りません。128条の対象にも、127条は入っていないので、未遂は罰しません。

冒頭のB・あてはめ 図:冒頭のB・あてはめ

冒頭のBに当てます。Bは、線路に大きな石を置きました。125条の罪です。そこから電車が脱線して横転しました。転覆です。127条です。転覆させるつもりまではなくても、結果的加重犯なので、認識は要りません。線路脇を歩いていた人が死亡しました。3項の例によります。亡くなったのが乗客でなく、車外の人でも、判例は、人に含めます。刑は、死刑または無期拘禁刑です。転覆も死も望んでいなかったBに、なぜ死刑まであり得るのか。冒頭の問いの答えがこれです。なお、乗客のいる電車を転覆させるつもりが最初からあったなら、結果的加重犯ではなく、126条の領分になります。これで、冒頭の決め手がそろいました。126条は、危険の語がなく、転覆や破壊の行為で既遂。127条は、よって、で転覆や死亡の結果につながる。どちらも、前回の2罪とは、条文が要求する結果の型が違います。

過失往来危険罪

129条・読み方 図:129条・読み方

次は、過失です。過失犯は、法律に特別の規定がある場合だけ処罰される、と見ました。38条1項ただし書です。往来の罪では、その特別の規定が、129条です。

条文刑法129条

刑法129条(過失往来危険) 過失により、汽車、電車若しくは艦船の往来の危険を生じさせ、又は汽車若しくは電車を転覆させ、若しくは破壊し、若しくは艦船を転覆させ、沈没させ、若しくは破壊した者は、三十万円以下の罰金に処する。 その業務に従事する者が前項の罪を犯したときは、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。

129条は、往来危険罪と汽車転覆等罪の過失版です。放火の罪で、失火罪の116条が、放火の過失版だったのと、同じ手つきです。刑は、30万円以下の罰金です。2項は、業務者の加重です。業務に従事する者が1項の罪を犯したときは、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。業務上失火の117条の2と、同じ、業務上だと重い、という型です。運転士や船長のように運行そのものを担う人が典型ですが、運行に間接的にかかわる人まで含みます。故意との線も押さえます。往来の危険を生じさせることを認識していれば、125条です。認識がなく、不注意なら、129条です。過失犯に未遂はなく、128条にも挙がっていません。

その他の罪

出水および水利に関する罪 図:出水および水利に関する罪

往来の罪を閉じる前に、公共の平穏および安全に対する、その他の罪の、位置づけを見ます。騒乱、放火、往来の罪のほかに、出水および水利に関する罪、あへん煙に関する罪、飲料水に関する罪があります。試験では深追いしない分野なので、名前と骨格だけ、地図に書き込みます。出水および水利に関する罪は、119条から123条です。表を見てください。浸害は、過失の回で見たとおり、水を出して建物などを水浸しにすることです。119条は、出水させて、現に人が住居に使う、または現に人がいる建造物や汽車、電車、鉱坑を浸害する罪で、死刑まである重い罪です。120条は、それ以外の物を浸害して、よって公共の危険を生じさせた罪です。121条は、水害の際の水防の妨害、122条は、過失の出水、123条は、堤防の決壊や水門の破壊などです。気づいてほしいのは、放火の罪と、条文の組み方が似ていることです。放火では、108条が、人が住む、または人がいる建造物への放火で、公共の危険の語がない抽象的危険犯。109条2項と110条が、人のいない自分の建造物や、建造物以外の物への放火で、公共の危険が生じて初めて罰する具体的危険犯。116条が失火でした。119条も、公共の危険の語がなく、108条と同じ抽象的危険犯です。人が住む家や、人がいる建物を水浸しにすれば、その行為の中に、中の人への危険がすでに含まれているからで、126条と同じ理屈です。120条は、よって公共の危険を生じさせた、とあり、109条2項、110条と同じ具体的危険犯です。122条は、116条と同じ過失版です。ここも、型は罪名ではなく、条文の語で見ます。

飲料水に関する罪 図:飲料水に関する罪

飲料水に関する罪は、142条から147条です。浄水は、飲み水のことです。ここは、個人用の浄水と、水道で公衆に供給する浄水とで、刑が上がる階段になっています。142条は、人の飲料に供する浄水を汚染する罪で、6月以下の拘禁刑または10万円以下の罰金。水道で公衆に供給する浄水や水源を汚染する143条になると、6月以上7年以下の拘禁刑に上がります。毒物を混ぜる行為も同じで、個人用の144条は3年以下、水道の146条は2年以上の有期拘禁刑です。145条は、142条から144条の罪で人を死傷させた場合で、傷害の罪と比較して重い刑により処断します。遺棄の罪の回で見た計算方式で、上限と下限を、それぞれ傷害の罪と比べて、重いほうを組み合わせます。たとえば、142条の汚染で人に怪我をさせたら、拘禁刑の上限は、142条の6月ではなく、傷害罪の15年になります。147条は、水道そのものの損壊や閉塞です。146条を全文で見ます。

条文刑法146条

刑法146条(水道毒物等混入及び同致死) 水道により公衆に供給する飲料の浄水又はその水源に毒物その他人の健康を害すべき物を混入した者は、二年以上の有期拘禁刑に処する。よって人を死亡させた者は、死刑又は無期若しくは五年以上の拘禁刑に処する。

文が二つです。前の文が混入罪、後ろの文が、よって、の結果的加重の致死です。個人用の144条は3年以下でした。客体が公衆に供給される水道や水源になると、刑が3年以下から2年以上へ、一気に上がります。あへん煙に関する罪は、136条から141条です。あへん煙を、輸入し、製造し、販売し、吸食、つまり吸い、所持する、といった行為を処罰する規定群で、141条が未遂を罰します。ここでは、名前の位置づけだけ覚えれば足ります。

整理と、冒頭の答え

126・127・129条の対比 図:126・127・129条の対比

まとめます。126条1項2項は、現に人がいる汽車、電車、艦船を、転覆、沈没、破壊する罪で、抽象的危険犯です。破壊は、実質を害して、機能の全部または一部を失わせる程度の損壊で、窓ガラスだけは当たりません。刑は無期または3年以上の拘禁刑で、未遂を罰します。126条3項は、その結果的加重犯で、致死だけです。死亡した人は、車外の人も含みます。刑は死刑または無期拘禁刑で、未遂はありません。127条は、125条の罪の結果的加重犯で、刑は前条の例による。人の現在性は不要で、人が死亡したら3項の例による。未遂はありません。129条は過失版で、30万円以下の罰金、業務者は加重されます。

危険犯分類の総まとめ 図:危険犯分類の総まとめ

最後に、危険犯の総まとめです。表を見てください。放火の108条、109条1項、出水の119条、往来の126条は、危険の語がなく、抽象的危険犯です。109条2項、110条、120条、124条、125条は、公共の危険や、往来の妨害、往来の危険を生じさせた、と書いてあり、具体的危険犯です。最も重い126条3項や、死刑まである108条が、具体的危険犯ではありません。重さと型は別です。型は、条文の語で見ます。冒頭の答えです。Cは、乗客のいる電車の、運転台の制御機器と台車を壊して、動けなくしました。126条1項、破壊が成立します。転覆も怪我人もなくても既遂です。決め手は、事故のおそれを論じる前に、破壊という行為が書いてある、抽象的危険犯であることです。Bは、石に乗り上げた電車が転覆し、車外の人が死亡しました。125条の罪の結果的加重で、127条と、126条3項の例によります。刑は、死刑または無期拘禁刑です。車外の人も人に含まれ、転覆も死も望んでいなくても、結果的加重犯なので認識は要りません。決め手は、結果が、危険から、実際の転覆と死亡に変わり、よって、でつながっていることです。論文では、126条と127条のどちらか、転覆や破壊に当たるか、が問われることがあります。

参照条文

  • 刑法126条1項・2項
  • 刑法128条
  • 刑法126条3項
  • 刑法127条
  • 刑法129条
  • 刑法146条

刑法 全体ロードマップへ →