刑法ゼロから刑法#205

第三者供賄罪と加重収賄罪

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第18章 国家的法益|国家の存立・国交・国家の作用 ㉒/動画の内容を見返し用にまとめたものです(動画には含みません)。

自分は受け取らない場合

設例の人物関係 図:設例の人物関係

設例から入ります。市役所の道路課で、道路の占用許可を担当している職員Aがいます。工事業者Bが、Aに頼みました。次の許可を、便宜を図って出してください。Aは、引き受けました。そのうえで、Aは言います。私は受け取りません。そのかわり、地域の団体Cに、10万円を寄付してください。Bは、そのとおり、Cに10万円を渡しました。Aの手元には、1円も入っていません。今日の問いは、Aは収賄にならないのか、です。答えから言います。Aは、自分で受け取っていなくても、罪になります。第三者供賄罪という罪です。なぜそうなるかは、条文で確かめます。その前に、前に作った類型の地図を思い出してください。基本形の単純収賄罪に、足す型と、変える型がありました。今日は、変える型のうち、受け取る人を第三者に変える、第三者供賄罪を見ます。そして、足す型のうち、不正な行為を足す、加重収賄罪を見ます。請託は、公務員に、一定の職務行為を頼むこと、でした。請託を受けるとは、それを引き受けることです。

今日の流れ 図:今日の流れ

今日の流れです。まず、第三者供賄罪の条文と要件を読みます。次に、第三者とは誰かを、判決で確かめます。続いて、加重収賄罪の条文と、1項と2項の違いを見ます。最後に、六つの場面で罪名を選び、冒頭の問いに答えます。

第三者供賄罪の条文と要件

第三者供賄の関係図 図:第三者供賄の関係図

冒頭の設例の続きです。Bがお金を渡した相手は、Aではなく、団体Cでした。197条1項は、公務員が賄賂を収受し、と書いています。受け取るのは、公務員自身です。ですから、Aが受け取っていないなら、1項は使えません。それでは、頼みを聞いて、受け取りだけを人に付け替えれば、逃げられてしまいます。そこで置かれたのが、197条の2です。

条文刑法197条の2

刑法197条の2(第三者供賄) 公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。

ここで一問です。Aは受け取っていません。それでも罪になるとしたら、何があるからでしょうか?条文を、四つに切って読みます。一つ目は、公務員が、です。二つ目は、その職務に関し、です。三つ目は、請託を受けて、です。四つ目は、第三者に賄賂を供与させ、又はその供与の要求若しくは約束をしたとき、です。

受託収賄罪との違い 図:受託収賄罪との違い

前に見た受託収賄罪と並べます。受託収賄罪の行為は、収受、要求、約束でした。第三者供賄罪は、受け取る人が、自分から第三者に付け替わっただけで、行為の並びは同じです。供与させる、供与の要求、供与の約束です。ですから、第三者に実際に渡らなくても、要求や約束をした段階で成立します。条文の言葉のとおりです。ここで、前の回の確認です。受け取る人を第三者に変えた型は、基本形と比べて、刑は重いのでしたか、同じでしたか?同じです。五年以下の拘禁刑で、変える型は、処罰の範囲を広げる型でした。条文を見ても、刑は五年以下です。そして、ここが受託収賄罪との違いです。受託収賄罪は、請託があると、七年以下に重くなる型でした。第三者供賄罪は、請託が無いと、成立しない型です。頼まれて引き受けていることが、要件として、条文に書かれています。設例で確かめます。頼みを引き受けたうえで、Cに渡させたAは、197条の2です。ところが、Bから頼まれてもいないのに、Aが、Cに寄付を、と言い、Bが渡した場合は、請託がありません。この罪は、成立しません。

条文の上では、罪にならないことになります。第三者供賄罪は、請託を受けたという、頼まれて引き受けた関係があることで、その見返りに第三者に渡させた、と言える場合に、処罰を広げた規定です。請託が要件と書かれている以上、請託が無い場合まで、この条文で処罰することは、できません。もう一つ、要件を確かめます。第三者に渡った利益が、賄賂と言えるのは、どんな場合でしょうか。これは、次の判決で確かめます。

第三者とは誰か

昭和の判決の事実 図:昭和の判決の事実

判決の事実を、まず見ます。警察署長は、犯罪の検挙、捜査、送致の職務を持っています。この署長が、ある被疑事件について、町や組合に寄附金をするから、寛大に扱ってほしい、との依頼を受けて、承諾しました。そして、寄附金名義で、町と組合に金員を供与させました。その事件は、検察庁に送致されませんでした。この事件で問われた罪は、あとで見る加重収賄罪です。加重収賄罪は、第三者供賄罪などの収賄の罪を犯したうえで、すべきことをしなかった場合などに成立します。署長は、町と組合に供与させたうえで、事件を送致しませんでした。ですから、判決は、土台になる第三者供賄罪が成立するための条件を、述べています。カードの、197条ノ2は、当時の条文の書き方で、いまの197条の2にあたる規定です。

判例最高裁判所第二小法廷判決(昭和29年8月20日・刑集8巻8号1256頁)

第三者供賄罪が成立するために必要なこと 「刑法一九七条ノ二の罪が成立するためには公務員が其の職務に関する事項につき依頼を受けこれを承諾したことを必要とし第三者に供与した利益がその公務員の職務行為に対する代償たる性質を有することを要するものと解するを相当とし、右第三者のうちには地方公共団体その他の法人を含むことも当然でありこれを除外する理由はない。」

判決が述べたことを、順に分けます。一つ目は、職務に関する事項について、依頼を受け、これを承諾したことが必要、ということです。依頼されただけではなく、承諾が要ります。二つ目は、第三者に供与した利益が、公務員の職務行為に対する代償という性質を持っていること、が必要ということです。三つ目は、第三者には、地方公共団体その他の法人も含まれる、ということです。判決が述べたのは、ここまでです。設例に当てます。Cの団体に渡した10万円が、Aの職務行為の見返りという性質を持っていれば、第三者に渡した利益も、賄賂になります。受け取った人が、Aでなくても、職務行為の対価である性質は変わらないからです。

判決は、地方公共団体その他の法人も含まれる、と述べました。判決が理由として述べたのは、これを除外する理由はない、という点です。受け取りを人から団体に付け替えれば逃げられる、という抜け道をふさぐ、条文の狙いにも合います。もう一つ、別の判決を、板で見ます。

第三者の範囲 図:第三者の範囲

板の二つ目です。農業協同組合の支部は、法人格こそ持っていませんが、独立の会計を持つなど、独立の団体としての実質を具えていました。大法廷の判決は、この支部が、197条の2と、197条の5にいう第三者にあたる、とした原判決の判断を、正当と認めました。197条の5は、追徴の規定です。それは、別の回で見ます。ここまでで、言い切れる範囲を整理します。第三者は、公務員自身と、その共同正犯者以外の者、とされます。共同正犯者は、公務員といっしょに罪を実行する側の人です。その人が受け取れば、公務員の側が受け取ったことになるので、第三者には数えません。一方、公務員をそそのかした人や、手助けした人は、第三者になりえます。自然人に限らず、法人や、独立の団体も含まれます。ここで、一つ注意です。形の上では第三者に渡っていても、その第三者が公務員と一体で、実質的には、公務員自身が受け取ったと言える場合があります。このときは、第三者供賄罪ではなく、単純収賄罪や受託収賄罪で処理される、と整理されます。学説による整理です。

実質は公務員自身 図:実質は公務員自身

たとえば、Aが頼んで、Aが自由に使えるC名義の口座に振り込ませたとします。Cは、名義を貸しただけです。この場合、実質は、Aが受け取ったのと同じです。請託があれば、受託収賄罪で、請託が無ければ、単純収賄罪です。ただ、どこまでが実質か、という線引きには、定まった基準が示されていません。実質的に自分が受け取ったと言える場合は、こちらで考える、というところまでを、覚えてください。第三者供賄罪の要件は、条文のとおりです。公務員が、その職務に関し、請託を受けて、第三者に供与させ、要求し、または約束することです。第三者に法人や団体も含まれる点は、判例の個別の判断です。

加重収賄罪と1項2項

時間の順序 図:時間の順序

次は、足す型の加重収賄罪です。収賄に、不正な行為が足されます。条文を、続けて読みます。

条文刑法197条の3第1項

刑法197条の3第1項(加重収賄及び事後収賄) 公務員が前二条の罪を犯し、よって不正な行為をし、又は相当の行為をしなかったときは、一年以上の有期拘禁刑に処する。

条文刑法197条の3第2項

刑法197条の3第2項(加重収賄及び事後収賄) 公務員が、その職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、若しくはその要求若しくは約束をし、又は第三者にこれを供与させ、若しくはその供与の要求若しくは約束をしたときも、前項と同様とする。

条文刑法197条の3第3項

刑法197条の3第3項(加重収賄及び事後収賄) 公務員であった者が、その在職中に請託を受けて職務上不正な行為をしたこと又は相当の行為をしなかったことに関し、賄賂を収受し、又はその要求若しくは約束をしたときは、五年以下の拘禁刑に処する。

1項と2項が、加重収賄罪です。3項は、公務員であった者の罪で、事後収賄罪です。加重収賄罪ではありません。条文は、項の番号まで確かめる癖を付けてください。1項と2項の違いを、設例で見ます。1項の設例です。Bから頼まれて引き受け、Aは、10万円を受け取りました。ここまでで、収賄罪です。そのあとで、Aは、約束どおり、受付の順番を飛ばして、不正に許可を出しました。これは、1項です。2項の設例です。Aは、お礼の約束は何もないまま、頼まれて、受付の順番を飛ばして、不正に許可を出しました。後日、お礼として、Bから10万円を受け取りました。これは、2項です。ここで一問です。Aが先に不正を働き、後でお礼を受け取った場合、197条の3は、何項でしょうか?

先に不正をして、あとで受け取っているので、2項です。1項と2項を分けるのは、時間の順序です。1項は、先に収賄の罪が成立し、そのあとで不正な行為をした場合です。2項は、先に不正な行為をし、そのあとで賄賂を受け取った場合です。覚え方として、後から不正なら1項、先に不正なら2項、と読み分けてください。前二条の罪は、197条の罪と、197条の2の罪です。197条は、単純収賄罪、受託収賄罪、事前収賄罪を含みます。197条の2は、今日の第三者供賄罪です。1項の、よって、は、収賄の罪を犯した結果として、不正な行為をしたことを求めています。条文の言葉のとおりです。ですから、不正な行為をした時点で、収賄の罪がまだ犯されていない場合、つまり、先に不正な行為をして、後から受け取った場合は、1項の、よって、に当たりません。その場合を受け止めているのが、2項です。そして、2項の条文には、第三者にこれを供与させ、という言葉が入っています。不正な行為が先で、第三者に供与させた場合も、加重収賄罪です。今日の前半の、第三者供賄罪と、ここで、つながります。なお、2項には、請託を受けて、という言葉は、ありません。

不正な行為と法定刑

不正な行為と相当の行為 図:不正な行為と相当の行為

条文には、不正な行為をした、または、相当の行為をしなかった、という二つの言葉があります。不正な行為をしたとは、職務に違反する行為を、現にしたことです。設例の、順番を飛ばして許可を出した、がそれです。相当の行為をしなかったとは、本来すべき職務行為をしなかった、つまり、やるべきことをやらない型です。判例を一つ見ます。犯罪の捜査にあたる巡査が、被疑者の要望を容れて、証拠品の押収を取りやめました。

判例最高裁判所第二小法廷決定(昭和29年9月24日・刑集8巻9号1519頁)

相当の行為をしなかったとき 「犯罪捜査の衝にあたる巡査が、とくに被疑者の要望を容れて証拠品の押収を取止めた、本件のごとき場合は、刑法一九七条の三にいわゆる「相当ノ行為ヲ為ササルキ」に該当することは、原判決の説示するとおりである。」

決定が述べたのは、この場合が、197条の3の、相当の行為をしなかったとき、にあたる、ということです。収賄が先か、不正が先か、つまり1項か2項かには、決定自身は触れていません。

準職務行為にも成立 図:準職務行為にも成立

板にもう一つあります。前に見た、職務密接関連行為です。職務そのものではないけれども、職務と密接な関係にある行為でした。役所の長官が、指揮監督の権限のない工事について、下部組織の部長に、特定の業者の便宜を図るよう働きかけた行為が、その例でした。板の決定は、職務に密接な関係を有する行為を、いわば準職務行為、と呼んでいます。決定の言葉です。決定の判断は、二つです。こうした行為について賄賂を受け取れば、197条の収賄の罪が成立します。そして、その行為について不正な行為をしたときも、197条の3の罪が成立します。理由として、決定は、法令上の職務そのものについて不正な行為をした場合と同じく、加重収賄を認めるべき事情がある、と述べています。次に、法定刑を見ます。その前に、前回の確認です。請託とは、何でしたか?

公務員に、一定の職務行為を頼むことです。受けたというのは、それを引き受けることでした。では、加重収賄罪の法定刑です。1項も、2項も、一年以上の有期拘禁刑です。有期拘禁刑は、期間を決めて言い渡す拘禁刑で、一か月以上、二十年以下です。ですから、一年以上の有期拘禁刑は、一年から二十年まで、という幅になります。単純収賄罪の五年以下、受託収賄罪の七年以下は、下が一か月からです。加重収賄罪は、上が二十年に上がり、下も一年に上がっています。学説による整理で説明します。不正な行為まで現にすれば、職務の公正に対する社会一般の信頼が害されるだけでなく、職務の公正そのものが、現に害されます。害される程度が大きいから、刑が重い、と整理できます。

六つの場面で選ぶ

六つの場面 図:六つの場面

最後に、場面ごとに罪名を選びます。聞かれている軸も、同時に選んでください。一つ目から三つ目は、受け取る人は誰か、という軸です。四つ目から六つ目は、不正な行為の時間は、という軸です。軸が違いますから、問いを聞いたら、どちらの軸かを先に選んでください。一つ目です。Bが頼み、Aが引き受け、C団体に10万円を渡させました。不正な行為は、ありません。一つ目は、自分で受け取っていなくても、第三者供賄罪です。二つ目です。頼まれてはいませんが、Aが、Cに寄付を、と言い、Bが、Cに10万円を渡しました。請託が要件ですから、二つ目は、197条の2が成立しない場面です。三つ目です。Aが頼んで、Aが自由に使えるC名義の口座に、振り込ませました。Cは、名義を貸しただけです。

三つ目は、名義だけがCですから、単純収賄罪や受託収賄罪で処理される、と整理されます。ここまでが、受け取る人の軸です。四つ目です。Bが頼み、Aが引き受けて10万円を受け取り、その後、順番を飛ばして、不正に許可を出しました。四つ目は、収賄が先、不正が後ですから、197条の3第1項の加重収賄罪です。五つ目です。Aが先に、順番を飛ばして不正に許可を出し、後日、Bから10万円を受け取りました。五つ目は、不正が先、収賄が後ですから、197条の3第2項の加重収賄罪です。六つ目です。Aが先に不正に許可を出し、お礼を、C団体に渡させました。

六つ目は、渡す先がCでも、不正が先という順番は変わりませんから、同じ2項の加重収賄罪です。最後に、一問です。もし、不正な行為が無く、許可が正しかったなら、罪名は、どう変わるでしょうか?一つ目の第三者供賄罪は、そのままです。四つ目と五つ目は、加重収賄罪ではなくなって、Aが自分で受け取った部分だけが残ります。請託があれば受託収賄罪、無ければ単純収賄罪です。六つ目は、受け取ったのがCですから、同じようには戻らない気がします。六つ目は、Aが自分では受け取っていませんから、単純収賄罪にも、受託収賄罪にも、なりません。残るのは、197条の2です。請託を受けていたなら、一つ目と同じ第三者供賄罪で、受けていなければ、二つ目と同じで、成立しません。第三者供賄罪は、不正な行為が無くても成立します。加重収賄罪は、不正な行為が、あってはじめて成り立ちます。冒頭の問いにも、ここで答えが出ています。Aは、一つ目の場面でした。自分は1円も受け取っていなくても、請託を受けて、Cに渡させたので、第三者供賄罪です。

今日のまとめ

今日の整理 図:今日の整理

まとめます。

⭐ 論文で書く規範:今日の2点 「① 第三者供賄罪は、請託を受けて第三者に供与させる罪で、五年以下の拘禁刑。第三者は法人や独立の団体も含む。実質は公務員自身が受け取ったと言える場合は、単純収賄罪や受託収賄罪で処理される、と整理される。」 「② 加重収賄罪は、収賄に不正な行為が足された罪で、一年以上の有期拘禁刑。収賄が先で不正が後なら1項、不正が先で収賄が後なら2項。3項は事後収賄罪で、加重収賄罪ではない。」 (要点)

最初の問いの答えを、もう一度言います。Aは何も受け取っていませんが、請託を受けて、Cに供与させました。ですから、第三者供賄罪、197条の2で、五年以下の拘禁刑です。ただし、Cが実質的にA自身なら、単純収賄罪や受託収賄罪で考えます。

参照条文

  • 刑法197条の2
  • 刑法197条の3第1項
  • 刑法197条の3第2項
  • 刑法197条の3第3項

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