刑法ゼロから刑法#199

「賄賂」の意義と社交儀礼・政治献金

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第18章 国家的法益|国家の存立・国交・国家の作用 ⑯/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

現金でなくても賄賂になるのか

今日の二つの場面 図:今日の二つの場面

前回の予告のとおり、今日は、賄賂とは何か、を見ます。場面を二つ出します。一つ目は、株の場面です。ある公務員が、業者から、値上がりが確実な株を、公開価格、つまり、売り出しのときの決まった値段で、買わせてもらいました。代金は、きちんと払っています。現金は、一円も受け取っていません。二つ目は、贈り物の場面です。子どもの担任の先生に、保護者が、季節の挨拶として、贈り物を渡しました。株の場面は、賄賂にあたりえます。贈り物の場面は、事情によります。分かれ目は、前回の物差しです。前回の結論を、呼び戻します。判例と多数の学説が採る立場では、賄賂の罪が守っているのは、職務の公正と、これに対する社会一般の信頼です。前回の設例では、市の職員Aが、正しく許可を出したあと、業者からお礼の現金十万円を受け取りました。仕事が正しくても、仕事の対価として現金を受け取れば、この信頼が害されるので、単純収賄罪が成立しました。賄賂にあたるかどうかも、この信頼が害されるかで決まります。今日は、この筋で、賄賂の中身を決めていきます。

今日の流れ 図:今日の流れ

今日の流れです。まず、条文で、賄賂という言葉を確かめます。次に、賄賂の定義と、利益の広さを見ます。続いて、中元や歳暮などの社交儀礼との限界、そして、政治献金との限界です。最後に、事例で確認します。

条文の中の「賄賂」 図:条文の中の「賄賂」

197条1項を読み直します。今日見るのは、賄賂を、という部分です。

条文刑法197条1項

刑法197条1項(収賄、受託収賄及び事前収賄) 公務員が、その職務に関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。この場合において、請託を受けたときは、七年以下の拘禁刑に処する。

条文には、賄賂を収受し、とあります。ただ、賄賂とは何かは、条文のどこにも書かれていません。ですから、この言葉の中身は、判例と学説が、解釈で決めてきました。

「賄賂」の意義

賄賂とは 図:賄賂とは

では、前回の物差しで、賄賂の範囲を決めます。賄賂とは、公務員の職務に対する対価としての、不正な報酬です。典型は、金銭、物、不動産です。ただ、範囲は、それに限りません。人の需要や欲望を満たす利益であれば、足ります。広いのには、理由があります。その前に、前回の設例を思い出してください。Aの職務は、公正でした。それでも成立したのは、何が害されるからでしたか?職務の公正に対する、社会一般の信頼です。物差しが信頼ですから、利益の種類は問われません。どんな利益でも、職務と引き換えに渡されれば、その信頼が害されます。現金ではなく商品券でも、接待でも、疑いが生まれることは同じです。ですから、定義の、不正な、という言葉も、利益そのものが悪い物だという意味ではありません。職務と引き換えに受け取るから、不正なのです。なお、この定義は条文に書かれておらず、判例や学説が、解釈で立てた基準です。現金を受け取っていなくても、賄賂にあたる場合があります。たとえば、値上がりが確実な、まだ上場前、つまり、取引所で売り買いが始まる前の株を、公開価格で譲ってもらった場合は、どうでしょうか?

賄賂と認められた利益 図:賄賂と認められた利益

五つ並べます。判例が賄賂と認めた利益です。このうち、饗応接待と債務の肩代わりは、大審院、つまり、最高裁ができる前の一番上の裁判所の判例です。情交も、最高裁が、大審院以来の判例を確認したものです。一つ目は、株の利益です。最高裁の決定です。新規上場に先立って株式が公開されたとき、贈る人が、公開価格で提供すると申し出て、受け取る人が了承し、代金を払い込んだ事案です。

判例最高裁判所決定(昭和63年7月18日・刑集42巻6号861頁)

未公開株式を公開価格で取得できる利益 「なお、原判決の認定によれば、本件は、F株式会社、G株式会社その他の株式会社の株式が東京証券取引所等において新規に上場されるに先立ち、あらかじめその株式が公開された際、贈賄側の者が公開に係る株式を公開価格で提供する旨の申し出をし、収賄側の者がこれを了承してその代金を払い込むなどしたという事案であるが、右株式は、間近に予定されている上場時にはその価格が確実に公開価格を上回ると見込まれるものであり、これを公開価格で取得することは、これらの株式会社ないし当該上場事務に関与する証券会社と特別の関係にない一般人にとつては、極めて困難であつたというのである。以上の事実関係のもとにおいては、右株式を公開価格で取得できる利益は、それ自体が贈収賄罪の客体になるものというべきであるから、これと同趣旨に出た原判断は、正当である。」

上場すれば、価格が確実に公開価格を上回ると見込まれ、しかも、一般の人が公開価格で取得することは極めて困難でした。ですから、公開価格で取得できる利益それ自体が、賄賂の客体になります。現金は一円も渡っていません。株を買わせてもらえること自体が、利益です。二つ目は、異性間の情交です。最高裁は、以前からの判例を変更する必要はない、と確認しています。

判例最高裁判所判決(昭和36年1月13日・刑集15巻1号113頁)

異性間の情交と賄賂 「異性間の情交も賄賂の目的物となり得ることは夙に判例の示すところであり……、現在これを変更するの必要を認めない。」

三つ目は、饗応接待です。四つ目は、債務の肩代わりです。この二つは、大審院の時代から、判例が、賄賂と認めてきた類型です。料亭で接待を受けることも、借金を肩代わりしてもらうことも、人の需要を満たす利益です。五つ目は、思うように売れなかった土地を、買い取ってもらい、換金できる利益です。県知事の実弟が経営する会社が、土地を早く売る必要があったのに、売れずにいました。県が発注した工事を受注した謝礼の趣旨で、受注した業者の下請業者が、その土地を買い取り、代金を支払いました。代金は時価相当額だったとしても、というのが、決定の前提です。最高裁の決定です。

判例最高裁判所決定(平成24年10月15日・刑集66巻10号990頁)

土地を売却して換金できる利益 「このような事実関係の下においては,本件土地の売買代金が時価相当額であったとしても,本件土地の売買による換金の利益は,被告人Aの職務についての対価性を有するものとして賄賂に当たると解するのが相当である。」

代金が時価相当額だったとしても、損も得もないように見えます。しかし、売れずにいた土地を現金にできること自体が、利益です。決定の言う被告人Aは、県知事です。その利益が、県の工事を受注できたことへの謝礼として渡されたので、知事の職務への対価になります。ですから、代金が時価相当額でも、賄賂にあたりうるのです。次は、対価関係の細かさです。前回の設例の、市の職員Aで考えます。Aが許可を出したことへの謝礼でも、Aが担当している仕事の全体への謝礼でも、賄賂にあたります。どの書類のどの判断への謝礼か、までは特定できなくて構いません。最高裁の決定が、こう述べています。

判例最高裁判所決定(昭和33年9月30日・刑集12巻13号3180頁)

一定の職務に対する対価で足りる 「賄賂は職務行為に対するものであれば足り、個々の職務行為と賄賂との間に対価的関係のあることを必要とするものではないと解するを相当とする」

職務行為に対するものであれば足り、個々の職務行為との間に、対価的関係があることまでは要りません。決定は理由を述べていませんが、物差しに戻れば説明できます。どの判断への謝礼かが特定できなくても、仕事と引き換えに利益が渡れば、お金で動くのではないか、という疑いは、同じように生まれるからです。定義を、一枚にまとめます。

⭐ 論文で書く規範:賄賂の意義 「賄賂とは、公務員の職務に対する対価としての不正な報酬をいい、人の需要や欲望を満たす利益であれば足りる。」 「職務との対価関係は、一定の職務に対するもので足り、個別の職務行為との間の対価関係までは要しない。」 (要点)

逆に、賄賂にならない例も見ておきます。単純収賄罪、197条1項の主体は、公務員です。ですから、公務員でない人が、自分の仕事の報酬を受け取っても、この罪の問題にはなりません。また、職務への対価ではない贈り物も、賄賂ではありません。たとえば、仕事と無関係の恋人からの贈り物です。では、職務と関係がありそうな、中元や歳暮は、どうでしょうか。次に見ます。

社交儀礼との限界

社交儀礼の二つの基準 図:社交儀礼の二つの基準

中元、歳暮、お祝い、手土産。公務員に贈っても、すべてが賄賂になるわけではない、という感覚があります。どこで線を引くのでしょうか。考え方は二つあります。判例の基準は、職務との対価関係があるかどうか、です。対価関係が認められる限り、金額の多少を問わず賄賂です。大審院の判決は、社交上の儀礼と見える程度の贈り物でも、職務に関して授受される以上は、賄賂になる、という趣旨を述べています。前回の物差しから説明すると、こうなります。金額が小さくても、職務と引き換えなら、お金で動くのではないか、という疑いは生まれます。ただし、この説明は、大審院が述べた理由ではありません。有力な学説の基準は、慣習上、社交儀礼として是認される範囲かどうか、です。その範囲内なら、賄賂にあたりません。理由は、その範囲なら、職務の公正と、これに対する社会一般の信頼は害されないからです。物差しは、先ほどの、信頼です。是認される範囲かどうかは、公務員と贈る人との人的関係、二人の社会的地位、金額、時期、渡し方などで判断します。二つの基準は、一見、食い違います。ただ、実際のあてはめでは、近づきます。最高裁の事案で確かめます。

教諭への贈答の事案(事実) 図:教諭への贈答の事案(事実)

国立大学の附属中学校の教諭が、生徒の父兄から、贈答用の小切手を、何度も受け取った事案です。公訴事実、つまり、検察官が起訴した事実は、約二年間のことです。十二回、合計十二万円です。父兄九名から、収受したとされました。十二回のうち、三回だけを、第一審は有罪としました。三回の内訳を見ます。五千円が、一回。一万円が、二回です。五千円は、新学級の担任になった直後です。一万円は、卒業時です。原審も、これを維持していました。公訴事実は、判決ではこう書かれています。

判例最高裁判所判決(昭和50年4月24日・集刑196号175頁)

公訴事実の要旨 「本件公訴事実の要旨は、被告人は、昭和四一年三月上旬ころから同四三年三月下旬ころにかけて、A大学B付属中学校教諭としての学習指導等の職務に関し、生徒の父兄九名から前後一二回にわたり、贈答用小切手一二通額面合計一二万円の賄賂を収受したというものである。」

教諭への贈答の事案(判断) 図:教諭への贈答の事案(判断)

最高裁の判断を、二つに分けて見ます。まず、五千円の一回です。新学級担任になった直後のものです。

判例最高裁判所判決(昭和50年4月24日・集刑196号175頁)

新学級担任直後の五千円 「被告人が新規に右Cの学級担任になつた直後の時期においてであるところ、右Dは、Cの場合ばかりでなく、かねてから子女の教員に対しては季節の贈答や学年初めの挨拶を慣行としていたものであつて、これらの贈答に関しては、儀礼的挨拶の限度を超えて、教育指導につき他の生徒に対するより以上の特段の配慮、便益を期待する意図があつたとの疑惑を抱かせる特段の事情も認められないのであるから、本件小切手の供与についても、被告人が新しく学級担任の地位についたことから父兄からの慣行的社交儀礼として行われたものではないかとも考えられる余地が十分存するのであつて、右供与をもつて直ちに被告人が学級担任の教諭として行うべき教育指導の職務行為そのものに関する対価的給付であると断ずるには、記録上窺知することのできる被告人に対する他の父兄からの贈答状況、金額、被告人以外の教員の場合における同種事情、被告人が無罪とされた他の九個の事実との対比等の諸事情一切を総合考慮するときは、なお合理的な疑が存するものといわなければならないのである。」

供与の趣旨を述べる供述だけを見ると、お世話になりますというお願いのしるし、あるいはお礼、という言葉があり、賄賂に見えます。しかし、父兄は日頃から、季節の贈答や学年初めの挨拶を、慣行にしていました。儀礼的挨拶の限度を超えて、特別の配慮を期待する意図を疑わせる事情も、ありません。そのうえで、他の父兄の贈答状況、金額、他の教員の場合、無罪とされた他の事実との対比などを総合すると、職務行為そのものへの対価と断ずるには、なお合理的な疑いが存する、としました。刑事裁判では、有罪を認定するには、常識に照らして疑いが残らない程度の証明が要ります。合理的な疑いが残る場合は、有罪と認定できません。この判決は、賄賂と断ずるには、その疑いが残る、と言っているのです。次に、卒業時の一万円二件です。

判例最高裁判所判決(昭和50年4月24日・集刑196号175頁)

卒業時の一万円二件 「以上説示の諸事情に加え、その他記録上窺知できる諸般の事情をも総合して本件事実関係を見れば、第一審判決が掲げる証拠及び記録によつても、前記二件の供与をもつて、被告人の教諭としての公的職務に関し、これに対してなされたものであると断定するには、なお合理的な疑いの存することを払拭することができず、右二件の供与は、被告人の職務行為を離れた、むしろ私的な学習上生活上の指導に対する感謝の趣旨と、被告人に対する敬慕の念に発する儀礼の趣旨に出たものではないかと思われる余地があると言わなくてはならない。」

卒業時の二件は、二年間担任をした教諭への謝礼で、教諭が、勤務時間の外にまで熱心に指導した事情もありました。それでも、卒業時の謝恩的な贈答は、慣習的な儀礼として広く承認されていること、従来から中元や歳暮の儀礼的な贈答の慣行があったこと、私的な特別の指導への感謝や敬慕の念から出たと見る余地があることなどから、公的職務に対してなされたと断定するには、なお合理的な疑いが払拭できない、としました。主文です。

判例最高裁判所判決(昭和50年4月24日・集刑196号175頁)

主文 「原判決を破棄する。本件を大阪高等裁判所に差し戻す。」

教諭への贈答の事案(結論) 図:教諭への贈答の事案(結論)

結論の形を、正確に押さえます。最高裁は、賄賂に当たらないと言い切って、無罪にしたのではありません。賄賂と断ずるには、なお合理的な疑いが残るとして、原判決を破棄し、審理をやり直させたのです。破棄差戻しとは、原判決を取り消して、下級の裁判所に、審理をやり直させることです。理由は、賄賂性の認定について、審理を尽くしておらず、重大な事実を誤認した違法の疑いがある、ということでした。ここから取り出せることがあります。対価関係は、供与の趣旨の供述だけでは決まりません。贈答の慣行、金額、時期、他の人への贈答、特別の便宜を期待する事情があるかなどを、総合して判断しています。この事情は、学説の考慮事情、つまり、人的関係、社会的地位、金額、時期、態様と、重なります。形の上では対価関係を問いながら、あてはめでは、社交儀礼の事情を見ている、と整理できます。ただし、最高裁自身が、学説の基準を採ったと述べているわけではありません。設例に戻します。Aは、許可を出したあと、現金十万円を受け取りました。慣行的な挨拶と言える額か、関係か、時期か。許可という職務と結びついた現金で、儀礼の範囲を超えます。対価関係は強く、賄賂です。前回の結論と一致します。現金か贈り物かではありません。職務と引き換えで、信頼が害されるかどうかで決まります。

政治献金との限界

二つの献金の趣旨 図:二つの献金の趣旨

社交儀礼と同じ線引きが、政治献金でも問題になります。政治献金は、政治活動を支える正当な目的のものと、職務の対価にあたるものとが、似て見えます。分かれ目は、趣旨です。同じ献金でも、趣旨で結論が変わるのですか。変わります。献金した人の利益にかなう政治活動を、一般的に期待するだけなら、賄賂にあたらない方向です。政治活動を支えるための献金で、職務への対価として渡されたとは言えないからです。この法案を、このように修正してほしい、というように、政治家の職務の中身に、具体的な見返りを求める趣旨なら、賄賂にあたります。献金が、その職務と引き換えになるからです。ただし、一般的な期待にとどまるなら賄賂にあたらない、というのは、学説の整理です。最高裁の決定で確かめます。ハイヤー、タクシー業者が、新しく課税する石油ガス税法案が、衆議院の大蔵委員会で審査されている最中に、衆議院議員に金員を供与した事案です。

判例最高裁判所決定(昭和63年4月11日・刑集42巻4号419頁)

審査中の法案をめぐる金員の供与 「……被告人は、……石油ガス税法案が、既に内閣から衆議院に提出され、当時衆議院大蔵委員会で審査中であつたところ、……衆議院議員として法律案の発議、審議、表決等をなす職務に従事していたB、Cの両名に対し、単に被告人らの利益にかなう政治活動を一般的に期待するにとどまらず、右法案が廃案になるよう、あるいは、税率の軽減、課税実施時期の延期等により被告人らハイヤータクシー業者に有利に修正されるよう、同法案の審議、表決に当たつて自らその旨の意思を表明するとともに、衆議院大蔵委員会委員を含む他の議員に対して説得勧誘することを依頼して、本件各金員を供与したというのであるから、……右金員の供与は、衆議院議員たるB、Cの職務に関してなされた賄賂の供与というべきであつて、これと同旨の原判断は正当である。」

決定は、単に利益にかなう政治活動を一般的に期待するにとどまらず、法案が廃案になるよう、あるいは業者に有利に修正されるよう、審議や表決で意思を表明し、他の議員を説得することまで依頼して供与した、として、職務に関してなされた賄賂の供与としました。注意点です。この決定は、賄賂性を認めた事案です。一般的な期待にとどまる場合に、賄賂ではないと判示した決定ではありません。ただ、にとどまらず、という言い方から、一般的な期待にとどまる場合は別になる、という分かれ目が、読み取れます。整理します。具体的な依頼まであれば賄賂にあたる、という側は、この決定が認めています。一般的な期待にとどまれば賄賂にあたらない、という側は、判例ではなく、職務への対価とは言えない、という理由から、学説が導いた結論です。

事例で弁別とまとめ

弁別ミニ事例 図:弁別ミニ事例

事例を五つ、考えてください。賄賂にあたるか、あたらないかを選びます。見るのは、職務の対価かどうか、です。一つ目。市の職員が許可を出し、業者が、お礼として、高級商品券を渡しました。あたります。商品券は金銭ではありませんが、人の需要を満たす利益で、許可の対価だからです。商品券も、賄賂の利益にあたります。許可という職務と引き換えに渡されているからです。二つ目。市の工事の担当課長を、受注業者が、高級料亭で接待しました。饗応接待は、大審院以来、賄賂と認められてきました。三つ目です。市の職員が、仕事と無関係の友人から、誕生日に贈り物をもらいました。

職務と引き換えでない贈り物は、賄賂ではありません。四つ目は、二つで一組です。取引のある業者が、年末に、毎年の慣行どおり、少額の菓子折りを、担当職員に渡しました。許可の審査中ではなく、特別の依頼もありません。毎年の慣行どおりの少額の菓子折りで、審査中でもないので、職務の対価とは断じにくい場面です。では、対になる場面です。審査中の許可を頼みながら、高額の商品券を渡したら、どうでしょうか。あたる方向です。審査中の許可を頼んでいて、金額も大きいので、職務との対価関係が強いからです。同じ贈り物でも、関係、金額、時期、渡し方で分かれます。五つ目も、二つで一組です。政治団体が、議員に、今後の政治活動に期待して、寄付しました。

寄付の趣旨が、政治活動への期待だけなら、賄賂にあたらない方向です。対になる場面です。議員が審議中の法案について、具体的な修正を依頼して、お金を渡したら、どうでしょうか。あたります。職務の中身に、具体的な見返りを求めているからです。政治献金は、趣旨で分かれます。

今日の整理 図:今日の整理

まとめます。

⭐ 論文で書く規範:今日の3点 「① 賄賂にあたるかどうかも、職務の公正に対する社会一般の信頼が害されるか、で決まる。」 「② 賄賂とは、職務の対価としての不正な報酬。人の需要や欲望を満たす利益で足り、個別の職務行為との対価関係までは要らない。」 「③ 限界は、職務との対価関係があるか。社交儀礼は事情を総合して判断し、政治献金は趣旨で分かれる。」 (要点)

最初の問いの答えをもう一度言います。値上がりが確実な株を、公開価格で買える利益は、現金でなくても、賄賂にあたりえます。担任の先生への贈り物は、季節の挨拶の範囲なら、職務の対価とは断じにくく、職務と引き換えなら、賄賂です。分かれ目は、職務との対価関係でした。

参照条文

  • 刑法197条1項

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